妻、小学生になる。

基本情報

村田椰融のデビュー作。

要旨と舞台設定

現代日本を舞台に、妻の新島貴恵を亡くした愛妻家の圭介とその娘、麻衣が、10年後に「貴恵の生まれ変わり」という小学生の女の子、白石万理華と再会することから始まる物語。圭介と麻衣は10年ものあいだ、深い悲しみの中にいたが、万理華の出現によって状況は一変する。

ストーリー展開

万理華が家族しか知らないはずの情報を次々と口にしたことで、圭介と麻衣は彼女が本当に貴恵であると認めるようになる。三人は徐々に「家族」として再出発するが、万理華は現世の母親、白石千嘉からネグレクト状態にあるという問題を抱えていた。圭介と麻衣は万理華を支えながら、同時に自分たちの人生も前に進めていくことを決意する。

ジャンル的特徴と位置づけ

本作は、転生ファンタジーとホームドラマを融合させた作品。生まれ変わりという超常的な設定を用いながらも、喪失感からの再起や家族の絆、過去と向き合う勇気といった現実的なテーマを扱っている。また、作中では日常の何気ない瞬間の美しさや、失われた家族の温もりを取り戻す過程が丁寧に描写されている。

作品固有の表現技法と特徴

物語の演出においては、前世の記憶と現世の感情が交錯する場面や、大人の魂を持つ子供という二重性が生み出す状況が特徴的に描かれる。また、家族写真や思い出の品といった象徴的なアイテムを通じて、記憶と絆の継続性が表現されている。

世界観の構築と設定

世界設定として、死者が強い思いを残したまま他界すると、特定の条件下で生まれ変わりとして記憶を保持できるという独自の輪廻（りんね）の法則が構築されている。また、現世の家族と再会するには、両者の強い思いが必要という設定が物語の基盤となっている。

連載状況

芳文社「週刊漫画TIMES」2018年5月11・18日合併号に掲載された読み切りを経て、2018年8月10日号から2022年12月16日号まで連載。

メディアミックス情報

テレビアニメ

2024年10月から12月までTOKYO MXほかにて放送。監督は阿部記之、アニメーション制作はスタジオ サインポスト。キャストは、主人公の新島圭介を平川大輔、新島貴恵および白石万理華を悠木碧、新島麻衣を野村麻衣子が演じる。

テレビドラマ・ドラマ（配信）

『妻、小学生になる。』：2022年1月から3月までTBS系列の「金曜ドラマ」枠にて放送。主人公の新島圭介を堤真一、10年前に他界した圭介の妻・新島貴恵を石田ゆり子、圭介と貴恵の娘・新島麻衣を蒔田彩珠、生まれ変わった圭介の妻・白石万理華を毎田暖乃が演じる。

『ヤコ、ショウがクセになる。』：2022年2月にParaviで配信。本編のスピンオフドラマ。

第1巻

ある日、娘の新島麻衣と二人で出来合いの弁当を食べていた新島圭介の家に、小学生の少女の白石万理華が現れる。そして彼女は、自分が圭介の妻であった「新島貴恵」の生まれ変わりだと話し始める。初めは子供の悪戯だと思った圭介だったが、万理華の自分たちについての記憶が正確であること、そしてその態度が貴恵そのものであることから、圭介は妻が帰ってきたと歓喜する。現在はほかの家の子供として生まれてきた身であるため、お互いに過剰な干渉は慎んだ方がいいと主張する万理華だったが、圭介は聞く耳を持たない。そして月日が経てば万理華と再び結婚できるのではないかと、皮算用まで始める。そんな中、圭介に思いを寄せる会社の同僚の守屋好美は、圭介が万理華の作った弁当を食べている時に声を掛け、いっしょに弁当を食べることに成功する。

第2巻

白石万理華は、険悪な関係の母親に新島圭介との交流を知られたら大変なことになると、圭介や新島麻衣とはもう会わないことを決める。しかし二人に対する思いは断ちがたく、どうしても言い出せずにいた。一方、守屋好美とその友人の菊池詩織は、好美の圭介への思いを成就させようと作戦を立て、圭介をバーベキューに誘う。その意味を理解していない圭介は、その場に万理華を連れてきてしまう。万理華はすぐに自分が邪魔者であることを悟るが、一人だけで帰ることもできない。そんな中、万理華は好美とジュースを買いに行くが雨に降られてしまい、二人で雨宿りすることになる。そこで、万理華は好美が圭介に寄せる強い思いを知ることとなる。