あらすじ
児嶋加奈編(第1巻)
ふつうの高校生男子の佐藤一郎の通っている川沼西高校には、数々の不良を黙らせる国語教師の児嶋加奈が「鬼の児嶋」と呼ばれて恐れられている。ある日、一郎が男子トイレの個室に入ると、そこには加奈が座っていた。女子トイレが清掃中だったという理由で、仕方なく男子トイレに入っていた加奈は一郎に出て行くようにとうながす。しかし、その個室は鍵が壊れて開かなくなってしまい、二人はそのまま閉じ込められてしまう。加奈は必死に尿意を我慢するが、ほかの男子生徒がぞろぞろとトイレに入ってきた。実は加奈だけでなく一郎も尿意を我慢しており、密室に入ったままギリギリ状態の二人は、声を抑えたまま必死に尿意との戦いを続けるのだった。明くる日、授業をサボるために保健室に入った一郎はまたしても加奈に遭遇。高熱で寝込んでいる加奈を看病しようと、一郎は急いで薬を探そうとする。その後も一郎はあちこちで加奈に遭遇しては、ドジな彼女といっしょにいるだけで次々とハプニングに巻き込まれるようになる。時にはほかの生徒から怪しまれたり片思いしているアヤに誤解されたりなど、さまざまなトラブルに巻き込まれながらも、一郎はにぎやかな高校生活を送りながら加奈との親交を深めていく。
松風真由編(第2巻)
児嶋加奈と付き合い始めた佐藤一郎は、彼女と幸せに過ごしながらも相変わらずトラブル続きの日々を送っていた。一方、一郎の後輩の鈴木凛は、一郎が加奈と付き合い出した事に驚きつつ、いっしょに弁当を食べる相手がいなくなった事を嘆いていた。見た目に反して優しく繊細な凜は、強面のために友達がなかなかできず、クラスでも孤立しがちな寂しい日々を送っていた。そんな凜を気にかけている美術教師の松風真由は、誰にでも手を差し伸べる優しい姿から「聖母松風」と呼ばれ、多くの生徒たちから慕われている。真由は一人で弁当を食べている凛に優しく声を掛け、いっしょに弁当を食べながら彼を励まそうとする。真由の優しさに感動しながらおかずの交換をする凛だったが、彼は池に落ちそうになった真由を助けようとして彼女のパンツをずらしてしまう。それ以降も凛は、河川敷の清掃活動から満員電車、さらにはプールや放課後まであらゆる場面で真由といっしょになっては、毎回ハプニングに巻き込まれるようになる。一見、孤立しがちな凛を教師として心配するように見える真由は、過去の出来事から凛に対し、生徒以上の特別な感情を抱いていた。凛は真由のそんな気持ちには気づかないまま、いくつもの騒動を通して彼女との交流を深めていく。
葉桜ひかり編(第3巻)
川沼東高校の生徒会会計を務める高橋隆は、生徒会顧問であり幼なじみでもある自由奔放な体育教師の葉桜ひかりに昔から弟のようにかわいがられ、いつもからかわれている。そんなある日、隆は合同イベント「川沼祭」の打ち合わせのために、川沼西高校生徒会の松風さやと松風真由、鈴木凛を出迎える。隆は川沼西高校との打ち合わせ終了後、男勝りでがさつなひかりと穏やかで優しい真由の差にため息をつきながら帰宅するが、彼の部屋にはなぜかベッドに潜り込んだひかりの姿があった。幼い頃からいつもいっしょに遊んではからかってきたりイタズラばかりしてくるひかりは、隆の事をまるで異性と意識しておらず、現在でも彼に対して無防備な行動や言動が多かった。そんなひかりにベッドに引きずり込まれて抱きつかれた隆は、密着しているうちに彼女のブラジャーのホックがはずれてしまった事に気づく。ひかりにばれると確実にまたからかわれると考えた隆は、慌ててブラジャーをこっそり直そうとする。
立花千鶴編(第4巻)
