概要・あらすじ
江戸時代末期の文政年間、江戸の町で話題の薬屋である式亭正舗の若き主人、式亭小三馬は、その豊富なアイディアと意表をついた化粧で町の諍いごとや騒動を解決していく。その評判が老中水野忠成にまで届き、小三馬は江戸全体の化粧に挑むことになる。だが、その裏で進んでいた企てに気づいた小三馬は、命を狙われることになる。
登場人物・キャラクター
式亭 小三馬 (しきてい こさんば)
薬屋の式亭正舗の店主。父の式亭三馬が没した後、店を継いでいる。本名は虎之助。直接女性の化粧をすることもあるが、化粧品の開発と引き札(チラシ)などの広告戦略に実力を発揮する。自由な発想で難題を切り抜けていくアイデアマンで、現代のメイクアップアーティスト兼イベントプロデューサー。 「夢は式亭正舗で売っている」と断言し、「江戸の町を化粧したい」という夢を持つ。老中水野忠成に見込まれて利用されそうになるが、再開発絡みの謀略に気付き命を狙われることになった。江戸からの脱出を決意したとき、浅間山の噴火に遭遇。モデルは実在の戯作者、式亭小三馬。
花火 (はなび)
花火師丸屋源三の娘で、式亭小三馬に頼み込んで、父の花火制作の場所を借りる。父の爆死後、その美的センスを見込まれ、式亭正舗で服飾デザイナーとして働くことになった。小三馬に気があるが、今のところ男女の関係にはなっていない。
春永 (しゅんえい)
禿げ頭だが、眉と鬚は黒くて豊かな老人。式亭正舗の引き札(チラシ)の独占絵師。式亭小三馬の相談役でもある。
両助 (りょうすけ)
やや長めの卵形の頭に細長い小振りな鼻で、難しそうに口を閉じてていることが多い青年。式亭正舗の番頭。上方出身で、父に逃げられた母に独りで生きていけと放り出され、女のヒモになったが愛想をつかされて路頭に迷っていたところを、母ドノに拾われた。「夢を売る」という式亭小三馬の信念に感心している。 バクチを打つことが多い小三馬の企画に、式亭正舗の金庫番として頭を痛めている。
小柳 定九郎 (こやなぎ さだくろう)
丸顔で目鼻と口は小さく顔の中心にまとまっている少年。仙台の伊達藩の足軽の九男に生まれ、式亭三馬に憧れて江戸で戯作者になろうと式亭正舗を訪れた。物語を作る才能を認めた式亭小三馬が式亭正舗において、引き札(チラシ)の宣伝文を作らせている。ただ、東北弁の訛りがひどい。 花火に淡い恋心を持っていたこともある。
母ドノ (かかどの)
式亭小三馬の母。ほとんど店のことはしていない。芝居や花火といったイベントが大好き。
トラ
四角い大きな顔に小さな目と胡座をかいたような鼻、大きな口に出っ歯で、眉尻が太くハの字になっている愛嬌のある町娘。式亭正舗で働いている。
梅沢 玉五郎 (うめざわ たまごろう)
女形として人気で、母ドノも贔屓にしている役者。役者としては大根だと自己評価は高くないが、周囲からは認められている。女形が染みついているため、なにかと女性的。呉服屋の藤原屋のお嬢さんに見初められ、夫婦になったが役者は続けている。
水野 忠成 (みずの ただあきら)
江戸幕府の老中。式亭小三馬の評判を聞きつけ、なにかと難題を持ち込んでくる。その際、直接自分で会っており、正体が知られていると知りつつも、お忍びなので水越忠左衛門と名乗る。自分と相通ずるものを感じる小三馬が気に入っている。江戸の再開発を利用して日光東照宮の普請費用を捻出し、将軍の機嫌取りをする謀略を知られ、小三馬を始末することにした。
式亭 三馬 (しきてい さんば)
『八百八町表裏 化粧師』に登場する故人。式亭小三馬の父で、5年前に死去。モデルは実在の戯作者の式亭三馬。式亭正舗で薬と化粧品を売り、自らの著作内で宣伝をしていたことも史実。
場所
式亭正舗 (しきていせいほ)
『八百八町表裏 化粧師』の舞台で、式亭小三馬の薬屋。化粧品のほうが主力商品となっている。