とりあえず地球が滅びる前に

とりあえず地球が滅びる前に

バスケットボールの県大会で優勝しなくては地球が滅ぶと告げられた女子高生たちが、それぞれの日常を守るため部活動に奮起する青春スポーツストーリー。「flowers」2011年3月号から2013年9月号にかけて連載された作品。

正式名称
とりあえず地球が滅びる前に
ふりがな
とりあえずちきゅうがほろびるまえに
作者
ジャンル
バスケットボール
関連商品
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世界観

バスケットボールが題材。漫然とした日々を送る、部活動への意欲の薄い女子高生たちが主人公。そんな彼女たちが「自分たちが試合に勝たなければ地球が滅ぶ」という衝撃の事実を突きつけられ、次第に自分自身の人生に真剣に向き合うようになっていく姿が描かれる。ねむようこ自身も中学、高校時代とバスケットボール部で活動しており、母校の協力を得ながら描かれたリアリティある描写も魅力のひとつ。

作品誕生のいきさつ

ねむようこは、コミックス4巻のあとがきで、本作『とりあえず地球が滅びる前に』誕生のいきさつについて次のように語っている。本作は学生時代、特に将来の目標などがなく悩んでいた友人へ、当時言ってあげられなかった自分なりの答えを託すつもりで描いた。その答えは当時の自分にとっても必要なものであり、当時の自分たちと同じ悩みを抱える読者に自分のメッセージを届けたい。

あらすじ

高校2年生の一ノ瀬寅子は、「恋人がほしい」という夢以外これといった目標のない、平凡だが楽しい日々を送っていた。しかしある日「神」を名乗る謎の男・神谷が現れ、寅子の所属する県立駄々草高校バスケットボール部が県大会で優勝できない場合、地球が滅んでしまうと告げられる。寅子たちは当初、神谷の言葉を冗談と思い信じずにいたが、自分たちの敗北が原因でイギリスが消滅してしまう。責任を感じた部員たちは、神谷の言葉を信じて熱心に練習するようになっていく。

登場人物

ねむようこは、コミックス4巻のあとがきで、登場人物たちの名前の由来について語っている。「県立駄々草高校バスケットボール部」の部員たちは自身の出身地でもある岐阜県の地名から、登場する高校は岐阜県の方言をもとに名付けた。しかし、メインキャラクターの一ノ瀬寅子雪丸加奈子に限り、ねむようこの愛猫である「トランプ」と「コト」から名付けた。

作家情報

ねむようこは、主に少女誌、女性誌で活躍中の漫画家。2004年『ナイトフルーツ』が「フィール・ヤング」2004年11月号に掲載されデビュー。他の作品に『ペンとチョコレート』『午前3時の危険地帯』などがある。誕生日は6月8日で、出身地は岐阜県。

登場人物・キャラクター

一ノ瀬 寅子 (いちのせ とらこ)

県立駄々草高校バスケットボール部に所属する2年生の女子生徒で、部では補欠。クラスは5組。前髪を眉上で切り揃えて、胸のあたりまで伸ばしたロングウェーブヘアと、そばかすが特徴。明るく元気な性格だが「恋人が欲しい」以外の望みは特にない平凡な生活を送っていた。しかし自分たちが県大会で優勝しなくては地球が滅ぶことを知り、真摯に部活に励むことになる。 バスケットボール部員だが得意技は3ポイントシュートのみで、他は選手としてはいまいち。家庭科部も兼部しており、それがきっかけで兼高葵と親しくなった。将来の夢はお嫁さんになることで、大学進学の意思は薄く進路に悩んでいる。

雪丸 加奈子 (ゆきまる かなこ)

県立駄々草高校バスケットボール部に所属する2年生の女子生徒。一ノ瀬寅子の幼なじみ。ポジションはフォワード。前髪を真ん中で分けて額を全開にして、胸のあたりまで伸ばしたストレートロングヘアと、三白眼が特徴。「雪丸」という苗字から、周囲には「ユキ」と呼ばれている。寅子とは家族ぐるみで親しく、一番の理解者ともいえる存在。 密かに寅子の兄の一ノ瀬辰男に想いを寄せている。