生徒会会長を務めていた田中甲の通う川沼東高校の保健室には、「絶対零度の立花」と呼ばれるほどに冷たく無表情で場の凍るような発言をする、保健の先生の立花千鶴がいる。千鶴はあだ名どおりの冷たさで、生徒にも冷淡な態度を取るため、甲も彼女に冷たい態度を取られていた。そんな中、レストランでアルバイト中の甲のもとに、中学時代からの友人である佐藤一郎たちが遊びに来た。一郎と鈴木凛に年上の彼女ができた事を知った甲は焦りを感じ、「高校生活最後の3か月で彼女を作る」と宣言。だが、アルバイト先の同僚は男性ばかりで出会いがなく、学校でも女子と話す機会がほとんどない甲にとって、その宣言を果たすのは困難な事であった。彼女を作る方法を考える中、甲は店の廊下で客にぶつかって服を汚してしまう。しかし、そのお客はトイレに行って手を洗おうとしていた千鶴だった。甲は予備のワイシャツに着替えてもらうために千鶴を更衣室に連れて行くが、彼女はいきなり甲の目の前で汚れた服を脱ごうとする。それ以降も甲は千鶴とあらゆる場所で遭遇しては、無表情で何を考えているのかわからない彼女とのハプニングに振り回される事となる。事あるごとに自分から甲に絡んでくる千鶴にはある悩みがあり、甲に絡む理由もその悩みが深く関係していた。
ホムラ・フランチェスカ編(第5巻)
川沼西高校に入学した伊藤依人は、幼少期からあこがれている幼なじみの松風さやと再会する。そんな中、川沼西高校には天才少女のホムラ・フランチェスカが外国語指導助手として赴任してきた。依人とさやの幼なじみでもあるホムラは、二人と同じ学校に通いたいという理由で川沼西高校にやって来たが、実は幼少期から片思いしている依人に再会するためでもあった。しかし依人は、ホムラの事はあまり覚えておらず、ホムラはショックを受けながらも外国語指導助手としての仕事を開始。依人はさやに好かれるためにあらゆる努力をするが、ホムラにいつも突っかかられて絡まれる彼は、ホムラとの思わぬハプニングに巻き込まれる事が多くなる。依人はさやによけいな誤解をされないように必死で隠そうとするが、学校だけでなくさやの自宅や漫画喫茶、果ては依人の実家まであらゆる場所でハプニングが起こってしまう。そんな中、実家の近くでホムラと遊んでいた依人は、山中で鈴木凛と遭遇。凛はさやの先輩であるとともに、近々松風真由と結婚する婚約相手でもあった。さやの様子がいつもと違うのが気になっていた依人とホムラは凛の話を聞き、さやが姉の結婚を寂しく思って複雑な気持ちを抱えている事を知る。
猪川泉編(第6巻)
私立麻岡高校に通う渡辺渉は、高校3年生になってからほとんど学校に行かず、コンビニのアルバイトばかりして不登校気味になっていた。いつものようにアルバイトに励む渉だったが、彼の不登校を解消して学校に行かせようと、幽霊のように不気味な黒ずくめの女性が、突然渉のアルバイト先に現れる。その女性は学校内で「背後霊の猪川」というあだ名で呼ばれ、多くの生徒たちから怖がられている渉の担任教師の猪川泉であった。猪川は突然背後に現れては、生徒やほかの先生を恐怖に陥れる不気味で暗い先生として有名で、渉も彼女を避けて極力接触しないようにしていた。そんな泉は学校をサボってアルバイトばかりしている渉に「学校に来てください」と、不気味な声で囁きながら付きまとってくる。泉をあしらいながらウォークインの作業を続けようとする渉だったが、彼を追ってドアに挟まった泉は服が脱げて胸があらわになってしまう。商品棚の隙間から半裸になった泉と密着しているところを客に見られる危機がせまった渉は、アルバイトをクビになるのを恐れ、必死で彼女を隠そうとする。
岡本桜花編(第7巻)
