概要・あらすじ
山間の田舎町「なにが町」は、ダム建設派と中止派のまっぷたつに割れていた。メディアからの注目も集まるなか、ダム建設派である現町長に対し、ダム中止派として町長に立候補した大小中が、ある夜“限りなく事故に近い傷害致死”で死んでしまう。そこで死んだ中に瓜二つの矢沢勘次を替え玉とする「ニセ町長計画」を進めることに。このことを知っているのは、中の妻である大小桃肢を含めた21人の人間のみ。
愛する夫の替え玉である男とひとつ屋根の下で暮らすことになった未亡人、桃肢の戦いが始まる。
登場人物・キャラクター
大小 桃肢 (だいしょう ももえ)
地元でマドンナ的存在である33歳の女性。大小中の妻で、旧姓は上杉。中とは中学・高校の同級生で、高校時代は野球部で補欠のキャッチャーだった中といっしょにいたいがためにマネージャーをしていた。抜群のスタイルで当時から男子生徒の憧れの的だったが、中学卒業の日に中と初体験を済ませており、それ以来毎日所かまわずヤリまくっていた。 性格は明るく天真爛漫で、かなりの天然。また、運動神経が抜群で、中学時代は100mハードルで全国一になっている。愛する夫を亡くし、波乱万丈の日々を送ることになる。
大小 中 (だいしょう あたる)
ダム建設と中止でまっぷたつに割れた「なにが町」の町長選挙に立候補した33歳の男性。大小桃肢の夫。ダム建設中止派で、無所属の新人。中学時代から付き合っている桃肢とは、高校、大学、就職先まで一緒で、夫婦となった後もラブラブの関係。高校時代は太っていたが、東京の一流大学に入学後スリムになった。日文大学政治経済学部を卒業後、大手ゼネコンの一ツ橋建設に入社。 会社の「中国プロジェクト」のため、半年だけ中国に赴任していたことがあり、その時だけ桃肢と離れ離れになっている。中国の赴任中に町長選に出ることを決意し、辞職して故郷の「なにが町」に戻ってきたが、「限りなく事故に近い傷害致死」で死んでしまう。
矢沢 勘次 (やざわ かんじ)
かいの建設の社員で、35歳の独身男性。大小中と顔が瓜二つのため、社長に頼まれて死んだ中の替え玉としてニセ町長をやることになる。家族は両親と兄、兄嫁がいるが、事情を話し、矢沢勘次は土手から足を踏み外して死んだことになる。それ以来、中として生きることに。19~20歳の2年間、東京の俳優養成学校に通っていたことがあり、ブレーンである「チーム大小中」のサポートを受けつつ、中の代役を何とかこなす。 高校時代は野球部のエースで、中は2年下の後輩だった。便所で大をする時と手淫をする時は全裸になるという癖があり、大人になった今もやめられない。死んだ中の替え玉として生きることを受け入れたのは、高校時代からぞっこんだった大小桃肢の夫になれるからというのが大きい。
界野 壮造 (かいの そうぞう)
かいの建設の社長。メガネにチョビ髭、小太りの男性。ダム工事が中止されたら「なにが町」は終わる、と考えているダム建設派。祖父が興した「界野土建」を引き継ぎ、今は「かいの建設」を経営している。一部の地元民からは血も涙もない金の亡者、希代のゴーヨク者と呼ばれる。息子が大小中を死なせてしまったことから、ニセ町長計画を発案する。
界野専務 (かいのせんむ)
界野壮造の息子で、かいの建設の専務。酔ったいきおいで口論となった大小中を土手から落とし死なせてしまう。地元では超有名企業の社長の息子のうえ、高校時代はサッカー部のエースストライカーだったため女には困らなかったが、大小桃肢には手が届かなかった。死なせてしまった中とその妻・桃肢、中の身代わりとして生きることになった矢沢勘次には心から申し訳なく思っているものの、桃肢の魅力には抗えず手を出そうとする。
中の母 (あたるのはは)
