にしむく士

にしむく士

『はいからさんが通る』他で知られる大和和紀が『ベビーシッター・ギン!』と同時期に連載を開始した作品。舞台は江戸時代。御徒組(おかちぐみ)に仕官するため、田舎から大江戸にやってきた仲村半四郎とその妻、ゆきえ、息子の太郎。平和な一家を軸に巻き起こる騒動を描いた大江戸人情コメディ。講談社「BE・LOVE」1997年8号から2001年8号まで連載。

正式名称
にしむく士
ふりがな
にしむくさむらい
作者
ジャンル
時代劇
 
ヒューマンドラマ
レーベル
BE LOVE KC(講談社)
巻数
全5巻完結
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『鬼平犯科帳』と同じく江戸時代後期が舞台

本作の舞台となるのは江戸。作者あとがきによると、作者の大和和紀と担当編集が、池波正太郎の『鬼平犯科帳』ファンという理由で、時代設定は「鬼平さんと同じ」とされているため、江戸時代後期、天明から寛政年間あたりである。主人公は御徒という、将軍のお出ましの際に徒歩で付き従う下級武士とその妻。房州佐倉(現在の千葉県)から江戸の組屋敷に引っ越した夫婦の目を通して、下級武士や江戸庶民の暮らしや日々の小さな事件を描いている。なお、作者によれば、グルメブームや美少女アイドルが存在したり、武士が完全なサラリーマンだったりと、江戸時代は現代とそっくりだという。

庶民ざむらいの夫婦を生き生きと描く

作者あとがきによれば、テレビの時代劇で主人公に斬られて消えていく、その他大勢の下っ端武士の存在が、本作執筆のきっかけだという。彼らにも家族はあるだろうにという興味から、庶民ざむらいの生活を調べたところ、「悲惨、気の毒、みじめ」だった。生活はギリギリで、アルバイトをしなければ子どもも育てられず、昇給は一生なしというものである。しかし、そんな彼らも元気な江戸の住人であり、悲惨なだけではなかったはず。本作は、庶民ざむらいの夫婦にスポットをあて、彼らがたくましく生きていく姿を描いている。

夫婦や家族の愛を描いた人情コメディ

御徒という役職の武士は、「組屋敷」に同じ組のものがまとまって住むことになっている。御徒六番組の組屋敷に引っ越してきた半四郎、ゆきえ夫妻に影響を与えるのは、半四郎の上司で組頭の尾花兵庫とその妻ふくである。兵庫は、旗本の家に生まれながら、愛人の子どもだったことから居場所がなく、尾花家の婿養子となった男である。兵庫は、出世に興味を持たず、非番の日には庶民の長屋に入り浸っている変わり者。そんな上司に失望する半四郎だったが、様々な事件を経て「よく笑う元気者のかみさんが家にいる。それこそが百万石にも勝るお宝」という兵庫の言葉を理解していく。兵庫は毎朝、江戸の西に見える富士山を拝む。富士山は山の神であり、山の神とは妻のことである。本作のタイトル「にしむく士」には、夫婦や家族の愛というテーマが込められている。 

登場人物・キャラクター

仲村 半四郎 (なかむら はんしろう)

将軍に仕える御徒組同心の男性。房州佐倉出身の21歳で、身分は御家人。剣術に優れ、田舎の道場では師範代を務めていた。また書道も得意。2年前に庄屋の娘、ゆきえと祝言をあげ、太郎という男の子に恵まれた。真面目で優しい性格で、ゆきえに楽をさせてやろうと、出世の機会を窺っている。

ゆきえ

半四郎の妻で、明るく元気で働き者の19歳の女性。房州佐倉の庄屋の娘で、2年前に半四郎と祝言をあげ、太郎という男の子に恵まれた。夫の仕官に伴い、江戸の御徒の組屋敷へ引っ越してきた。周囲の助けを借りながら、子育てや家事に奮闘する。

書誌情報

にしむく士 全5巻 講談社〈BE LOVE KC〉

第1巻

(1997-12-09発行、978-4063178357)

第5巻

(2001-06-11発行、978-4063190151)

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