あらすじ
第1巻
新米教師の山口久美子は、4月からK市にある私立白金学院高等学校に採用された。私立白金学院高等学校は札付きのワルが集まる事で有名な男子校で、久美子は担任する事となった2年4組の生徒達から、鈍い教師だと侮られていた。しかし、実は久美子は仁侠集団、黒田一家の3代目組長の黒田龍一郎の孫娘であり、極道の世界で育って来た久美子にとっては、不良高校生など臆するに値しない存在だった。クラスのリーダー格である沢田慎だけは、久美子がただ者ではない事に気がついていた。そんなある日、龍一郎が倒れ、久美子は黒田組組長代理として天海組、狸腹会、馬の尾組との会合に参加する事になった。会合では天海組と揉めていた猫股組との手打ちを伝えられたが、久美子はその裁定を不服に思った猫股組の下っ端に襲われてしまう。そして、篠原智也が久美子をかばい、凶弾に倒れてしまう。
第2巻
私立白金学院高等学校で文化祭が行われる中、2年4組の生徒が不良高校生の集団に連れ去られたと聞き、担任教師である山口久美子は沢田慎と共に生徒の救出に向かった。久美子は圧倒的な力の差を見せつけて不良高校生を撃退する。慎はそんな久美子の実力を目の当たりにしたが、秘密にしたいなら誰にも言わない事を約束した。一方、熊井輝夫は久美子の正体には気がついていないが、母親の命の恩人だと聞き、久美子に義理を立てる事に決めた。クラスのほかの生徒達も久美子が身体を張って生徒を守る姿を見て、少しずつ彼女に心を開き始める。
第3巻
沢田慎と熊井輝夫は、山口久美子が黒田一家の若頭、大島京太郎の出所を出迎え、彼に「お嬢」と呼ばれているのを目撃する。大島達の芝居により、熊井は久美子が黒田一家に借金をしていると信じ込むが、慎は久美子の実家が黒田一家である事に気がつく。慎は、久美子がクビになったら学校がつまらなくなるからと、久美子の正体を話さない事を約束するが、一方の久美子はこのまま隠しているわけにはいかないと、実家の事を学校に打ち明ける事を決意する。クビになったらその時はその時だと、腹をくくっていた久美子だったが、そんな彼女の思いとは裏腹に、校長である白川権三は久美子の出生の秘密を知ったうえで採用した事を明かす。
第4巻
山口久美子に馬の尾組二代目組長との縁談が持ち上がったが、篠原智也に5年間思いを寄せる久美子はその話を断ろうと考えていた。しかし篠原は、黒田一家の跡目を考えたら悪くない話だと、久美子の恋心に気がついていながらも彼女の縁談を後押しし、やけになった久美子は、馬の尾組組長との見合いにのぞむ事を決める。一方、自分のせいで久美子にケガさせた事を情けなく思う沢田慎は、学校をサボりがちになっていた。そんな中、慎は街中で黒田一家の若頭、大島京太郎に会い、彼に気に入られる。慎は大島に「赤獅子の若大将」と通り名を付けられ、夜の繁華街を連れ回される事になる。
第5巻
不良学生が集まるだけでなく、赤字も抱えている私立白金学院高等学校を廃校しようと、白川権三の兄である理事長が動き始めた。山口久美子は生徒達が何かしらで日本一になれば廃校を取りやめる事を、証文として理事長に書かせ、ボクシングで日本一を獲得し矢吹高校との試合を取り付ける。私立白金学院高等学校の生徒は、反則技を使いながらもなんとか矢吹高校に勝利。その後、久美子は「日本一に勝てば日本一」というへりくつを通し、廃校の取りやめに成功するのだった。だが、今度は朝倉てつが警察に連行されるという問題が発生してしまう。篠原智也の力添えもあり、実際はえん罪だったてつは釈放される事となったが、その際、久美子は篠原が弁護士になった理由を知り、彼をこのまま黒田一家にいるべき男ではないと思うようになる。
第6巻
父親に退学届を出され、実家に軟禁されていた沢田慎は、山口久美子に学校をやめたくない思いをぶつけて助けを求める。警視庁の刑事局長である慎の父親には逆らえないと悩んでいた久美子だったが、ここで慎の助けを無視したら一生後悔すると思い、慎を実家から連れ出し、かくまう事を決意した。慎を連れ戻したい父親は、自身の権力を使って黒田一家を脅しにかかったが、昔は父親に気に入られようとがんばってきたが、今は自分の事は自分で決めたいと本音を明かす慎に触れ、何も言わずに慎の退学と黒田一家の手入れを取りやめた。
