あらすじ
第1巻
中山文は、周囲も羨むイケメン夫の中山和真と平穏な結婚生活を送っていた。しかし、結婚2年目のある日、文は和真のスマートフォンに届いたハートの絵文字付きの意味深なメッセージを目にしてしまう。まさか夫に限ってという文の気持ちを裏切るかのように、和真の帰宅時間は忙しさを理由に日に日に遅くなっていた。クリスマスを間近に控え、文は12月24日の結婚記念日にだけは二人で過ごしたいと和真に懇願。和真からは、会社の都合で終電に間に合いそうもないと一度は断られるものの、その後強引に約束を取り付けることに成功する。結婚記念日当日、文はエステで全身をピカピカに磨き上げ、新しいワンピースに袖を通して、特別なディナーも準備万端整えた。あとは和真の帰宅を待つだけとなった文のもとに、今日は帰れそうもないという和真からのメッセージが届く。それは、すべての努力が裏切られた瞬間でもあった。和真の口から直接言い訳を聞こうと電話をかけてもつながらず、故意に電源を切って連絡を絶っていることを知り、文の気持ちはどんどん荒んでいく。明朝5時、和真を迎えることに嫌悪感を感じた文は、みじめな自分でいたくないと家を飛び出す。そして、近所のファミリーレストランに向かい、3年前に和真からプロポーズを受けた日に思いを馳せる。
第2巻
中山和真の浮気を疑った中山文は、学生時代からの友人、三浦香住の協力で、浮気相手らしき女性、立川さとみのSNSアカウントを特定する。そこには不倫を匂わせる文言など、知りたくない情報がたくさんちりばめられており、それを目にした文は傷つき、悔しさで涙を流して絶望する。そんな中、和真の実家である長崎に行くことになった文は、精神的な不安から体調を崩し、寝込んでしまう。文の体調を心配した両親は、もしかしたら妊娠しているのではないかと誤解し、ちょっとした騒ぎになってしまう。慌てて否定したものの、冷静になった文は子供という存在が、今崩れつつある夫婦関係をつなぎ止めることになるのではないかと考え、和真に子作りを提案する。渋る和真をなんとか説得し、さっそく妊活に勤しむことを決めた文は、二人で不妊治療のクリニックを訪れる。もともとあまり乗り気ではなかった和真は、そこでの検査やつねに夫婦生活を管理されることに屈辱を感じ、精神的に追い詰められていく。そんなある日、クリニックで偶然にも友人の今井優香と遭遇。いつものノリで話しかけると、必死の様相で妊娠を否定しようとする優香に、文は違和感を感じる。看護師から受け取った母子手帳を見ても、妊娠は明らかだったが、優香は慌てて手帳を隠すとバツが悪そうにクリニックをあとにする。後日、文は友人の江藤菜摘と石川多恵から、優香が夫の今井佳樹からモラルハラスメントを受けていることを知らされる。文は夫婦の問題は、子供を持つことだけで解決できることではないことを実感し、妊活について改めて考えさせられることになる。
第3巻
中山文は、友人の今井優香が死にたいとさえ考えるほど、重大なモラルハラスメントの問題を目の当たりにして、その解決のために奔走する。それにより、改めて自分の不安や弱さと戦うことを心に誓い、夫の中山和真の浮気疑惑と向き合うことを決意する。浮気の証拠集めもなかなかうまくいかず、文が精神的に疲弊していた時、偶然にも和真の同僚の高梨克己と顔を合わせることになり、克己の口から衝撃の事実を知らされる。それは、和真と立川さとみが不倫関係にあるという、文がずっと懸念していたものだった。気が動転した文に追い打ちをかけるかのように、克己は自分と肉体関係を持たないかと強引にせまって来る。しかし、そこを偶然通りかかった樋口亮に助けられ、事なきを得る。それをきっかけに、協力者として亮の手を借りることにした文は、一旦家を出て、文の母が住むアパートへと転がり込む。その後、亮の広い人脈を利用した調査の最中、さとみがホテルに入っていったという情報をつかむ。亮からの連絡を受けて文が現場に駆け付けると、さとみが男性とホテルから出てきたところを目撃し、ショックのあまり倒れそうになりながらも、冷静に接触を試みる。
