とんがり帽子のアトリエ

とんがり帽子のアトリエ

魔法使いにあこがれるふつうの少女のココが、魔法の秘密を知り、事故で母親を石にしてしまったのをきっかけに、魔法使いになるための修業を始める。三人の同世代の少女達と共に、魔法使いとして、そして人間として成長していくココの姿を描いた本格ファンタジー。講談社「月刊モーニングtwo」2016年9月号から連載。2022年8月、同誌がWebマンガサイトとして再創刊され、本作の連載も引き継がれた。「全国書店員が選んだおすすめコミック2018」で第1位に選出。

正式名称
とんがり帽子のアトリエ
ふりがな
とんがりぼうしのあとりえ
作者
ジャンル
ファンタジー
 
魔法使い・魔法少女
レーベル
モーニング KC(講談社) / 講談社キャラクターズA(講談社)
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

幼い頃に謎の魔法使いから不思議な本とペンを買って以来、魔法に強いあこがれを抱いていた仕立て屋の娘のココは、ある日、魔法使いのキーフリーが魔法を使っている場面を盗み見る。ココは、魔法とは資質のある人間が不思議な力を使ってかけるものだと捉えていたが、実際は特別なインクで決まった魔法陣を描く事で魔法は発現していたのである。それを知ったココは、早速例の本とペンを使って本に描かれていた魔法陣を描く。しかし、これは石化の魔法であった。ココは間一髪でキーフリーに助けられたものの、ココの母親とココの自宅は石化し、本も行方不明になってしまう。このままではいけないと考えたキーフリーは、ココ自身に石化を解く魔法を探させるため、そして個人的な目的のために、ココを自分の弟子として迎えるのであった。こうして魔法使いの弟子となったココは、同じく弟子である同世代の少女のアガット・アークロムテティアリチェリットと出会う。しかしアガットは、本来魔法使いになる資格のない一般人「知らざる者」であるココが気にくわず、認めてほしければ明日キーフリーが不在のうちに、魔法使いの弟子入りのための試験「王の許し」を受けて、合格しろと言い出すのであった。

第2巻

「王の許し」に合格したココは、晴れてキーフリーの正式な弟子となった。キーフリーはそんなココに早速専用の魔材を与える事にし、ココ達五人は魔材屋「星の剣(ほしのつるぎ)」へ買い物に行く。しかし買い物中、ココは幼い頃に出会った謎の魔法使いを発見する。ココはアガット・アークロムテティアリチェリットも巻き込んで追いかけるが、罠にはまって四人は謎の空間に捕らえられてしまう。脱出には空間内のどこかにある魔法陣を探す必要があるが、魔法陣は危険な巨鱗竜が守っていた。そこでココは、テティアのオリジナル魔法をアガットとリチェリットのサポートで増幅させ、巨鱗竜の気をそらす作戦を立てる。作戦は成功してキーフリーも駆けつけた事で、四人は無事謎の空間から脱出するのであった。そして、この事件を重く見たキーフリーは、謎の魔法使いが残していった魔法陣と魔墨を、ノルノアに調べてもらう事にする。こうして五人は帰宅し、同時にキーフリーのアトリエに住むもう一人の魔法使いであるオルーギオも戻り、アトリエはさらににぎやかになる。しかしその直後、近くの橋が崩れ、辻馬車に乗った数名が橋の上に取り残されているという報せが入る。それを聞いたキーフリーとオルーギオはすぐに現場へ向かおうとするが、早く魔法使いとして成長したいアガットは、自分も手伝わせてほしいと二人に頼み込む。

第3巻

ココアガット・アークロムは、川に落ちたクスタスの救出に成功したが、ココの魔法は予想をはるかに超える威力で周囲一帯を砂に変えてしまう。そこに駆けつけた魔警騎士団は、禁止魔法が使われたと判断し、二人の記憶を消そうとする。間一髪、キーフリーが駆けつけた事で二人は事なきを得るが、キーフリーは、ココが「星の剣(ほしのつるぎ)」で買った魔墨に原因がある事に気づく。この魔墨は、誰も気づかないうちに例の謎の魔法使いが魔法をかけて改造しており、この魔墨で描いた魔法は、本来よりも格段に高い威力で発現するようになっていたのである。そこでキーフリーは、いっしょにこれに気づいたノルノアの記憶を消し、この魔墨を手掛かりに謎の魔法使いを追う事にするのだった。一方その頃、ココは「星の剣」で働く少年のタータと親しくなるが、彼が生まれつき「銀彩症」という、色が判別できない病気である事を知る。タータも魔法使いになりたかったが、このために断念せざるを得なかったのである。その直後、体調を崩したココは病院に運ばれるが、急患でキーフリーや看護師達は席を外す事になる。そこに偶然現れたタータは体調が悪化したココを助けるために、薬品庫から、色以外に判別要素のない薬を探す事になる。