山本大和が姉のように慕っている岡本桜花は、昔から頭がいい美人で、彼にとって自慢の幼なじみ。そんな桜花に片思いしている大和は、かつて彼女に言われた「足が速い人が好き」という言葉を受け、彼女を振り向かせるために努力し続けて100メートル走のタイムも上がり、インターハイにも出場する陸上選手として活躍していた。その一方で桜花は、「岡本さくら」の芸名で国民的アイドルグループ「ナタデコ娘」のリーダーを務める、人気アイドルとして活躍するようになっていた。あこがれの桜花が昔よりもずっと遠い存在になってしまった事を大和が寂しく思う中、彼の通う私立麻岡高校に桜花が教育実習生としてやって来る。ほかの生徒にはアイドルである事を隠さなければならない桜花に協力する大和だったが、彼女はいつもかけているメガネをなくし、体育倉庫に隠れたまま困っていた。桜花の役に立とうとメガネを探しに行こうとする大和だったが、体育倉庫の中に陸上部員が入ってきたため、彼は素顔のままの彼女を隠すために奮闘する。それ以降も大和は学校のあちこちや外出先で、時にはアイドルとして活動中の桜花と遭遇しては、スキャンダル級のアクシデントに巻き込まれてしまう。
登場人物・キャラクター
佐藤 一郎 (さとう いちろう)
川沼西高校に通う3年生の男子。年齢は18歳。家族は母親の佐藤咲と、まだ幼稚園児の妹の詩緒がいる。成績から運動神経、ルックスまで何もかもふつうの凡人。児嶋加奈の事は厳しく怖い先生と恐れていたが、学校内はもちろん母親の実家から近所のコインランドリーまで、行く先々で加奈に遭遇している。加奈の起こすハプニングに毎回巻き込まれながら、怖い印象の強い彼女に隠された内面を知っていき、親交を深めていく。元は同級生の女子のアヤに片思いし、告白するつもりでいたが、修学旅行で加奈の名誉を守ろうと奮闘した際に誤解され、ふられてからはほとんど会話していない。小学生の頃は周囲に馬鹿にされないために、川に何度も飛び込む事で大人に成長できるとカン違いし、橋から川に飛び込むという無謀な行為を繰り返していた。そんな中、進路に悩んでいた少女に出会い、引っ込み思案な彼女に勇気を与えて無意識に励ました。その少女が学生時代の加奈であったと知らずにいたが、のちに加奈が現在の強く厳しい女教師に成長したのは、過去の自分が原因であった事を悟る。それ以来、プライベートな場では昔のように呼んでほしいと加奈から頼まれ、なるべく「ねぇちゃん」と呼ぶようにしている。高校卒業がせまった頃に加奈と交際を始め、大学に進学後はアパートで一人暮らしを始め、毎日のように入り浸っている加奈に料理や掃除などの世話を受けている。
鈴木 凛 (すずき りん)
川沼西高校に通う2年生の男子。佐藤一郎の中学時代からの後輩。年齢は17歳で、趣味は一人温泉巡り。成績優秀で運動神経もよく、まじめで繊細な性格だが、筋肉質で強面なせいで周囲から避けられがちで、一部のあいだでは素行の悪い不良生徒だと悪い噂が流れている。このため、学校内には一郎以外に友人がおらず、クラスでも孤立しがち。自分の事を怖がらずに優しく接してくれる松風真由に感動して彼女を慕っているが、学校内からプライベートの場まであらゆる場所で彼女と遭遇しては、毎回ハプニングやピンチに巻き込まれている。しかし、真由がピンチの時は身を挺して彼女を守ろうとするなど、親切で勇敢な面もある。実は真由からひそかに片思いされているが、鈍感でまじめな性格が災いしてまったく気づいておらず、彼女に誤解されたり思わぬすれ違いを招いたりする事もある。料理が得意で、自分の弁当もよく自分で作っている。放課後はアルバイトや父親の仕事の手伝いなどをしているが、休日は幼稚園児の妹のすずと弟のれいの面倒を見る事もある。数年前、教員採用試験に遅刻しそうになっていた大学時代の真由と出会っており、靴が壊れて走れなくなった彼女を背負い、試験会場まで送り届けた。のちにアルバイトで松風さやの家庭教師となり、学校以外でも松風姉妹と過ごす機会が増える。
高橋 隆 (たかはし たかし)
