世界観
テーマは「死」。岡村ニノンが吉良ゆいじの患っている病気と向き合いながらも、お互いの愛情を深めていく物語となっている。しかし、その内容に重苦しさはなく、作者であるみきもと凛が「コメディ」と明言しているように全体は「死」を感じさせない明るい世界観で描かれている。
作品誕生のいきさつ
本作『きょうのキラ君』は、みきもと凛がデビューしてから数年後に描いた坂東賢治原作の映画『タイヨウのうた』のコミカライズ作品を執筆後に描かれた。『タイヨウのうた』のテーマが「死」であることから、本作のメインキャラクターである吉良ゆいじというキャラクターが生み出され、本作の構想に繋がっている。
あらすじ
岡村ニノンは、教室の隅っこの方で目立たず学校生活を送っている女子高生。そんな彼女の家の隣には、学校で一番の人気者である吉良ゆいじが住んでいた。しかし、性格も付き合う友達も違う2人は、隣に住んでいるにも関わらずまったく接点を持たずにいた。そんなある日、ニノンは両親からゆいじが余命1年の病気を患っていることを聞く。突然のことに動揺したニノンはゆいじの言動を注視するようになり、自身の飼っているインコの先生から、ゆいじが1人で「死にたくない」と泣いていたことを聞いてその事実を確信する。ニノンは孤独になっているゆいじに手を差し伸べ、「わたしがずっとそばにいてあげます」と宣言する。こうして、ニノンがゆいじと365日をともにする日々が始まるのだった。
メディアミックス
劇場版
2017年2月25日から川村奏祐監督による実写映画が公開された。脚本は中川千英子、音楽は富貴晴美が担当している。主なキャストは岡村ニノン役を飯豊まりえ、吉良ゆいじ役を中川大志、矢部和弘役を葉山奨之がそれぞれ演じている。
登場人物・キャラクター
岡村 ニノン (おかむら にのん)
いつも教室の隅っこで過ごしているいわゆる「陰キャラ」の女子高校生。親友と呼べるクラスメイトもいなく、常に肩にオカメインコの先生を肩に乗せている。そのため一部のクラスメイトからは「鳥女」と呼ばれ軽蔑されている。吉良ゆいじには「ニノ」と呼ばれており、彼と関わっていく内に内向的な性格が徐々に改善され、心を許せるクラスメイトも増えていく。 小学生の時にいじめられている男子を助けたことで自分が標的となってしまったことがあり、顔にはその時に受けた傷が残っている。趣味はラジオを聴くこととリリアン編み。ラジオ経由で情報を多く仕入れているので、芸能人やトレンドに詳しい。
吉良 ゆいじ (きら ゆいじ)
岡村ニノンのクラスメイトの男子高校生。イケメンで友達も多く人当たりがいい、非常に目立つクラスの中心的存在。幼い頃から病気を患っており、余命は1年とされているが、そのことは誰にも言えずにいる。そのため、ずっと孤独感に苛まれながらも誰にも悟られないように笑顔で振る舞っていた。ニノンに自分の病気のことを知られた後は、ニノンとともに過ごすことで幸福感を感じるようになる。 一見した印象は少々危険な香りが漂うプレイボーイだが、実際はやきもち妬きで泣き虫。趣味は写真を撮ること。
先生 (せんせい)
岡村ニノンが飼っているオスのオカメインコ。人の言葉を理解し、意思疎通がはかれる他、学校にいる時は剥製のフリをし続けるなど非常に頭がいい。また、人の気持ちに対しても敏感に反応し、ニノンが気が付かないような吉良ゆいじの心情を察する場面もある。関西弁でしゃべる。
矢部 和弘 (やべ かずひろ)
