概要・あらすじ
16歳の高校生・星野英太は、姉に女装させられホステス「エイラ」としてスナックで働かされていた。そんな彼が思いを寄せているのは、クラスメイトの山本都姫。しかし、彼女の兄はかなりのシスコンのうえ、凶悪な暴走族「罵多悪怒愚(バタードッグ)」の頭・山本信愛。さらに、都姫は伝説の暴走族「OZ」のOB・相沢直樹に二代目と認められた、地元のヤンキーたちの「お姫様」なのであった。 ある日、夜の仕事に耐えかねて逃げ出した英太は女装姿のまま都姫に遭遇。持ち前のテクニックで彼女を警察から助けた英太は、都姫から「お姉さま」と慕われることになる。憧れの都姫に近づけて喜ぶ英太だが、彼女が憧れるのはあくまでレイラで、英太本人は完全に変態扱い。さらに、街のヤンキーたちを虜にするエイラの姿は、都市伝説となったレディース「黒揚羽」と重ねあわされ、次々と騒動に巻き込まれていく。
登場人物・キャラクター
星野 英太 (ほしの えーた)
私立成田南高等学校一年生。16歳童貞。夜は姉の命令で母が遺したスナック「コスモス」で、ホステス「エイラ」として働かされている。同級生の山本都姫に片思い中だが、女性用の下着を身につけているところを見られてしまい、完全に変態扱いされている。その後、エイラとして都姫に出会い、正体が英太であると気付かれないまま彼女に慕われるようになる。 特に目立ったところのない平凡な少年だが、バイクの運転に秀で、数々のピンチを切り抜けている。はじめは姉から譲り受けたゼファーを愛車としていたが、山本信愛に破壊され、暴走族「松戸苦愛(マッドクラブ)」の初代・松岡英治のZ1000R(ローソンレプリカ)を受け継ぐことになる。
エイラ
星野英太が女装した姿。この姿になると平凡な少年から一変し、誰もが振り向く美貌とカリスマ性を持つ絶世の美女となる。さまざまなコスプレをすることが多く、その衣装に応じた性格になりきることができる。初代OZの旗を奪い返すため、「罵多悪怒愚(バタードッグ)」の集会に乗り込んだ際、伝説のレディース「黒揚羽」に扮し活躍を見せたことで、以降名実ともに「黒揚羽」その人として知れ渡るようになった。 山本都姫からは「お姉さま」と慕われており、彼女が二代目「OZ」の頭になってからは、守護天使として彼女を守るようになる。
山本 都姫 (やまもと みやび)
私立成田南高等学校一年生。星野英太の同級生で、彼の片思い相手。制服は古風なロングスカートを着用している。生真面目な性格で、恋愛沙汰に関してはいたって純情。兄・山本信愛と相沢直樹の喧嘩を止めたことで相沢に気に入られ、初代OZの旗を託された。二代目「OZ」の看板の重圧に苦しんでいたが、周囲から「頼れる人」というイメージを抱かれているため、誰にも悩みを打ち明けることができず苦しんでいた。 そのころ偶然エイラと出会い、彼女を「お姉さま」と呼んで慕うようになる。エイラの正体には気付いておらず、英太のことは変態扱いしている。中学時代、信愛に無理やりバイクの後ろに乗せられ、コケて失神して以来、バイクと兄のことが嫌いになっている。 そのトラウマから、バイクを運転することができなくなっている。
山本 信愛
暴走族「罵多悪怒愚(バタードッグ)」の頭で、山本都姫の兄。18歳。素手で車をひっくり返すほどの怪力を誇る。都姫を溺愛し束縛しており、彼女が暴走族を始めることにも反対していた。初代OZの旗を巡ってエイラと勝負した際彼女に惚れたが、正体が星野英太と知ってしまう。それでもなおエイラの魅力には抗うことができず、何かと力を貸すようになる。 愛車はファイヤーパターンの入ったフェアレディZ・S30Z。
北川 ヒロキ (きたがわ ひろき)
暴走族「罵多悪怒愚」のナンバー2で、ケンカの強さとモテっぷりは成田市内でよく知られている。本人も非常に女好きで、美女を見つけたら口説かずにはいられない性格。過保護な山本信愛からも、山本都姫と付き合うことを公認されている稀有な存在である。初対面のエイラを口説き、唇まで奪うがまったく相手にされず、逆にその正体に興味がわき心惹かれていくようになる。 以後は、エイラを「姫」と呼び騎士として行動することを決意する。
