概要・あらすじ
江戸時代、徳川吉宗が治めている江戸城城下町では、夜盗「鬼烏」の被害が広がっていた。その情報を貧乏長屋で聞いていた鍼師の大井助之介は、ある日、三郎からその妹・たえの目の治療を依頼される。時間はかかるものの完治させることができると判断した助之介は、たえの治療を開始。しかしある晩、三郎が鬼烏の手によって無残にも斬り殺されてしまう。
三郎の最期を看取った助之介は、脱退していた公儀御庭番暗殺組の姿となって鬼烏のアジトへと向かう。
登場人物・キャラクター
大井 助之介 (おおい すけのすけ)
江戸城城下町の貧乏長屋で鍼師をして生活する男性。腕はいいが、春画を見るのが好き。患者が女性だとわかると、男性そっちのけで治療を優先するようなスケベな性格。治療費が払えない貧しい人にも治療を施し、「貸し」の一言でお金を受け取らない、庶民の味方である。弟子の与太郎や周囲の人からは「先生」と呼ばれている。昔は公儀御庭番暗殺組で頭を務めていたほどの実力者。 今は御庭番から抜けているが、世を憂う気持ちは当時と変わっておらず、極悪人には御庭番の時の姿となって鉄槌を下している。
与太郎 (よたろう)
大井助之介の弟子として一緒に暮らす男性。患者から治療費をもらわないうえに、春画に夢中な助之介の代わりに、傘張りをしながらお金を稼いでいる。真面目な性格で、不真面目な助之介をたしなめることが多い。助之介が公儀御庭番暗殺組だった頃に弟子入りしており、今でも助之介が御庭番として動く時は一緒に行動している。動物を使った忍術を得意としており、ゴロハチとも意思の疎通ができる。
ゴロハチ
大井助之介、与太郎と暮らす猫。言葉をしゃべることはできないが、人間がしゃべった言葉は理解ができる。頭の中にイメージを思い浮かべることにより、与太郎と意思疎通ができる。助之介が公儀御庭番暗殺組として動く時も同行する。徳川吉宗が本来の飼い主。
徳川 吉宗 (とくがわ よしむね)
江戸幕府第八代将軍の男性。家臣からは「上様」と呼ばれている。真面目な性格で、享保の改革などで手腕を発揮する。大井助之介とは顔見知りで、たびたび助之介の所にやって来て、公儀御庭番暗殺組に戻るように打診する。実在の人物である徳川吉宗がモデルとなっている。
三郎 (さぶろう)
妹のたえの治療を大井助之介に依頼した男性。助之介の噂を聞いて、遠くから訪ねて来た、妹想いの優しい人物。表向きは百姓だが、正体は夜盗「鬼烏」の副頭。根っからの悪人でなく、飢饉で家族全員が死んで自暴自棄になり、悪事を働いている。死んだ家族の中には妹がいて、たえをその妹代わりとして可愛がっている。実は強奪に入った時に、たえの両親を殺してしまった罪滅ぼしとして一緒に暮らしている。 たえの治療費や生活費のために、盗んだ小判をすべて隠した。そのことで仲間の怒りを買い、斬り殺されてしまう。
たえ
三郎の妹。数年前に高熱で死に掛けたことで目が見えなくなった。江戸からの旅人に大井助之介の噂を聞いた三郎とともに、治療のために助之介を訪ねる。目が見えなくなった頃に住んでいた村が夜盗「鬼烏」の襲撃された。1人生き残ってさまよっていたところを三郎に助けられ、以降は兄妹として一緒に生活している。自分のために頑張っている兄を、いつも心配する心優しい性格。
良玄 (りょうげん)
心臓の病気で大井助之介に治療してもらった男性。15年前に酔っ払った侍に妻を斬り殺され、娘の千賀を守るために、意図せず侍を殺してしまう。その罪で15年間島送りになっていた。刑期を終え、知り合いに預けた千賀に逢うために、江戸に戻って来た。
千賀 (ちか)
良玄の娘。妻を殺された良玄が、意図せずに侍を殺して島送りになる時に、良玄の知り合いである商家に預けられた。当時は赤ん坊だったため両親のことは覚えておらず、商家夫妻から実の父親は死んだと聞かされている。
白斎 (はくさい)
将軍家お抱えの男性医師。大名たちと懇意にしており、権力を笠に着て好き勝手をする。問題が起こると、お金で解決している。傲慢な性格なうえにプライドが高く、花見の席で恥をかかされた虎蔵を逆恨みする。
虎蔵 (とらぞう)
十手持ちの男性。金と権力で好き勝手をする人間が嫌いで、花見の席で女性に無理強いする白斎を殴る。両親や恩人である松蓮尼が病気で倒れた時に、医者から往診料が払えないという理由で門前払いされた。その結果、大事な人が死んでしまったため、医者そのものを憎んでいる。
菊二郎 (きくじろう)
徳川御用達の花火屋「鍵屋」の息子。花火師として、亡き兄・蝶一郎が考案した新型の打ち上げ花火を完成させるべく、毎日試行錯誤している。
吐蛙 (はきがえる)
江戸百鬼会に所属する男性。「黒火屋」という花火屋に雇われて、徳川御用達の花火屋「鍵屋」に危害を加えようと画策する。
百合姫 (ゆりひめ)
安房の国の藩主である光茂の娘。幼い頃から何度も変装しては、領民と一緒に畑作業などをともにして、領民のことを第一に考えている。そのため私利私欲、征服欲で領民を苦しめる叔父・影茂と戦う決意を固める。
三九馬 (さくま)
江戸百鬼会に所属する男性。大井助之介とは公儀御庭番暗殺組の修行をともにしていた間柄。御庭番が助之介に決まると、三九馬は秘密保持のために利き腕を切り落とされる。のちに生きていくために江戸百鬼会に入る。
左京 (さきょう)
元公儀御庭番暗殺組頭の男性。孤児だった大井助之介や三九馬たちを育て、忍びとして鍛えた人物でもある。忍びの腕だけでなく人間的にも傑出しており、誰からも信頼されている。御庭番の掟で雪乃の始末を命じられたが、逆に匿ったため、助之介に刺されて荒海に落ち、生死不明となる。これは助之介による芝居で、致命傷に見えた傷はそれほど深くなく、海に落ちた後は信濃の人里離れた山奥で暮らしている。
雪乃 (ゆきの)
大井助之介や三九馬とともに、公儀御庭番暗殺組になるための修行をしていた少女。三九馬の妹。虫一匹殺せない優しい性格。その性格のせいで御庭番に不適格となって始末されそうになるが、左京に助けられる。しかし凶佐の術で操られて、自分の意思とは関係なく、助之介や三九馬に刃を向ける。
凶佐 (きょうざ)
大井助之介によって公儀御庭番暗殺組を追放された男性。剣の腕は確かだが「力がすべて」という考えの持ち主で、無用な殺しを繰り返していた。追放後は助之介への恨みをはらすために江戸百鬼会に入り、左京と同じ外見となって左京として行動する。左京を信頼していた雪乃を操り、助之介を殺すための手駒とする。
集団・組織
公儀御庭番暗殺組 (こうぎおにわばんあんさつぐみ)
徳川家の裏の仕事を請け負う集団。その仕事内容は、敵情視察から要人暗殺まで多種多様。大井助之介はかつて頭を務めていたが、今は公儀御庭番暗殺組から抜けている。
江戸百鬼会 (えどひゃっきかい)
金で殺しを請け負う闇の組織。江戸に限らず、多くの場所で幅広く活動している。本来の目的は江戸に騒乱を起こし、徳川吉宗を殺すこと。