岡村ニノンのクラスメイトの男子高校生。吉良ゆいじの友達だが仲間内では「吉良のフン」と呼ばれていた。もともとは教室の隅っこで絵を描いて過ごすような暗い人間だったが、ゆいじとつるむようになってから上下関係に異常にこだわるようになってしまった。ニノンとゆいじが仲良くなった際には、ゆいじを取られたくないばかりにニノンを脅すこともあったが、2人への理解を深めてからはニノンのことも認めるようになる。 姉の矢部雪からはこき使われているが、なんだかんだで言うことを聞いており姉のことを慕っている。姉にヘアアレンジをさせられており、髪の毛のカットやセットなどが得意。
生駒 (いこま)
岡村ニノンのクラスメイトの女子高校生。ボブヘアーで、百田と仲が良く頻繁に行動をともにしている。学園祭では吉良ゆいじがクラスの出し物を提案した際、学祭委員のニノン以外でゆいじの意見に賛同し、手伝った数少ない人物の1人。家ではトイプードルを飼っている。ちなみに彼氏がいる。
百田 (ももた)
岡村ニノンのクラスメイトの女子高校生。ロングヘアーで、低い位置で2つに束ねている。生駒と仲が良く頻繁に行動をともにしている。学園祭では吉良ゆいじがクラスの出し物を提案した際、学祭委員のニノン以外でゆいじの意見に賛同し、手伝った数少ない人物の1人。彼氏持ちで、彼氏にときめくと衝動的に相手をかじりたくなる癖がある。
小林 (こばやし)
岡村ニノンのクラスメイト。もともとは吉良ゆいじのグループに所属しており、それなりに親密だったが、ゆいじが岡村ニノンと交流を持ち始めてからは仲違いし、疎遠になっている。
矢作 澪 (やはぎ れい)
岡村ニノンと同じ高校に通う女子で、理数科に在籍している。過去に病気を患っていたが現在は完治している。吉良ゆいじとは中学生の時に同じ病棟になったことで交流があり、その時はゆいじと仲良くしていたが、実はドSな性格で人にいじわるするのが大好き。そのため、友達がなかなかできずにいる。大食漢で、常に何かを食べている。 趣味は人間観察で、特技は歌とゲーム。
岡村ニノンの父 (おかむらにのんのちち)
岡村ニノンの父親で年齢は40歳。癖の強い岡村ニノンの母と比べると一見地味だが、メガネを外すと見た者をすべて虜にしてしまうほどの超美形。自分でもそれを自覚しているため、常にメガネをかけている。しかし、年に一度だけメガネを外す日があり、吉良ゆいじはその素顔を見てコップを取り落とすほどに驚かされていた。
岡村ニノンの母 (おかむらにのんのはは)
岡村ニノンの母親で年齢は35歳。日本人と外国人のハーフでコスプレと日本文化を愛する感情豊かな女性。日本のモンスターだと勘違いしたナマハゲから家族を守るために剣道を学ぶなど、思い込みが激しく猪突猛進タイプ。吉良ゆいじの親とも仲が良く、ゆいじがあと1年で死んでしまうということを耳にし、そのことをニノンに伝えた。
吉良ゆいじの父 (きらゆいじのちち)
吉良ゆいじの父親。「ティアラ」と名乗り、自身の源氏名の付いたクラブ「ティアラ」で店長を務めている。女装をすれば見た目は完全に女性で、酔っ払いのサラリーマンからもキャバ嬢と間違われて誘われてしまうほど。しかし、これはあくまで仕事のためにしていることであり、女装癖などはない。ゆいじのことを非常に大切に想っており、「宝物」と語っている。
矢部 雪 (やべ ゆき)
矢部和弘の姉で、雑誌の編集者を務めている。弟の和弘に対してはかなりのワガママな暴君で、カバン持ちからパシリのようなことまで幅広くコキを使っては「下僕」と呼んで服従させている。猫が飼いたいと和弘にもらしたことが、嵐を引き取るきっかけとなった。
矢部和弘の母 (やべかずひろのはは)
矢部和弘と矢部雪の母親。和弘のことは「カズ君」と呼んでいる。和弘にゲイ疑惑を抱いており、彼が女性に興味を持っているのか心配していた。和弘との仲は良く「童貞」とイジることもあるなど、友達のような関係を築いている。
山口 (やまぐち)