穂積 光代 (ほづみ みつよ)

県立駄々草高校バスケットボール部の部長兼マネージャーを務める2年生の女子生徒。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどの長さの内巻きボブヘアで、眼鏡と口元のほくろが特徴。落ち着いたおっとりとした雰囲気から、部員たちの母親的存在でもある。「胴上げ」に強い憧れを抱いており、たとえば部が県大会で勝利すれば、自分も胴上げに参加できるのではと考え、他の部員に比べ県大会優勝へ強い意欲があった。 神谷の語る地球崩壊の話を信じてさらに奮起するが、他の部員との意識の違いから、部にトラブルを引き起こしてしまう。

那加 史絵 (なか ふみえ)

県立駄々草高校バスケットボール部に所属する2年生の女子生徒。ポジションはガード。前髪を眉上で短く切り、癖のあるショートカットヘアをしている。一ノ瀬寅子とは仲が良く、毎日ギャグを言い合って盛り上がっている。

加納 琴子 (かのう ことこ)

県立駄々草高校バスケットボール部に所属する1年生の女子生徒。ポジションはフォワード。前髪を目の上で切り、胸のあたりまで伸ばしたロングヘアをツインテールにしている。太目の眉が特徴。部内でも真剣に取り組んでいる選手で、自分たちが県大会で優勝できないと地球が滅びることを知り、さらに強い意欲を持つ。一方で一ノ瀬寅子にコンプレックスを感じており、要領が良く、試合中の得点源でもある彼女のようになれないのを悔しく思っている。 ある一件から兼高葵に想いを寄せるようになっていく。

長森 りな (ながもり りな)

県立駄々草高校バスケットボール部に所属する2年生の女子生徒。ポジションはセンター。前髪を眉上で切ったベリーショートヘアをしている。県立駄々草高校バスケットボール部が県大会で優勝して地球が救われれば、自分たちがヒーローとなり、お金持ちになれると楽天的に考えている。好みの男性のタイプは、水泳部に所属している男性。

茜部 あゆみ (あかなべ あゆみ)

県立駄々草高校バスケットボール部に所属する2年生の女子生徒。ポジションはセンター。前髪を真ん中で分けて額を見せ、胸のあたりまで伸ばしたロングヘアをポニーテールにしている。携帯電話をラインストーンでデコレーションするのが好き。剃毛が面倒なため、もしも願いが叶うのであれば「一生すね毛が生えてきませんように」と願おうと考えている。

竹鼻 たかこ (たけはな たかこ)

県立駄々草高校バスケットボール部に所属する1年生の女子生徒。部では補欠。前髪を眉上で切り揃え、肩につくほどの長さの髪を三つ編みにしてまとめている。細い目と、やや太り気味なのが特徴。入部理由はダイエットするためであり、他の選手に比べて技術が低いことに悩んでいる。しかし驚異的なダーツの腕を秘めており、その力が意外にも県立駄々草高校バスケットボール部を救うことになっていく。

兼高 葵 (かねたか あおい)

県立駄々草高校家庭科部に所属する3年生の男子生徒。前髪を左寄りの位置で斜めに分けたストレートヘアをし、いつもアーガイル柄のものを身につけているので、周囲から密かに「アーガイル」と呼ばれている。器用で穏やかな雰囲気の美少年だが、ややズレた言動や行動から、周囲には不思議な人物として知られている。一方で家庭科部の女子生徒たちには非常に人気があり、アイドル的存在でもある。 一ノ瀬寅子とは部活動が同じなことから親しく、寅子が恋人募集中であるのを知り交際を持ちかける。寅子が気になったきっかけは顔のそばかすで、そばかすに注目しているうち、いつも楽しそうな寅子自身に惹かれ、一緒に過ごしたら楽しそうと考えるようになった。

神谷 (かみや)

