あらすじ
第1巻
ガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフは、コンビを組んで人に仇なす異貌のものどもや犯罪者と戦う攻性咒式士。ある日、暴れる「竜」の討伐を依頼された二人は、竜の目撃された緩衝地区に向かう。しかしそこで彼等を待ち受けていたのは、通常の竜を超える力を持つ、準長命竜のエニンギルゥドだった。絶大なる力を持つエニンギルゥドに苦戦する二人だったが、力を合わせる事で討伐。無事にエリダナへと帰還する。しかし時を置かず、二人のもとに奇妙な咒式士連続殺人事件の知らせと、モルディーン・オージェス・ギュネイの護衛依頼が舞い込む。尊き身分のモルディーンの護衛依頼を訝しがりつつも、ガユスは旧友であるヘロデルの頼みで依頼を引き受ける。モルディーンと交流を深めつつ、護衛依頼をこなしていくガユスとギギナだったが、モルディーンと別れた直後、連続殺人事件の犯人であるニドヴォルクの襲撃を受ける。圧倒的な力を持つ謎の襲撃者に苦戦する二人は、咄嗟の機転で逃げの一手を選択。かろうじて窮地を脱する事に成功するのだった。
第2巻
ニドヴォルクから逃げるのに成功したガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフは、護衛依頼を果たすため、その足のままモルディーン・オージェス・ギュネイのもとに向かう。教会でお茶会と称してラペトデス七都市同盟の要人と会合を行うモルディーンだったが、そこを暗殺者によって襲撃される。自爆すら厭わない暗殺者に苦戦するギギナとガユス、さらに手練れの暗殺者の攻撃で教会は火の海となってしまう。わずかな抜け道を利用して、かろうじてモルディーンを逃がす事に成功するが、そこでヘロデルが敵の攻撃にさらされてしまう。凄腕の狙撃手、ブレナンテに捕捉され、危機に陥った一行は、ヘロデルを助けるため一か八かの捨て身の作戦に打って出る。かろうじてブレナンテを倒す事に成功するガユスだったが、彼も同時に瀕死の重傷を負ってしまうのだった。死を覚悟したガユスだったが、幸いにも応急処置が間に合って助かる。無事だったヘロデルやモルディーンからも労いの言葉をもらうガユスだったが、事件の裏で起きていた恐るべき真実をモルディーンから聞かされるのだった。
第3巻
暗殺事件の犯人であるヘロデルは、最初から最後までモルディーン・オージェス・ギュネイに利用されて死亡。ガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフの健闘も、すべてモルディーンの手の平の上の出来事だった。モルディーンを危険視したギギナは、彼に一刀を浴びせて警告とする。護衛依頼が終わり、日常に戻って来たガユスとギギナは、ニドヴォルクの調査報告を聞き、衝撃の真実を知る。敵が予想以上に強大だと知ったガユスは、対抗するため新たな切り札を編み出し、迎撃の準備を進める。また同時期にガユス、ギギナのもとに緊急の救援依頼が舞い込む。急いで向かうガユスとギギナだったが、それはジェノン・カル・ダリウスの罠だった。イェスパー・リヴェ・ラキ、ベルドリト・リヴェ・ラキ、ジュノンの三人は、モルディーンに刃を向けた二人を危険視して排除へと動いたのだ。並の攻性咒式士を遥かに超える十二翼将に苦戦するガユスとギギナだったが、戦いが佳境に差し迫った頃、そこに新たな来訪者が現れる。
第4巻
戦いの場に現れたニドヴォルクの正体は竜で、ガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフが倒したエニンギルゥドの妻だった。ガユスとギギナを仇として付け狙うニドヴォルクは、自分以外の人間に二人が殺されるのを厭い、姿を現したのだ。そして、それこそがモルディーン・オージェス・ギュネイの狙いであり、イェスパー・リヴェ・ラキとベルドリト・リヴェ・ラキは本来の標的であるニドヴォルクを倒そうとする。しかし、圧倒的な力を持つニドヴォルクにイェスパーとベルドリトは敗れ去ってしまう。以前に戦った時よりもさらに強く、凶悪になったニドヴォルクを前に、ガユスは心を折られそうになる。しかし唯一無二の相棒の叱咤受けて、ガユスは再び立ち上がる。そしてガユスは己のすべてを懸けた一撃をニドヴォルクへと放つのだった。