第4巻

アガット・アークロムリチェリットは、別のアトリエの魔法使いであるユイニィも交えて、「五芒星試験」の第2の試験「騎士の忠誠」を受ける事になった。しかし、一刻も早く合格したいアガットに対しリチェリットは乗り気でなく、合格できなくても構わないと考えていた。それでも三人は試験監督のアライラの指示に従い、護衛対象である海獣鳥(メルフォン)に正体を悟られないよう、コースを進んでいく。しかし三人が難所を超えた直後、突如「つばあり帽」と呼ばれる危険な魔法使いが現れ、最初に狙われたアライラが行方不明になってしまう。残された三人は「つばあり帽」から逃げながら合格を目指すが、リチェリットは自分の好みに偏るあまり基本的な魔法を習得しておらず、危機に陥る。そんなリチェリットを助けたのは、ユイニィであった。これによってリチェリットは己の考えの甘さを反省し、ユイニィに感謝するが、その直後ユイニィは「つばあり帽」の手によって化け物に姿を変えられてしまう。ユイニィを助けたいが、海獣鳥を放っておくわけにはいかないアガットとリチェリットは、二手に分かれて進む事にする。一方その頃、外で待っていたキーフリーココテティアは、事態に気づいたものの敵の襲撃を受け、キーフリーが大ケガを負ってしまっていた。

登場人物・キャラクター

ココ

キーフリーに師事する、魔法使い見習いの少女。本来魔法を使う資格を持たない一般人「知らざる者」である。黄緑色の髪の前髪を、長く伸ばして目が隠れないよう左寄りの位置で斜めに分け、髪を肩より少し上の高さまで伸ばした内巻きボブにしている。明るく好奇心旺盛な性格で、発想力に長けて機転が利く。父親を病気で亡くしてからは、母親と二人暮らし。幼い頃お祭りへ出かけた際、仮面をつけた謎の魔法使いから、不思議な本とペンを買う。これがきっかけで魔法に強いあこがれを抱くようになるが、本とペンを何に使うのかはわからず、ずっと保管していた。しかしある日、魔法使いのキーフリーが魔法を使う現場を盗み見た事で、これなら自分にも使えるのではと試してみたところ、禁止魔法を発現し、母親を石化させてしまう。その後、事態を知ったキーフリーに保護され、石化魔法を解くために彼の弟子として魔法使いを目指す事になった。実家の手伝いをしていたため、紙に製図するよりも、布に製図する方が得意。また、直線を引くのがうまい。新しい家となったキーフリーのアトリエでは、アガット・アークロムと同室になった。

アガット・アークロム

キーフリーに師事する、魔法使い見習いの少女。アトリエでは、ココのルームメイトでもある。黒の癖毛を前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、髪の毛を顎の高さまで伸ばしたもじゃもじゃのボブにしている。名門アークロム家の娘で、まじめでクールな、自分にも他人にも厳しい性格。魔法使いとして順調に力をつけているが、実家ではそれでも実力不足と判断されている。結果、成長を急ぐあまり自分に対する理想が非常に高く、また勉強の邪魔をする者を決して許さない。ココとは、ココがキーフリーのアトリエに迎えられてすぐに出会うが、魔法について無知なだけでなく、そもそも本来魔法を使う資格のない「知らざる者」である彼女が気に入らず、冷たく当たっていた。しかしココといっしょに過ごすうち、彼女の失敗を恐れない前向きな人柄や、発想力に長け、機転の利く柔軟な姿勢を見て、次第に考えを改めていく。少しでも勉強量を増やしたいと思うゆえに、休憩時間も一人で勉強する事が多く、テティアやリチェリットとはあまり打ち解けていない。だが決して仲間達を嫌っているというわけではなく、誰かが危機に陥った際にはリーダーシップを発揮する。