岡村ニノンのクラスの担任を務める男性教師。いささかゆるすぎる雰囲気の自分のクラスに辟易しているが、クラスのことにはあまり口を出さず、生徒たちに「ぐっさん」呼ばわりされても怒らない心の広い人物。実は密かに設楽美桜に恋をしている。
設楽 美桜 (したら みお)
岡村ニノンが通う高校の養護教諭を務める女性。見た目は綺麗だがキツイ性格で学校内では有名な人物。吉良ゆいじから好意を持たれていることを知っていて、実際保健室で幾度となく密会している。ただし、設楽美桜自身は病気で未来がないゆいじに対して本気ではなく、彼の想いに対しては「一緒にいられない」と一蹴している。
トラウマの張本人 (とらうまのちょうほんにん)
岡村ニノンの小学生時代のクラスメイトの男子。弱い者いじめをしていたところをニノンに咎められ、逆恨みしてプラスチックバットで脅し、結果的にニノンの顔に傷を残すこととなった。ニノンが引っ込み思案になってしまったトラウマを与えた人物。
むっちゃん
岡村ニノンと吉良ゆいじが出会った迷子の男児。ニノンとゆいじに一時保護され、母親が見つかるまで一緒にお菓子を食べたりして過ごしていた。ニノンとゆいじのことを見てお似合いだと思い「いいふーふになれるよ」という言葉とともに感謝を述べ、母親のもとへと去って行った。
停学男 (ていがくおとこ)
停学が決まってムシャクシャし、猫をいじめようとしていた男子高校生。岡村ニノンとは別の高校に通っているが、ニノンにいじめようとしていた猫を逃がされ、激昂して襲いかかった。しかし、すんでのところで矢部和弘に間に割って入られ追い払われた。
吉良ゆいじに告白した女子 (きらゆいじにこくはくしたじょし)
吉良ゆいじに好意を持ち、告白した女子。一緒にやって来た友達いわく「かわいいし性格もいい」とのこと。しかし、ゆいじはその告白を断り、「オレの時間全部ニノのものだから」と振ってしまう。
チャラいナンパ野郎 (ちゃらいなんぱやろう)
1人でいた岡村ニノンに、「めったにいない変わったオーラの持ち主」と声をかけて来た男性。実際は「一緒にツボを売らないか」とニノンを誘って騙そうとしていた悪徳業者。その現場にたまたま居合わせた矢部和弘によって撃退された。
嵐 (あらし)
岡村ニノンと吉良ゆいじが捨てられているところを保護したメスの猫。保護した後はしばらくニノンの家で飼われていたが、ニノンとゆいじが飼い主となってくれる人物を探し、最終的に矢部和弘のもとへ引き取られることとなった。命名者はアイドル好きの矢部雪。
集団・組織
学祭委員 (がくさいいいん)
クラス代表として、学園祭の出し物の考案や、クラスメイトの意見のとりまとめその他の業務を行う生徒。各クラスから2人選出されることになっている。岡村ニノンのクラスではニノンと吉良ゆいじの2人が務めており、ゆいじが主にクラス全体のまとめ役を担っている。
場所
音羽動物園 (おとわどうぶつえん)
岡村ニノンと吉良ゆいじが初めてのデートで訪れた動物園。さまざまな動物がおり、ヤギなどに実際にエサをあげることができ、触れ合いも楽しめる場所となっている。お土産コーナーでは頭に付ける動物の耳のカチューシャが売られており、ニノンとゆいじは2人ともそれを買っていた。
ティアラ(店)
吉良ゆいじの父が店長を務めるクラブ。キャバクラの入っているビルの上階にあるため、岡村ニノンは初めて吉良ゆいじの父親を見た時に彼が女装していたこともあり、キャバ嬢と勘違いしていた。
イベント・出来事
学園祭 (がくえんさい)
岡村ニノンの高校で開催される催し。学園祭が開催されるにあたっては、クラスから2名の学祭委員が選出され、その2人を中心に出し物を決定するという流れが定められている。しかし、クラスの参加は任意であり、中には出し物をしないクラスも存在する。また、出し物をするクラスは事前に申請が必要となる。