第4巻
夫の中山和真の浮気相手が、中山文の学生時代からの友人、畑野さやかだったことを知った文は、友人たちとの飲み会で、罠を仕掛ける。これにより、さやかと和真の決定的な会話を録音することに成功した文は、沸き上がる怒りを抑えたまま、夫といつもどおりの生活を送っていた。そんな中、協力者の樋口亮に呼び出されて出向くと、立川さとみとの不倫の弱みを握られた高梨克己が、少々無理矢理ではあるが、協力してくれることになる。克己がこっそりと和真のバッグに仕掛けたGPSで、和真とさやかがホテルのバーにいることを確認した文は、二人からじっくり話を聞くために覚悟を決めて亮と共にバーに向かう。雰囲気のあるバーには、和真とさやかの姿があった。文が和真の前に姿を現すと、和真は一瞬間をおいて大きく動揺し、状況を察する。あまりのショックに言葉が出ない様子の文を見て、さやかは不敵な笑みを浮かべて悪態をつく。この場で話をするわけにもいかず、部屋に移動することにした一行は、部屋で待機していた克己も含めた五人で話を始める。和真とは去年から付き合っていると言い張るさやかは、自分の気持ちを一方的に主張して文を攻撃し続ける。文は友達に裏切られたショックから、ただ立ち尽くしてしまう。そんな中、亮は文を守るかのように、ひるむことなく追及を続けるが、和真は言葉少なにうなだれていた。二人で会っていた理由を問われた和真は、その理由を語り始める。
第5巻
中山和真は、すべてを明らかにしたあと、畑野さやかと健を警察に引き渡し、被害届を出して自分の家に帰宅する。家で待っていた妻の中山文に警察でのことを報告すると共に、和真は文をねぎらうように優しく語りかける。問題がようやく解決したと考えていた和真に対し、涙する文から放たれた言葉は、別居したいという予想外のものだった。文の言葉にショックを受けつつも、文の気持ちを尊重しようと考えた和真は、それを承諾。これは二人に必要な時間なんだと、和真は自分に言い聞かせようとする。こうなることは予想できたはずなのに、文に甘えていたことに気づいた和真は、失意の中、文に会いたい気持ちに押しつぶされそうになりながら一人苦しみもがく。自分たち夫婦はこの先どうなってしまうのか、後悔と不安でいっぱいになりながら、和真は文と出会ってから現在に至るまでに思いを馳せ、夫婦の歴史を振り返り始める。5年前、元彼女と別れたばかりだった和真は、同僚の高梨克己から強引に誘われ、合コンに参加していた。そんな和真の前に姿を現したのが、知的な雰囲気を漂わせた文だった。
関連作品
小説
本作『にぶんのいち夫婦』は、夏川ゆきのの小説『にぶんのいち夫婦』を原作としている。原作小説版は「エブリスタ」に投稿された。なお漫画版には、中山和真視点で描かれる『にぶんのいち夫婦』の続編『隣に眠るキミがいない』の内容も含まれている。
登場人物・キャラクター
中山 文 (なかやま あや)
中山和真の妻。通販会社のコールセンターでパートとして働いている。年齢は29歳。長身でスレンダーな体型ながら、背が高いことはどちらかというとコンプレックスに感じている。江藤菜摘、今井優香、三浦香住、石川多恵、畑野さやかとは学生時代からの友人で、時おり集まってはお酒を飲みながら愚痴を言い合って交流を続けている。ある日、和真のスマートフォンに、立川さとみからハートの絵文字が入ったメッセージが送られてきたことで、和真の浮気を疑い始める。12月24日の結婚記念日に約束を反故にされたことが原因で、和真とケンカになり、夫婦関係がこじれていく。もともとセックスレスだったことにも悩んでいたが、綺麗になるための自分磨きを始めた矢先のことだった。それと共に、これまで共有していたスマートフォンのパスコードがなんの相談もなく変更されたことに気づき、和真への疑惑はさらに確実なものとなっていく。しかし、和真と離婚するつもりはないため、事を荒立てたくないという思いがある。そのため、和真を信じられなくなって傷つき、絶望しながらも、夫婦関係を再構築しようとする。だが、和真の同僚の高梨克己から、和真とさとみの浮気を肯定する言葉を聞くことになり、そのうえに克己から襲われそうになる。偶然通りかかったバイト仲間の樋口亮に助けられたことがきっかけで、亮と協力して和真の浮気の真相究明に乗り出す。そんな矢先、亮の協力で文が得た情報は、友達だと思っていたさやかが夫の浮気相手だったという信じがたい事実だった。
