すくってごらん

すくってごらん

エリートサラリーマン香芝誠が、仕事の失敗で飛ばされた大和郡山市で金魚すくいに魅了される様子を描いた漫画。このマンガがすごい!(2015)オンナ編15位にランクインした。講談社「BE・LOVE」2014年第10号から2015年第2号まで連載。2021年3月12日実写映画化。

正式名称
すくってごらん
ふりがな
すくってごらん
作者
ジャンル
サラリーマン
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

金魚をすくうということ

東京のエリート銀行マンだった香芝誠は、仕事上のミスが原因で左遷され、奈良県の大和郡山市にある支店に飛ばされてしまい、過去の栄光と転落のきっかけを悶々と反芻(はんすう)し続ける日々を送っていた。そんなある日、誠は金魚店「紅燈屋」の若き店長、王寺昇に誘われ、金魚すくいを教えてもらう。王寺の子供のような笑顔とポイさばきに魅せられた誠は、その現場に現れた王寺の友人である美女、生駒吉乃に一目ぼれしてしまい、吉乃の問いかけに対し思わず金魚すくいが大好きだと答えてしまう。吉乃に気に入られるという目標ができた誠は、翌日から仕事と金魚すくいの練習に力を注ぐようになり、くすぶっていた生き方を前向きなものへと変えていく。銀行の同僚から吉乃が「現代のかぐや姫」と呼ばれる高嶺の花であることを聞かされた誠は、酔っぱらって帰宅している途中に街角で寝てしまい、目が覚めた時に大和タケルという青年によって無理やり金魚すくい大会の参加メンバーに入れられてしまう。会場の熱気やチームリーダーの少年、御所守の金魚すくいの技量に圧倒されつつも、誠はなんとか1匹の金魚をすくうことに成功する。結果的に大会を2位で終えた誠は、すくった金魚を自宅に持ち帰り、いずれ守や大和と肩を並べる技術を身につけることを心に誓う。その後、街中で吉乃を見かけた誠は、本来の大会メンバーだった吉乃の祖父に大会の賞品を渡すため、吉乃といっしょに病院へと向かう。成り行きから病院で吉乃の祖父、生駒彦造と金魚すくい対決をすることになった誠は、全力で勝利を目指すも完敗。力の差を見せつけられた誠は、彦造から金魚すくいの全国大会の選手権に出られるぐらいになって出直すように言われるのだった。

全国大会

香芝誠は翌月開催される金魚すくいの全国大会に出ることを決意。連日仕事終わりに、張り切って金魚すくいの練習に励んでいた。しかし、参加の締め切りがすでに過ぎていることを知り、誠はすっかり意気消沈してしまう。不本意ながら王寺昇に慰められていた誠は、そこで銀行の顧客である天川硝子の息子、天川涼平と出会う。物憂げな表情で金魚が嫌いだと公言する涼平のことが気にかかった誠は後日、涼平の父親から金魚を巡る10年前の出来事が原因で、二人のあいだに大きな溝ができてしまったことを聞かされる。その過程で、涼平の父親が幼い涼平がすくってきた金魚を今も大事に育てていることを知った誠は、二人の仲を取り持ち、親子の仲を修復することに成功する。仕事で自信をつけた誠は、「紅燈屋」で明日香たちをはじめとする金魚すくいが得意な猛者たちと切磋琢磨(せっさたくま)し、その技術を少しずつ伸ばしていく。そして迎えた全国大会の当日、自分が参加できないことを悔やみながらも現地の見学に向かった誠は、成り行きからマスコットキャラクターのきんとっとの着ぐるみに入り、大会を盛り上げることになる。エキシビションのイベントとして、昨年の大会の個人戦優勝者である斑鳩カケルと金魚すくいで勝負することになった誠は、技量では到底及ばないながらも、傷ついた金魚のみをすくうという信念を持った金魚すくいを見せ、対戦したカケルを唸(うな)らせるのだった。

王寺の帽子

全国大会も無事に終了し、王寺昇をはじめとする金魚すくいの猛者たちは、なぜか香芝誠の自宅に集まって打ち上げをすることになった。誰もが緊張から解放され、和気あいあいとする雰囲気の中、誠は金魚すくいの上手な王寺がなぜ各種大会に参加しないのか、その理由を本人に問うが、王寺から答えをはぐらかされてしまう。後日、金魚すくいの全国大会の記録を調べた誠は、王寺が伝説的な選手であったこと、そして12年前を最後に王寺が大会に参加していないことを突き止める。生駒吉乃から王寺の過去を聞いた誠は、ドイツ人とのハーフであるがゆえに周囲と馴染(なじ)めずにいた王寺が、吉乃の父親である生駒忠信に救われて金魚すくいの才能を発揮し、金魚すくいを極める道を歩み始めたという経緯を知る。そして、王寺が全国大会で仲間に裏切られたショックで、競技としての金魚すくいを辞めたことも知ってしまう。王寺の心の傷の一端を理解した誠は、王寺に対し金魚すくいの勝負を挑む。真剣勝負の中で互いの心を通わせた二人は、終生の仲間ができた幸せを嚙みしめ、弾(はじ)けるような笑顔で勝負を締めくくるのだった。半年後、本社から東京へ戻る辞令を受けた誠は、そのことを誰にも告げずに東京へ向かう電車に乗り込もうとする。しかし、駅のホームには現地で得たかけがえない仲間たちが、誠を門出を見送りに来ていた。