神を自称する謎の若い男性。前髪を真ん中で分け、胸のあたりまで伸ばしたロングウェーブヘアをひとつに結んでいる。容姿は非常に美しいが、どこか頼りなく、県立駄々草高校周辺をうろうろしていることから不審者扱いされている。自分のミスで地球が滅ぶことになり、県立駄々草高校バスケットボール部が県大会で優勝しない限り崩壊を回避できないことを知る。 そのため地球に降り立ち、部員たちに協力を願い出ることになる。しかし肝心の部員たちは自分の話をまるで信じないため、悩んでいる。不可能を可能にする神通力を持つが、あと5回しか使用できないことから、基本的には使わないようにしている。地球では非常に貧しい生活を送っており、アルバイトをしながら暮らしている。人間以外の生き物にも化けたことがある経験からか、写真を撮ろうとすると頭が人間ではなく、うさぎやラクダなど、別の生き物として写ってしまう。

ゆーな

県立八斗亀商業高校バスケットボール部の顧問を務める若い女性。前髪を眉上で切ったショートカットヘアと、厚めの唇が特徴。顧問としては非常に厳しく、試合中にミスがあれば部員を怒鳴りつけることもある。神谷とは関係を持ったこともあるが交際する意思はなく、あっさり彼のもとから去ってしまった。

神田川(教師) (かんだがわ)

県立駄々草高校バスケットボール部の顧問を務める年配の男性。前髪を眉上切った短髪ヘアに、四角い眼鏡をかけている。穏やかな雰囲気だがバスケットボールには詳しくなく、作戦も毎回同じなことから、部員たちには「ゾーン」しか知らないのではないかと思われている。ある日突然姿を消し、第二の神である神田川(神)にポジションを奪われてしまう。

神田川(神) (かんだがわ)

一ノ瀬寅子たちの前に現れた2人目の神。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、癖のある黒髪をしている。神谷が地球を守るために不正をし、たとえば神通力を用いて県立駄々草高校バスケットボール部を優勝させたりしないか見張るために地球にやってきた。生真面目な性格で、人間の生活を知ろうと意欲的。しかし結果的にそれが神谷に迷惑をかけてしまうこともあるのには気づいていない。

一ノ瀬 辰男 (いちのせ たつお)

一ノ瀬寅子の兄で、サラリーマンとして働く25歳の男性。リーゼントヘアに長く伸ばしたもみあげと、あごひげを生やしている。雪丸加奈子とも親しいため、加奈子からは「辰兄」と呼ばれている。学生時代はバスケットボールをしており、寅子と加奈子がバスケットボールを始めたのは辰男がきっかけ。

一ノ瀬寅子の母親 (いちのせとらこのははおや)

一ノ瀬寅子と一ノ瀬辰男の母親。前髪を眉上で切って左寄りの位置で斜めに分け、肩につかない長さのふんわりとしたボブヘアをしている。やや太り気味な体型。雪丸加奈子とは家族ぐるみで親しく、「片方の乳房で寅子を、もう片方の乳房で加奈子を育てた」と冗談を言うほどの関係。やがて神谷とも知り合い、貧しくあまり栄養を摂っていない神谷にも食事を振る舞い、家族同然に親しく接するようになる。

家庭科部の部長 (かていかぶのぶちょう)

県立駄々草高校家庭科部の部長を務める女子生徒。前髪を真ん中できっちりと分けて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばした髪を三つ編みにしてまとめている。目が細く眼鏡をかけている。元々週に1回のみ家庭科部に参加予定だった一ノ瀬寅子が、地球崩壊の話を知った途端さらに顔を出さなくなったため、家庭科部の活動はどうするのかと心配し声をかける。 兼高葵のことは、他の家庭科部員たちと共にアイドル視している。

生川高校の女子生徒 (なまかわこうこうのじょしせいと)

生川高校バスケットボール部に所属する女子生徒。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、胸のあたりまで伸ばした毛量の多いストレートロングヘアをしている。派手なメイクと、染髪した髪の生え際が黒く戻ってしまっている「プリン頭」が特徴。県立駄々草高校バスケットボール部とは新人戦で対戦し、試合中に一ノ瀬寅子に怪我を負わせてしまう。 試合後にそれを謝罪したのがきっかけで親しくなり、以来寅子と一緒に遊びに行くようになる。県立駄々草高校バスケットボール部の部員同士は仲が良くないと捉えており、部活に行かず自分と遊んでいる寅子を案じている。