テティア

キーフリーに師事する、魔法使い見習いの少女。癖のあるピンク色の髪の前髪を目の上で切って真ん中で分け、胸の下まで伸ばしたロングウェーブをハーフツインにしている。明るく親しみやすく、世話焼きで心優しい性格。また間違いに気づいた際にはすぐに反省し、改める事のできる素直さを持つ。人に親切をしてお礼を言われるのが好きで、ココともアトリエにやって来た際に最初に話しかけ、すぐに打ち解けた。幼い頃、空飛ぶ雲に乗って眠りたいという夢を抱き、魔法使いの弟子になってからは実際にその魔法を開発している。そのため、五つの試験に合格して一人前になったあとは世界中を旅して、自分のオリジナル魔法で人を幸せにしたいという夢を持っている。また、その暁には魔法使いの証であるとんがり帽子も、自分好みの二つの角があるオリジナルデザインのものをかぶりたいと考えている。アトリエではムードメーカー的役割を果たし、「知らざる者」であるココに率先して魔法に関する知識を与えている。特に歴史に関しては先生役になる事が多い。

リチェリット

キーフリーに師事する、魔法使い見習いの少女。水色の髪の毛を、前髪を眉上で短く切り揃え、髪の毛を腰まで伸ばしたストレートにしている。あだ名は「リチェ」。クールで感情が表に出ないタイプだが、なんだかんだで付き合いがよく、たまにだじゃれのような事も言う。キーフリーに師事する前は、別の魔法使いと師弟関係を結んでいた。しかし、正しく定められた手順で魔法を教えたいという師匠の方針と、自由に自分好みの魔法を学び、オリジナル魔法をどんどん作りたいというリチェリットの希望が合わず、関係を解消してキーフリーの下へやって来た。自分の意思を尊重しない大人というものを毛嫌いするようになっており、また自分好みでない魔法は勉強したくないと頑なになってしまっている。結果、習得魔法に偏りがあり、オリジナル魔法をいくつも完成させている一方で、基礎的な魔法を覚えていないという弱点がある。アトリエにおいては、テティアとは比較的仲がよく、ココの事もすぐに受け入れた。しかし、アガット・アークロムの事は、性格がよくないと評しており、あまり親しくない。

キーフリー

魔法使いの若い男性。ココ、アガット・アークロム、テティア、リチェリットの師匠でもある。また、オルーギオとは親友といえるほど親しい。「五芒星試験」のすべてに合格しており、弟子を取る事が許可されている。銀色の癖のある髪の毛を、前髪を目が隠れるほど伸ばして左寄りの位置で斜めに分けた短髪で、眼鏡をかけている。穏やかで落ち着いた性格で、弟子達にも一人一人丁寧に接する、一見理想の師匠に見える。しかし、目的のためには手段を選ばないところがあり、特に個人的に追っている「つばあり帽」がかかわると、有無を言わせずに自分の意思を通そうとするわがままな一面がある。ココとは、ある日ココの母親の店に客として訪れた時に出会った。その際、ココから仮面をつけた謎の魔法使いの話を聞き、「つばあり帽」と関係しているのではと不審に思う。そこで詳しく話を聞こうとしていたところ、ココが禁止魔法を使って母親と自宅を石化させてしまうのを目撃。一度は「知らざる者」であるココの記憶を消そうとしたが、自分が「つばあり帽」と思われる謎の魔法使いを追うためにも、ココの母親の石化を解くためにも、ココが必要であると判断。弟子として自分のアトリエに招く事になる。

オルーギオ

魔法使いの若い男性。キーフリーのアトリエに住む。キーフリーの親友でもあり、「見張りの眼(まなこ)」と呼ばれる、郊外の小さなアトリエで起きた問題が隠匿されないように見張る仕事をしている。「五芒星試験」の内、第4の試験「女王の祝福」までに合格しており、独立して魔法使いとして働く事が許されているが、もともと弟子を取る気がないため、第5の試験「賢者の教示」は未受験。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした黒の短髪。口髭と顎髭を生やしている。一見冷たくぶっきらぼうに見えるが、実際は心優しい性格の持ち主。魔法器を作る仕事をしており、代表作は踏むと光る石畳「灯石道(とうせきどう)」。そのほかにも、暖房となる小さな石「ほっか石」など、人の暮らしをよりよくするための魔法器作りに力を注いでいる。ココがキーフリーのアトリエに来た日には仕事で不在で、アガット・アークロム達よりも遅れてココと出会った。その際、ココこそが禁止魔法を使った結果保護された「知らざる者」である事を知り、当初は魔警騎士団に引き渡すべきであると考えていた。しかし、キーフリーとココの強い意志に押され、仕方なくキーフリーのアトリエで暮らす事を了承した。ふだんは魔法器の制作で忙しく、同じ家に住んでいても顔を合わせない事が多い。