登場人物・キャラクター
ガユス・レヴィナ・ソレル
眼鏡をかけた赤毛の青年。ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフとコンビを組み、「アシュレイ・ブフ&ソレル咒式事務所」を経営している。十二階梯の攻性咒式士で、犯罪者や異貌のものどもを狩って生活の糧を得ている。ギギナとはコンビを組んでいるが相性は最悪で、いつも口ゲンカをしている。博識で頭の回転は速く、戦闘でも化学知識を活かした戦法を得意とする。一方、相方のギギナが持って来るトラブルをはじめとして、不運に巻き込まれやすい不幸体質。アーゼルからは「不幸と事故を呼び寄せる確率だけは天才」と評されるほどで、つねに気苦労が絶えない日々を送っている。ヘロデルとは学生時代からの悪友。ジヴーニャ・ロレッツォとは相思相愛の仲で、二人っきりの時は甘い時間を過ごしている。「断罪者ヨルガ」と「贖罪者マグナス」という魔杖剣を所持する。ふだんはギギナとは絶対に意見を合わせようとしないが、モルディーン・オージェス・ギュネイに関しては、二人そろって嫌悪の感情を抱いている。一方、モルディーンからは興味を持たれており、「観測者」という役割を与えられている。
ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフ
体格のいい銀髪の青年。ガユス・レヴィナ・ソレルとコンビを組み、「アシュレイ・ブフ&ソレル咒式事務所」を経営している。十三階梯の攻性咒式士で、犯罪者や異貌のものどもを狩って生活の糧を得ている。強敵との戦いを好むドラッケン族の剣舞士でもあり、戦闘では生体系咒式で肉体を強化し、「屠竜刀ネレトー」という魔杖剣を使って戦う。また生体系咒式による治癒も得意とする。類稀なセンスと戦闘能力を併せ持つが、私生活では「絵日記をつけるのが趣味」「四輪自動車に乗れば事故を起こす」「家具マニアで、気に入った家具に勝手に命名する」などギャップの多い人物。家具の中では椅子の「ヒルルカ」が一番のお気に入りで、うっかり傷つけた際にはそのまま卒倒してしまうほど。浪費癖も激しく、女性関係も派手であるため、たびたびガユスから苦言を呈されている。負けず嫌いで、ふだんはガユスとは絶対に意見を合わせようとしないが、モルディーン・オージェス・ギュネイに関しては、二人そろって嫌悪の感情を抱いている。
ジヴーニャ・ロレッツォ
ガユス・レヴィナ・ソレルの恋人。尖った耳を持つアルリアン人と人間のハーフで、白金の髪と色白の肌が特徴的な美人。正義感が強く、情深い人間で、ガユスの事を本当に大切に思っており、咒式の力がない自分では戦場に共に並び立てないと理解しつつも、彼の理解者として、帰る場所を守り抜く覚悟を持っている。ガユスが生死の境をさまよった際も、付きっ切りで看病する面倒見のよさを見せた。ガユス以外にはふつうに優秀な女性として接するが、ガユスに関しては色ボケ振りを見せつける。看病の際には公衆の場という事も忘れてイチャ付きだし、その様をうっかりギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフに目撃された際には、恥ずかしさの余りふだんと別の口調になって爆走した。なお、彼女が得意とするアルリアンの郷土料理は調理風景がかなり凄惨で、化学練成系咒式士であるガユスが「毒ガスの製造」と形容したほど。そのためガユスも彼女の手料理を食べるのだけは避けている。
サザーラン
エリダナ市庁舎で働く役人。非常に不自然な髪型をした中年男性。持ち歩いている櫛で髪をよくセットしており、ガユス・レヴィナ・ソレルにはカツラだと思われている。性格は保身第一のお役所人間で、公費を出し渋るかなりのケチ。理不尽な難癖をつけて相手の仕事にケチをつけるが、その様は一周回ってすでに神業といえるもので、仕事とはまったく関係ない思春期の娘に対する不満まで相手に押しつけて、報酬を減額するほど。ガユスとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフは市からの依頼や労災申請のたびに顔を合わせるが、そのたびにサザーランから難癖を付けられるため、かなり疎ましく思っている。最近はガユスとギギナの出した労災申請書を二人の目の前で食べるなど、断り方もバリエーションが増えている。