第7巻
狸腹会会長が亡くなったあとの跡目騒動に巻き込まれ、山口久美子は工藤広樹をはじめとする猫股組の下っ端にさらわれてしまう。黒田一家に応援を頼み、久美子の救出に成功した沢田慎だったが、寝ぼけた久美子は慎を篠原智也と勘違いする。それに腹を立てた慎は、自分が久美子に惚れている事を自覚する。季節は巡り、慎達はクラス替えを行う事なく3年に進級し、久美子も引き続き慎達の担任を受け持つ事となった。代わり映えのない新学期が始まると思っていたが、理事長が推薦する男性教師が新しく赴任して来る、と教師のあいだで噂になり、久美子は廃校騒動を危惧する。
第8巻
新しく赴任して来た男性教師の三浦は、山口久美子を陥れるために理事長が送り込んだスパイだった。資料室に沢田慎と二人で閉じ込められたところを写真に撮られ、理事会に報告されそうになった久美子だったが、校長の白川権三のおかげでどうにか事なきを得た。しかし三浦はあきらめず、慎に近づき、彼から久美子の弱みを摑もうと画策する。そして慎が黒田一家と共に祭りに参加しているのを見つけた三浦は、そこで久美子が入墨を入れた男から「お嬢」と呼ばれているのを目撃する。
第9巻
山口久美子は、三浦を通じて理事長に実家の家業を知られたと悟り、生徒達に自身の身元を明かす決意を固め始める。そんな折、愚連隊の黒十字のメンバー二人が学校に乗り込んで来て3年4組の生徒に暴行を働いた。久美子は二人を倒し、撃退するが、逆上した黒十字に狙われてしまう。黒十字は久美子を拉致し、復讐しようと企むが、彼らが拉致したのは久美子の同僚の藤山静香だった。自分と間違えて藤山がさらわれたと知った久美子は、一人黒十字に乗り込む事を決意する。
第10巻
藤山静香の救出に成功した山口久美子だったが、理事長と三浦の策略で藤山に実家の事がバレてしまう。だが藤山は、久美子の実家が黒田一家だと知っても、前と変わらず接してくれたのだった。そんな時、エリート校である青玉高校の生徒に、私立白金学院高等学校の生徒が罪をなすりつけられる事件が勃発する。久美子は実態を探ろうと青玉高校に潜入し、そこで生徒会長の上杉と出会った。「害虫駆除」と称して社会の悪を不当に成敗していた上杉は久美子に興味を抱き、再び私立白金学院高等学校の生徒に罪をなすりつけて久美子の出方を窺う。
第11巻
山口久美子と上杉の因縁は、上杉と沢田慎との全国模試勝負で慎が勝利する事で決着した。一方、三浦が男色家だという噂が校内で広まり、体裁を気にした教頭は三浦に辞職するよう迫っていた。それを聞いた久美子は、人と違っているからと辞職に追い込むのは教師のやる事ではないと一喝し、三浦の辞職を取りやめさせる。久美子が生徒にとって必要な教師だと認めた三浦は、理事長のスパイをやめ、久美子の正体を黙っていようと決意するのだった。
第12巻
突然、黒田一家に篠原智也の幼なじみだという女性が現れ、篠原を返してくれと言い出した。黒田一家の顧問弁護士になった篠原は父親から勘当されていたが、その父親が倒れて入院したため、一日も早く仲直りさせたいのだと話す。話を聞いた黒田龍一郎は、篠原に極道と手を切るべき時期だと諭す。篠原は悩みながらも、今抱えている案件を片づけ、あとを頼める人が見つかったら親のもとに帰る事を決め、山口久美子に黒田一家と縁を切って新しい生活を送る事ができるかと尋ねる。
第13巻
私立白金学院高等学校の廃校に向けて本格的に動き出した理事長は、市議会議員で「暴力追放市民の会」のリーダーを務める生徒の母親に、山口久美子の実家について密告。母親から事実確認された教頭は久美子を解雇しようとするが、親に見捨てられた生徒と向き合い、生徒の命も心も体を張って守った久美子の姿を見て、彼女こそ私立白金学院高等学校に必要な存在であると認識を改めるのだった。そんな中、熊井輝夫の母親が倒れて入院する事となった。これに伴い、熊井は沢田慎に学校を退学するつもりでいる事を打ち明ける。
第14巻