ノルノア

年老いた男性。泥森の街、カルンにある魔材屋「星の剣(ほしのつるぎ)」の店主を務める。タータの祖父でもある。スキンヘッドで口髭と顎髭を長く伸ばし、六芒星形の眼鏡を額と目にかけている。額の左側には、ほくろとシミがいくつもある。明るく親しみやすい性格で、キーフリーとも仲がいい。ココとはキーフリーの紹介で知り合い、初めて魔材屋に来店したココに銀葉樹の事を教え、ココに合った魔材を見つける手伝いをした。その後、自分がココに売った魔墨が「つばあり帽」によって改造されていたという事実を知るが、誰にもこの件を知られずに「つばあり帽」を追いたいキーフリーの手によって、記憶を消されてしまう。

タータ

泥森の街、カルンにある魔材屋「星の剣(ほしのつるぎ)」で働く少年。ノルノアの孫。癖のある赤の髪の毛を、前髪を眉上で短く切った短髪にしている。ややぶっきらぼうだが、親切で心優しい性格。「銀彩症」と呼ばれる、生まれつきすべての色が銀色に見える持病を抱えており、これが理由で魔法使いになる事を断念している。ココとは、キーフリーがココ達を伴って「星の剣」に来店した際に出会い、のちにココが「知らざる者」でありながらキーフリーの弟子になった事を知る。その直後、体調を崩したココに薬を飲ませるため、同じ瓶に入っている、色以外の点で判別が難しい薬を探す事になる。これがうまくいった事でココと打ち解け、また銀彩症であっても、自分の努力次第で道は開けるのではと前向きになった。ペン作りが得意で、将来ココにぴったりのペンを作りたいと考えている。

ユイニィ

クックロウに師事する、魔法使い見習いの少年。前髪を両目が完全に隠れる位置で切り揃えた短髪にしている。まじめで勉強家だが、気弱で自分に自信の持てない性格。さらに緊張しやすく、人前では手が震えて魔法陣をうまく描く事ができない。そのため、いつも実力を発揮する事ができず、魔法使いになる第2の試験「騎士の忠誠」にすでに2回失敗している。それをクックロウに責められては、ますます自信をなくすという悪循環に陥っていた。だが3回目のチャレンジで、アガット・アークロムとリチェリットと同行する事になり、リチェリットに励まされた事で、自分なりのやり方で試験を進める事に成功する。しかし、これによってようやく自分に自信を持ち始めた直後、「つばあり帽」の手によって化け物に姿を変えられてしまう。

アライラ

魔法使いの若い女性。キーフリーの知人。前髪を眉上で短く切り、茶色がかった灰色と、赤のツートンカラーの髪の毛を、角のように上に向かって立てたボブにしている。褐色肌を持ち、少し乱暴な男性のような口調で話す。明るい性格の姉御肌で、「五芒星試験」の試験監督を務める事もある。アガット・アークロム、リチェリット、ユイニィが三人いっしょに第2の試験「騎士の忠誠」を受けた際も試験監督として同行したが、途中で現れた「つばあり帽」に襲われ行方不明となる。しかしその際、外で待っているキーフリーに、自分の帽子を使って危機を知らせた。

クックロウ

魔法使いの中年男性。ユイニィの師匠にあたる。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、肩につくほどまで伸ばしたウェーブボブにしている。ユイニィの事をなにをやってもだめな落ちこぼれとみなしており、責めるような言葉を投げかけたり、冷たく無関心に接すしたりする事が多い。この結果、ユイニィはさらに自信をなくしてしまっている。特にユイニィが「騎士の忠誠」試験に2回も失敗している事には呆れており、ユイニィがアガット・アークロム、リチェリットといっしょに3回目の試験を受けた際も、見届けずにすぐ帰ってしまった。このため、キーフリーとアライラには、師匠としてのありかたを疑問視されている。

ココの母親 (ここのははおや)