ロルカ
エリダナで咒式具屋「ロルカ屋」を営む店主。ヒゲを生やした初老の男性。豪快な性格で、かなり危ない橋を渡って商売をしているらしく、彼の店にはエリダナの街を1回半吹き飛ばせるほどの数の兵器が商品として並べられている。ガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフはお得意様で顔馴染み。特に浪費癖のあるギギナを唆(そそのか)して高価商品を売りつける確信犯で、彼のせいでガユスの悩みの種が増えている。ガユスとギギナとは付き合いが長いため、彼等が厄介事に巻き込まれた際には、きっちり代金をもらいつつもサポートした。
ホートン
ポロック揚げ屋の店主。髪をオールバックにした面長な男性。アーゼルやガユス・レヴィナ・ソレルが常連でたびたび訪れているが、不景気で店の売れ行きはよくない。実は算盤のような物を使った占いが趣味で、「ホートン占い」と称して客の運勢を勝手に占う接客をしており、客が少ないのはこれが不評なせい。特にガユスに関しては怖い顔で延々と不吉な事を言うため、彼から不気味に思われている。なお、ガユスに対する占いはだいたい的中する模様。
アーゼル
エリダナに住む新聞記者見習いの若い女性。そばかすがチャーミングな顔立ちで、スクープを求める、好奇心旺盛な性格をしている。ガユス・レヴィナ・ソレルを「不幸と事故を呼び寄せる確率だけは天才」と評しており、彼の身近で起きた事件を取材するべくたびたび連絡を取ったり、様子を見に行ったりしている。エリダナで咒式士連続殺人事件が起きた際にはガユスに警告をした。巨乳で非常にスタイルがいいが、アーゼル本人は無自覚で、男性からの視線にも鈍感。
ツザン・グラル・デュガソン
ツザン診療所を経営する闇医者。黒髪の女性。陰気な雰囲気を漂わせた医療咒式のスペシャリスト。腕は一流だが、かなり難のある性格をしており、患者に勝手に肉体改造手術をしようとする悪癖がある。また人間の内臓を見て性的興奮を覚える変質者で、内臓芸術家を自称する。特にガユス・レヴィナ・ソレルの内臓を「美形」と評して気に入っているが、ガユスからは苦手に思われている。
モルディーン・オージェス・ギュネイ
啓示派教会の枢機卿長にして、ツェベルン龍皇国のオージェス選皇王代理を務める中年の男性。ツェベルン龍皇国にてさまざまな重要な役職に就いている重要人物で、人々の平和のため尽力している。穏和な雰囲気を漂わせているが、徹底した合理主義者で「戦争を起こさないための戦争」を躊躇(ためら)わない狂気を秘めている。自らの配下である十二翼将を使って暗躍しており、自らの暗殺計画すら手玉に取って政治利用する、尋常ならざる策略を張り巡らしている。ガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフを自らの護衛という名目で雇ったが、二人からはその狂気を見破られ、ふだんは意見を合わせない二人から揃って嫌われた。またガユスには自身と近しいものを感じるらしく、彼に「観測者」という役割を与えている。あらゆる状況を想定し、勝っても負けても自らの利になる状況を作り出す希代の策謀家だが、モルディーン・オージェス・ギュネイ本人の戦闘能力は皆無で、咒式も扱えない。
イェスパー・リヴェ・ラキ