木下 千草 (きのした ちぐさ)
二代目OZのメンバー。山本都姫の中学時代からの友人。髪型はオールバックのポニーテール。明るい性格のムードメーカー。愛車は兄のGS400。
倉敷 まどか (くらしき まどか)
二代目OZのメンバー。山本都姫の中学時代からの友人。髪型はツインテール。常に無表情で、相手が誰であろうと臆せずに接する大胆な性格。エイラの正体に気がついている素振りを見せている。
狭山 小春 (さやま こはる)
二代目OZの5番目のメンバー。過去に居場所がなく万引きばかり繰り返していたところを山本都姫に拾われて以来、彼女に心酔している。そのため中学生で無免許ながら、二代目「OZ」に参加することを切望していた。都姫が狭山小春のバイクを引きずっているところをエイラが救ったことで、運命的な出会いのきっかけになった人物でもある。
辻 音遥 (つじ おとはる)
松戸で活動するヤンキーグループ「zodiac」のリーダー。松戸における伝説のバイクZ1000Rを由来カオルのガレージから強奪し、暴走族「松戸苦愛」の五代目にエントリーすることを宣言した。敵対する相手を追い詰めるためならどんな凶器も使う危険な性格だが、2年前に起きた事件の悪夢にうなされるという精神面の弱さがある。 生島巽とは一緒にアメ車ブローカー「MAD SPEED」で働き、共に朝倉麻美を慕う悪友だった。
生島 巽 (いくしま たつみ)
「zodiac」と現在の松戸を二分するグループ「悪斗无」のリーダー。「zodiac」との抗争時に、介入した警察を相手に大乱闘を繰り広げたことで、半年間少年刑務所に入っていた。朝倉麻美を巡る過去の因縁から辻音遥と対立するが、非情に徹しきれない面も見せる。ケンカ屋としては山本信愛と同等以上の実力者で、北川ヒロキをタイマンで一蹴した。 愛車はV-MAX。
朝倉 麻美 (あさくら まみ)
松岡英治が経営するアメ車ブローカー「MAD SPEED」の元従業員で、辻音遥と生島巽にとって憧れの存在だった。2年前に2人のケンカを止めるためにバイクで急行していた際、事故を起こして半身不随になってしまった。以後は彼らの前から姿を消していたが、実は松岡の協力でリハビリに励んでおり、日本に帰ってくることになる。
星野 月姫 (ほしの つきひ)
星野英太の姉で、スナック「コスモス」の店長。1年前に亡くなった母の遺した店を守るために奮闘している。元レディースだったため英太より腕っぷしが強く、傍若無人な性格で彼を無理矢理エイラとして働かせている。英太が乗っていたゼファーは、スナックで働かせるために星野月姫が餌として譲ったもの。かつてはアイドルになるという夢を抱いていたらしい。
クマ
星野英太の同級生。当初から英太がエイラに扮していることを知っている、数少ない男性。英太の実家が抱える事情にも詳しく、彼にとっては愚痴をこぼしたり本音で相談ができる貴重な存在となっている。
吉本 (よしもと)
スナック「コスモス」の常連客で、エイラにご執心なハゲ頭のオッサン。エイラにあの手この手でセクハラをする困った男性だが、お店にとっては重要な収入源。また、黒いアゲハのタトゥーシールを貼ったのは、吉本が太ももに残したキスマークを隠すためだったこともあり、エイラの伝説が生まれた原点ともいえる。なお、星野英太にとってはファーストキスの相手でもある。
リカ
辻音遥の元彼女で、彼が過去のトラウマを抱えていると知りながらも付き合っていた。しかし音遥から一方的に捨てられたことで、常軌を逸した行動を繰り返すようになる。音遥とエイラの仲を裂くために警察に通報したり、音遥とのタイマンを控える生島巽の腹を刺してしまう。
相沢 直樹 (あいざわ なおき)