仕立て屋の店主を務める女性。ココの母親。夫は病気で亡くしており、ココと二人暮らし。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、胸の高さまで伸ばしたロングヘアを、長い布で一つにまとめて2回結んでいる。ココが魔法使いにあこがれている事は知っていたが、ココが魔法使いになるために自宅を離れてしまえば自分は一人ぼっちになってしまうのと、そもそも資質のないココが魔法使いになれるはずはないと考え、反対していた。しかし、ある日ココのかけた禁止魔法、石化の魔法の被害に遭い、石化してしまう。現在はキーフリーの魔法によって保護された自宅の中で安置されている。

クスタス

水難事故に巻き込まれた少年。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、肩につくほどまで伸ばしたストレートセミロングヘアを、頭の低い位置で一つに結んでいる。ある日、父親のダグダや仲間達と共に辻馬車で積み荷を運んでいたが、その途中で橋が崩れてグダと分断される。そして、いっしょに辻馬車に乗っていた仲間と共に橋の真ん中に取り残されてしまった。その後、キーフリーとオルーギオによって救出されるが、積み荷をあきらめきれず、この川の流れなら自分でも回収できると判断して、再度川へ向かった際に今度は崩落事故に巻き込まれる。しかし、ココとアガット・アークロムの機転により救われた。

その他キーワード

魔法 (まほう)

魔墨を用いて紙などに決まった図形の組み合わせを描く事で発動する不思議な力。三つの要素で構成されており、中央を「紋」、紋の周辺に書かれる線を「矢」、紋と矢を囲う円を「陣」と呼ぶ。魔法は「紋」の種類によってどのような魔法になるかが決まり、「矢」はその魔法の大きさ、方向を定める。そして最後に「円」で囲う事で魔法が発現する。基本的には道具に対してかけるものであり、たとえばランプに明かりを灯すといった事に使用する。そのため、ココが誤って使った石化魔法のような、人体そのものにかける魔法は「禁止魔法」と呼ばれており、使用を固く禁じられている。かつては誰にでも使える身近なものであったが、何度も悪用され戦争の道具として使われた。その結果、わずかに残った良識のある人々が結託し、人々から魔法の記憶を奪い、秘密を守れる弟子にだけ魔法の使い方を教える方針に変更した事で、現在に至る。この決断をした日の事は「結託の日」と呼ばれ、結託の日以来、魔法は特別な人間にしか使えない力と考えられるようになった。そして、魔法を使えない人間の事は「知らざる者」と呼ばれるようになった。

魔材 (まざい)

魔法を描く時に使う道具。インクとなる「魔墨」、魔墨をつけて使う付けペン「魔描(まびょう)の杖」、木や石に魔法を描く時に使う「樹血(じゅけつ)の杖」、特殊な魔法を描く時に使う「魔材すりばち」、魔法陣を描くための手帳「魔円(まえん)手帳」などが該当する。また、魔材を販売する店を「魔材屋」と呼び、泥森の街、カルンにある「星の剣(ほしのつるぎ)」などが魔材屋に該当する。

魔法器 (まほうき)

魔法がかけられた道具。アガット・アークロムの持つ、靴の裏に魔法陣が描かれ、履くと宙に浮く事のできる靴「飛靴(とびぐつ)」などが該当する。魔法使い以外の者、つまり「知らざる者」でも使用できるため、世界中で重宝されているが、田舎よりも都会に設置されて使われている事が多い。魔法器は魔法使いになる試験「王の許し」を受けて合格し、正式に魔法使いの弟子となったあとの魔法使いにしか作成する事ができない。そのため、高値で取引されている。

魔墨 (まぼく)

「樹血(じゅけつ)」という特殊な墨で作られたインク。魔墨以外のインクでは魔法は発動しないため、魔法を使ううえで必要不可欠な存在。「銀葉樹(ぎんようじゅ)」という木の枯れた部分から抽出する事ができ、これをお湯に溶かして余分な水分を取り除くと、魔墨の原液となる。

つばあり帽 (つばありぼう)

現代においても禁止魔法を使う危険な魔法使い。古の時代によく使われていたつばのある帽子や仮面で顔を隠している事から「つばあり帽」と呼ばれる。幼いココに魔法陣の描いた本と魔墨の入ったペンを売った謎の魔法使いも、この「つばあり帽」の一員と考えられる。

魔警騎士団 (まけいきしだん)