モルディーン・オージェス・ギュネイ麾下(きか)十二翼将の第九席の男性。ベルドリト・リヴェ・ラキの双子の兄で、二人合わせて「ラキ兄弟」の名で知れ渡っている。二卵性双生児ながら、見た目は弟とは似ても似つかない無骨な外見で、右目には眼帯を付けている。享楽的で感情豊かな弟とは正反対の無愛想な人物で、モルディーンに忠誠を誓う実直な性格をしている。軍事を司るラキ侯爵家の出で、弟と共に闘争と暗殺を専門とする。事情を知る者達からは、彼等との遭遇は「絶対の死」と恐れられている。モルディーンの命で、ガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフの前に現れた。戦闘では鎧をまとい、刀状の魔杖剣「九頭竜牙剣(くずりゅうがけん)」を使って戦う。使う咒式は化学鋼成系の「練成(ベリス)」。練成自体はありふれた基本咒式だが、これを極める事で攻防自在に応用できる能力へと昇華させている。特に鍛えぬいた剣技と練成の相性は抜群で、「居合い」と練成を合わせる事で、間合いを自在に変化させる斬撃を放つ事が可能。ギギナと互角の戦いを繰り広げた。
ベルドリト・リヴェ・ラキ
モルディーン・オージェス・ギュネイ麾下十二翼将の第十席の男性。イェスパー・リヴェ・ラキの双子の弟で、二人合わせて「ラキ兄弟」の名で知れ渡っている。二卵性双生児ながら、見た目は兄と違い、無邪気な少年のような姿をしているため、兄弟揃うと親子と間違えられる事もしばしば。まじめで遊び心のない兄に対して、何事も楽しむ享楽的な性格をしているため、兄から小言をもらう事が多い。軍事を司るラキ侯爵家の出で、兄と共に闘争と暗殺を専門とする。事情を知る者達からは、彼等との遭遇は「絶対の死」と恐れられている。兄ほどモルディーンに対して忠誠心は持っていないが、モルディーンといっしょにいると楽しいため、彼に従うのを是としている。また兄に対してもふだんは軽口を叩くが、本心では大切に思っている。戦闘では銃状の魔杖剣を使って戦う。数や方程式を支配する数法系の咒式を得意とする上級職「虚法士」で、咒式を用いて量子確率に干渉する事で物質を透過したり、対象を量子的に分解して持ち運ぶ事が可能。竜を支配下に置いて分解して持ち運んでおり、戦闘では竜を使いながら戦う。
ジェノン・カル・ダリウス
モルディーン・オージェス・ギュネイ麾下十二翼将の第十一席の男性。「千貌のジェノン」の異名を持つ変装の達人で、本来の姿は性別や年齢含めてすべて不明。ただし、ガユス・レヴィナ・ソレルはジェノン・カル・ダリウスの言動の癖から、男性ではないかと推測している。類稀な変装能力を持つが、その能力の正体は生体系咒式の中でも肉体を変化させる事に特化した変化系咒式士の上級職「変幻士」。身体組織を細胞レベルであやつる事で、体格から年齢まで変幻自在に変化させる事ができ、あらゆる識別方法を欺く変装を可能とする。またジェノン自身、モルディーンが信頼するほどの「演技の天才」で、変装した人物のしぐさを完璧にコピーする。ふつうの方法では見破る事ができない変装だが、ガユスいわく、咄嗟の反応は偽る事ができないため、その部分を見てガユスは見破った。また戦闘では周囲の物質を取り込む事で、巨大な竜にも変装する事が可能。ガユスと戦った際には竜の姿になって戦ったが、乱入したニドヴォルクによって肉体のほとんどを吹き飛ばされ、かろうじて脳と重要臓器だけの状態で生きているところを回収された。
キュラソー・オプト・コウガ
モルディーン・オージェス・ギュネイ麾下十二翼将の第十二席の男性。黒い髪を肩まで伸ばしている。怜悧な雰囲気を持つ女忍者で、忍者一派「コウガ」をまとめる党首を務めている。モルディーンを護衛するためすぐ側に仕えている事が多い。高い戦闘能力を持ち、手段を選ばなければギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフを暗殺する事もできると豪語する。ただし技量ではギギナに迫れても、単純な力勝負ではギギナには勝てないとも語っている。モルディーンを「お館様」と呼び慕っており、彼の身の回りの世話も担当している。「ツケモノ」を作るのが得意で、自ら畑で丹精込めて野菜を作るところから始めるほど。彼女の作る「ツケモノ」は絶品らしく、モルディーンからも気に入られている。優秀な人物だが、物事を短絡的に考える部分があり、邪魔な人物を排除しようとモルディーンに進言した際には、「無粋」と意見を切って捨てられた。
ヘロデル
