ほぼねこ 私のお母さんには肉球がある

ほぼねこ 私のお母さんには肉球がある

猫型の人間ばかりの世界に生まれた、数少ないふつうの人間たちは、自分だけが周りと違うことに疑問を感じつつ、時に心無い言葉に悩まされながら日常を送っていく。「まわりと違う子供」「まわりと違う親」を持つ二つの家族の姿を描く、優しさが沁みわたる葛藤と愛情の物語。「BE・LOVE」2019年4月号から10月号、12月号、2020年1月号に掲載されたほか、「コミックDAYS」でも配信された作品。

正式名称
ほぼねこ 私のお母さんには肉球がある
ふりがな
ほぼねこ わたしのおかあさんにはにくきゅうがある
作者
ジャンル
動物擬人化
 
いじめ
関連商品
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世界観

舞台は一年中穏やかな気候の田舎町。海の後ろには段々畑と山があり、のどかで誰しもが懐かしい気持ちにさせられる風景が広がっている。しかし、そこで暮らす者たちのほとんどは二足歩行の猫型で、人間と同じように服を着て話し、飲食し、生活している。だが、数万人に一人の割合で人間が生まれることがあり、突然変異的なものとして扱われている。また、両親が猫型でも人間が生まれることもあり、その原因は謎に包まれている。そのため、子供でも大人でも人間の姿をしている者を好奇の目で見る猫型がほとんどで、人間に対しては偏見が多く、理解者が少ないのが現状だった。なおこの世界には、猫型の人や人間のほかに、ふつうの猫も存在する。また、人間だけが入れる福祉施設が存在し、そこに入るのはさまざまな理由で学校に通えなくなってしまった子供たちが中心となっている。自給自足の村のようなもので、勉強の合間には畑仕事などもあり、身の回りのことはすべて自分で行うために中々ハードながら、充実した生活を送れる場所となっている。

あらすじ

第1巻

周りを見渡しても、ほぼ猫型しかいないのどかな田舎町に、秋津ましろは人間の姿で生まれた。小学校に入学したばかりのましろは、周りと違う自分の姿に悩み、どうして自分だけがみんなと違うのかと母親のさきに聞いてみるものの、明確な答えは得られない。優しくて温かい家族の存在に助けられながら、日々を送る中で、ましろは友達作りに少しだけ臆病になりながら、学校生活を送っていた。そんなある日、ましろはクラスメートのここあから声を掛けられ、ましろが持っていた筆箱が欲しいと、一方的に迫られる。そして、ましろがこれを断ったことをきっかけに、ここあはましろを執拗にいじるようになり、これがクラス全員からのいじめへとつながっていく。そんな中、ましろは外出先のショッピングモールで、クラスメートのももたと出会う。アクセサリー選びに夢中だったももたに、ましろは赤いリボンを選んで付けてあげ、これがももたの毛色にぴったり似合うと発言。ももたは、男の子だからという理由で、母親からアクセサリー集めを禁止されていたため、なんの偏見もなく似合うと言ってくれたましろに好感を抱く。これ以降、ももたは学校で孤立し、いじめに遭うましろをひそかに助けたり、放課後に秘密の場所でいっしょに遊ぶようになり、二人は仲を深めていく。そしてももたという友達の存在が、臆病なましろを少しずつ変えていく。(エピソード「私のお母さんには肉球がある」。ほか、1エピソード収録)

登場人物・キャラクター

秋津 ましろ (あきつ ましろ)

エピソード「私のお母さんには肉球がある」に登場する。小学校に入学したばかりの人間の女の子。さきとお父さんのあいだに生まれた子供で、両親含めてクラスメートも猫型ばかりの中、みんなと違うことを少し気にしている。おとなしい性格で、友達作りにもちょっと臆病なところがあり、学校では一人でいることが多い。クラスメートのここあから、筆箱のキャラクターをきっかけに声を掛けられたが、一方的に筆箱を欲しがったために断るとケチと言われ、何かといじめの対象にされている。同じように声を掛けてきたクラスメートのももたとは、外出先のショッピングモールでの会話をきっかけに、意気投合した。その後、放課後にいっしょに遊んだりと、仲を深めていく。ももたの存在が、秋津ましろ自身に自信を持たせることになり、学校生活にも変化をもたらす。最近は刺繡に興味を持ち始め、拙いながらも刺繡の練習を始めた。施設に入所している曽祖母のきよを慕っているが、きよからは子供の頃の友達と勘違いされ、「ちいちゃん」と呼ばれている。不安の時は、頰にさきの肉球をぺたっとくっつける「ほっぺた肉球」を欲しがる。

