青猫について

青猫について

無法地帯と化した終戦直後の闇市を舞台に、美少女剣客の青猫の壮絶な復讐劇を描く、ハードボイルドなエログロバイオレンス。少女の清らかさとは対照的に、血なまぐさいグロテスクなシーンが多々描かれている。「やわらかスピリッツ」に掲載された作品。

正式名称
青猫について
ふりがな
あおねこについて
作者
ジャンル
バトル
 
復讐
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あらすじ

第1巻

終戦直後の混沌とした闇市で、ヤクザ者を片っ端から日本刀で斬り続ける少女の姿があった。「人斬り青猫」と呼ばれたその少女は、黒ずくめで猫のように素早く、火男(ひょっとこ)のイレズミが入ったヤクザ者たちを追い求めていた。世間知らずの青猫は、世慣れた少女のノブを引き連れ、カオスにまみれた街を渡り歩き、ついに火男のイレズミを入れたヤクザ者にたどり着く。一方、ヤクザから成り上がった実業家のヒヌマキョウヘイは、青猫への刺客として、「マレーのカラス」と呼ばれる女殺し屋を差し向ける。このヒヌマこそが、青猫があこがれていた青年の木島であり、彼女の家族を皆殺しにした極悪ヤクザであった。

第2巻

かつて家族をヒヌマキョウヘイと、その仲間たちに皆殺しにされた青猫こと瞳子は、戦争で手足をなくした叔父の月島に弟子入りした。彼は人殺しに快感を覚える人種であり、瞳子に自分と同じ人殺しの資質を見抜く。月島は自分の死をもって、瞳子を「人斬り青猫」として育て上げ、青猫は「木島」ことヒヌマキョウヘイを追い続けるようになる。一方、女殺し屋のカラスは青猫殺しに多額の賞金を懸けたヒヌマが気に入らず、彼のバー「黄薔薇」を訪ねる。そこへ突如、青猫が襲いかかるが、青猫はカラスに捕えられてしまう。青猫はヒヌマの居場所の情報と引き換えに、カラスの意のままに弄ばれる事を選ぶ。同じ頃、瞳子の家族惨殺事件を担当した刑事は、ヒヌマを強盗殺人の容疑で連行しようとしていた。

登場人物・キャラクター

青猫

おさげ髪でセーラー服を着た美少女。年齢は17歳で、本名は「瞳子」。火男のイレズミが入ったヤクザ者を追い求めており、襲ってきたヤクザを片っ端から日本刀で斬り続けている。黒ずくめの服を身につけ、猫のように素早いため、「人斬り青猫」と呼ばれるようになった。ちなみに、青猫とは黒猫の事。旅の相棒となったノブと共に、その日暮らしをしながら、仇敵を捜している。もとは世間知らずのお嬢様で、敬虔(けいけん)なクリスチャンだった。両親と弟と共に平和に暮らしていた頃、瞳子の父の書生である「木島」に居合を習っており、彼に恋心を抱いていた。しかし終戦の日に、家族を火男のイレズミが入ったヤクザ者たちに惨殺され、その主犯が木島ことヒヌマキョウヘイだった事が判明。ヒヌマたちに復讐するため、叔父の月島に人殺しを習うべく弟子入りした。これにより、お嬢様の手習いだった綺麗なだけの居合が、殺しで身につけた太刀筋へと変わり、人をためらいなく斬り殺すようになった。人を斬ったあと、「主よ、私を呪い給え。」というのが決め台詞。一方で怖い夢を見て飛び起きるなど、心理的外傷も抱えている。ノブからは「おさげ」と呼ばれている。

ノブ

浮浪児の少女。はぐれてしまった姉を捜している。明るい色のショートボブヘアにしている。せっかちな性格ながら機転がきくため、世間知らずな青猫のナビゲート役を担っている。拾ったタバコを巻き直して売る事で生活費を稼ぐなど、戦後の混乱した世の中をたくましく生き抜いている。一人称は「アタイ」。大人ぶっているものの、純粋な青猫を慕い、姉と会えたら三人で暮らしたいと思うようになる。カラスからは「こども」と呼ばれている。

カラス

マレーから来た殺し屋の若い女性。「マレーのカラス」と呼ばれている。毛先がウェービーなミディアムヘアをしており、着物を身につけ、ロングブーツをはいている。男嫌いの同性愛者。マレーでは、父親とジャングルの人喰い虎を探し歩いていたが、雇った現地の男たちに父親が殺されたあと、日本で人殺し稼業を始めた。父親の贓物(ぞうもつ)をエサに虎を狩ったというのが自慢。殺気を瞬時に感じる事ができ、殺(や)り合う事を純粋に楽しんでいる。武器は銃を使用する。ヒヌマキョウヘイから青猫の殺害を依頼されるが、初めて対峙した際に青猫からケガを負わされ、以降は青猫を自分の獲物と設定した。バー「黄薔薇」で青猫を殺す機会を得るが、青猫に性的な魅力を感じたため、自分の意のままにいたぶったあと、彼女が捜しているヒヌマの居場所を教えた。使用人のミッチからは「お嬢」と呼ばれており、恋人関係にある。ラムネが大好き。

