概要・あらすじ
夏休み間近の小学校。北山泰斗は、担任の藤根が自身の教育方針と今後の身の振り方に悩んでいるのを知る。彼女の実践重視の授業が気に入っていた泰斗は、それが間違っていないことを証明しようと考え、仲のいい岡谷内、久我と共にロケット製作を開始する。そんな彼らを見つめる一人の生徒がいた。彼は、この春に転校してきたばかりの三浦。
三浦もまた別の動機で、独自のロケットを製作していた。
登場人物・キャラクター
北山 泰斗 (きたやま たいと)
眼鏡が特徴の男子小学生。大人顔負けのロケットの知識を持つ。プライドが高く、自己中心的な傾向があり、それが原因でクラスメイト(特に三浦)と衝突することもしばしば。担任の藤根の教えの正しさを証明するため、ロケットを飛ばすことを思い付く。
三浦 (みうら)
北山泰斗たちのいる小学校に春に転校してきた少年。目つきが鋭く、陰のある大人びた雰囲気を漂わせている。ロケットに関する知識は泰斗を凌ぐほど。三浦もまた独自にロケット製作をしていた。その動機は不明だが、何かに急き立てられているかのように、余裕のない姿を見せている。同じくロケット製作をしている泰斗を、ことあるごとに挑発し、ついには彼が製作していたロケットを破壊してしまう。
岡谷内 (おかやうち)
北山泰斗のクラスメイトの少年。高い背と細い目が特徴。普段から仲のいい泰斗、久我と共にロケット製作を開始する。知識では他の二人には劣るものの、一番冷静で、正しい状況判断のできる人物。
久我 (くが)
北山泰斗のクラスメイトの少年。背が低く、小さい目が特徴。泰斗、岡谷内と共にロケット製作を開始する。気の弱そうな天然ボケ気味のキャラだが、要所要所で鋭い観察眼や閃きを発揮する。
辺島 (へじま)
北山泰斗のクラスメイトの少年。坊主頭が特徴。学校の成績が悪く、いつもボーっとしている。そのため、クラスメイトからは侮られているが、電卓を持たせると数学の才能を発揮し、ロケットの軌道計算から構造計算までこなしてしまう。図書室で出会った三浦に誘われ、彼のロケット製作に参加。
藤根 (ふじね)
北山泰斗のクラスの担任。お下げ髪に眼鏡、ジャージが特徴の若い女性教師。男勝りで体育会系ノリな教師で、泰斗たちのロケット製作の切っ掛けになった人物。教室を飛び出した実践重視の授業を行っており、泰斗たち一部の生徒には大変好評であるが、保護者や校長からの風当たりは非常に強い。最近では、今後の身の振り方について悩んでいる。 キャラクターの名前は作者の科学の恩師(男性)から取られている。
木下 (きのした)
北山泰斗たちの秘密基地近くにある木下鉄工所を営む老男性。三浦たちに場所と道具を提供し、彼らのロケット製作を手伝う。軍人時代に「噴進砲(ロケット弾)」の実験をしていたため、ロケットについての知識が少なからずある。
場所
秘密基地 (ひみつきち)
北山泰斗たちがたむろしている海に面した大きな洞穴。海と空に大きく開けた構造を利用し、数々のロケット実験をここで行う。元は戦時中に作られた施設で、木下とその上官・奥村少尉が非公式にロケット実験を行っていた場所だった。
その他キーワード
泰斗たちのロケット (たいとたちのろけっと)
北山泰斗、岡谷内、久我の三人が作っていた固体燃料式のロケット。構造が単純でエンジンを必要としないため、小学生でも製作が可能だろうという思惑のもとに作られていた。しかしある大雨の夜、三浦によって壊されてしまう。泰斗はそれを悪意によるものと思っていたが、後に扱っていた燃料の危険性と、固体燃料式ロケットの奥深さを知って愕然とする。 自分たちのロケットを失った泰斗、岡谷内、久我の三人はその後、三浦たちのロケット製作に合流する。
三浦たちのロケット
三浦が制作していたロケット。エンジンを必要とする液体燃料式のロケット。鉄工所を営む木下と、軌道計算、構造計算などをこなす辺島の協力を得て製作が実現した。後に北山泰斗たちも合流する。1500キロの距離を飛ぶよう設計された三段式ロケットで、三段目にはスピンモーターが取り付けられている。これはあることを意味するのだが、その三浦の思惑に気付いたのは泰斗だけだった。 作品中のロケットの設計は、現役のロケットエンジニア野田篤司によるもの。