め組の大吾

め組の大吾

幼い頃に火災に巻き込まれたところを、消防士に救われた朝比奈大吾。それをきっかけに消防士に憧れるようになった彼は、高校卒業後に千国市消防局めだかヶ浜出張所所属の消防士になった。数々の修羅場を通して、大吾は消防士として急成長。やがて彼しか持ち得ない「特殊な才能」に目覚めていく。小学館「週刊少年サンデー」1995年38号から1999年27号まで連載。第42回「小学館漫画賞」受賞(1996年)、第2回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞を受賞(1998年)。

正式名称
め組の大吾
ふりがな
めぐみのだいご
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
少年サンデーコミックス(小学館)
巻数
全20巻完結
関連商品
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概要・あらすじ

幼い頃に自宅が火事になり、飼い犬のジルと共に火事場に取り残された朝比奈大吾。絶体絶命の危機を救ったのは、ひとりの消防士だった。それ以来、消防士に憧れるようになった大吾は、高校卒業後に新米消防士として地元のめだかヶ浜出張所、通称め組にやってくる。だが、そこは大吾が期待した「火事と戦う男たちの最前線」ではなく、めったに火事も起こらないような平和な地域だった。

隊員たちののんびりした態度に呆れる大吾だったが、出動要請がかかるや全員が態度を一変させ、「火事に立ち向かう戦士」となって現場へと急行する。彼らの姿を目の当たりにした大吾は認識を改め、やがて消防士としての使命に目覚めていく。

登場人物・キャラクター

朝比奈 大吾 (あさひな だいご)

めだかヶ浜出張所、通称め組所属の消防士。明るく活力あふれる熱血漢で、恵まれた体格と身体能力、そして誰よりも強い「意志の力」を秘めている。高校時代はケンカばかりしている問題児だったが、当時担任だった落合静香の進路指導によって、かつて自分が憧れていた消防士への道を本気で志すようになった。 そして落合の協力で競争率20数倍の公務員試験に見事合格し、新米消防士としてめ組に配属。教本に載っているようなセオリーを無視し、自らの「研ぎ澄まされた直感」に頼りがちで、チームの和を乱すようなスタンドプレーが多い。しかし、彼の行動は常に最善の結果につながり、要救助者の命が失われるのを未然に防いでいた。 大吾自身も炎の渦中など危機的状況下では、判断力と決断力、観察力が異常に研ぎ澄まされることを自覚するようになっていく。

落合 静香 (おちあい しずか)

神奈川県立めだかヶ浜高校の教師で、朝比奈大吾の高校時代の担任。大吾が消防士の道を志すきっかけを作った人物であり、大吾は教え子だった当時から落合に憧れ、好意を寄せていた。明るく朗らかなショートカットの美人だが、洗練された見た目に反して昆虫採集が趣味。2か月に一度は大ケガをして入退院を繰り返す大吾を見かねて、消防士を辞めるよう勧めたことも。 だが、千国サウスイースト火災で宙吊りになった作業員を救出する大吾を目の当たりにして、何かに突き動かされるかのように行動する姿に強い衝撃を受ける。そして彼の生き方に感銘を受け、諦めていた昆虫学者になる夢を再燃させた。 のちに大吾と結婚し、娘・萌を授かる。

甘粕 士郎 (あまかす しろう)

東署鯨台出張所所属の消防士。茶髪で伊達メガネをかけた優男だが、明晰な頭脳と行動力、そして熱いハートを持つ。朝比奈大吾の消防学校時代の同期生で、事あるごとに衝突して張り合おうとするライバル同士。何かとヘマをやらかす大吾をバカにしているが、災害時に発揮する天才的な直感と判断力を早期から見抜き、一目置いている。 その一方で、あまりに破天荒な行動ばかりとる大吾についていけないことも多く、彼に対する信頼とのジレンマに苦しむことも。

五味 俊介 (ごみ しゅんすけ)