実写映画

2021年3月12日公開。監督は真壁幸紀。キャストは主人公の香芝誠を尾上松也、 生駒吉乃を百田夏菜子(ももいろクローバーZ)が演じる。

登場人物・キャラクター

香芝 誠

クールな雰囲気を漂わせたエリート銀行マンの男性。眼鏡をかけている。非常に生真面目ながら、場の空気を読むのが苦手で、無駄に他者と衝突してしまうことの多い、損な役回りを任されがち。もともとは東京にある大手銀行でトップクラスの成績をあげていたエース社員で、将来を嘱望されていた期待の若手だったが、とある契約書のミスが原因で左遷され、奈良県の大和郡山市にある支店に飛ばされてしまう。不本意な地方暮らしを始めた当初は香芝誠自身の境遇に絶望し、職場にもまったくなじめないという不遇な生活を送っていたが、金魚店「紅燈屋」の店長、王寺昇に金魚すくいを勧められたことで人生が一変。そこで王寺の友人である生駒吉乃に一目惚れし、彼女の気を引くために精力的に金魚すくいに励み、仕事にも全力を尽くすようになる。金魚すくいを始めた動機は不純だったが、徐々に金魚すくいそのものの面白さに魅せられ、生活の中心になるほど夢中になっていく。技量的にはずぶの素人だったが、自分がすくった金魚を瞬時に見極めることができたり、傷ついた金魚を優先してすくい、別の容器に安全に隔離するなど、信念を持った金魚すくいを徹底する。その才能や金魚に対する姿勢は、王寺や金魚すくいの全国大会優勝者である斑鳩カケルをも唸らせるほどだった。仕事上では非常に有能だが、酔いつぶれたうえで街中で寝てしまうなど、若干抜けているところがある。

王寺 昇 (おうじ のぼる)

金魚店「紅燈屋」の店長を務めている男性。天然パーマの金髪と美しい青い瞳を持つ。いつも身につけている着物とカンカン帽がトレードマーク。つねに飄飄(ひょうひょう)としており、とらえどころがない性格をしている。金魚すくいが大好きで、金魚すくいは「世界一静か世界一優雅なスポーツ」という信念の持ち主。店の近場に引っ越して来た香芝誠に金魚すくいを基礎から教え込んだ。学生時代に金魚すくいの全国大会で優勝を経験しており、その時に打ち立てた97匹という記録が今なお破られてない伝説的な選手だったが、10年以上金魚すくいの競技からは離れている。誠の隠された金魚すくいの才能を買っており、何かと目をかけていた。金魚の扱いが雑な客に対しては般若(はんにゃ)のような顔をして追い払うこともある。トレードマークのカンカン帽を、気分次第でチューリップやクローシュに替えることもあるが、人前で帽子を脱ぐことは決してない。父親がドイツ人で、容姿が周囲と異なることから、幼い頃はいじめのターゲットになることが多かった。先代の「紅燈屋」の店長である生駒忠信から金魚すくいを教えられたことで、孤独から救われた過去を持つ。金魚屋台の行商として全国を飛び回っている忠信に代わり、「紅燈屋」のすべてを任されている。忠信の娘である生駒吉乃とは幼なじみで、友達以上恋人未満の微妙な関係が続いている。誠からは「ペテン帽子」、吉乃からは「にいさん」と呼ばれていた

生駒 吉乃 (いこま よしの)

金魚店「紅燈屋」のオーナーを務める生駒忠信の娘。和服が似合う清楚な美女で、美しい黒髪をおかっぱにしている。老若男女を問わず誰からも好かれる、おしとやかな性格の持ち主。大和郡山が生んだ奇跡の花と呼ばれるほどの美貌を誇り、彼女との交際を希望する男性はひっきりなしに現れるが、ありえない難題をふっかけてすべての告白を断っている。そのため、振られた男たちを中心に「現代のかぐや姫」というあだ名で呼ばれていた。「紅燈屋」の現店長である王寺昇とは幼なじみで、兄妹のように育ち、現在は友達以上恋人未満の関係が続いている。王寺のことは「にいさん」と呼んでいる。「紅燈屋」で出会った香芝誠から一目惚(ぼ)れされるが、生駒吉乃の方は誠のことを金魚すくいが好きな好青年だとしか思っていなかった。しかし、金魚すくいに少年のように純粋な情熱を燃やす誠の姿を見て、徐々に彼に惹(ひ)かれていく。

生駒 彦造 (いこま ひこぞう)