ミッチ

カラスの使用人を務める若い女性。毛先がラフなボブヘアで、目の大きさが左右で違う。暗い雰囲気を漂わせ、大阪弁をしゃべる。カラスの秘書的役割を担っており、恋人関係でもある。マレーでの虎狩りにも同行し、カラスが何人殺したのかも把握している。のちに、カラスが首の後ろに火男のイレズミがある人物に殺されたため、青猫こと瞳子に仇討ちを依頼するために「聖ひまわり学園」を訪れた。ウイスキーが大好き。

ヒヌマ キョウヘイ

実業家を名乗る若い男性。ゆるいウエービーなショートヘアで、スーツに身を包んでいる。カラスに殺人を依頼し、その腕を確かめてから青猫殺しをあらためて依頼する。金持ちの家に入り込み、信用を得たあとに金を強奪するのを常套手段としていたヤクザ者で、ヒヌマキョウヘイ自身や仲間も火男のイレズミを入れている。以前は「木島」という名で瞳子の父の書生をしていた。青猫こと瞳子の居合の指導をし、最後まで目を背けない者が勝機をつかむと瞳子に教えた張本人であり、剣の腕は確か。終戦の日、瞳子の家族を惨殺して以降、代議士の先生に拾われ、押しも押されもせぬ実業家に上り詰めた。現在は自身の手を汚す事はいっさいしていない。財を成してからは、「聖ひまわり学園」を資金面から支えて戦争孤児の面倒をみるなど、これまでとは相反する行為を行っている。

瞳子の父 (とうこのちち)

国の仕事に携わっている男性。七三分けの短髪にしている。青猫こと瞳子と、幼い男児のヒロの父親で、妻と四人で豪邸に暮らしていた。まじめな性格で堅物。書生の「木島」ことヒヌマキョウヘイに信頼を置いていたが、ヒヌマからは、女房子供を飢えさせてまで信念を貫くおめでたい男だと、内心で馬鹿にされていた。終戦の日、ヒヌマと刀を交え、瞳子の目前で首を切り落とされる。

月島 (つきしま)

青猫こと瞳子の叔父。戦時中は大陸で人を斬りまくり、関東軍にその人ありといわれた大尉の男性。現在は爆弾で手足がふっとび、皮膚は焼けただれ、全身包帯姿で療養中の身にある。人を殺す事に快感を覚えるタイプで、瞳子に自分と同じ匂いを嗅ぎ取り、人殺しを教え込んだ。最後は自分の死をもって、瞳子を「人斬り青猫」に育て上げ、殺(や)られるまで、殺り続けるだけだと指南した。

刑事 (けいじ)

青猫こと瞳子の家族が惨殺された事件を担当した男性の刑事。高齢で、非常にやせている。瞳子からヒヌマキョウヘイの捜査を依頼されるが、日本が負けたという玉音放送を聞いたばかりで、気の抜けたような態度を取っていた。のちに、ヒヌマを強盗殺人容疑で警察署に連行しようとした際、瞳子と再会を果たす。

ヤクザの女房 (やくざのにょうぼう)

あるヤクザの妻。和服を身につけて髪をアップにしている。死んだ亭主から残された組とシマを女だてらに守っており、自分のような者がこのご時世に踏ん張っていれば、カタギの衆のよすがになると考えている、気概のある女性。自分の組の組員たちが青猫に殺されたため、青猫に一騎打ちの勝負を挑んだ。

ミツ姉 (みつねえ)

ヒロポンを生成している女性。長めのボブヘアをした半裸姿で、眼鏡をかけている。軍隊で勲章を貰った事もある学者で、浮浪児たちだけで生きていけるよう、子供たちに薬を捌かせている。その際に使えそうな客は中毒にして、ロボットのように扱っている。ヒロポンを生成する時にはガスマスクをつけている。女子供だけの町を作ろうとしており、青猫に用心棒になってくれないかと依頼した。

イガグリ頭の少年 (いがぐりあたまのしょうねん)

ミツ姉のもとでヒロポンを捌(さば)いている少年。浮浪児たちのリーダー的な存在で、青猫とノブにヒロポンを売りつけようとした。ミツ姉亡きあとは、彼女の残したヒロポンを元手に、子供たちだけで生活を送っていた。

イ号 (いごう)

頭頂部が禿げたヒロポン中毒の大男。ミツ姉の実験台として、毎日決まった量のヒロポンを摂取させられていた。捕えようとした青猫に斬られるが、自分の腹が裂けているのもわからないほど薬漬けにされている。

太った中年女性 (ふとったちゅうねんじょせい)

屋台ですいとんを売っている、太った中年の女性。髪を団子に結わえ、割烹着を着用している。青猫たちに、自分たちの街を牛耳るヤクザが新たな親分になったいきさつを聞かせた。少々高い店料を払ってでも、生きていければいいと考えているが、親分の女になったよし子を快く思っていない。