めだかヶ浜出張所の所長。階級は消防司令。普段は競馬新聞をボーッと見ているだけの昼行灯で、定時である夕方5時きっかりにあがり、土日も休む。しかし、空いた時間は木造家屋が建ち並ぶ地域のパトロールに費やしており、そのたゆまぬ努力が火事を未然に防いでいた。じつは数々の修羅場をくぐり抜けて多くの人命を救った歴戦のベテラン消防士。 常にキャップをかぶっているが、これは15年前の救助活動で負った頭部の火傷を隠すため。また、小柄だが大人をふたり抱えて走るなど、見た目と年齢に見合わない底力の持ち主。その勇名は千国市消防局本部にもとどろいており、千国市消防局の全消防官から尊敬の念を寄せられている。

大野 秋彦 (おおの あきひこ)

ポンプ車の運転・操作の資格を持つめだかヶ浜出張所の機関員。髭面で強面な外見に反して、報告書作成などの事務作業では緻密な仕事を見せる。朝比奈大吾にとっては良き先輩で、彼のことを弟のように思っている節がある。4年前に特別救助隊の資格試験を受けたが、あまりに高い壁の前に挫折。 メカ好きだったこともあり、特別救助隊と同じくらいやりたかった消防車の機関員となった。特救資格試験に挑む大吾にアドバイスを与え、学科の勉強の面倒も見る。

猪俣 (いのまた)

めだかヶ浜出張所の消防士。角刈りに四角い顔が特徴。やや小柄だが体格が良い。大野と並ぶ朝比奈大吾の先輩で、教育係を務める。

平 一馬 (たいら かずま)

中央署のポンプ車小隊から補充要員としてやってきた消防士。朝比奈大吾よりもひとつ年上の先輩。小柄で太い眉と関西弁、そしてアクが強い性格が特徴の問題児。重い装備を身につけたまま全力ダッシュする瞬発力を持つが、体格に恵まれないためか体力自体はあまりない。そのため無駄な体力を使うことを嫌い、頭を使って効率よく消火する頭脳派。 ホースを使った消火能力に長けており、放水によって燃えさかる炎を操るかのような手腕を見せる。その一方で消火に執着しており、夜中にロウソクに灯した火を水鉄砲で消してニヤニヤ笑うという、異常な一面を覗かせることも。

神田 恵 (かんだ けい)

千国市でもっとも激務といわれる臨港署特別救助隊の消防士長で、千国市消防局のエースの異名を持つ。港で起きる事故の救出作戦は、ほとんど彼が成功させている言われるほどの凄腕。救助の際に特殊な才能を見せる朝比奈大吾に興味を持つ。大吾が起こす奇跡的な人命救助を目の当たりにし、その天賦の才能を認めながらも、あまりに常識から外れた行動に反発。 「特救とは一生縁のない男」と罵声を浴びせたことが大吾の負けん気に火を付け、それが後に大吾が特別救助隊を目指すきっかけになる。消防学校時代から五味俊介の伝説的な武勇伝の数々を聞いており、面識はなかったが尊敬の念を抱いていた。

来栖 (くるす)

千国市の消防局警防部長。千国市の急激な開発にともなう災害や事故発生に対して、特別救助隊の増強を計画した。若者たちが努力し、切磋琢磨する爽やかな光景を見るのが好きで、特救資格試験を視察するのが楽しみ。甘粕士郎の能力に目を付けて期待する一方、型破りな朝比奈大吾のことを理解できず、天敵とまで見なしている。 また、部下の忍足ミキとも対立。

常盤

西消防署の消防副士長。特救資格試験を受けに来た特救候補生。試験に挑戦しはじめてから3年目で、今回がダメなら諦めるという決意で臨んでいる。少々性格に難のある皮肉屋だが、腕立て伏せの試験では甘粕士郎よりも多い210回を記録した。その他の種目でも上位に食い込むなど、確かな実力を見せる。 試験で朝比奈大吾の潜在能力を目の当たりにして、彼のことを認めるようになった。