弓削 たすく

エピソード「僕のお母さんには肉球がない」に登場する。小学校に入学したばかりの猫型の男の子。顔の中心から八の字に別れた模様がある。建物の2階など、高い場所から飛び降りる「にゃんぱらり」が大好きだが、着地に失敗することが多く、母親のきりこから禁止されている。妹のはなに、割りばしでおもちゃの家を作ってあげたり、仕事で疲れて帰宅する母親のために、電子レンジで晩ご飯を作ってあげたりと、家族思いで優しい性格の持ち主ながら、素直になれないところがある。学校では、母親が人間ということでバカにされ、クラスメートの小川から半分猫の出来損ないと暴言を受けた。それがきっかけで、ひっかき合いのケンカに発展。母親が呼び出されることになり、先に手を出したたすくの行動が問題視され、きりこが謝ることになった。それ以降、母親が人間であることに悩み、大好きな母親とのあいだでどうにもならないジレンマに悩まされることになる。小川からはその後も「猫にんげん」と暴言を吐かれ、いじめられている。その現場を偶然見かけたきりこが、先生となって弓削たすくのクラスで特別授業を行い、クラスメートとの壁を払拭するために奔走したことで、小川からのいじめもなくなった。

きりこ

エピソード「僕のお母さんには肉球がない」に登場する。弓削たすく、はなの母親。夫のたすくの父と別れ、女手一つで仕事と子育てを両立させている人間の女性。建築設計事務所で建築士を務めており、毎日遅くまで仕事をして忙しい日々を送っている。明るく優しい性格で、子供たちを最優先に考えている。少し心配性なところがあり、学校のことをあまり話してくれないたすくのことを心配している。偶然たすくがいじめられている現場に遭遇し、初めてたすくの悩みを知ることになる。学校の先生と相談した末に、たすくのクラスで特別授業を行うことになり、クラスの子供たちと接する機会を作って貰うことになった。人間と接することのない子供たちと直接触れ合うことで、偏見がなくなり、いじめの主犯格だった小川や子供たちの中にあった見えない壁を払拭することに成功。中学生の頃、人間であるが故につらい思いをして、学校に行けなくなった時期があり、数か月間、人間だけの施設で暮らしたことがある。そこでたくさんの友達ができ、今でもいい思い出の場所となっている。

さき

エピソード「私のお母さんには肉球がある」に登場する。秋津ましろの母親。真っ白な毛並みの猫型の女性で、尻尾にだけ縞模様がある。白猫の家系で兄弟家族みんな真っ白だが、自分だけ尻尾に縞模様があるため、長いスカートで隠している。父方の祖母のきよと似ているという理由から、さきの母親に尻尾の模様を嫌われ、子供の頃から悔しい思いをしたことがたくさんあった。そのため、自分の娘のましろには、自分と同じような思いは絶対にさせたくないという確固たる思いを抱いている。また、人間に生まれたことを後悔させないように、いつも明るい笑顔でましろを褒めて全力でかわいがっている。

お父さん (おとうさん)

エピソード「私のお母さんには肉球がある」に登場する。秋津ましろの父親。顔の中心から八の字に別れた模様の猫型の男性で、いつも眼鏡をかけている。娘のましろが、人間の姿に生まれたことで、世間から好奇の目を向けられることに心を痛めている。外出先のショッピングモールで、ましろを見てかわいそうと勝手に哀れんだ人を、「かわいそうおばさん」と命名。彼女たちが、家に帰ってたんすの角に足の小指をぶつけ、転んだ拍子にお尻で眼鏡を破壊しますようにと、心の中で願った。ましろを心配するあまり、その愛情が空回りしがちなところがあるが、かわいくてしょうがない様子。

松橋 (まつばせ)

エピソード「私のお母さんには肉球がある」に登場する。秋津ましろの担任を務める猫型の男性教師。入学当初、ましろのジャンプ力や走るスピードが、ほかの猫たちとまったく違うことを心配した母親のさきからの相談を受ける。決めつけるのはよくないとさきを諭し、一生懸命練習すれば、みんなと同じようにできる日がくるのではないかという持論を展開。子供の無限の可能性を信じたいと、一方的に松橋自身の理想を熱く語った。