よし子 (よしこ)

ヤクザ「由多組」の親分の女になった若い女性。実家には寝たきりの祖母と弟がいる。ショートヘアで派手な服を身につけている。尻軽女だと町中の人間からさげすまれているが、実は家族思いで、感性が鋭い。いざという時のために親分が隠し金をつぎ込んだダイヤは、家族の手に渡るように取り計らっている。

かず夫 (かずお)

よし子の弟。寝たきりの祖母と長屋で暮らしている。ヤクザの親分の女になったよし子を快く思っておらず、自分が勉強して偉くなろうと心に決めている。のちに、よし子が行方不明になったあと、飴玉の袋の中からダイヤの指輪を見つける。

親分 (おやぶん)

ヤクザ「由多組」の親分を務める男性。ある日、前の親分を殺して街を牛耳り、よし子を自分の女にした。警察やアメリカ兵を手なずけており、市場の店料を払わない人間は古タイヤをかぶせて頭を燃やすなど、人間とは思えない非道を繰り返している。火男のイレズミを背中に入れている。

ゲン

下っ端ヤクザの若い男性。兄貴分の男に恋人をパンパン(売春婦)にすると言われ、恋人といっしょに組から逃げようとしている。そんな時、その首に多額の懸賞金をかけられた青猫と知り合い、ノブと共に四人組を装って逃げる事になる。その場しのぎのいいかげんな性格だが、大きなチャンスをつかみたいという野望を持つ。

恋人 (こいびと)

ゲンの恋人の若い女性。前髪を下し、アップスタイルにしている美人。ゲンの兄貴分の男たちにパンパン(街娼)にされそうになり、ゲンと逃げようとしている時に、青猫と知り合う。子供好きで、ノブからは自分の姉とどことなく似ていると思われている。ゲンの田舎で、畑仕事しながら静かに暮らしたいと願っている。

殺し屋 (ころしや)

左目にかけて大きな傷がある殺し屋の男性。バー「黄薔薇」でヒヌマキョウヘイの部下から青猫殺しを依頼される。最初は使い慣れない銃で青猫と対峙するが、日本刀での一騎打ちで青猫に敗北。その際、「黄薔薇」のマッチを落とし、青猫がヒヌマの居場所をつき止めるきっかけをつくった。

先生 (せんせい)

代議士を務める初老の男性。痩せた体形で、口ヒゲを生やして眼鏡をかけている。ヒヌマキョウヘイを拾って育てたと自負しており、ヒヌマが手掛ける事業のいいところだけを搾取し続けている。だが、バー「黄薔薇」で青猫が大暴れしたとの報告を中佐から受け、ヒヌマの事を切り捨てた。

園長先生 (えんちょうせんせい)

「聖ひまわり学園」の園長を務める中年の女性。ロングヘアをゆるく一つに束ねている。ヒヌマキョウヘイから資金面で援助を受けていた。「聖ひまわり学園」の前で行き倒れていた青猫こと瞳子を看病し、それから瞳子が園を手伝ってくれるようになったのも、ヒヌマが巡り合わせてくれた縁だと思って感謝の念を抱いている。ちなみに、ヒヌマと瞳子の事情はまったく知らない。ヒヌマ亡きあとも、彼が残したお金が「聖ひまわり学園」に送られていると思い込んでいる。

中佐 (ちゅうさ)

丸眼鏡をかけたアメリカ人。先生の紹介でヒヌマキョウヘイのクライアントとなった。安心して遊べると聞いたバー「黄薔薇」で飲んでいた際、青猫の襲撃を受け、おじけづいて先生に事件を密告した。そのために、ヒヌマが先生から見放される事になった。ヒヌマから「ミスター」と呼ばれている。

ヒヌマの姉 (ひぬまのあね)

首の後ろに火男のイレズミのある若い女性。ヒヌマキョウヘイの姉。ショートヘアの同性愛者。強い女がいると聞いて訪ねてきたカラスと肉体関係を持つが、のちに殺し合いを持ち掛けられる。殺し屋や仇討ちなどは時代錯誤でバカらしいと考えているドライな性格で、ヒヌマが残した財産で楽して生きていこうと考えている。

場所

聖ひまわり学園 (せいひまわりがくえん)

戦争孤児が生活を送る孤児院。ヒヌマキョウヘイが資金を援助している。門の前で行き倒れている青猫こと瞳子を園長先生が助けてから、瞳子が「聖ひまわり学園」を手伝うようになる。園長先生は、ヒヌマの死後も彼が残してくれたお金が「聖ひまわり学園」に送られていると思い込んでいる。

黄薔薇 (きばら)

ヒヌマキョウヘイが経営しているバー。舞台も備えた高級店で、戦後の酒不足にもかかわらず、酒の数も種類も豊富。安心して遊べるバーとして、実業家でもあるヒヌマのクライアントも訪れている。ヒヌマが依頼した殺し屋が、青猫との一騎打ちで黄薔薇のマッチを落とした事から、青猫に襲撃を受けて大勢の死者が出た。

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