中山 和真 (なかやま かずま)
中山文の夫。飲食店などのマネジメントを行なう会社で課長を務めるイケメン男性。年齢は32歳。穏やかな性格ながら事なかれ主義で、執着心がまったくない。しかし神経質なところもあり、少々潔癖症気味。大学時代にイタリアンレストランでアルバイトをした経験から、料理が得意。身長185センチで、若い頃からモテるタイプだったこともあり、自分から好きになって付き合ったのは文が初めて。文と知り合った当時、文の友人の畑野さやかからかなり強引に言い寄られ、迷惑していた。文との一歩を踏み出すために、さやかには文と将来を見据えて交際したいと思っていることを明かし、正式に断った。2年後の文との入籍を翌日に控えた日、会社帰りにさやかと遭遇し、再び告白を受けることになる。これを改めて断ると、さやかが逆ギレしたため、一抹の不安を抱えることになるが、結婚式も無事に終え、幸せな結婚生活を送っていた。結婚生活も2年を過ぎた頃、会社の同僚との飲み会の席に、高梨克己を通して参加していたさやかと再会。その際、酒に睡眠薬を入れられたことを知らずに飲み干し、前後不覚となる。そのまま近隣のホテルに連れ込まれ、目を覚ますと、さやかと共にベッドに横たわっていた。何事もなかったと確信しているが、記憶がないためにそれを証明できず、さやかに負い目を感じてしまう。それ以来さやかに言われるがまま、文に噓をついて彼女に会うために時間を作るようになり、文からは疑惑の目を向けられることとなる。最初は文から、会社の部下である立川さとみとの関係を疑われるが、その後相手がさやかであることを知られ、二人でいるところを文に直撃されることになる。長崎の実家ではゴールデンレトリバーのチャイロを飼っており、犬好き。SNSのアイコンは、チャイロの写真を使用している。
樋口 亮 (ひぐち あきら)
男子大学生。年齢は20歳。参議院議員の父親と、弁護士の母親のあいだに生まれた一人息子。しかし、父親の浮気により両親は折り合いが悪くなり、数年前に離婚。その頃から度々家出を繰り返すようになり、夜の町を徘徊するようになる。朝は通販会社のコールセンターで働き、昼は大学の法学部に通い、夜はキャッチのアルバイトという、忙しい日々を送っている。身長180センチで容姿端麗の超ハイスペック男子。猫好きで、SNSのアイコンは通いネコのりんちゃんの写真を使用している。チャラい印象を与えるが、妙に達観しているところがあり、年齢にそぐわない広い人脈を持つ。同じコールセンターで働く中山文が、ある日疲弊した姿で出勤したことに気づき、声をかけたことがきっかけで、文の夫の中山和真の浮気について相談を受けることになり、次第に文に興味を持つようになる。その後、文が和真の同僚の高梨克己から強引に迫られている現場に遭遇し、助けたことで浮気調査に協力するようになる。文には、事あるごとにアプローチを繰り返しているものの、基本的にいつも子供扱いされており、相手にされないことを不満に感じている。
高梨 克己 (たかなし かつみ)
