ゆびさきと恋々

ゆびさきと恋々

作者・森下suuの講談社媒体での初連載作品。生まれつき聴覚障がいのある女子大学生の糸瀬雪は、親切にしてくれた同じ大学の先輩、波岐逸臣に恋心を抱く。お互いに影響を受けながら、手話や海外の文化を知り、自分の世界を広げていく二人の姿を描いた純愛ラブストーリー。講談社「デザート」2019年9月号から連載の作品。「このマンガがすごい!2021」オンナ編第9位に選出。2024年1月テレビアニメ化。

正式名称
ゆびさきと恋々
ふりがな
ゆびさきとれんれん
作者
ジャンル
恋愛
 
障がい
レーベル
KC デザート(講談社) / プレミアムKC(講談社)
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

逸臣との出会い

冬のある日、大学1年生の糸瀬雪は電車の中で外国人に道を聞かれてしまうが、雪は生まれつき聴覚障がいがあり、困っていた。この状況を外国人にどう伝えたらいいのか思案の中、そこへ助けに入ってきたのが、同じ大学の先輩、波岐逸臣だった。逸臣は、外国人が日本語で質問をしているにもかかわらず、雪が対応できずにいるのを不思議に思い、声を掛けてきたのだ。こうして危機を脱した雪は、逸臣に自分は耳が聞こえないことと、同じ大学に通っていることを説明する。逸臣は雪の友人、藤白りんのサークル仲間で、雪は逸臣のことを以前から知っていた。その夜、雪がりんに付き合ってりんの知人の店へ行くと、そこでアルバイトとして働いていた逸臣と再会。そして、世界中を旅することが趣味だという逸臣に対して雪は、世界の広さについて質問する。この質問に逸臣は、世界は非常に広いことを伝え、さらに自分を雪の世界入れてほしいと返すのだった。雪は突然の言葉に戸惑うものの、この瞬間から急速に逸臣に惹かれていく。

恋の自覚

糸瀬雪は先日の一件から波岐逸臣と連絡先を交換し、ますます彼が気になる存在となっていた。しかし、逸臣は世界中の文化に関心があり、交友関係も非常に広い。そのうえ、ヒマさえあれば海外旅行をしているような自由人だった。そのため雪は、自分に声を掛けてきたのも、手話をはじめとする聴覚障がい者のコミュニケーション手段が、珍しくて興味を抱いただけなのではないかと、不安を感じるようにもなっていた。そんなある日、雪が大学で藤白りんと話していると、幼なじみの芦沖桜志が遠くから手話で話掛けてくる。二人は幼なじみではあるものの、雪は高校までろう学校に通っていたため、特に仲がよかったわけではなかった。しかし桜志は、会う度に意地悪な手話を投げ掛けてきて、今一つ何を考えているのかわからないところがあった。そんな桜志は、最近雪が逸臣と親しくしていることを知ると、さらに棘のある態度を取るようになる。桜志はかねてから雪が、他人を疑うことのない純粋な性格を案じていた。そのため雪が、逸臣に遊ばれているのではないかと勝手に考えていたのである。桜志の心配をよそに雪と逸臣は距離を縮めていたが、ある日二人が逸臣のアルバイト先のバーで話していると、やけに逸臣と親しげな女性、エマが来店する。

ダブルデート

波岐逸臣によれば、エマは単なる友人とのことだったが、糸瀬雪にはそんな関係には見えず、またその予想は的中していた。エマは高校時代から逸臣に思いを寄せており、現在もアプローチを続けていたのだ。しかし、逸臣にはその気持ちがなかったため、友人として接し続けていたのである。そんなある日、雪は逸臣、藤白りんと、りんの思い人であるバーの店長、波岐京弥の四人で遊びに行くことになる。しかし待ち合わせ場所へ向かう途中で、雪は芦沖桜志と出会い、二人は迎えに来た逸臣と出くわしてしまう。この時、逸臣が雪に後ろから突然抱きつくと、聴覚障がい者には危険な行為だと桜志は怒り出すが、逸臣は、雪に許可を得ているので問題ないと反論する。これによって、二人はますます険悪な雰囲気になってしまう。一方その頃、先に到着していたりんは、京弥から質問を受けていた。京弥もまた、雪と逸臣の関係を心配していたのである。逸臣は現在恋愛には関心がなく、自分の夢に向かって邁進しているはずなのに雪と親しくしていることを、京弥は不可解に思っていたのだ。