暴走族OZの初代メンバーで、現在は交通機動隊の警察官を務める。階級は巡査。「OZ」の旗を回収する際に山本信愛と本気のケンカをしそうになったが、山本都姫に止められる。この出来事で都姫に妹である相沢純菜の姿を重ね、「OZ」の旗を託すことを決意する。またエイラの正体が星野英太であることを偶然知り、彼のハッタリと土壇場の度胸の良さが矢沢栄作に通ずることを感じ、都姫のサポートを任せようと画策する。 素行不良が目立つが警察官としての腕前は確かで、先輩がまったく気づかなかったひったくり犯を瞬時に確保した。
相沢 純菜 (あいざわ じゅんな)
相沢直樹の妹。17歳の時に松岡英治と結婚して、現在はアメリカに住んでいる。凛とした強さと他者を惹きつける魅力を持ち合わせており、相沢はケンカの仲裁に入った山本都姫の姿と相沢純菜を重ねている。
椎名 雄二 (しいな ゆうじ)
初代OZメンバー。25歳。相沢直樹とは中学時代からコンビとして知られていた。高校卒業後は消防士になったが、現在はチカと結婚し「居酒屋オズ」の店長となっている。山本都姫の二代目「OZ」を、相沢直樹や初代OBたちと手助けしている。
椎名 千香 (しいな ちか)
椎名雄二の妻で、相沢純菜の親友。現在は椎名と共に店を切り盛りしている、「居酒屋オズ」の女将。下ネタに寛容で、倦怠期に陥った時のために性的なコスプレを多数ストックしている。
蜂屋 未来 (はちや みき)
暴走族OZの初代メンバーで、相沢直樹たちよりも学年が一つ下。松岡英治とは異母兄弟で、彼の妻である相沢純菜に想いを寄せていた。現在は美容師アシスタントをしており、少年刑務所内で生島巽の散髪を担当している。
中鉢 竜一 (なかばち りゅういち)
蜂屋未来とは中学時代からの親友で、共に暴走族OZの初代メンバーだった。現在はバーテンダーとして働いている。彼の店には成田空港の国際線クルーがよく来るが、CAではなくゴツい外国人が多くケンカに巻き込まれてケガをしてしまう。
久古 明夫 (きゅうこ あきお)
高校時代は「殺人マシーン」という異名で呼ばれていたヤンキーで、矢沢栄作や暴走族OZの初代メンバーにとってはピンチを救ってくれる頼れる仲間だった。現在はサービスステーションの店長として働いている。
松岡 英治 (まつおか えいじ)
暴走族「松戸苦愛」の三代目リーダーで、現在はアメ車ブローカー「MAD SPEED」の社長。相沢純菜と結婚してからは、仲間や家族と共にアメリカで暮らしている。純菜との間に、英という子供がいる。辻音遥と生島巽の対決の夜に日本へ帰ってきた。
由来 カオル (ゆら かおる)
松岡英治から愛車を受け継いだ暴走族「松戸苦愛」の四代目リーダー。現在は、ビンテージショップ「Acid Panda」で働いている。IQ200を誇るクールな男前で、エイラの魅力に一切動じない珍しい男性。
日向 満三郎 (ひゅうが まんざぶろう)
暴走族「爆妖鬼」特攻隊の元隊長で、現在は鳶職に就いている。無表情でめったに口を開かないが、仲間の無茶な行動に付き合ったり、ユーモアな発言も時折見せる。色黒で眉毛がなく、まるで外国人のような風貌が特徴。
久米 治親 (くめ はるちか)
茨城県龍ヶ崎市の暴走族「乱鬼龍」の元総長。現在は板金屋「久米板金」の社長を務めている。初代OZメンバーとは高校時代から交流があり、彼らがピンチの時に駆けつけたこともある。
源田 実 (げんだ みのる)
茨城県龍ヶ崎市の暴走族「乱鬼龍」の元特攻隊長で、シンナー中毒から救ってくれた久米治親を狂信的に崇拝している。現在は久米治親のもとで板金見習いをしている。徹底した女性嫌いで、久米に近づく女性には全力で威嚇する。
安部 照巳 (あべ てるみ)
茨城県龍ヶ崎市の暴走族「乱鬼龍」の元親衛隊長。久米治親にとっては旧友で、良き理解者でもある。スカジャンを着用しロングヘアーのオールバックというヤンキー然とした風貌だが、保父を立派に務めている。
坂本 昌明 (さかもと まさあき)