中山和真の同僚の男性。飲食店などのマネジメントを行なう会社に勤める既婚者。年齢は32歳。有名国立大学出身のチャラ男で、貞操観念が非常に低い。5歳の娘と1歳の息子がいるにもかかわらず、女性には見境がなく、寂しさを言い訳に浮気を繰り返している。会社の新入社員の立川さとみから、和真との関係について泣きつかれ、相談に乗るようになる。それ以来、彼女とは不倫関係となり、SNSでは「K_with_S」という名義を利用し、「さーとん」名義のさとみと、こっそりメッセージを送り合っている。そんな二人の関係を知った畑野さやかに、弱みを握られることとなり、さやかからの指示で和真とさとみが不倫関係にあるという、事実無根の情報を和真の妻の中山文に話し、文の不安を煽り、自分とも関係を持とうと文に強引にせまった。それを文の仕事仲間である樋口亮に阻止されたのち、本格的な浮気調査に乗り出した文と亮に、さとみとの浮気現場を押さえられることとなる。それがもとで文と亮に逆らえなくなり、和真の浮気の真相を明るみにすることへの協力を強いられることになる。実は13歳の頃までイギリスに住んでいた帰国子女で、ネイティブな英語を使う。それを活かし、仕事では日本初上陸となるイギリスのサンドイッチ店「The globe」との契約を成立させた。仕事はできるが、素行が悪いために周囲からの評価は低い。
江藤 菜摘 (えとう なつみ)
小学校1年生の息子、稀世羅と、3歳の娘、六花の母親。年齢は29歳。中山文、今井優香、三浦香住、石川多恵、畑野さやかとは学生時代からの友人で、時おり集まってはお酒を飲みながら愚痴を言い合って交流を続けている。元ヤンキーの姉御肌で、はっきりしないことを嫌い、友達は何よりも大切にする義理堅いタイプ。優香が夫の今井佳樹のモラルハラスメントで苦しんでいることを知っており、ある時死にたいというメッセージが優香から送られてきたのをきっかけに、行動を起こすことを決意。自宅で放心していた優香を説得して一旦自分の家に保護し、佳樹を懲らしめてやろうと画策する。人脈に強面な人たちがいることを最大限に利用して、佳樹が再び優香に対して凶行に及ぶことがないように、お灸をすえた。また香住から話を聞いて、文が夫の中山和真の不倫で悩んでいることを知り、問題解決のために協力を申し出て、文の支えになろうと奔走する。その後、香住からの相談を受け、さやかの悪事に香住の彼氏の健が加担していたという事実を知る。健に暴行を加え、すべてを白状させると、ボロボロになった健を連れて文と和真、さやかが会する部屋を訪れ、健に真相を話させ、さやかと健を警察に連れて行った。ふだんから夫の正哉が、頼んだことはしてくれるものの、気が利かないことを不満に感じている。最近は、そんな夫のフィギュア収集癖にも悩んでいる。現在は、息子の小学校で幅を利かせるボスママと対立中。電子タバコを愛用している。
今井 優香 (いまい ゆうか)
ほんわかした印象のかわいらしい女性。年齢は29歳。中山文、江藤菜摘、三浦香住、石川多恵、畑野さやかとは学生時代からの友人で、時おり集まってはお酒を飲みながら愚痴を言い合って交流を続けている。なんでもはっきりさせたがる友人たちの中で、今井優香だけは状況はどうあれ本人の気持ちを最優先に考え、寄り添おうとするタイプ。新築一戸建に住み、セレブな専業主婦として幸せな結婚生活を送っていると見られていたが、実は夫の今井佳樹からはモラルハラスメントを受けており、日々暴言や精神的圧力からの恐怖に耐え続けている。しかし誰にも相談することができず、助けを求めることもできないまま、人知れず苦しんでいた。夫が不在の時間に文と香住、さやかを家に招いた際に予定より早く夫が帰宅し、優香が委縮したことで友人たちとの集まりは中途半端な状態でお開きとなった。実は高校生の頃から、両親との関係についても悩んでおり、立派な経歴の両親からは責められることはあっても、褒められたことはなく育てられた。まじめな性格ゆえに、期待に応えようと必死に努力を続けてきたため、自己肯定感が低く、佳樹からどんなに蔑まれようと自分に問題があると考えてしまうところがある。その後、妊娠したが何事も思い通りにいかないことに自殺が頭をよぎるが、菜摘や文、多恵に支えられ、子供のために強くなりたいと行動に起こすことを決断し、夫にお灸をすえることに成功した。その後はふつうの生活に戻り、無事に子供を産むべくマタニティライフを送っている。
今井 佳樹 (いまい よしき)
