あらすじ
第1巻
特殊詐欺組織員として、偵察隊いわゆる「下見屋」の仕事をしている山木は、とある車を運ぶ任務を依頼される。指定された場所まで車を運転するだけで、報酬は15万円。車に薬物や武器、または死体などのヤバいものが積まれていることは明白だった。途中、給油のためにガソリンスタンドに立ち寄った山木は、トランクからの物音で、何者かが閉じ込められていることに気づく。トランク内に拘束されていたのは、2億円の金を持ち逃げして組織に捕まった若い女だった。その女は、逃げるために手を貸してくれたら1億円を渡すと、山木に話を持ちかける。(Case02「下見屋の密命」。ほか、9エピソード収録)
登場人物・キャラクター
長井 進
Case01「ある警官とフリーターの悶着」に登場する。子供の頃から刑事になることにあこがれている巡査長の男性。年齢は29歳。100分の1といわれる狭き門をかいくぐり、30歳までに必ず刑事になると意気込んでいる。手柄を焦るあまり、さほど怪しくもない坂本祐一に職務質問を行う。
坂本 祐一
Case01「ある警官とフリーターの悶着」に登場する。精密機械加工業で契約社員として働いている男性。年齢は25歳。2年間働いている会社で正社員になれるかどうかの瀬戸際に立たされており、ダメだったら四国の実家の寂れた豆腐屋を継がなければならない。上司に呼び出されて正社員になるためのチャンスが訪れ、会社に向かう途中で巡査長の長井進から職務質問で足止めされ、焦っている。
山木
Case02「下見屋の密命」に登場する。特殊詐欺組織に所属しており、偵察隊いわゆる「下見屋」の仕事をしている男性。ふだんは特殊な裏名簿に基づき、老人宅への架空の訪問販売を装って、カモにできそうな資産家の老人を探す仕事をしている。訳ありの車を運ぶ仕事の途中で、トランクに閉じ込められている若い女を発見する。
ハル
Case03「コウちゃんと一緒」に登場する。親子三人が暮らす山田家で、1年前から飼われているオスの犬。春に飼われたので、「ハル」と名づけられた。飼い主であるコウちゃんを慕っており、コウちゃんの投げたフリスビーを空中でキャッチできた時に一番の幸せを感じている。愛する山田家に何かがあった時は、絶対に役に立ちたいと考えているところで、コウちゃんが交通事故に遭ってしまう。
川田 洋
Case04「パパとの修羅場」に登場する。キャバ嬢の理佐と同棲をしている若い男性。高校時代に傷害事件を起こして入学1か月で退学した。その後、暴走族に身を置きながらアルバイトをしていたが、そのアルバイト先で上司を殴って逮捕。さらに窃盗でも逮捕され、中等少年院に収監されていた過去がある。現在は内装業の会社で非正規社員として働いていると言っているが、実際はすでに辞めており、理佐のヒモ同然の状態となっている。
飯塚 協一
Case05「六十三歳の選択」に登場する。タクシー会社に勤務する運転手の男性。年齢は63歳。一人娘を嫁に出し、今は妻と二人で暮らしている。引退する先輩から車を譲り受け、個人タクシーを始めようかと考えていたところ、出産間近の妊婦とその夫を乗客として乗せることになる。個人タクシーの運転手になるには、3年間無事故無違反という規定があるが、一刻も早く妊婦を病院へ運ぶために交通法規を破らなければならない状況に直面し、決断を迫られる。
新見 晴斗
Case06「三月二十八日」に登場する。芸術大学を卒業し、デザイン会社に勤める男性。年齢は31歳。入社以来10年間、毎年3月28日には必ず会社を早退する。その日は、大学時代の友人と桜の名所に集まるのだが、とある目的のために桜のまったく見えない路上で座り込み、友人と酒を酌み交わす。
タケ
Case07「金の成る木」に登場する。大麻らしきものを手に入た若い男性。、同棲している彼女といっしょに自宅で栽培して一儲けしようと考えている。狭いアパートから引っ越し、マンションで栽培を始めるが、タコ足配線が原因で火事を起こし、警察に大麻栽培のことを知られてしまう。
神田
Case08「髪ングアウト!?」に登場する。とある会社の営業職を務める男性。業績の悪い部署のコストカッターと噂される、新しい副支店長の男性を迎え入れる。その副支店長にヅラ疑惑があり、同僚との飲み会で盛り上がる中、とある事実をカミングアウトする。
矢野
Case09「全身全霊のプロポーズ」に登場する。新商品のプロモーションのために出張してきた会社員の男性。3か月前、4年間交際した彼女にプロポーズして、結婚を控えている。いっしょに出張にきていた上司から風俗に誘われ断ったものの、上司が気を利かせて勝手に呼んだデリヘル嬢を、仕方なく宿泊するホテルの部屋に迎え入れる。
野崎 亮
Case10「なんで!?」に登場する。ギャンブルにハマって借金を繰り返している若い男性。高校在学中に投稿した小説が芥川賞候補にノミネートされ、若手作家への仲間入りを果たした。しかし、その後ギャンブルで人生を狂わせ、十数年ぶりに再会した地元の高校の同級生が勤める街金から金を借りている。飼っている捨て猫が、売れば2000万円にはなるという貴重な三毛猫のオスだと知るが、野崎亮の分身のように感じている猫を売ることはできず、最後の競馬勝負に人生を賭ける。
理佐
Case04「パパとの修羅場」に登場する。川田洋と同棲をしているキャバ嬢の女性。川田との交際を始めて5か月になる。川田に惚れているため、折半するはずの家賃をここ3か月払っていない川田に対しても強くは言えない。
堺 吾郎
Case04「パパとの修羅場」に登場する。川田洋と同棲している理佐のマンションを突然訪ねてきた男性。警備会社を経営しており、理佐からは「パパ」と呼ばれている。極真空手の実力者で、腕っぷしも強い。興信所を使って川田の経歴を調べており、こんなクズ男とは別れるよう理佐を説得する。