さくらんぼねむり姫

さくらんぼねむり姫

「動物を人間にする薬」の効果で、ハムスターから少女になった七尾こゆりが、人間たちとかかわり合い、成長していく姿を描いたファンタジー。純粋なさゆりに心を動かされる周囲の人々の姿も同時に描かれる、ハートフルな物語。「なかよし」1994年5月号から1995年3月号にかけて連載された。

正式名称
さくらんぼねむり姫
ふりがな
さくらんぼねむりひめ
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

ハムスターの七尾こゆりは、七尾博士が開発した「動物を人間にする薬」の効果で人間の少女になった。だがある日、のんびりと人間の生活を楽しむこゆりの前に黒ずくめの男性が現われ、誘拐されそうになってしまう。そこに偶然居合わせた鹿島卓哉に助けられて、こゆりはどうにか難を逃れ、以後、二人は親交を深めていく。そんな中、卓哉の誘いを受けて海に行ったこゆりは、岩場の陰で再び黒ずくめの男性に誘拐されそうになる。実はこゆりを狙っているのは卓哉の父で、卓哉はこゆりを誘拐しやすい状況を作るために接近したのだった。(第1話~第5話)

卓哉や卓哉の父と和解したこゆりと七尾博士は、有希緒と共に入院中の鹿島由香の見舞いに行く事になった。その途中、こゆりは研究用ハムスターケージを持った女性とぶつかり、中に入っていた水のせいでハムスターになってしまう。そしてハムスターとなったこゆりを見つけた祐太は、その場からこゆりを強引に連れ去る。(第6話)

遠足で山に出かけたこゆりや卓哉、有希緒たちは、いっしょに弁当を食べたりと楽しく過ごしていた。だが、水たまりに触れた事で、こゆりはハムスターの姿になり、道にも迷ってしまう。そんな中、こゆりはうさぎのあすかに声をかけられ、この山がもうすぐ切り壊されてしまう事を知る。あすかをはじめとした山の動物たちを助けたいこゆりは、山を切り崩そうとしている作業員に直訴するが、聞き入れてもらえない。(第7話~第8話)

こゆりたちの通う小学校では、童話『眠り姫』のお芝居をする事になった。ほとんど寝ているだけという事もあり、こゆりが眠り姫役に選ばれ、一方の王子役には卓哉が選ばれる。卓哉は練習中に水をかぶりそうになったこゆりを助けたりと大活躍で、その姿を見たこゆりは次第に卓哉に恋心を抱くようになっていく。そして迎えたお芝居の本番当日、こゆりは舞台上で本当に眠ってしまう。(第9話)

卓哉に恋心を抱き始めたこゆりは、完全に人間になりたいと願うようになった。時を同じくして、由香の手術が行われる事が決定。こゆりや卓哉、有希緒は病院で手術が終わるのを待つ事となった。だがそんな中、病院に雷が落ち、電気系統が故障してしまう。由香の手術が失敗するのを心配したこゆりは、自らの意思で電流を起こし、その場で力尽きるのだった。だが、七尾博士と卓哉の父が、開発したばかりの「動物を人間にする薬」の改良品を飲ませた事で、こゆりは一命を取り留め、完全な人間の少女となる。しかしそれと引き換えに、こゆりはこれまでの記憶をすべて失ってしまう。(第10話~第11話)

登場人物・キャラクター

七尾 こゆり (ななお こゆり)

メスのハムスター。七尾博士の開発した「動物を人間にする薬」の効果で人間の少女になった。見た目は小学生くらいで、言葉も巧みに話す。しかし薬が不完全であったため、水に濡れるとハムスターの姿に戻ってしまう。ハムスター姿になった時は、さくらんぼを食べると再び人間の少女に戻る事ができる。もともとハムスターという事もあって人間よりも睡眠時間が長く、睡魔に襲われるとどこでもすぐに寝てしまう。 「動物を人間にする薬」の副作用からか、気持ちが高まると両手から電流のようなものを流して人を攻撃する事もできるが、体力の消耗が激しく、また自分では威力や消耗度をコントロールできない。有希緒から誘われて普段は小学校に通い、クラスメイトの有希緒と行動を共にしている。 なお混乱を避けるため、周囲には自分がハムスターである事は隠している。真っ直ぐで純粋な心の持ち主で、人を疑う事を知らない。

鹿島 卓哉 (かしま たくや)

七尾こゆりと七尾博士の住む家の近くに、大阪から引っ越して来た男子小学生。卓哉の父、妹・鹿島由香の三人家族で、愛犬だいすけを飼っている。当初はこゆりの誘拐を企む卓哉の父を手伝おうとしていたが、最終的には反発。七尾博士と卓哉の父が和解してからは、こゆりや有希緒と改めて友達になった。正義感が強く、明るく優しい性格の持ち主。

だいすけ

鹿島卓哉の愛犬でオス。七尾こゆりに対しては少女の容姿をしていても動物の仲間だと理解しており、懐いている。

有希緒 (ゆきお)

動物好きな女子小学生。たくさんの動物がいる事から、七尾博士の研究所に頻繁に通っていた。七尾こゆりが人間の少女になってからは友達になり、いっしょに小学校へ通うようになった。こゆりとは同じクラスで、学校でハムスターである事実がばれないように気をつけながら、共に行動している。

七尾博士 (ななおはかせ)

天才科学者の高齢の男性で、「動物を人間にする薬」の開発者。かつては嶋井と共に研究していた。これまで何度も失敗を重ねた「動物を人間にする薬」をついに完成させたものの、薬を飲んだ動物が水に濡れると元の姿に戻ってしまうという、いまだ不完全な状態となっている。七尾こゆりが人間の少女になってからは、保護者となり共に暮らすようになる。 こゆりを非常にかわいがっており、何かと甘やかしている。

卓哉の父 (たくやのちち)

鹿島卓哉の父親で科学者。七尾博士が嶋井に宛てた「動物を人間にする薬」の実験に成功したという内容の手紙を偶然見てしまい、薬の秘密を得るため七尾こゆりを誘拐しようと企む。その際、卓哉をこゆりに接近させ、油断したところを確保しようと画策した。薬の秘密を得ようとしたのは、重い病気を患っている娘・鹿島由香の、大好きなハムスターと話したいという希望を叶えるためであり、根は悪人ではない。 のちに七尾博士と和解し、完璧な「動物を人間にする薬」の開発・研究を行うために協力する事となる。

鹿島 由香 (かしま ゆか)

鹿島卓哉の妹で、年齢は6歳。重い病気を患っており、2年前から入院生活を余儀なくされている。ハムスターが大好きでいつか話してみたいと言っており、これが卓哉の父が七尾こゆりの誘拐を企てる一因となった。素直で明るい性格の持ち主で、病気でも笑顔を絶やさない強さを持っている。

嶋井 (しまい)

かつて七尾博士と共に研究をしていた男性で、鹿島卓哉と鹿島由香の母方の祖父。実は3年前に死去しており、七尾博士が「動物を人間にする薬」の実験結果を手紙に書いて報告したが、それを見る事は叶わなかった。代わりに卓哉の父が手紙を読み、これが七尾こゆりの誘拐を企てるきっかけとなる。

祐太 (ゆうた)

鹿島由香と同じ病院に入院している少年。なかなか素直になれずぶっきらぼうな態度を取るが、根は思いやりがあり優しい性格をしている。由香の事が好き。

あすか

七尾こゆりや鹿島卓哉、有希緒が山に遠足にいった際に出会ったメスのうさぎ。道に迷っていたこゆりを助け、同時に動物たちが住む山が切り崩されそうになっている厳しい現状を打ち明けた。

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