ここあ

エピソード「私のお母さんには肉球がある」に登場する。長毛を頭のてっぺんで結んでいる猫型の女の子。秋津ましろのクラスメートで、自分勝手な行動が目立ついじめっ子。ましろの持っていた筆箱を欲しがり、断ったましろにケチと暴言を吐く。ほかの子と違う見た目のましろを何かにつけて面白おかしくいじったり、笑いものにしようとする。ましろがランドセルに付けていたキーホルダーを奪い取り、黒板上に乗せたあとにましろに報告。彼女がジャンプしても届かないのを見て大笑いした。

ももた

エピソード「私のお母さんには肉球がある」に登場する。頭にぶち模様のある猫型の男の子。秋津ましろのクラスメート。ましろの持っていた筆箱のキャラクターに詳しく、彼女に話し掛けて熱く語った。かわいらしいアクセサリーを集めるのが趣味だが、家族からは反対されている。見つかると捨てられてしまうため、近所にある神社の木の根もとに隠してある。外出先のショッピングモールで、アクセサリーを物色中に偶然ましろと出会い、赤いリボンが似合うと言われてから、なかよくしている。日頃から、ましろがここあからいじめを受けていることを知っており、止められないことを気に病んでいる。しかし、ましろがキーホルダーが取れずに困っていた時は、代わりに取ってあげた。

きよ

エピソード「私のお母さんには肉球がある」に登場する。さきの父方の祖母。秋津ましろの曽祖母にあたる猫型の老女。住宅型有料老人ホーム「さわやかビレッジ」に入居している。100歳になり、ぼーっとしていることも多くなったが、心は小さい頃に戻ってしまっているため、現状を理解していない。百寿のお祝いにきてくれたましろを、子供の頃の友達だった「ちいちゃん」と勘違いして慕っている。そのため、ましろがホームにやって来ると目をカッと見開き、元気を取り戻す。ましろに、この世界には人間だけが暮らす人間村が存在することを教えた。

はな

エピソード「僕のお母さんには肉球がない」に登場する。弓削たすくの妹。まだ幼い猫型の女の子で、頭部に八割れの縞模様がある。おもちゃの家を欲しがっているが、自分の家には父親もおらず、貧乏だからとあきらめている。だがこれは、保育園の友達から言われたことをそのまま口にしているだけで、意味をよく理解していない。兄のたすくが手作りしたものを褒めると、もっと作ってくれることを知っているなど、ちょっぴりあざとい小悪魔的な一面を持ち併せている。

みゆき

エピソード「僕のお母さんには肉球がない」に登場する。きりこたちが住んでいるアパートの大家を務める猫型の女性。学校から帰宅後の弓削たすくの面倒を見たり、晩ご飯をおすそ分けしたりと、好意で何かと世話を焼いている。人間のきりこが、世間から厳しい目で見られることで疲弊していく中、さりげない優しさで彼女を支えている大切な存在。

小川 (おがわ)

エピソード「僕のお母さんには肉球がない」に登場する。小学校に入学したばかりの猫型の男の子。弓削たすくのクラスメート。頭の左側だけポイント模様がある。体育の時間に、登り棒からかっこよく飛び降りたたすくに注目が集まったことに苛立ち、半分猫の出来損ないと暴言を吐き、たすくの母親のきりこが人間であることを引き合いに出して、たすくを侮辱した。その発言がきっかけで、ひっかき合いのケンカに発展。母親が呼び出されることとなったが、たすくが先に手を出したと一方的に無実を主張し、小川自身の発言についてはまったく触れなかった。その後も、たすくを「猫にんげん」と揶揄し、ちょっかいを出してはバカにし続ける。しかし、きりこが先生となってクラスで特別授業を行った際、自分が苦手なはさみを上手に使うなど、直接人間と接触したことで感じるものがあり、それ以降はたすくをいじめることはなくなった。

小川の母 (おがわのはは)

エピソード「僕のお母さんには肉球がない」に登場する。小川の母親。猫型の女性で、頭の右側にだけポイント模様がある。息子がケガをしたということで、小学校に呼び出された際、息子と弓削たすくのケンカで、先にたすくが手を出したことを知って逆上。学校側が謝罪したことで幕引きを図ろうとするも、たすくになんの懲罰もないのかと怒り出し、母親のきりこを非難した。

たすくの父 (たすくのちち)

エピソード「僕のお母さんには肉球がない」に登場する。弓削たすく、はなの父親。現在はきりこと別々に暮らしている。定期的に子供たちと会っており、いっしょに食事をしたり、話を聞いたりすることでコミュニケーションを取っている。きりこのことも心配しており、お母さんは一人ぼっちだから助けてあげて欲しいと、子供たちに語った。

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