川沼東高校校に通う1年生の男子。年齢は15歳。生徒会の会計を務め、田中甲の後輩でもある。同じ団地でとなり同士の葉桜ひかりとは幼なじみで、彼女を「ひか姉」と呼ぶ。中性的な顔立ちで、小柄な体形でおとなしい性格のため、昔からひかりにはからかわれがちで、時にはイタズラをされたり女装させられたりなどおもちゃにされている。ひかりからは「タカ」の愛称で呼ばれている。高校生になった現在でも何かとひかりに絡まれ、からかわれて振り回さているが、彼女からは子供扱いされがち。幼少期の出来事をきっかけに昔からひかりに思いを寄せており、告白するが茶化されてしまう。それ以来、ひかりに振り向いてもらうために、男らしくなって彼女に認めてもらおうと努力を重ねている。ひかりと教師と生徒という関係になってからはますます彼女に振り回される事が多くなり、学校内からプライベートの場まで彼女の起こすハプニングに巻き込まれては、いつも彼女のフォローに回っている苦労人。川沼西高校との合同イベントをきっかけに知り合った鈴木凛にあこがれており、彼を師匠と仰いで男らしさの手本としている。
田中 甲 (たなか こう)
川沼東高校に通う3年生の男子。メガネをかけていて、年齢は18歳。生徒会長を務めていたが卒業が近いためにすでに引退しており、放課後はレストランでアルバイトをしている。生徒会で同じだった高橋隆の先輩でもある。佐藤一郎や鈴木凛とは同じ中学出身で、時々彼らと会っている。感情表現が豊かだが少々見えっ張りで、一郎と凛に年上の彼女ができた事を知り、高校卒業までの残りの3か月で彼女をつくると宣言した。それ以来、彼女をつくろうとあらゆる努力をしているが、アルバイト先の同僚が男性ばかりなうえに、学校で女子ともあまり話した事がない。クリスマスまでに彼女をつくるために細かい計画表を作るなど几帳面な性格の持ち主。保健室の立花千鶴とあちこちで遭遇しては、無表情で冷たい彼女とのハプニングが続く日々を送っている。当初は何を考えているかわからない千鶴を敬遠し、彼女に振り回されるたびに困惑していたが、ハプニングや交流を重ねるうちに、無表情な彼女に隠された内面や悩みを少しずつ知っていく。福引で当たったペア旅行で千鶴と石垣島に旅行に行って色々な表情を見てからは、彼女に思いを寄せるようになり、千鶴からも思いを寄せられている。しかし、口数の少ない彼女の言葉を誤解してショックを受ける事が多い。
伊藤 依人 (いとう よりと)
川沼西高校校に通う1年生の男子。年齢は15歳。実家は学校から2時間ほどかかる田舎町にある。学童保育の先生であり、マドンナでもあった幼ななじみの松風さやに幼少期から思いを寄せており、彼女を「さや先生」と呼んで慕っている。また、さやと同じ高校に通うために猛勉強し、川沼西高校に入学した。ホムラ・フランチェスカとも幼なじみだが、当時の彼女の日本滞在期間が1か月程度であったため、彼女の事をあまりよく覚えていない。入学時に再会したホムラと交流を重ねるうちに、昔の彼女と過ごした日々を少しずつ思い出していく。何かとホムラに突っかかられては彼女とのハプニングに巻き込まれているが、ホムラの思いにはまったく気づいていない。趣味は洋画鑑賞で、気に入っている映画の台詞はすべて覚えている。当初はホムラの事を厄介者のように思っていたが、勉強を教えてくれる事には感謝しており、彼女と遊ぶのも楽しいと思っている。ホムラと再会したあともさやへの気持ちは変わっていなかったが、手違いである映像を見てしまったのをきっかけに偶然彼女の気持ちを知り、それ以降はホムラの事が気になっている。
渡辺 渉 (わたなべ わたる)
