あらすじ
第1巻
漫画家を目指していたものの挫折し、就職活動にも失敗した青年の吉島よしおは、資格を取るため職業訓練校「ポリテクセンター」に入所することになった。授業料が無料なうえに、入所する前に働いていていた場合はお金をもらうことができ、左官からビル管理、三次元CADまで選べるコースも多種多様という至れり尽くせりなポリテクセンターで、よしおは人生をリスタートさせることを決意する。(第1限「ようこそポリテクへ!!」。ほか、17エピソード収録)
登場人物・キャラクター
吉島 よしお
失業中の青年。年齢は28歳。独身の一人暮らしで、彼女もいない。漫画家志望でフリーターをしながら漫画を描き続けていたが、30歳を目前にして挫折。木工工場やWeb会社を中心に就職活動を続けるも、職歴がないためすべて失敗し、資格と技能を得るために職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科に入所する。言動はおとなしいが好奇心は割と旺盛で、さまざまな事情を抱えてポリテクセンターにやって来る老若男女の話を興味深く聞いていた。クリエイターとして強いこだわりを持ち、漫画家志望だった頃に描き上げた作品に、編集者から前後の話を加えるようにアドバイスされた時は、悩んだ末にそれを断っていた。預金ゼロのカツカツな生活をしており、昼ご飯はいつもおかずがほとんどない白飯を食べていた。
カエデ
職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科に在籍している訓練生の女性。年齢は29歳。元キャバ嬢で、一人娘がいる。夫とはすでに別れており、手に職をつけて娘を養うためポリテクセンターに入所した。明るく社交的な性格で、誰とでもすぐに打ち解けられるため、訓練生のみんなから慕われている。どこであってもすぐに寝られる特技を持つ。実家が小さな工場を営んでいたため、溶接の道を選んだ。溶接の実技は好きだが勉学は嫌いで、座学の授業中は鼻提灯を出しながらずっと寝ている。将来は独立して起業することも考えている。
西川
職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科の先生を務める男性。年齢は65歳。元造船の熟練工で、55歳の時にその腕を見込まれて先生となった。昔は非常に怖い職人気質だったが、今はとても温厚で訓練生からも慕われている。訓練生はこれまでしんどい思いをしている人間が多いため、ポリテクセンターではしんどい思いをさせたくないという考えの持ち主。しかし、だらしない生活をしている卒業生に対しては、酒の席で鬼になることもある。
ひな子
職業訓練校「ポリテクセンター」の左官科に在籍している訓練生の女性。年齢は20歳。芸術系の短大を卒業後、ポリテクセンターに入所した。おとなしくてまじめな性格で、一生懸命に勉強しているため、みんなからかわいがられている。朝に弱く、ポリテクセンターに向かうバスの中ではいつも寝ている。熟練の左官職人は塗っている時に土を下に落とさないと知り、技術を習得するために毎日奮闘している。
平目 (ひらめ)
職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科に在籍している訓練生の男性。年齢は50歳。元魚屋で、妻子がいる。中学卒業後、すぐに家を継いで魚屋になったことから、学校にあこがれを抱いていた。そのため、魚屋を廃業したあとに勉強ができるポリテクセンターに入所した。実技は熱心に受けているが座学は嫌いで、いつも「たいぎい(ダルい)」と愚痴をこぼしている。家族のために早く職に就きたいと思っている。
青竹
職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科に在籍している訓練生の男性。年齢は42歳。ごくふつうのサラリーマンだったが、体を使う仕事がしたいという思いから、脱サラしてポリテクセンターに入所したと、周囲には説明している。ポリテクセンターに通うことにコンプレックスを感じており、周囲から訓練生と思われたくないという気持ちが強い。そのため、未だにスーツを着てポリテクセンターへ通っている。山本からは、開き直れば楽になるのにと思われている。
山本
職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科に在籍している訓練生の男性。年齢は63歳。元凄腕の溶接工で、定年退職後にポリテクセンターに入所した。趣味は釣り。優しく面倒見のいい性格で、釣ったチヌを持ってきて訓練生に振る舞ったり、白飯ばかり食べている吉島よしおにおかずをあげるなどしていた。そのため、ほかの訓練生からは慕われている。溶接の実力は若手の先生の若井よりも遥かに上手だが、ずっと感覚でやってきたので筆記テストは非常に苦手。