交際開始

2月の下旬、糸瀬雪波岐逸臣から、好きになってもいいだろうかと尋ねられるが、うまく言葉が出ないまま別れてしまった。しかし次の週から、逸臣はカンボジアに旅行へ出掛けてしまうことを知り、このままではいけないと考えた雪は、藤白りんの後押しもあって、出発前にもう一度逸臣に会いに行くことにする。ここで雪は改めて自分の思いを伝え、二人は交際を開始することとなる。しかしその直後、芦沖桜志からの連絡を受ける。雪と桜志は連絡先を交換していなかったが、最近の雪の行動を心配した桜志は、雪の母親から連絡先を教えてもらったのである。雪は桜志の言葉を受け入れるが、桜志の真意がわからず、なぜ自分にかかわろうとするのだろうと、不思議に思うのだった。こうして逸臣はカンボジアへ行ってしまうが、随時旅行先からの報告が届き、逸臣からの希望で動画を使って手話を教えたりして、楽しい時間を過ごす。それから約1か月後、雪は唐突に帰国した逸臣から、できるだけ早く紹介したい人がいるとの申し出があり、いっしょにに会いに行くことになる。

手話合宿

大学2年生のある日、糸瀬雪藤白りんが手話に関心を持ったことで、波岐逸臣波岐京弥も交えた四人で手話合宿を行うことになる。そんな中、逸臣がいずれはいっしょに海外旅行に行きたいと言ってくれたことを受け、雪はアルバイトで資金を貯めようと考えていたが、聴覚障がいがあることから面接はなかなかうまくいかないでいた。それでも雪はあきらめることなく、友人の力も借りながらのアルバイト探しを続けていた。一方で手話合宿も始まり、四人はキャンプをしながら、目にしたモノを手話表現で教えてもらう形式で雪に手話を学んでいた。さらに、りんと京弥が二人きりになったのをきっかけに、二人は思いを伝え合って交際を始める。しかしその直後、浮かれたりんがケガをしたことで、合宿は予定よりも早く終了。りんと京弥は病院に行き、二人と別れた雪と逸臣は、逸臣の自宅で一泊を共にする。逸臣が気遣ってくれたことで、この夜はなんの進展もなかったが、雪はそんな逸臣の優しさに感謝しつつ、もっと逸臣を知りたいという気持ちを強めていくのだった。しかしその直後、逸臣が芦沖桜志に声を掛けられる。

テレビアニメ

2024年テレビアニメ化。1月6日よりTOKYO MXほかにて放送。アニメーション制作は亜細亜堂。主人公の糸瀬雪を諸星すみれ、波岐逸臣を宮崎遊が演じる。

登場人物・キャラクター

糸瀬 雪 (いとせ ゆき)

とある大学に通う1年生の女子。ピンク色のロングヘアの小柄な体型で、上品でかわいらしいファッションを好む。そのため周囲からは小動物にたとえられ、特にリスやオコジョに似ていると評されている。生まれつき聴覚障がいがあり、補聴器を付けないと、まったく音が聞こえない。補聴器を付けると音は聞こえるようになるものの、どの音がどこから聞こえているのかはわからず、その音がいったいなんの音かもわからない。このような境遇から、手話がわかる相手には日本語対応手話を使ってコミュニケーションを取り、わからない相手には、スマートフォンのメモ機能やメッセージアプリ、筆談で会話をしている。やや引っ込み思案なところもあるが、非常に明るく素直で、ピュアな性格をしている。また、おとなしそうに見えることから、自然と周囲が助けてくれることが多い。一方で、人の悪意に鈍感で他者を信じやすい一面があり、その警戒心のなさを、幼なじみの芦沖桜志には心配されている。高校まではろう学校に通っており、同級生も四人しかいないという、ごく限られた生活環境で育った。しかし大学は一般の大学に進学し、聴覚障がい者の授業をサポートするパソコンテイカーの藤白りんに支えてもらいながら勉学に励んでいる。そんな大学1年生の冬のある日、電車の中で外国人に道を聞かれて困っていたところを波岐逸臣に助けられ、彼に強く惹かれていく。