大小中の母親。家では割烹着姿でいることが多いおばちゃん。息子夫婦に子供ができないことが悩みで、跡取りを欲していた。そのため、息子の替え玉として同居することになった矢沢勘次に子作りをグイグイと進める。心臓発作のフリをして大小桃肢の裸を勘次に見せたり、2人の夕食に媚薬を入れ込むなど、手段がエスカレートしていく。
中の父 (あたるのちち)
大小中の父親。禿げ頭の普通のおじさん。実家は江戸時代からこの地に居を構える農家。突然、息子を亡くし、「ニセ町長計画」に協力させられることになる。跡取りが欲しいがために矢沢勘次に(大小桃肢を)「生(ナマ)で突きまくっとくれー!」と涙ながらに訴える妻のことを、セリフまわしがエロ劇画みたいだぞと心配している。
黒川 悟 (くろかわ さとる)
町長となった大小中のブレーンとなる「チーム大小中」の一員で、中とは大学時代の友人。大学では地質学を専攻していた。熊に襲われて小山文弘が死亡した際、現場に居合わせ、負傷した。
目白 勇気 (めじろ ゆうき)
町長となった大小中のブレーンとなる「チーム大小中」の一員。東京で弁護士をしており、友人の黒川悟から中を紹介された。「チーム大小中」の一員として「なにが町」でダム建設中止のために活動中。
中島 哲也 (なかじま てつや)
町長となった大小中のブレーンとなる「チーム大小中」の一員で、大学講師。熊に襲われて小山文弘が死亡した際、現場に居合わせ、負傷した。
曽根 貴 (そね たかし)
町長となった大小中のブレーンとなる「チーム大小中」の一員で、地元オンブズマン。亡くなった中の遺志を継ぎ、ほかのメンバーと協力してダム建設中止を目指す。
小山 文弘 (こやま ふみひろ)
町長となった大小中のブレーンとなる「チーム大小中」の一員で、曽根と同じ地元オンブズマン。かいの建設の埋蔵金発掘現場を偵察に行った際、熊に遭遇し車に逃げ込んだが、熊にウインドウを破られて放り出され命を落とした。
永井 豪志 (ながい ごうし)
大小桃肢の前に度々現れては、警告や陰謀のヒントを与えて立ち去る謎のイケメン男性。永井先生の甥で、大学で地質学を学んでいた。「なにが町」にある山の危険性を見抜いており、町の安全のためにはダムを建設すべきだと考えている。「ニセ町長計画」については偶然聞いてしまい、知っている。
永井先生 (ながいせんせい)
「なにが町」で永井医院を経営する医者で、ダム建設中止派。永井豪志のオジ。大小中の死亡を確認した。「ニセ町長計画」に協力させられることになる。
金森 建雄 (かなもり たてお)
かいの建設の社員。スキンヘッドの大男で34歳。酔ったいきおいで偶然出会った大小中に絡み、結果的に中の死を引き起こしてしまう。かいの建設が進める埋蔵金発掘の現場責任者だったが、熊に襲われて死亡する。
佐久間のバーサン (さくまのばーさん)
「なにが町」で暮らす95歳の老婆。戦争で南方軍にいた夫が持ち帰った埋蔵金ノートを3年前に界野壮造に500万円で売った人物。埋蔵金は日本軍が南方から持ち帰った金銀財宝で、戦時中で数億円の価値だったという。
駐在さん (ちゅうざいさん)
「なにが町」の駐在所にいる巡査。定年して「なにが町」に帰ってきて、派出所の嘱託警官になった老人。その任期もあと一年で終わる。故郷に対する愛着は人一倍強く、「ニセ町長計画」の成功によるダム建設中止のために、独自の捜査をしている。
囿秀瑯 (ゆうしゅうろう)
中国の大資本家。オールバックに丸いサングラス、ダンゴっ鼻に分厚い唇の怪しげな風貌で、「なにが町」で目撃される。大小中が半年間、中国に赴任していた時に出会った。不動産ブローカーを通じて、「なにが町」のダムを利用した水ビジネスを企んでいる。