(あら)

千国市消防局の警防部に所属する特別救助隊の責任者で、切れ者として知られている。かつては彼も特救の一員として数々の修羅場をくぐり抜けてきた。現在は現場を退いて部下を指揮する側にまわり、それゆえに命の危険にさらされない現状に退屈している。朝比奈大吾の蛮行の数々や、彼がこなしてきた奇跡的救助の功績に目を付けて、特救資格試験に合格させた。 自分と同じ「平穏な暮らしを望みながらも、心の底で『現場』を欲して止まない人間」だと大吾のことを思っていたが、「自らが破滅に向かうような救助を行う人間」であると知り、畏怖の念を覚えるようになる。

忍足 ミキ (おしたり みき)

千国市消防局本部警防部所属の消防司令補。事務官として救急救助課の企画・計画の立案、広報、経理などを司る。大人の色香を漂わせる才媛でヘビースモーカー。特救の人事を務める警防部の「マザーコンピューター」と呼ばれる。15年前に大規模災害・千国市立病院火災に被災した際、五味俊介に命を救われた。 だが、この事故で母親を失ったため災害を憎むようになる。女性なので消防士として現場には出られないが、部隊編成を工夫したり、危険区域の調査や部隊編成を工夫したりするなど、後方で八面六臂の活躍を見せた。また、自分の上司にあたる来栖をたびたびやり込めるなど、気の強さで多くの人々から恐れられている。

北条 (ほうじょう)

めだかヶ浜出張所の2部のポンプ車小隊長を務める消防司令補。災害現場へと向かう朝比奈大吾を頼もしく思う一方、修羅場において楽しそうにさえ見える彼の背中に奇妙な違和感を抱く。

谷 啓太 (たに けいた)

めだかヶ浜出張所の救急隊隊長。災害現場での直接的な救助活動にはあたらないが、確保された要救助者や、急病の患者を救急車で運ぶことにすべてをかける。若い頃は五味俊介と共に災害現場で救助活動を行っていた。だが、五味の神がかった活躍を目の当たりにしてかなわないと感じ、消防士から離れて救急隊の道を選ぶ。

影山 (かげやま)

めだかヶ浜出張所の救急隊隊員。救急車の機関員を務めている。見通しの悪い雨降りの夜の峠の下り道を、時速90キロで疾走。だが同乗している朝比奈大吾は低速で走っていると勘違いするほど、車体が揺れないなめらかな実現するドライビングテクニックの持ち主。

白石 保 (しらいし たもつ)

中央署特別救助隊の隊長で、階級は消防司令補。市民会館ホールで発生した火災での救助活動で高圧電流の池と瓦礫に阻まれて退路を失い、窮地に陥った。朝比奈大吾が独断でポンプ車を突っ込ませて壁を破壊したことで命を救われる。本来は許されない行動だが、救助の最前線で戦ってきた白石は、大吾の決断を高く評価した。

近藤 純 (こんどう じゅん)

朝比奈大吾の高校時代の後輩。ハキハキとしていて、強い意志を感じさせる瞳が印象的な美少女。朝比奈大吾に好意を寄せており、たびたびめ組にも遊びに来ている。大吾の想い人である落合静香を恋敵と見なしているが、大吾にとって純は「親しい女友達」でしかない。大吾の活躍を耳にしたり、自分が災害に巻き込まれたところを救われたりするたび、彼への思いをより募らせていく。

丘野 明 (おかの あきら)

陽光新聞社千国支局社会部 で、長年消防関連の記事を担当してきた新聞記者。「東条マート火災」での救出作業の際、朝比奈大吾の「5階から地上のマットへ要救助者を放り投げた」という危険極まる救助行動に怒りを覚えていた。だが、彼の神がかった勘の冴えと、自らの安全を顧みない救助精神、そして勇気に魅せられていく。