モミジ
東京にある職業能力開発センターのアパレルパタンナー科に在籍している女性。カエデの妹で、服飾のデザイナーになるために一人暮らしをしながら勉強に励んでいる。数年間、カエデが娘の服を作っていたのを聞いたことがきっかけとなり、服飾デザイナーの道を選んだ。センスがよく、先生にも作った服のデザインを褒められていた。
斉木
職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科に在籍している訓練生の男性。年齢は33歳。東京の出版社でグラビア雑誌の編集者として働いていたが、辞めて地元に戻り、ポリテクセンターに入所した。吉島よしおには出版業界が斜陽産業であることが辞めた理由であると語っていたが、実際は女性を目にするとエロいことばかりを妄想してしまい、グラビアモデルにキモイ人扱いされて辞めさせられた過去を持つ。女性に触られると鼻血を出して倒れてしまうほど、女性に対する耐性がない。
卒業生X
職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科に在籍していた卒業生の青年。2年前にポリテクセンターを卒業し、大手関連の会社へと就職した。クレーンの荷を吊る時に帯やチェーンをセッティングする「玉掛け」の資格を持っている。西川の教え子の中でトップクラスの手先の器用さを持っていたが、飽きやすい性格のため、せっかく就職した大手関連の会社も辞めてしまい、今はニートになってブラブラしている。その話を聞いた西川を激怒させる。
平目の娘
ごくふつうの女子高校生。平目の一人娘。将来の夢を決めかねており、農業系の大学へ行くか、父親が通っているポリテクセンターの先生になる大学へ行くかを迷っている。顔立ちは平目似。
平目の妻
平目の妻。平目が魚屋を廃業して職業訓練校「ポリテクセンター」に通い始めたため、夜遅くまでパートで働き、家計を支えている。
小山手
職業訓練校「ポリテクセンター」の左官科で先生をしている男性。年齢は65歳。現職の左官職人で、たまにポリテクセンターに教えにやって来る。業界の事情に詳しく、昔の左官職人は60キロのセメント袋を担いでいたが、年々体力のない左官職人が増えたため、今では25キロのセメント袋が一般的になったという話をひな子に語っていた。
若井
職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科で先生をしている男性。年齢は25歳。ポリテクセンターではもっとも若い先生で、職業訓練校の先生を育成する大学を卒業したあと、ポリテクセンターに就職した。一通りの技術を習得しているが、ベテランの職人と比べるとまだまだ未熟。そのため、元熟練工の山本よりも溶接の技術が低いことに悩み、日々溶接の訓練をしていた。女性と接するのが苦手で、カエデとの対話にいつも苦労している。
山岡
職業訓練校「ポリテクセンター」の溶接科で先生をしている男性。年齢は35歳。以前は溶接機の技術開発の研究をしていたため、技術的にも知識的にも優れている。
場所
ポリテクセンター
職の能力を開発して促進させる職業訓練学校。略称は「ポリテク」。授業料は基本無料で、学校に入所する前に働いていた人は各種技能を磨きながら月10万円ほどの職業訓練受講給付金をもらえる。コースもさまざまで、左官科や溶接科、電気工通信工科に三次元CAD科、住宅リフォーム科など、ありとあらゆる職業の技能を身につけられる。いろんな世代の多彩な経験をしてきた人々が集まるため、吉島よしおは彼らの話を聞くのを楽しみにしていた。職人を育成する学科の先生は、町工場の職人が担当することも多い。
職業能力開発センター
東京都が運営する職業訓練校。「ポリテクセンター」とは別組織となっている。今までに働いたことのない人が、どんな仕事が向いているかを試すジョブセレクト科など、ほかの地域にはない先進的な学科が存在する。ひときわ異彩を放つのがアパレルパタンナー科で、服飾デザイナーの技術を格安の授業料で学ぶことができる。そのため、アパレルパタンナー科には若い女性が多く在籍しており、ほかの科とは違う華やかな雰囲気を漂わせている。
その他キーワード
ハロトレくん
職業訓練校のロゴマークに使われているキャラクターの愛称。正式名称は「ハロートレーニング」で、職業訓練の重いイメージを払拭するために考案された。西川は3Dプリンター科の生徒に頼み込み、ハロトレくんのプラスチック人形を作り、教壇に飾っていた。しかし、カエデのうっかりミスで足をへし折られてしまう。