モルディーン・オージェス・ギュネイの一級咒式秘書官を務める男性。精悍なたたずまいの青年で、ガユス・レヴィナ・ソレルとは学生時代からの悪友。シファカという婚約者がいたが、ラペトデス七都市同盟との戦争で死別。復讐心を抱いて同盟との戦争に赴くが、龍皇国上層部の思惑によって戦争自体が中断し、心残りを抱いていた。現在は数奇な巡り合わせによって穏健派のモルディーンの秘書となっており、彼の影響で復讐を乗り越え、両国の平和のために尽力している。実はモルディーン暗殺事件の黒幕でもある。復讐を乗り越えたという話はすべてウソで、今でも同盟への復讐に囚われている。モルディーンの政敵であり、最強硬派であるグズレグ統合幕僚本部次官が送り込んだスパイとして、モルディーンの情報を流していた。旧友を巻き込み、体を張ってまで暗殺計画を進めていたが、実はすべてモルディーンに見抜かれており、逆にモルディーンに暗殺計画を利用される。最後はガユスへの見舞いを利用してモルディーンを暗殺しようとするが、暗殺に用意した爆弾がすり替えられて自分の手元に戻っているのに気づかず、そのまま爆殺された。
ブレナンテ
光学系咒式を習熟している凄腕の狙撃手の男性。長髪で、冷静沈着な観測眼と精密射撃を可能とする技術を持った実力者。「射光のブレナンテ」の異名を持つ。高密度の光エネルギーを照射して敵を焼き尽くす光の弾丸「光条灼弩顕(レラージュ)」という咒式を得意とし、その狙撃は回避が非常に困難。モルディーン・オージェス・ギュネイ暗殺のため、ビルに陣取って狙撃した。凄腕だが、狩りと殺しを楽しむ残虐な性格をしており、非道な戦術を取る事を好む。その部分をガユス・レヴィナ・ソレルに見抜かれ、ガユスに放った弾丸を反射されられ、自らの弾丸で自分を撃ち抜いて死亡した。
ニドヴォルク
エリダナで起きた咒式士連続殺人事件の犯人。黒い髪を長く伸ばした妙齢の女性で、奇妙なしゃべり方をする。ガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフを仇として探しており、エリダナの街で彼らを探しながら咒式士を殺しまわっている。その正体はガユスとギギナが殺した準長命竜のエニンギルゥドの妻。本性は長命竜の黒竜で、人と共存する故郷の「賢龍派」に背を向けた竜族の過激派。人の姿を取っているのは復讐に掲げた誓約で、復讐を果たすまで本来の姿に戻らないという覚悟を表したものだった。奇妙なしゃべりをするのも、人間の言語に不慣れなせいで、「ニドヴォルク」という名前も、人間が発音しやすくしたもの。名前の本来の発音は竜語で発音するもので、人間には発音しにくい名前となっている。関係のない咒式士を殺したのは、ニドヴォルクが強い力を持ちつつも人間の街に不慣れだったため起きた事故のようなもので、ニドヴォルクにとっても不本意なものだった。稀有な重力系咒式をあやつる攻撃特化型。重力による攻撃は防御不可能な一撃必殺の威力を持つ。のちに「竜宝珠」を手にし、強力な防御能力も手にした。
エニンギルゥド
グラシカ竜緩衝区で暴れていた準長命竜の黒竜。妻のニドヴォルクと共に穏健派の「賢龍派」と袂を分かった竜族の過激派で、人類と敵対しているためガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフに討伐依頼が出された。強靭な肉体だけでなく、高い知性も持ち、攻性咒式を無効化する「反咒禍界絶陣(アーシ・モダイ)」、傷を癒やす治癒咒式など多彩な咒式をあやつる。また王水の息吹を放つ「硝硫灼硫(ブロケ)」は圧倒的な威力を誇る。圧倒的な能力でガユスとギギナを追い詰めたが、二人の連携攻撃の前に敗れ去った。死後、肉体は回収され、その頭部はエリダナへと運び込まれた。ニドヴォルクとは仲睦まじい夫婦だったようで、ニドヴォルクはエニンギルゥドの仇を討つ事を誓う。のちにエニンギルゥドの頭はニドヴォルクによって回収され、「竜宝珠」へと姿を変える。竜宝珠と化してなお、得意とする反咒禍界絶陣で妻を守り、ガユスやギギナと戦った。
ジオルグ・ダラハイド