今井優香の夫。有名大学を卒業したエリート銀行員で、新築一戸建てを購入したばかり。小太りな体型で、短気な性格をしている。日常的な暴言によって優香に恐怖を与えることで、精神的に支配しようとしている、いわゆるモラハラ夫。優香に直接手を出すことはないが、自分の思いどおりにならないと道具を使って家具や壁、電化製品などを破壊したり、優香を無視することで怒りを顕(あらわ)にする。また、優香の使うお金や外出することにも制限をかけ、日常的に連絡を強要して返信が少しでも遅れると秒単位で返信を催促してくるため、優香にはほとんど自由になる時間は与えられていない。もともと交際当時から、メールの多いタイプだったが、結婚後に束縛がどんどんエスカレートしていった。すべては優香への愛情が強すぎることによるものだが、優香のすべてを自分の支配下に置きたいと考え、優香に母親のような無償の愛を一方的に求めている。しかし思い通りにいくはずもなく、苛立つ自分を優香に知られるのは自尊心が許さない。そのため、苛立っていることを妻の行動によるものと問題点をすり替えようとするが、それを追及されたくないため、優香を無視することで自分を正当化することを繰り返している。その後、優香の妊娠が判明しても、妊娠は病気じゃないからと、体調の悪い優香を思いやることもなく、相変わらず家事を強要している。このことが決定打となり、優香は書き置きを残して家出。最初は優香を見下し、怒りを顕にするメッセージを送り続けていたが、優香のスマートフォンの電源が切られ、連絡が取れない状態になったことに焦り、3日後には冷静になって優香が身を寄せる江藤菜摘の家に自ら謝罪に訪れた。菜摘からの厳しい叱責や脅しも功を奏し、優香に対する態度を改めることを約束。念書にも記入し、一件落着となった。
三浦 香住 (みうら かすみ)
中山文の友人の女性。年齢は29歳。文、江藤菜摘、今井優香、石川多恵、畑野さやかとは学生時代からの友人で、時おり集まってはお酒を飲みながら愚痴を言い合って交流を続けている。さやかとは性格が似ており、以前から言い争いのケンカになることが多い。商社に勤めるキャリアウーマンで、後輩には仕事ができるあこがれの先輩と言われているが、裏ではウザいお局として扱われていることを知っている。ある時、文から夫の中山和真の浮気の相談を受け、SNSで調べることを提案した。和真や会社関係のSNSを細部まで調べ上げ、ものの5分で浮気相手と思われる立川さとみのアカウントを特定した。文の悩みに寄り添いながら協力しているが、一方では既婚者の贅沢な悩みという見解も持っており、結婚願望を抱いている。30歳を間近に控え、となりで支えてくれる人がいないということに不安を感じている。数年前から年下のフリーターの健と付き合っていたが、これまで何度となく浮気をされている。人情に流されやすい性格で、許すことが優しさだと考えているため、健が浮気をしても自分のもとに戻って来ると許し続けていた。しかし、去年の冬に若い女性との浮気が発覚し、問い詰めた際に三浦香住を嫌いになったわけではないが、相手の女性を守ってあげたいと発言したことで、別れを決意した。その後、自分の部屋に置いてあった健の荷物を、すべて浮気相手の女性の住所へと送りつけたのち、家の鍵も変えてスマートフォンへの着信も拒否し続けた。だが結局は浮気相手と別れ、行き場を失った健から復縁をせまられ、4月までに定職に就くこと、自分の言葉には絶対服従すること、次に浮気をしたら即破局ということを条件に承諾した。しかしその後、健がさやかの悪事に加担したことが発覚。以前、健はさやかと浮気をしたこともあり、その時は許したが、今回は菜摘の協力を得て健をしばりあげ、さやか共々罪を償わせる道を選んだ。
健 (たける)