私立麻岡高校3年生の男子。年齢は18歳。3年生になってから、学校をサボってコンビニのアルバイトに明け暮れている。金のためではなく、ただ楽しいからという理由でアルバイトをしているため、給料のほとんどを母親に渡している。同じアルバイト先の先輩である佐藤一郎と仲がいい。いつものようにアルバイトに励んでいたところで、担任の猪川泉に遭遇して学校に行くようにせまられて以来、行く先々で彼女と遭遇してはハプニングに巻き込まれたり、彼女の不気味な言動や行動を怖がったりしている。当初は泉の事を不気味に思って避けていたが、ハプニングや交流を重ねるうちに、本当は優しく生徒思いな先生であるという彼女の本質を知っていく。泉の健気で努力家な一面や、時々見せる笑顔などには惹かれているが、彼女の言動を誤解して不気味に思う事も多い。家に車はないが、校則違反を承知の上で運転免許をすでに取得している。中学生までは陸上部だったために運動神経がよく、100メートル走は11秒台で走れる。ほとんど不登校だったため、同級生の顔や名前を把握しておらず、泉の協力を得て修学旅行の感想文を書くまでは留年寸前だった。
山本 大和 (やまもと やまと)
私立麻岡高校2年生の男子。陸上部の主将を務めている。幼なじみの岡本桜花を幼少期から尊敬し、片思いしている。桜花に「足が速い人が好み」と言われてからは振り向かせるために走る努力をし続けていた。特に短距離走に励み、100メートル走を10秒台で走れるようになって、インターハイにも出場する有名な陸上選手となった。部活では練習の虫で、悩みがあると気持ちをすっきりさせるために走る事もある。あこがれの桜花が人気アイドルになってからは、遠い存在になった彼女となかなか会えないのを嘆いていた。しかし、教育実習生として私立麻岡高校にやって来た桜花と再会してからは、学校だけでなく部活の遠征やプライベートな場まで、あらゆる場所で彼女に遭遇してはハプニングに巻き込まれている。学校ではアイドルである事を隠している桜花に協力し、好かれるために役に立とうとしたり、俊足を生かして彼女を守っている。部活で活躍している反面、推薦入学だったために学業はからっきしで体育以外の成績はかなり悪く、桜花から時々勉強を教わっている。努力家で健気でひたむき、子供っぽい面があり、桜花には昔からかわいがられている。陸上大会前日、新記録を出したら桜花に告白すると宣言するが、日々の過剰な練習による疲労骨折で足を痛めてしまう。
児嶋 加奈 (こじま かな)
川沼西高校で国語教師を務める女性。年齢は23歳。学校新聞の「怖い先生ランキング」で1位に選ばれたり、不良生徒から毎日頭を下げられるほどに厳しく怖い先生として、「鬼の児嶋」と呼ばれて生徒たちから恐れられている。他校の不良生徒を一人で撃退するなど、ケンカが非常に強い。気が強く、自分がどんな窮地に陥っても威圧感を絶対に消さず、警戒や威嚇も欠かさない。一方、何かとピンチやハプニングを招きやすいドジっ子で、校内、校外を問わずにあらゆる場所で佐藤一郎と遭遇しては、彼を巻き込んでいる。一郎の母親の佐藤咲とは年が離れているが同郷の幼なじみで、彼女を通して時折プライベートで一郎といっしょに過ごしている。学生時代は現在とは異なり、メガネをかけたおとなしく地味な少女だった。進路に悩んでいたところで小学生の少年と出会っており、彼に励まされて怖くても勇気を出して飛び込んでいく事の大切さを知り、教師を志すようになった。のちに、咲を通してその少年が一郎であった事を知った。それ以来、一郎からは学校以外の場では昔のように「ねぇちゃん」と呼ばれている。厳格に振る舞っているものの、元は引っ込み思案で照れ屋な性格で、一郎の前ではそれらの弱い一面を見せる事がある。男性経験や性知識には乏しく、子供の作り方をまともに知らない。実は雷が苦手。
佐藤 咲 (さとう さき)
佐藤一郎の母親。児嶋加奈とは年齢が離れているものの、同郷の幼なじみで仲がいい。加奈の事は昔から娘にしたいほどかわいいと思っており、いずれは息子の一郎と恋仲に導き、結婚させようと考えていた。また、加奈が一郎を「幼なじみの息子」と認識して敬遠するのを避けるため、あえて彼女に息子を紹介したり直接会わせたりするのを避けていた。明るく世話好きな性格で、強気な加奈と鈍感な一郎の仲を進展させるためにおせっかいを焼いては、二人の関係を後押ししている。