熊井輝夫の退学騒動はクラス全員の働きによって解決に至ったが、今度は黒田龍一郎に恨みを抱く鯨組組長の陰謀により、篠原智也がさらわれるという事件が勃発。山口久美子と沢田慎は篠原を助け出すため、鯨組組長の家に忍び込むが、罠にかかり、慎と篠原は檻に閉じ込められてしまう。久美子の助けを待つあいだ、慎は篠原が黒田一家の弁護士を辞め、帰郷しようと考えている事を知る。その後、久美子の指揮による黒田一門総出の出撃で無事救出された慎は、自分がいなくなったあとの事を心配する篠原を見て、一つの決意を固めるのだった。
第15巻
実家が黒田一家である事を隠し続けていた山口久美子だったが、3年4組の生徒達にその秘密がバレてしまい、久美子は私立白金学院高等学校を退職した。そんな折、篠原智也からいっしょに帰郷してほしいと誘われる。篠原と共に暮らす未来を想像して喜びながらも、教師の道をあきらめきれず返事に悩む久美子だったが、そこに3年4組の生徒が連れ去られたとの連絡が入る。覚悟を決めた久美子は、先生として最後の仕事をするため、一人で天笑会のアジトに向かう。
メディアミックス
TVアニメ
2014年1月から2014年3月にかけて、日本テレビほかで本作『ごくせん』のTVアニメ版が放送された。監督は佐藤雄三、シリーズ構成は小林靖子、キャラクターデザイン・総作画監督は兼森義則が務め、アニメーション製作はマッドハウスが手掛けた。山口久美子役を早水リサ、沢田慎役を鈴村健一が、それぞれ演じた。
TVドラマ
2002年4月~7月、2005年1月~3月、2008年4月~6月の3シーズンにわたり、日本テレビ系列で本作『ごくせん』のTVドラマ版が放映された。ほかに、2003年と2005年には単発でドラマ化もされている。山口久美子役を仲間由紀恵が演じた。第1シーズンは原作漫画版と同様の設定となっているが、第2シーズン、及び第3シーズンは、久美子の受け持つクラスの生徒がTVドラマ版オリジナルのメンバーとなっている。
実写劇場版
2009年7月、本作『ごくせん』のTVドラマシリーズ完結編となる実写劇場版が『ごくせん THE MOVIE』のタイトルで公開された。キャストはTVドラマ版第3シリーズと同様で、山口久美子役を仲間由紀恵が演じた。
キャラクターブック
2005年6月にオフィシャル・ガイドブック『ごくせん番外地~熱血純情極道教師伝~』が発売された。本作『ごくせん』の物語の舞台となっているK市の地図や、登場人物の詳細データ、メインキャラが描かれているピンナップなどが収録されている。ほかに、18歳の山口久美子と11歳の沢田慎が出会ったら、というif設定の描き下ろし漫画も掲載されている。
登場人物・キャラクター
山口 久美子 (やまぐち くみこ)
任侠集団黒田一家3代目親分黒田龍一郎の孫娘にして新米の高校教師。ツッパリ少年の吹き溜まり私立白金学院高等学校2年4組の担任となり、常識外れの手腕で、やんちゃな生徒たちを率いる。幼い頃に両親を事故で失い、母方の実家である黒田一家に引き取られたため、義理人情に厚く、ケンカの腕前は超一流。 生徒たちからはヤンクミと呼ばれている。黒田一家の顧問弁護士である篠原智也に思いを寄せている。
沢田 慎 (さわだ しん)
私立白金学院高等学校2年4組のリーダー的存在。一見クールだが、実は仲間思いで正義感が強い。頭も良く久美子の正体を物語序盤から見抜いていた唯一の生徒。久美子と共にクラスや学校の問題に対峙していくうち、久美子に惹かれるようになる。黒田一家の若頭大島京太郎から一目置かれ、ついた通り名が赤獅子の若大将。 本人の知らない所で黒田一家の4代目と目されている。ただし父親は警視庁の刑事局長。
黒田 龍一郎 (くろだ りゅういちろう)
久美子の祖父で任侠集団黒田一家の3代目組長。極道の世界でも一目置かれる存在で、昇り竜の通称で語られることもある大親分。度胸の良さと優れた容姿で先代の娘に見初められ、婿入りして黒田の跡目を継いでいる。肝臓の持病で入院したこともあるが、70歳を超えてなお、若い娘を囲っているらしい。 久美子の最大の理解者。
大島 京太郎 (おおしま きょうたろう)
黒田一家の若頭。刑務所に服役中だったが、晴れて出所してくる。基本的に遊び人で、街では京さんと呼ばれ親しまれている。久美子のケンカの師匠で、育ての親的存在。当然ながら久美子のことを溺愛している。危機に陥ったところを沢田慎に助けられ、以来慎のことを「五分の兄弟」と周囲に紹介。 赤獅子の若大将の命名者でもある。