神沼 (かみぬま)

神様の一人で、神谷と神田川(神)の仲間。鯉の姿をして地球に現れる。神谷とは公園で偶然再会し、県立駄々草高校バスケットボール部についての愚痴を聞くことになる。神谷はてっきり神沼が監視役として出向いてくれると思っていたが当てが外れ、実際は神田川(神)がやってきたことを残念に思っている。地球では鯉の恋人がおり、彼女と過ごすためにも地球を守ってほしいと神谷を応援する。

神野 (じんの)

神様の一人で、神谷と神田川(神)の仲間。黒猫の姿をして地球に現れる。県立駄々草高校バスケットボール部が県大会で優勝しなくては地球が滅ぶという事態については深刻に捉えておらず、「今は地球が一番アツい」と面白がっている。星が消滅するところに立ち会うのが好きで、むしろ滅びを望んでいる節もある。

ポロロッカ

県立駄々草高校の生物教師・武藤が飼っているイグアナ。性別はメスなのか「ちゃん」付けで呼ばれている。武藤からの頼みで兼高葵が面倒を見ていることが多く、よく葵と一緒に校内を散歩している姿が目撃されている。しかし周囲にはポロロッカの飼い主は葵だと思われており、それがますます彼の「不思議ちゃん」疑惑を加速させている。

集団・組織

県立駄々草高校バスケットボール部 (けんりつだだくさこうこうばすけっとぼーるぶ)

県立駄々草高校のバスケットボール部。穂積光代が部長とマネージャーを兼任する。顧問は神田川(教師)が務めている。実力は県内では平均的で、前年度は県大会2回戦で敗退という平均的な成績を残した。部員たちの意欲はあまり高くなく、技術を上げたいと思いつつも、部活後の寄り道や、部員同士の親交を深めることの方に夢中な部員が多い。 一ノ瀬寅子たちの代となっても、成績についてはそれほど大きな期待を寄せられていなかったが、県大会で優勝しなくては地球が滅んでしまうと知り、部の雰囲気は次第に変わっていく。

県立八斗亀商業高校バスケットボール部 (けんりつやつとかめしょうぎょうこうこうばすけっとぼーるぶ)

ゆーなが顧問を務めるバスケットボール部。県立駄々草高校バスケットボール部と練習試合をすることになり、神谷はゆーながバスケットボール関係者であることを知った。前顧問が非常に厳しく、怒ると部員の髪の毛を引っ張ることから、ベリーショートヘアの部員が多い。現在は顧問がゆーなになったので、そのような問題は発生しないが、依然として厳しい指導のもと活動している。 ベリーショートヘアなのに加え大柄な部員が多く、優秀な選手として名が知られる「フウガ」と「ライガ」がいる。やがて県大会でも県立駄々草高校バスケットボール部と戦うことになる。

生川高校バスケットボール部 (なまかわこうこうばすけっとぼーるぶ)

県立駄々草高校バスケットボール部と新人戦で試合することになったバスケットボール部。生徒の素行が悪いことで知られており、学校が山奥にあることから「隔離されている高校」として知られている。派手な容姿の部員が多く、さらに不自然なテーピングをしている部員がいるなど、部全体の活動意欲は低い。

輪内高校バスケットボール部 (わっちこうこうばすけっとぼーるぶ)

県立駄々草高校バスケットボール部と新人戦、県大会で試合することになったバスケットボール部。実力は平均的で、県立駄々草高校バスケットボール部とは同一程度の実力。そのため、要所要所で県立駄々草高校バスケットボール部の前に立ちはだかり、互角の試合を繰り広げることになる。

その他キーワード

ドリーミング★キャリー

一ノ瀬寅子が子供の頃に好きだったアニメ作品。古い作品だが、寅子の母親がDVDを所持していたため、寅子と雪丸加奈子が幼い頃一緒に鑑賞していた。現在でも寅子は、作中に登場する虹色のカップケーキとお城に憧れており、カップケーキについては実際に食べてみたいと考えていた。しかしそれを兼高葵に話したことで、思わぬトラブルが発生してしまう。

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