松風 真由 (まつかぜ まゆ)
川沼西高校で、美術教師と生徒会顧問を務める女性。誰にでも手を差し伸べる、すべてを包み込むような包容力と親しみやすさから「聖母松風」と呼ばれ、多くの生徒に慕われている。同僚の児嶋加奈とは職員室の席がとなりで、彼女を「加奈ちゃん」と呼んでいる。また、加奈と佐藤一郎が付き合っているのも知っている。水泳が非常に苦手。友人ができずにいつも孤立しがちな鈴木凛を心配し、何かと気にかけている。実は大学4年生の時に、教員採用試験に遅刻しそうになったところを凛に助けられており、現在でも彼に対しては生徒以上の特別な感情を抱いている。しかし、凛には気持ちをまったく気づかれておらず、鈍感でまじめな彼の悪気のない言動を誤解したり、ショックを受けたりする事もある。優しくおっとりしているがドジで天然な面があり、校内、校外を問わずにあらゆる場所や校内行事で凛と遭遇しては、彼をハプニングに巻き込んだり、逆に巻き込まれたりしている。だが、いざという時には、危険をかえりみずに助けようとしてくれる凛の優しさを知っており、教師であると同時に彼のよき理解者としても気遣い、積極的に話しかけては優しく接している。年齢の割に幼い見た目で、飲食店でお子様向けセットを買うなど子供っぽい一面もある。妹の松風さやとアパートで二人暮らしをしている。
松風 さや (まつかぜ さや)
川沼西高校に通う1年生の女子。生徒会の会計を務めている。松風真由の妹で、真由とアパートで二人暮らしをしている。メガネをかけた黒髪の少女で、真由と異なり、大人っぽくクールな性格の持ち主。のちに両親によって家庭教師として鈴木凛を就けられる事となる。当初は凛の事は怖い不良の先輩だと誤解していたが、彼に勉強を教わるうちに打ち解けていく。真由と凛のあいだで起こるハプニングを何度か目撃しており、時々巻き込まれる事もある。真由と凛の関係を怪しく思い、何度も真由から弁解されながらも、凛の事を「真由の体を狙う男」だと誤解して警戒し続けている。幼なじみのホムラ・フランチェスカと伊藤依人の事は弟妹のようにかわいがっている。のちに3年生に進級してからは生徒会長を務めるようになり、新たに川沼西高校に入学した依人と、外国語指導助手として赴任したホムラと再会する。昔、学童保育で子供たちに勉強を教えていたため、依人からは今でも「さや先生」と呼ばれて慕われている。天然な真由よりもしっかり者だが、凛との結婚が決まった彼女を祝福しつつも、離れる事を少し寂しく思っている。
葉桜 ひかり (はざくら ひかり)
川沼東高校の体育教師を務める女性。年齢は22歳。生徒会と水泳部との顧問をしているため、肌は日焼けしており、いつもジャージ姿。明るく天真爛漫な性格だが少々がさつで自由奔放なため、年齢の割に子供っぽい。同じ団地のとなり同士で幼なじみの高橋隆からは「ひか姉」と呼ばれており、彼の面倒を幼少期から見ていた。昔から隆をからかったりイタズラをする事が多く、現在でも彼に絡んではよく振り回している。また高校生になった隆とは教師と生徒という関係だが、お転婆で子供っぽい性格が災いし、学校や家などでよくピンチに陥っては、隆をあらゆるハプニングに巻き込んでいる。一方で、雨に濡れてカゼを引きそうになった隆を抱き締めて温めてやるなど、面倒見がよく優しい一面もある。隆の事はからかいがいのある弟のように思い、当初は異性としてまったく意識していなかった。隆からの告白を茶化していたものの、いくつかの出来事から隆の男らしさや成長に気づいては焦りやとまどいを感じ、彼の事を少しずつ異性として意識するようになる。同僚の立花千鶴とは仲がよく、生徒に親しまれないと悩む彼女の相談相手になっている。