「結託の日」に定められた掟に従い、禁止魔法に手を出した者や、魔法の秘密に触れた者の記憶を消し去る者達。通称「魔警団」。いわば魔法を守る魔法使いであるが、情を持たず規則で動き、例外を許さないという、機械的な行動を取る。

五芒星試験 (ごぼうせいしけん)

魔法使いを目指す者が、一人前になるために受ける五つの試験。第1の試験「王の許し」、第2の試験「騎士の忠誠」、第3の試験「門番の問い」、第4の試験「女王の祝福」、第5の試験「賢者の教示」で構成され、それぞれの試験会場を線で結ぶと五芒星の形になる。魔法使い見習いは、この五芒星試験を数字の若い順に順番に受け、「王の許し」合格で師を選ぶ事ができ、師を決めた時点で魔法使いの弟子として正式に認められる。「騎士の忠誠」合格では、人前で魔法を使ってもよくなる。「門番の問い」合格では「図書の塔」で行われる別の試験のチャレンジ資格が得られ、「女王の祝福」合格で、師のもとを離れる資格を得て一人前になれる。そして最後の「賢者の教示」に合格すると、弟子を取る事が許されるようになる。そのため、オルーギオのような弟子を取る気のない魔法使いは「賢者の教示」は未受験でもいい。試験会場はすべて古の魔法遺跡で、「結託の日」以前に人間が魔法を使って歪めてしまった土地で行われている。たとえば「王の許し」の試験会場であるダダ山は、かつてダダの王が、自分の王冠を最も高い場所に置きたい、戦場を見下ろしたいというだけの理由で宙に浮かせた場所で、現在もそのままになっている。

銀彩症 (ぎんだみしょう)

生まれつき視界に写るものが、すべて銀色に見えてしまう病気。そのため銀彩症の者は色の判別ができないというハンディキャップを抱えており、視力を尊ぶ傾向にある魔法使いにはなる事ができない。

フデムシ

蛇のように細長く毛むくじゃらの身体に、小さな手足が生えた小さな生き物。この毛がまるで筆のようである事から「フデムシ」と呼ばれる。魔墨の匂いに集まる習性を持ち、魔墨を持ち歩いている魔法使いの側に寄って来る事が多い。体毛の色はさまざまで、模様のあるフデムシもいる。木の実や果実を好んで食べる。

巨鱗竜 (どらごん)

4枚の羽根と長い尾を持ち、全身が鱗に覆われた巨大な竜。人里で見かける事はほぼなく、食性はさまざまで肉食の巨鱗竜も、草食の巨鱗竜もいる。縄張り意識が強く、近づくと尾を鞭のようにしならせて攻撃を仕掛けて来る事が多い。滑空する事もでき、火炎耐性を持つ。鱗や卵の殻は、非常に貴重とされている。

王冠草 (おうかんそう)

ダダ山脈だけに群生する草。花が、王冠のようなふっくらした形をしている事から、この名前が付いた。手に入る場所がごく限られている事から「五芒星試験」の第1の試験「王の許し」に用いられる。「王の許し」を受験する魔法使い見習いは、かつてダダ王が行使した魔法により、今でも宙に浮いたままになってしまっているダダ山まで行き、この王冠草を取って来る事が合格条件となっている。

書誌情報

とんがり帽子のアトリエ 13巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2017-01-23発行、 978-4063886900)

第2巻

(2017-08-23発行、 978-4065101384)

第3巻

(2018-02-23発行、 978-4065109304)

第4巻

(2018-09-21発行、 978-4065126813)

第5巻

(2019-05-23発行、 978-4065155974)

第6巻

(2019-11-21発行、 978-4065177785)

第7巻

(2020-05-22発行、 978-4065192665)

第8巻

(2020-12-23発行、 978-4065216255)

第9巻

(2021-07-21発行、 978-4065241004)

第10巻

(2022-04-21発行、 978-4065274125)

第11巻

(2022-10-21発行、 978-4065296059)

第12巻

(2023-06-22発行、 978-4065319697)

第13巻

(2024-02-22発行、 978-4065346525)

とんがり帽子のアトリエ 限定版 13巻 講談社〈講談社キャラクターズA〉

第7巻

(2020-05-22発行、 978-4065202661)

第12巻

(2023-06-22発行、 978-4065318294)

第13巻

(2024-02-22発行、 978-4065347270)

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