波岐 逸臣 (なぎ いつおみ)

糸瀬雪と同じ大学の国際文化学部に通う2年生の男子。年齢は22歳。大学入学後は、よくバックパッカーとして海外を旅している。国際交流サークルに所属しており、藤白りんとはサークル仲間。従兄の波岐京弥が店長を務めるバーでアルバイトをしている。銀色の髪を両目が隠れそうなほど前髪を伸ばしたマッシュショートヘアで、長身でがっしりとした体型のイケメン。右手の中指に、太陽と月のモチーフのタトゥーを入れている。美容師の友人、心に髪を切ってもらっている。友人たちには「逸」「逸くん」と呼ばれることが多い。表情に乏しく、マイペースで独特の雰囲気が漂わせているため、一見近寄りがたい印象を与えるが、国内外に友人が多い。異文化全般に関心があり、ヒマさえあれば海外旅行で見聞を広めているため、外人の異性から人気がある。将来的にはこの経験を活かして、海外の山奥にある小さな学校など、外の世界に触れる機会の少ない子供たちのために働きたいと考えている。この夢を叶えることが生活の中心になっているため、恋愛への関心は薄く、恋人もいない。しかしある冬の日、雪に出会ったことで、彼女に強く惹かれていく。以前家族でドイツに住んでいたことがあり、英語とドイツ語が堪能。家族は両親と年の離れた妹がいるが、現在もドイツに住んでいるため、波岐逸臣はマンションで一人暮らしをしている。

芦沖 桜志 (あしおき おうし)

糸瀬雪と同じ大学に通う1年生の男子。芦沖実桜の弟。雪の幼なじみで、雪とは家も近所で付き合いも長いが、雪は高校まではろう学校に通っていたことで特に仲がよかったわけではなかった。しかし大学で再び会話を交わすようになる。心優しい性格ながら、ぶっきらぼうでやや子供っぽく、なかなか素直になれないところがある。幼い頃から、雪の純粋で他人をすぐ信じてしまう性格を案じており、いつか雪が悪い人間に騙されたり、傷つけられたりはしないかと心配している。手話を通じて親しくなった姉の実桜と雪の交流がなくなったことで、雪に何かあった時にすぐ助けられるように手話を勉強し続けている。手話で雪とコミュニケーションを取っているが、これを聴覚障がい者への同情だと勘違いされることを極端に嫌っている。さらに、心配するがゆえに雪に対して棘のある態度で接してしまいがちで、その優しさが雪には伝わっておらず、少々怖がられている。大学1年生の冬、雪が波岐逸臣と親しくなり、雪が逸臣に遊ばれているに違いないと勝手に解釈。雪に逸臣と距離を置くよう、ますます口うるさくなる。

藤白 りん (ふじしろ りん)

糸瀬雪と同じ大学の商学部に通う2年生の女子。国際交流サークルに所属している。波岐逸臣とはサークル仲間。雪の授業をパソコンを使ってサポートするパソコンテイカーを担当しており、雪とはこれがきっかけで友人となった。ショートヘアで、大人っぽい雰囲気を漂わせている。明るくさわやかな性格で、雪へのサポートを惜しまない。見た目とは違って恋愛には奥手で、逸臣のアルバイト先の店主で、逸臣の従兄でもある波岐京弥に思いを寄せているが、なかなか進展せずにいる。そんな冬のある日、雪と逸臣が知り合いになったことで、京弥も交えて四人で親しくなっていく。大学3年生になって忙しくなり、パソコンテイカーの業務は別の女子学生に引き継いだが、雪とはその後も親友として付き合っている。大学3年生の春に参加した手話合宿を機に、京弥と交際を始める。