エリダナ四大咒式士の一人。無精ひげを生やした男性で、色眼鏡をかけてくたびれた雰囲気を漂わせている。ガユス・レヴィナ・ソレルとギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフが、かつて所属していた「ジオルグ・ダラハイド咒式事務所」の所長で、彼らの師匠にあたる。訪れたばかりのエリダナで、裏社会の洗礼を受けて死にかけていたガユスを、人手不足でちょうどよかったからという理由で拾った。
クエロ
「ジオルグ・ダラハイド咒式事務所」の副所長を務める褐色肌の女性。非常にシビアな性格をしている。楽観的なジオルグ・ダラハイドの言動には気苦労を感じており、たびたび苦言を呈している。ジオルグが行き倒れていたガユス・レヴィナ・ソレルを思いつきで、拾うのにも反対したが、クエロ自身も最初は反抗的だった事をジオルグに持ち出され、反論を封じられた。
集団・組織
十二翼将 (じゅうによくしょう)
モルディーン・オージェス・ギュネイの配下で、12人の精鋭集団。全員が「到達者」級以上の階梯で結成された攻性咒式士集団で、一人一人が一騎当千の猛者。実力と貢献に応じて席次が与えられている。また単純に戦闘能力に秀でているだけではなく、大賢者と謳われるヨーカーンや変装の達人であるジェノン・カル・ダリウスなど、幅広い技能を持つ集団でもある。十二翼将はモルディーンに忠誠を誓っており、合法非合法問わずあらゆる手段をもって彼の命令を果たそうとする。十二翼将はモルディーンが自分達の忠誠を利用して捨て駒にするのも受け入れており、その様を見てガユス・レヴィナ・ソレルは彼等を「殉教者」にたとえた。
場所
ツェベルン龍皇国 (つぇべるんりゅうおうこく)
大陸西部に存在する国家。首都は皇都リューネルグ。かつては広大な領土を持っていたが、100年前のラペトデス七都市同盟の独立によって領土を大幅に失っている。異貌のものどもやラペトデス七都市同盟など、多くの戦争の火種を抱えているが、昨今はモルディーン・オージェス・ギュネイの尽力で戦線は縮小しており、協調・共存路線を歩んでいる。一方、皇国内部にはそれを快く思わない過激派も一定数存在し、街中でデモを行ったりしている。
ラペトデス七都市同盟 (らぺとですななとしどうめい)
ツェベルン龍皇国から3分の1の領土を奪って独立した国家。議会制民主主義を掲げる七人の英雄によって率いられている。ツェベルン龍皇国の東側に存在し、100年前の独立以降、たびたび領土や資源を巡って龍皇国と争って来たが、数十年前からはエリダナを分け合って交流している。ツェベルン龍皇国にとっては、歴史的立地的に見て第一の敵国であるのと同時に友好国。
エリダナ
ツェベルン龍皇国の州の一つ。ツェベルン龍皇国とラペトデス七都市同盟の国境に存在する外交都市で、両国の貿易と観光が集まり、多くの人々が集う場所となっている。かつて騎馬民族に占領されていたが、「エリダナ」という一人の女性が歌の力で民衆を導き、街を取り返した逸話が街に残っている。女性の名前は以降、街の名前となり、女性に敬意を表して「戦乙女の都」とも呼ばれる。戦乙女の勝利を祝う「エリダナ祭」は今日では皇国八大祝祭の一つに数えられており、年に一度は街を挙げての盛大な祭が開催されている。
その他キーワード
魔杖剣 (まじょうけん)
咒式の発動を補佐する機械。「魔法使いの杖」のようなもので、咒式士は「魔杖剣」がなければ初歩の咒式すら発動させる事ができないため、咒式士にとって最も重要なアイテムとなっている。基本構造は量子演算装置である「宝珠」を核に構成された銃のような構造をしており、咒式を発動させるための媒介を封じた「咒弾(じゅだん)」を装填する仕組みとなっている。咒式を刀身に収束・増幅する必要性があるため、剣の機能を持たされる事も多いが、咒式士によってその形は千差万別。ただし、法規制によって刀身の大きな物は禁止されている。魔杖剣は品質によって等級区分が存在し、「業物」「良業物」「大業物」「最上大業物」の順に良質な物になっていく。
断罪者ヨルガ (だんざいしゃよるが)
ガユス・レヴィナ・ソレルの魔杖剣。刀匠による一点物の最上大業物で、刀身はデリビウム咒合銀合金製、細身の剣の形をしている。宝珠を3個搭載した9ミリ口径12発の自動弾倉式の魔杖剣で、汎用性に優れ、あらゆる状況に対応する扱いやすさが特徴。
