概要・あらすじ
小さい頃から言葉を紡ぐことが大好きな国光紡は、中学生で天才小説家としてデビュー。世間の注目を集めるが、あることがきっかけで小説を書くのをやめてしまう。高校生になった紡は、過去に触れられるのが煩わしく、授業をサボっては国語科資料室に入り浸り、静かに本を読んでいた。そんなある日、クラスメートの天然少女、江本ことはが、国語科資料室にやってくる。追試で国語感想文を書くことになったため、「ごじゅうあらしごがつ」という作家の「さばくのあけぼし」という本を探しているという。それを聞いた紡は憤慨する。彼女が探しているのは「五十嵐五月」の「砂漠の明星」であり、紡が最も敬愛する作品だったのだ。紡が小説家であることを知っていたことはは、感想文の書き方を教えて欲しいと頼み込む。しかし、紡はそれを拒否。そして「小説はもう書いていない」と言い残して資料室を後にした。翌日の国語科資料室。またしてもことはがやってきて、今度は読書のコツを教えて欲しいとお願いをする。本を読み始めるとすぐ寝てしまうという彼女に呆(あき)れながらも、紡は「音読」を勧める。それから1週間、昼休みと放課後、紡はことはの音読に付き合い、やっと「砂漠の明星」の最終ページまでたどりつく。ことはは、最後の文章を読みながら涙を流す。それを見た紡は驚いた。何度も読んでいるが、自分はそんな風に泣いたことがなかったからだ。ことはは、文学の中の「見えない言葉」が少しわかった気がするという。「紡ぎ触れただけで、たまらなくなる言葉」そんな「見えない言葉」が文学にはあると、かつて紡は彼女に言ったのだ。「紡の中にも「見えない言葉」がある気がする」という、ことはの言葉に紡は動揺する。こうしてことはと出会った紡は少しずつだが変わっていき、再び小説を紡ぎ出すことになるのだった。
登場人物・キャラクター
国光 紡 (くにみつ つむぐ)
男子高校生。幼い頃から小説が大好きで、言葉を紡ぎ続ける。中学生の時、「紡ぐ、コトノハ」という本で作家デビュー。30万部を超えるヒットとなり、天才中学生小説家として有名になる。その後、あることがきっかけで小説を書くことを断念。高校に入ると、過去に触れられるのが面倒で、授業をサボりがちになり、国語科資料室に入り浸る。天真爛漫な落ちこぼれ少女の江本ことはと出会い、彼女のペースに巻き込まれ、文学部「青春きらめきコトノハ部」に入部。再び創作と向き合うことになる。
江本 ことは (えもと ことは)
女子高生。国光紡のクラスメート。天真爛漫で元気だが、国語が苦手な落ちこぼれで、茶髪のショートカットが特徴。小学生の時に父を亡くし、母は家を出てしまったため、祖母と弟の三人暮らしをしている。読めない漢字が多いため、もっぱら絵本ばかりだが、本は大好き。教師だった父が残した手書きの絵本が、幼い弟の癒やしになっていることから、「言葉」の大切さを知っている。紡と出会ったことから文学に興味を持つ。また、創作をやめたはずの紡が、言葉を紡ぐことを強く求めていることを感じ取り、文学部「青春きらめきコトノハ部」を設立し、紡と若葉を入部させる。
若葉 亮 (わかば りょう)
男子高校生。国光紡のクラスメート。幼馴染(なじみ)で親友でもある。茶髪と八重歯が特徴。少々大雑把な性格だが、友達思いの優しい性格。少女漫画に胸キュンする、恋に憧れる少年。文学に興味はないが、江本ことはに好意を抱き、彼女が設立した文学部「青春きらめきコトノハ部」に入部する。