波岐 京弥 (なぎ きょうや)

バーの店長を務める若い男性。波岐逸臣の従兄。その仕事柄、フレンドリーで好感度が高い。刈り上げショートヘアで、甘い顔立ちをしている。穏やかな性格で、落ち着いた雰囲気を漂わせている。心からは「京」と呼ばれている。芸能人をはじめ、他人の恋愛話が好きで、恋愛事には特に世話を焼いてしまう。ある年の冬、あまり恋愛には関心のない逸臣が、急速に糸瀬雪と親しくなったことを不思議に思うが、これがきっかけで雪とも親しくなり、雪と逸臣の友人でバーの常連客でもある藤白りんと距離を縮めていく。他人の恋愛には気遣いができるが、自らの恋愛はなかなか進展しないタイプ。恋愛下手なことから、りんともなかなか距離が縮まらずにいたが、手話合宿を機に交際を始める。

エマ

波岐逸臣と心の友人の女性。年齢は22歳。細身の体型で、ウェーブヘアを腰まで伸ばしている。かわいらしい容姿だが、気が非常に強い。高校時代から逸臣に思いを寄せており、はっきりと振られてからも、アプローチを続けている。そのため、逸臣が糸瀬雪となかよくしていることを知りつつも、自分の方が逸臣と親しいことを見せつけるかのように振る舞っていた。しかし、恋愛に関心が薄いはずの逸臣がやがて雪と交際を始めたことで、あきらめざるを得なくなる。心とは非常に親しいが、友人でいる時間が長すぎたのもあり、心から思いを寄せられていることに気づいていない。

(しん)

波岐逸臣とエマの、高校時代からの友人の男性。年齢は22歳。美容師で、逸臣のヘアスタイルは心自身がプロデュースしている。肩につくほど伸ばしたセミロングウェーブヘアで、髪の一部を刈り上げている。ふだんはけだるい雰囲気を醸し出しているため、近寄りがたい印象を与えるが、お酒に酔うと別人のように陽気になり、愛想がよくなる。初対面の人にはこのギャップに驚かれることが多く、最初は糸瀬雪も大いに戸惑っていた。エマに思いを寄せているが、エマが逸臣にアプローチし続けていることから、二人に言い出せずにいた。しかし、恋愛に関心が薄いはずの逸臣が雪と交際を始め、逸臣からも改めて雪を紹介されたことで、心境に変化が訪れる。趣味は音楽鑑賞で、特にイギリスのロックが好き。

芦沖 実桜 (あしおき みお)

芦沖桜志の姉。介護施設で働いている。年齢は23歳で、糸瀬雪とは幼なじみ。髪を顎の高さまで伸ばしてボブヘアにしている。目が細く桜志と顔立ちがよく似ている。子供の頃から手話に関心があり、当時から雪とはよく手話で会話していた。雪とあまり会わなくなってからは手話を使わなくなり、忘れかけていた。しかし、施設にろう者が入居したことでもう一度手話を学びたいと考え、再び雪と交流を持つようになる。

書誌情報

ゆびさきと恋々 11巻 講談社〈KC デザート〉

第1巻

(2019-12-13発行、 978-4065180624)

第2巻

(2020-05-13発行、 978-4065195017)

第3巻

(2020-10-13発行、 978-4065209714)

第4巻

(2021-03-12発行、 978-4065226346)

第5巻

(2021-09-13発行、 978-4065248201)

第6巻

(2022-03-11発行、 978-4065271384)

第7巻

(2022-09-13発行、 978-4065291764)

第8巻

(2023-02-13発行、 978-4065307236)

第9巻

(2023-07-13発行、 978-4065318478)

第10巻

(2023-12-13発行、 978-4065340448)

第11巻

(2024-07-11発行、 978-4065361931)

ゆびさきと恋々 特装版 7巻 講談社〈プレミアムKC〉

第7巻

(2022-09-13発行、 978-4065290262)

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