屠竜刀ネレトー (とりゅうとうねれとー)
ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフの魔杖剣。「屠竜刀(とりゅうとう)」とは竜の鱗を裂くために威力を追求された近接戦特化型の大剣で、ドラッケン族の伝統武器。屠竜刀ネレトーもその例に漏れず大型の剣の形をしており、変形する事で長槍としても使用可能となっている。刀身はガナサイト重咒合金製で、宝珠は8個搭載。等級は真大業物となっている。巨大な刀身を持つが、実は刀身の大きさが法律に定められたサイズをオーバーしているため、違法魔杖剣に該当する。ギギナは刃と柄を分離させる事で無理矢理に規制をかいくぐり、同時に役所からの依頼を優先的に受ける事でお目こぼしをもらっている。
重霊子殻獄瞋焔覇 (ぱーいーもーん)
到達者級化学練成系咒式士のみが行使を可能とする第七階位咒式。ガユス・レヴィナ・ソレルとヘロデルが学生時代に研究していた。ヘロデルの死後、十三階梯へと到達したガユスが完成させた。その効果は、核融合爆発を巻き起こし、莫大な熱量を発生させて対象にぶつけるというもの。莫大な熱量による攻撃は圧倒的な破壊力となり、試し打ちした際には巨大な廃船に大穴を開けるほどの威力を見せつけた。ガユスがニドヴォルクとの戦いに備えて切り札として用意し、最後の最後で戦いの趨勢を決める一手となる。
咒式 (じゅしき)
異貌のものどもが古来より使って来た「魔法」を化学体系で解明し、体系化したもの。事象誘導演算装置と咒式の組成式によって引き起こす人為的な超常現象で、咒式をあやつるには「物理干渉能力」という特殊な才能が重要視される。ただし才能がなくても、時間をかけて訓練して機械による補助を得れば、基本的に誰でも身につける事が可能。咒式を専門にあやつる者達は「咒式士」と呼ばれ、産業や研究のために咒式を用いる者達を「咒式師」、戦闘に用いて異貌のものどもや犯罪者を狩る軍人・賞金稼ぎを「攻性咒式士」と呼ぶ。また咒式は細かく分類されており、化学練成系、生体強化系などさまざまな種類が存在し、一部の危険な咒式は法律によって規制されている。咒式士は、実力の指標として「十三階梯」という階位が定められており、最高位の十三階梯に到達した者は「到達者」として周囲から一目置かれる存在となる。また咒式も難易度によって7つの階位が定められており、咒式の階位が上がるほど高い演算能力と技術が求められる。
異貌のものども (いぼうのものども)
咒式をあやつる、もしくは咒式の影響を受けた人類の敵対種族の総称。さまざまな種族が存在するが、代表的なものとして珪金化物生物「古き巨人」や高次元情報生命体「禍つ式(まがつしき)」、そして異貌のものどもの頂点に君臨する竜が挙げられる。また、異貌のものどもすべてが人類と敵対しているわけではなく、竜の「賢龍派」のように意思疎通可能で友好的な者達や、人類とはかかわらず不干渉を貫く者達も少なからず存在する。
竜 (りゅう)
異貌のものどもの頂点に君臨する最強種。巨大な体に高い知性、さらに悠久の年月を生きる寿命を持つ。翼の生えた大きなトカゲのような姿をしており、火を吐く火竜や強酸を吐く黒竜など、さまざまな種類が存在する。生きた歳月によって体も力も大きくなり、1000年生きた竜は「長命竜(アルター)」と呼ばれるようになる。長命竜の強さは大災害レベルともいわれており、咒式が発展した現代でも、人類からは畏怖の対象として扱われている。人類の発展に伴って竜の生存圏は狭まっているため、竜と人類は骨肉の争いを演じている。しかし、現在は穏健派である「賢龍派(ヴァイゼン)」が主流となり、人間と竜族、両主族の生存圏を、緩衝地帯を挟んで分ける取り決め「ティエンルン条約」を各国と締結し、共存を選んでいる。そのため現在、人類が戦っている竜族はこの条約を不服と思い、緩衝地帯を抜けてやって来た過激派のみとなっている。咒式に高い適性を持つ竜の肉体は捨てるところがないと言われるほど高い価値があり、昔は「竜1頭で豪邸が建つ」といわれていた。
クレジット
- 原作
-
浅井 ラボ
- キャラクター原案
-
宮城 , ざいん