立花 千鶴 (たちばな ちづる)
川沼東高校の養護教諭を務める女性。年齢は24歳。銀髪で、表情もめったに変えないクールな性格をしている。生徒相手でも場を凍りつかせるほどの冷たく容赦のない発言が多いため、生徒たちから「絶対零度の立花」のあだ名で呼ばれている。幼少期からいつも無口で無表情なため、両親など一部の親しい人以外からは、何を考えているのかわからないと評される事が多い。また、男子の前でいきなり服を脱ぐなど、無防備で天然な一面もある。同僚の葉桜ひかりとは仲がよく、悩み事を相談している。好きな漫画の影響を受けて生徒に親しまれる先生を目指しているが、無表情で笑わないために誤解を生みやすく、いつもうまくいかない事に悩んでいる。ひかりから「生徒の事をもっとよく知るべき」とアドバイスを受け、田中甲が自分と正反対に表情豊かであると気づいてからは、彼の事が気になっている。以来、校内からプライベートな場まであらゆる場面で甲に遭遇したり、自ら絡んでハプニングに巻き込んだりしては、いつも彼を困惑させている。幼少期から自分の持ち物に名前を書く癖があり、現在でもビデオカメラから下着まですべての私物に名前を書いている。実家を出て養護教諭になってからは一人で過ごす事が増え、態度には出さないがひそかに寂しさを感じていた。趣味はビデオ撮影と星空を見る事。
ホムラ・フランチェスカ
海外から川沼西高校に赴任してきた外国語指導助手(ALT)の少女。年齢は16歳で、愛称は「ホムちゃん」。見た目は幼いがわずか15歳で海外の大学を卒業した天才少女で、学士号も取得している。物理学や生物学、言語学などさまざまな分野で活躍しているが、人付き合いや恋愛には少々不器用。幼少期は日本に1か月だけ滞在していた事があり、その時に出会った伊藤依人と松風さやと同じ学校に行きたいという理由で、好待遇の仕事を断って川沼西高校にやって来た。さやからは妹のようにかわいがられているが、依人にはあまり覚えられていない。昔、川辺でお漏らしをした時に依人に助けられてから、彼の事が気になっている。依人には何かと自分から突っかかっているもののあまり素直になれず、ツンデレな態度が多い。子供っぽい性格で、下着もウサギのマークが入った子供っぽいデザインを着用している。料理はあまり得意ではないが、幼少期から母親によく作ってもらった事からアップルパイ作りが得意。赴任したばかりの頃は生徒に教えるのがあまり得意ではなく、授業も不評だったが、生徒の好みなどを調べる事ですぐに克服した。来日した現在も仕事で忙しく、時々海外の大学に戻っている。VR技術研究の実験中、実験の補助をしていた依人にある映像を偶然見られ、彼に恋心を知られてしまう。
猪川 泉 (いのかわ いずみ)
私立麻岡高校で地理と歴史の教師を務めている女性。年齢は24歳。黒ずくめの服装に目元が隠れるほどの長い黒髪で、背後に突然現れては生徒を恐怖させる事から「背後霊の猪川」のあだ名で呼ばれる。渡辺渉が不登校になってアルバイトばかりしているのを見かねて、彼のアルバイト先に現れて登校するようせまる。生徒たちからは不気味だと怖がられているが、実はとても優しく生徒思いの人物。学生時代は影が薄いために同級生や先生に存在を覚えてもらえず、あまり学校が好きではなかった。教師となった現在は、昔の自分のような悲しい思いをする生徒を出さないため、学校が楽しい場所だと教えるために努力している。また、生徒の名前からプライベートな情報まですべてメモをとって暗記しており、渡のアルバイト先や勤務期間、今の家に引っ越してきた時期、さらには100メートル走のタイムまで把握している。背後霊のように見えるのも、実際は生徒たちを見守ろうと行動しているためである。しかし、話し方や笑い方が時々気味悪くなる事から、生徒たちからは誤解されがち。家族を含めて運動音痴で、走るのが苦手。まだ幼い弟の猛がおり、幼稚園の運動会に行って垂れ幕で応援するなど、弟思い。また、弟との二人三脚のために走る練習をするなど、健気で努力家な面もある。寝相がかなり悪く、寝ながら服を脱ぎ出す事がある。ホタルを見るのが好き。