三浦香住の彼氏。年齢は23歳。もともと浮気性なところがあり、浮気を繰り返していたが、去年の冬に若い女性との浮気が香住にバレてしまう。その時、香住を嫌いになったわけではないが、相手の女性を守ってあげたいと発言。浮気相手を優先させる言動を繰り返したため、香住を幻滅させた。それが原因で、香住からは別れを突き付けられることになる。香住の部屋に置いてあった健の持ち物は、一方的にすべて浮気相手の女性の部屋に送られ、その女性の部屋が6畳のワンルームだったため、荷物が入りきらずにトラブルとなる。その後、相手女性といっしょに暮らし始めたものの、結局別れることになると、香住との復縁を求めて彼女の部屋を訪れた。しばらくは香住に拒絶され、相手にもされなかったが、部屋の前で待ち続けた結果、復縁に成功する。ただし、復縁に際しては条件があり、4月までに定職に就くこと、香住の言葉には絶対服従すること、次に浮気をしたら即破局というものだった。しかし、実はその浮気相手の女性からはカモにされており、貢がされていた。フリーターのために収入が少なく、お金欲しさに畑野さやかの犯罪に加担しており、香住のもとに戻ったのもお金目当てだった。香住から相談を受けたことですべてを知って逆上した江藤菜摘から暴行を受け、自分の罪をすべて認めたうえで、さやかと中山和真、中山文の前で自分がしたことを告白。和真とさやかのあいだに何もなかったことを証言した。
石川 多恵 (いしかわ たえ)
眼鏡をかけたおだんご頭の女性。年齢は29歳。中山文、江藤菜摘、今井優香、三浦香住、畑野さやかとは学生時代からの友人で、時おり集まってはお酒を飲みながら愚痴を言い合って交流を続けている。しっかり者の委員長タイプで、人との距離感を適度に保つことができる。3歳の息子、颯がいる。子供を産んで以来、夫とはセックスレスの状態が続いている。そのために化粧やエステなど、自分磨きにはすっかり興味を失っている。夫は少々マザコン気味なところがあり、近所に住む姑の圧にもイライラしている。優香とは子供の頃からの付き合いで、友達の中でも一番仲がいい関係だったため、優香が夫の今井佳樹からのモラルハラスメントで悩んでいたことを知っている。ある時、優香から死にたいとメッセージが送られてきて焦るが、子供が熱を出していたため、文と菜摘に助けを求めた。
畑野 さやか (はたの さやか)
中山文の友人の女性。年齢は29歳。文、江藤菜摘、今井優香、三浦香住、石川多恵とは学生時代からの友人で、時おり集まってはお酒を飲みながら愚痴を言い合って交流を続けている。5年前、自分が幹事をした飲み会で、イケメンの中山和真と知り合って自分のものにしようと積極的にアプローチを繰り返す。しかし和真の気持ちが、自分ではなく文に向いていることに気づくも、ひるむことなくしつこく言い寄り続けた。だが、最終的には正式にフラれることとなり、一旦は引き下がった。そんな中、文と和真が入籍する日の前日に和真の勤める会社に張りこみ、偶然を装って和真に再度アプローチした。自分ならどんな和真も受け入れると、涙で和真への思いを訴えた。それでもなお拒否する和真に今度は逆ギレし、文への恨みを口にしてその場を立ち去る。その後、文の友人として何もなかったような顔で、二人の結婚式に参列した。しばらくおとなしくしていたものの、それから2年後に、和真の同僚の高梨克己を通じて飲み会に強引に参加し、和真との再会を果たす。人目を盗んで和真の酒に睡眠薬を混入し、和真を前後不覚の状態にしてホテルに連れ込み、まるで肉体関係があったかのように偽装工作を試みる。そこで、もともと関係のあった健に手伝いを依頼。動けなくなった和真を健に運ばせ、服を脱がせて裸の写真を撮らせた。その後、その写真を和真のスマートフォンに送りつけたり、妊娠したと噓をついて脅迫して、文と別れさせようと画策する。実はもともと、学生時代から人の彼氏に手を出す悪癖があった。ここ数年は睡眠薬を使って男性を眠らせ、財布や貴金属を盗むなど、次第にエスカレートしている。その後、健が自白したことですべてが明るみに出て、菜摘や香住からの激しい叱責を受けて警察への出頭を余儀なくされ、罪を償うことになる。
立川 さとみ (たちかわ さとみ)