矢沢栄作(ヤザワ)がヤンキーデビューした当初から、彼に従っていた元舎弟。背格好がヤザワに似ていることから、たびたび彼になりすましてトラブルを起こしていた。行方不明中のヤザワに変装して仲間たちの前に現れ、皆を驚かせたが、相沢直樹にはすぐ見ぬかれてしまう。現在はアダルトゲームのシナリオライターをしている。
矢沢 栄作 (やざわ えいさく)
前作『カメレオン』の主人公で、暴走族OZの初代総長。椎名雄二の結婚式を見届けた後、金を掘りに行くためアマゾンへと旅立つが、3年近く行方不明になっていた。南米で資金が尽きた際に、「OZ」の旗をネットオークションで、勝手に売却してしまった。
集団・組織
OZ (おず)
千葉だけでなく周辺の県にまで名を轟かせた伝説の暴走族。矢沢栄作を総長として旗揚げされた。山本都姫が二代目総長として相沢直樹から任命され、現在は彼女とエイラを中心に5人のメンバーで活動中。
罵多悪怒愚 (ばたーどっぐ)
山本信愛が率いる武闘派の暴走族。パトカー3台を炎上させる乱闘事件で一躍有名になった。「国道51号の吸血部隊」という異名で恐れられており、千葉だけでなく茨城にまで勢力を広げている。
松戸苦愛 (まつどくらぶ)
茨城を中心に、新京成沿線で活動していた暴走族。その結成は暴走族OZよりも早かったが、四代目の由来カオルの代で解散した。辻音遥が五代目エントリー宣言をしたことで、後継者争いが勃発することとなる。
場所
居酒屋オズ (いざかやおず)
椎名雄二が店主を務める居酒屋で、矢沢栄作が帰ってきた時の居場所となるように開店させた。相沢直樹をはじめとする暴走族OZ初代メンバーや、その仲間たちが毎週のように集まりバカ騒ぎをしている。
その他キーワード
黒揚羽 (くろあげは)
ヤンキーたちの間に広まっている都市伝説。警察に追われている暴走族のピンチに、どこからともなく太ももにアゲハのタトゥーを入れたレディースが現れ、卓越したバイクのテクニックで助けていくといわれている。また、彼女を抱くことができた男は、驚異的な強運を手に入れることができると噂されている。「罵多悪怒愚(バタードッグ)」の集会で、エイラが「黒揚羽」に扮し、以降彼女が本物だと広まるようになる。
書誌情報
くろアゲハ 20巻 講談社〈講談社コミックス月刊マガジン〉
第1巻
(2014-05-16発行、 978-4063714203)
第2巻
(2014-07-17発行、 978-4063714340)
第3巻
(2014-12-17発行、 978-4063714517)
第4巻
(2015-04-17発行、 978-4063714630)
第5巻
(2015-08-17発行、 978-4063714784)
第6巻
(2016-03-17発行、 978-4063925173)
第7巻
(2016-07-15発行、 978-4063925326)
第8巻
(2016-12-16発行、 978-4063925548)
第9巻
(2017-05-17発行、 978-4063925784)
第10巻
(2017-11-17発行、 978-4065104330)
第11巻
(2018-06-15発行、 978-4065117064)
第12巻
(2018-10-17発行、 978-4065137604)
第13巻
(2019-04-17発行、 978-4065154274)
第14巻
(2019-09-17発行、 978-4065171899)
第15巻
(2020-03-17発行、 978-4065186121)
第16巻
(2020-11-17発行、 978-4065212363)
第17巻
(2021-05-17発行、 978-4065234884)
第18巻
(2021-12-16発行、 978-4065264430)
第19巻
(2022-06-16発行、 978-4065281253)
第20巻
(2023-02-16発行、 978-4065307687)