岡本 桜花 (おかもと おうか)
山本大和の4歳年上の幼なじみの女子大学生。アイドルユニット「ナタデコ娘」のリーダーを務めており、「岡本さくら」の芸名で活動している人気アイドル。ふだんはメガネをかけて髪を後ろで縛っているが、アイドル活動中は髪を下ろしてメガネも外している。アイドルとしてはおバカキャラクターを演じているが、実際は勉強の鬼。昔からまじめで頭がよく、幼い大和に勉強を教えたりいっしょに遊んだりしていた。アイドルになってからは大和と疎遠気味だったが、彼の通う私立麻岡高校に教育実習生として赴任し、1年後にはアイドルを辞めて本格的に教師を目指すつもりでいる。学校ではアイドルである事を隠しているため、大和以外の生徒には正体を知られていない。おバカキャラをうまく演じられるのも勉強ができるからと考えており、教育実習生としてはもちろん、アイドル活動にもまじめに取り組んでいる。大和の事は昔からかわいいと思って恋心を寄せているが、教育実習生として再会してからは教師と生徒の距離を保つために敬語で話し、クールでそっけない態度を取っている。昔から教師を目指していたものの、他人と話すのが苦手で克服するためにアイドルになったが、陸上選手として活躍する大和に釣り合う女性に変わるためでもあった。勉強は得意だが運動は大の苦手。
林 林檎 (はやし りんご)
アイドルグループ「ナタデコ娘」メンバーの女性。仕事ではおしとやかに振る舞っているが、実は少々男勝りな姐御肌タイプで、面倒見のいい性格をしている。リーダーの岡本桜花を通して山本大和と知り合い、二人の仲を応援している。
竹松 小梅 (たけまつ こうめ)
アイドルグループ「ナタデコ娘」メンバーの女性。メンバーの中で最も背が低く、明るくイタズラ好きで子供っぽい性格をしている。リーダーの岡本桜花を通して山本大和と知り合い、二人の仲を応援している。
木口 杏 (きぐち あんず)
アイドルグループ「ナタデコ娘」メンバーの女性。控えめでおとなしい性格だが、少々天然で大胆な一面もある。リーダーの岡本桜花を通して山本大和と知り合い、二人の仲を応援している。
書誌情報
なんでここに先生が!? 11巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
(2017-01-06発行、 978-4063829044)
第2巻
(2017-09-06発行、 978-4065101506)
第3巻
(2018-01-05発行、 978-4065108048)
第4巻
(2018-05-07発行、 978-4065113806)
第5巻
(2018-10-05発行、 978-4065131572)
第6巻
(2019-03-06発行、 978-4065148075)
第7巻
(2019-06-20発行、 978-4065157473)
第8巻
(2019-09-06発行、 978-4065169827)
第9巻
(2019-12-06発行、 978-4065178584)
第10巻
(2020-05-07発行、 978-4065195413)
第11巻
(2020-11-06発行、 978-4065213353)
なんでここに先生が!? 特装版 10巻 講談社〈プレミアムKC〉
第10巻
(2020-05-07発行、 978-4065195598)