若松 弘三 (わかまつ こうぞう)
黒田一家の若頭補佐で、若頭の大島京太郎が刑務所でおつとめ中の間は若頭代理を務めていた。壊滅的な人相の悪さだが、黒田一家唯一の妻帯者にして、妻一筋の愛妻家。洞察力に長けており、一家の若手を取りまとめている。大島と共に極道界随一と称される腕っぷしの持ち主。
朝倉 てつ (あさくら てつ)
黒田一家の若い衆。中学時代、グレていたとき久美子に拾われ、以来、久美子の弟分として苦楽を共にする。血の気の多い武闘派だが、久美子に対しては絶対服従を崩さない。
達川 ミノル (たつかわ みのる)
黒田一家の若い衆。中学の先輩のてつと一緒にグレていたとき久美子に拾われて弟分となる。料理、洗濯、掃除が得意で、一家の主夫的存在。
篠原 智也 (しのはら ともや)
黒田一家の顧問弁護士。苦学生時代、バイト先でチンピラに絡まれていたところを黒田龍一郎に助けられ、お金まで用立ててもらった過去を持つ。その恩を返すため、龍一郎が逮捕された時に自ら弁護を申し出、以来、顧問弁護士として手腕を発揮する。久美子の憧れの男性。
藤山 静香 (ふじやま しずか)
久美子と一緒に私立白金学院高等学校に赴任してきた、Fカップバストのセクシーな女教師。久美子とは違った意味での強さを見せ、3年2組の担任を難なくこなす。音楽担当で、男声コーラス部を創設。好みである線の細い美少年を中心に勧誘を進める。以前赴任していた中学校で、生徒に自殺をされた過去を持つ。
白川 権三 (しらかわ ごんぞう)
私立白金学院高等学校の校長。久美子の実家が極道だと知った上で採用した人物。3人兄弟の末っ子で、長兄の雁一郎は白金学院の理事長にして白川グループの総帥。白金学院を廃校にしたいと考えている雁一郎に対抗し、学院存続に奔走している。
熊井 輝夫 (くまい てるお)
私立白金学院高等学校2年4組の生徒で、通称クマ。沢田慎とは小学生の頃からの友人で、慎の侠気や正義感に一目置いている。母親は、若松の妻がママを務めるクラブのホステス。
工藤 広樹 (くどう ひろき)
私立白金学院高等学校の元生徒。問題を起こして退学になった後も学校に出入りし3年を牛耳ろうとしていたため、久美子に成敗される。それを根に持ち、手を変え品を変え久美子にケンカを吹っかけてくるが、一度も勝ったことがない。挙げ句の果てには黒田一家の部屋住みとして暮らすことになる。
集団・組織
黒田一家 (くろだいっか)
『ごくせん』に登場する組織。伝説の大親分黒田龍一郎が3代目組長を務める任侠一家。龍一郎の孫で教職に就いている山口久美子の実家でもある。構成員たちは皆久美子をお嬢と呼んで大事にしている。
場所
私立白金学院高等学校 (しりつしろきんがくいんこうとうがっこう)
新米教師の山口久美子ことヤンクミが赴任した男子校。絶滅危惧種であるツッパリ少年たちが、いまだ幅をきかせている。「休み時間や放課後は、なるべく二人以上で行動する」「教室内の空気がヤバくなったら速やかに逃げる」など、教師たちのための不文律が存在する。
アニメ
書誌情報
ごくせん 11巻 集英社〈集英社文庫(コミック版)〉
第1巻
(2010-08-18発行、 978-4086191418)
第2巻
(2010-08-18発行、 978-4086191425)
第3巻
(2010-09-17発行、 978-4086191432)
第4巻
(2010-09-17発行、 978-4086191449)
第5巻
(2010-10-15発行、 978-4086191456)
第6巻
(2010-10-15発行、 978-4086191463)
第7巻
(2010-11-18発行、 978-4086191470)
第8巻
(2010-11-18発行、 978-4086191487)
第9巻
(2010-12-15発行、 978-4086191494)
第10巻
(2010-12-15発行、 978-4086191500)
第11巻
(2011-01-18発行、 978-4086191517)