飲食店などのマネジメントを行なう会社に勤める女性。中山和真にハート絵文字入りのメッセージを送ったことで、和真の妻の中山文から浮気相手なのではないかと疑われている。新入社員ながら、研修初日から遅刻したり、仕事が終わらなくても定時に帰ってしまうなど、周囲はかなり迷惑している。容姿端麗であるため、失敗しても泣き顔一つで男性社員にフォローしてもらえることから、世間知らずなところがある。若い男性からの人気は高いが、女性社員からは煙たがられている。上司であっても相手が男性ならば男としてしか見ておらず、媚びることに徹するため、社会人としての常識も大いに欠けている。相手が意中の男性であればなおのこと、相手の言葉を曲解して受け取り、自分にだけ都合のいいように事実をねじ曲げてしまう虚言癖がある。会社の上司である和真に一方的な思いを寄せ、2番目でいいからと言い寄るが、きっぱり断られた。しかし、これも自分に都合のいいように歪曲して受け取り、それを先輩の高梨克己に相談した。自分がちょっかいを出しておきながら、あることないことまくしたてて、克己だけが頼りと甘えて同情心を誘った。それ以来、克己と不倫関係になり、「さーとん」という名義で利用しているSNSでは、「K_with_S」という名義の克己とこっそりやり取りしている。実は専務の姪で、専務からは溺愛されている。
和田 (わだ)
飲食店などのマネジメントを行なう会社に勤める男性。中山和真と高梨克己の同期。休日に子供の相手をして欲しいと妻に頼まれると、専業主婦は毎日が休みのくせにと言い放ち、子供の面倒を見ることを嫌っている。また、妻が具合が悪いから食事が作れないと訴えた日には、家事をサボりたいだけだろうと暴言を吐いた。それから2週間のあいだ、妻の辛気臭い顔を見るのが嫌だと、食事はすべて外食で済ませるようになり、家に用意された食事にはいっさい手を付けなくなった。その後、家が汚いと怒り、妻と子供を家から追い出したことで別居状態となり、離婚訴訟へと発展する。専業主婦の妻に対して、日常的に横暴な態度を取り続けたことで、妻からはモラルハラスメントでも慰謝料を請求されている。これによって日に日に生活は荒んでいき、朝から酒を飲むようになる。プライドが高く、先に課長への昇進が決まった和真に、どうやって部長に取り入ったのかと毒づいた。和真からの、奥さんに謝ってやり直したらどうかとの助言に対し、大声で怒鳴り散らしぶちギレた。その後、酔った勢いで妻を強引に連れ帰ろうとして問題となり、妻側の弁護士から傷害で訴えられる。その訴えを取り下げる代わりに、離婚と慰謝料に同意する形で収めることとなった。医者からはうつ病と診断され、その後会社を辞めることになるが、退職後に自分のうつ病の労災を申請した。
専務 (せんむ)
飲食店などのマネジメントを行なう会社で専務を務める男性。立川さとみのおじにあたる。ある時、部長との会食にさとみを誘ったが、課長の中山和真が来るならという条件を出されたため、和真を食事に誘った。会食では、さとみの会社での働きぶりを心配し、和真にその様子を確認した。そして、よくサポートしてくれているという言葉を聞き、安心した。さとみが和真を非常に信頼していることを知ると、さとみの見合い相手にどうかと持ち掛けた。しかし彼が既婚者であることを聞くと、今度は手のひらを返したように、間違いは犯さないようにと釘を刺した。
文の母 (あやのはは)
中山文の母親。6年前、文が就職して独立した頃に夫と離婚。それ以来、介護の仕事を続けながらアパートで一人暮らしをしている。ある日、アパートに文が突然やってきたことで、なんとなく文の状況を察し、文を泊めることにした。夫との離婚の原因は浮気だったが、別れたのは実際に浮気が明るみに出てから5年後のことだった。一旦は和解したものの、結局夫を許すことができないまま時が過ぎ、義母の介護問題もあり、離婚することを決めた。そんな経験から、今の文の思いつめた顔が、まるで当時の自分にそっくりに見えて複雑な思いを抱く。
クレジット
- 原作
-
夏川 ゆきの