金魚すくいが得意な男性。生駒忠信の父親で、生駒吉乃の祖父。かなりの老齢だが、全身からただ者ではない雰囲気を漂わせている。金魚すくいのチーム「チーム御所」の一員。ギックリ腰で入院した際に香芝誠と出会い、彼に全国大会に出場することを勧めていた。

コータ

眠そうな目の男の子。金魚問屋・紅燈屋の常連。生駒彦造の金魚すくいの弟子。茫洋としているが、金魚すくいはかなりの腕前。後に香芝誠を「ベルヌーイさん」と呼ぶ。

明日香 (あすか)

関西を中心に活躍している人気タレントの女性。ロングヘアで華やかな服装を身につけている。勝ち気な性格の男好きな自信家。金魚すくいが得意で、「チーム美々兎」というチームを結成しており、各種大会にも出場して好成績を残している。王寺昇や大和タケルの友人で、金魚すくいのライバルでもある大和とは頻繁に煽り合っている。「紅燈屋」で金魚すくいをしていた際に、アパートからこちらを見ていた香芝誠のことを目ざとく発見していた。誠と金魚すくいで対決した際に手と所作の美しさを褒められ、それ以来誠のことを意識するようになる。

川西 (かわにし)

25歳。関西弁で威勢の良い男性。KDS銀行大和郡山支店に勤務する。次々に営業成績を上げていく香芝誠をライバル視している。

三宅 (みやけ)

23歳。KDS銀行大和郡山支店に勤務する。先輩の川西飄々とツッコミを入れる。川西と共に香芝誠を金魚すくいの全国大会に連れて行く。

大和 タケル (やまと たける)

金魚すくいが大好きな男性。チャラい風貌の金髪ロングヘアにしている。言動はやたらと荒っぽくぶっきらぼうだが、決して悪い人間ではない。金魚すくいのチーム「チーム御所」の一員。酔いつぶれて街角で寝てしまった香芝誠を見つけ、無理やり金魚すくいの大会に参加させていた。金魚すくいの技量はなかなかのもので、余計な荒波は立てても狙った獲物は逃がさない。王寺昇や明日香の友人で、のちに誠とも友人になる。明日香とは金魚すくいのライバルでもあり、頻繁に子供のように煽(あお)り合っている。

御所 守 (ごせ まもる)

金魚すくいが得意な小学生の男子。背が低く優しい顔立ちをしている。おとなしく目立たない性格で、物腰も柔らかなうえ礼儀正しい。チーム「チーム御所」の一員にしてリーダーを務めている。金魚すくいをしている最中はふだんと異なり、目つきが異常に怖くなるのが特徴。ポイを一定のリズムで振るう音楽家を思わせる優雅なスタイルで、次々と金魚をすくっていた。

天川 涼平 (あまかわ りょうへい)

居酒屋でアルバイトをしている男性。口数が少なく、つねに寂しげな表情をしている。「天川硝子店」の一人息子だが、現在は実家にほとんど寄り付かなくなっている。金魚が嫌いだと公言しているが、幼い頃は大の金魚好きだった。10年前に父親が起業して忙しくなった頃から父親との折り合いが悪くなり、親子の関係がほぼ断絶した状態になっている。香芝誠との出会いを経てかつて金魚好きだった頃を思い出し、父親との関係も修復された。

斑鳩 カケル (いかるが かける)

金魚すくいが得意な青年。爽やかな風貌をした長髪のイケメン。昨年の金魚すくい全国大会の個人戦で優勝したほどの実力者で、女性ファンも多い。全国大会に参加した際にマスコットキャラクターのきんとっとの着ぐるみに入っていた香芝誠とエキシビションマッチで対戦し、誠の傷ついた金魚を守ろうとする信念のある姿勢に感嘆していた。

生駒 忠信 (いこま ただのぶ)

金魚屋台の行商人の男性。短髪に鉢巻を巻いている。困った人を放っておけない面倒見がいい性格の持ち主。孤独な少年だった王寺昇に金魚すくいを教え、彼を救った過去を持つ。金魚店の「紅燈屋」を営んでいたが、現在は店のすべてを王寺に任せ、行商人として全国を飛び回っている。王寺が仲間から裏切られた際に自分の帽子を与えた。

きんとっと

『すくってごらん』に登場するキャラクター。実在の大和郡山市の地域キャラクター・きんとっとがモデル。金魚すくい全国大会で、明日香に頼まれて香芝誠がこのキャラクターのぬいぐるみを被ることになった。

涼平の父親 (りょうへいのちちおや)

「天川硝子店」を営んでいる中年男性。天川涼平の実父で、妻を早くに亡くしており、男手一つで涼平を育ててきた。アクアリウムが趣味で、事務所に観賞魚を入れた多くの水槽を置いている。10年前に起業した際、ささいなことで涼平を叱ったことがきっかけで親子関係がギクシャクしてしまい、今もその時のことを後悔している。10年前に涼平がすくってきた金魚を今でも大事に育てている。

SHARE
EC
Amazon
logo