吉田 研二 (よしだ けんじ)

千国短期大学の理学博士で、落合静香が大学に通い始めた際に所属したゼミの教授。昆虫学会では名の知れた学者で、昆虫を観察する際は子供のように純粋な好奇心をむき出しにする。落合たちと共に昆虫の調査のためスマトラ島に渡る。

バンジャル

インドネシア・ランプンの消防官。母国で毎年甚大な被害をもたらす山火事を憎んでいる。国際救助で訪れる外国の消防官たちを信用しておらず、朝比奈大吾たちが持ち込んだ「インパルス」を力ずくで強奪しようとした。大火災から人々を救うため、消防士としての誇りを持って救助に臨む熱い男。

ジル

『め組の大吾』に登場する犬。子どものころ朝比奈大吾に拾われてから、ずっと一緒に暮らしてきた老犬。老齢のためか、普段はほとんど寝てばかりいる。幼い頃に火災に巻き込まれた大吾が、初めて救助に成功した存在。

朝比 奈萌 (あさひな もえ)

結婚した朝比奈大吾と落合静香との間に生まれた娘。父親の大吾は生後7か月の萌にベタ惚れで、「大きくなっても嫁には出さない」と決心。大観衆が歓声を上げる中でも熟睡して起きないなど、両親譲りの据わった肝を持っている。

集団・組織

千国レスキュー (せんごくれすきゅー)

『め組の大吾』に登場する組織。正式名称は千国市消防局特別救助隊。災害現状において、通常の消防隊が対応できないほどの極限的状況下では、いつも最初に突入する人命救助専門の超スペシャリスト集団。心・技・体すべてがトップクラスの消防官で構成された、消防組織の最精鋭部隊である。オレンジ色の制服が目印で、厳しい資格試験で選抜されたごくわずかな消防官だけが、この制服を身につけることを許される。

場所

めだかヶ浜出張所 (めだかがはましゅっちょうじょ)

『め組の大吾』に登場する消防出張所。通称め組。消防官となった朝比奈大吾が配属された。滅多に火事が起きず、出動もほとんどかからない地域だったため、「めったに火事が起きない」「めでたい」と揶揄されている。だがその平和は、所長の五味俊介や副所長である植木による日々に見回りによって住人たちの防災意識が高まった結果もたらされたものだった。

千国市 (せんごくし)

『め組の大吾』に登場する都市。近年、いたるところに開発の手が入り、街全体が変わりつつある。千国沖国際空港の建設をはじめとする大胆な再開発は、市内外の業者や関係機関の動きを活性化させた。その一方で、急激な人口増加がもたらす変化は街のバランスを崩しており、災害の発生件数が飛躍的に上昇している。

その他キーワード

IFEX (あいふぇっくす)

『め組の大吾』に登場する消火装置。「Impulse Fire Extinguishing Technology」の略。インパルス消火システムと呼ばれる個人携行型の消火装備。小型ライフルのような形状の発射機「インパルス銃」と、水や消火薬剤の詰まった約30キロのバックパックで構成される。圧縮された空気によって、水と消火薬剤を微細な粒子にして高速度で打ち込み、最小の水量で消火が可能。 また、放水による現場破壊も少なくて済む。め組をはじめとする千国市全域の出張所に新装備として配備された。

続編

め組の大吾 救国のオレンジ (めぐみのだいご きゅうこくのおれんじ)

曽田正人の代表作の一つである『め組の大吾』の続編。現代に近しい時代背景を持つ東京都幡ヶ谷区を舞台にしている。生真面目で人命救助にひたむきに取り組む救急隊員の十朱大吾と、彼のよきライバルである斧田駿や中... 関連ページ:め組の大吾 救国のオレンジ

書誌情報

め組の大吾 全20巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉

第1巻

(1996-01-18発行、 978-4091236814)

第20巻

(1999-08-07発行、 978-4091253507)

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