その他キーワード
自棄ボンボン (やけぼんぼん)
吉良ゆいじがむしゃくしゃした時に行う、ウイスキーボンボンのやけ食い。本来は酒の方がいいがゆいじは酒に滅法弱く、飲むと身体的にも支障をきたすためウイスキーボンボンで我慢している。しかし、それでもかなり酔っぱらうことができる。
うさぎの気持ち (うさぎのきもち)
岡村ニノンが吉良ゆいじの誕生日に贈った手作りの絵本。内容はいじめられていたうさぎが孤独に苦しむ1人の男の子と出会うことで生きることに感動を覚え、心に光が灯って人間の女の子になるというもの。最後のページにはニノンからゆいじへのメッセージがつづられている。
T-UPAKI (つぱき)
吉良ゆいじが使っているシャンプーで、コンビニで購入している。岡村ニノンがゆいじの髪の毛を触った際、その触り心地と匂いを大いに気に入った。ゆいじにどこのシャンプーを使っているか聞いたことがきっかけで、ゆいじからニノンへこのシャンプーがプレゼントされた。
カーテンの刑 (かーてんのけい)
岡村ニノンと矢部和弘が一緒に猫のエサを買い込んでいるところを目撃した吉良ゆいじが、やきもちを妬いてニノンに処した刑。その名の通りカーテンでグルグル巻きにしてニノンを閉じ込めるというもので、その後ゆいじがニノンに頭突きを見舞うことでフィニッシュとなる。
アイスの棒 (あいすのぼう)
岡村ニノンが吉良ゆいじの病気の回復を祈り、ゲン担ぎのために封筒に入れて贈ったもので、文字通り当たり付きアイスの当たりの棒。ニノンはこの贈り物をするために前日に30本ものアイスを食べてお腹を壊してしまい、保健室のお世話になっていた。
キスの刑 (きすのけい)
岡村ニノンが吉良ゆいじと矢作澪が付き合っていると誤解し、少々ゆいじとの仲がギクシャクしたため、ゆいじがニノンにその罰として処した刑。内容としてはゆいじがニノンに対してキスをするというもので、執行日は12月8日で場所はニノンの好きな海。
やりたいことリスト
吉良ゆいじが死ぬ前に叶えたいことやしてみたいことなどを書きとめているリスト。最初はなにも思いつかなかったが「岡村ニノンと友達になりたい」ということが始まりとなり、随時更新されるようになった。中には「宇宙人に会いたい」などの叶えることが難しい非現実的なものも含まれている。
進撃の矢部 (しんげきのやべ)
吉良ゆいじの手術代を稼ぐため、天才オカメインコの先生を売り出そうと、矢部和弘が撮った宣伝のネタ動画。先生が主人公で巨大な和弘を駆逐するという内容のものだが、タイトルを含め和明の方が目立っているため、先生からはクレームがつけられた。
オレの好きなニノ (おれのすきなにの)
吉良ゆいじが海外へ手術を受けに行った際、岡村ニノンに宛てて送ったラブレター。ゆいじが今まで撮り溜めてきたお気に入りのニノンの写真が貼り付けてあり、最後は不安に思っているであろうニノンへのエールを贈って締めている。
書誌情報
きょうのキラ君 9巻 講談社〈講談社コミックス別冊フレンド〉
第1巻
(2012-01-13発行、 978-4063417807)
第2巻
(2012-04-13発行、 978-4063417944)
第3巻
(2012-09-13発行、 978-4063418187)
第4巻
(2013-01-11発行、 978-4063418385)
第5巻
(2013-04-12発行、 978-4063418521)
第6巻
(2013-09-13発行、 978-4063418774)
第7巻
(2014-01-10発行、 978-4063418941)
第8巻
(2014-05-13発行、 978-4063419177)
第9巻
(2014-10-10発行、 978-4063419443)