あらすじ
黄金の脚を持つ男
高校1年生の小早川瀬那は、私立泥門高校に入学してすぐの昼休み、十文字一輝ら不良生徒たちに目を付けられて困っていたところ、彼らと共にアメリカンフットボール部「泥門デビルバッツ」の部室へと迷い込んでしまう。その場は部員の栗田良寛のおかげで事なきを得た瀬那だったが、これがきっかけで、アメリカンフットボール部の現状を知る。現在部には部員が二人しかおらず、先ほどの件も良寛は、入部希望者と勘違いして瀬那たちに嬉々として声をかけてきたのだという。そこで瀬那は、部の管理職的な立場「主務」であれば協力できるかもしれないと考て入部を決意するが、放課後、再び一輝たちに襲われてしまう。昼間の一件で良寛に逆恨みした一輝たちは、良寛にケンカを仕掛け、部を活動停止にしてやろうと画策していた。そこでまず、良寛の連絡先を知っていそうな瀬那を狙ったのである。この状況で連絡先は教えられないと考えた瀬那は慌てて逃げ出し、自分でも驚くほどのスピードでみごと逃走に成功。瀬那はこれまでずっと周囲から使いっ走りにされることが多く、その度に走り続けてきた結果、知らず知らずのうちに驚異的な脚力を身につけていたのである。こうして危機を脱した瀬那だったが、その一部始終を見ていたもう一人のアメリカンフットボール部員、蛭魔妖一は、この日から、瀬那を主務ではなく、選手として育てることを決意する。
ぶっころす!!
小早川瀬那は、アメリカンフットボール部の主務として入部したはずだったが、なぜか蛭魔妖一によって、選手としても登録されることになってしまう。さらに妖一は、瀬那のヘルメットにのみアイシールドを付けて顔を隠し、試合中は本名ではなく、コードネームの「アイシールド21」と名乗るように命じる。妖一は、瀬那の高すぎる運動能力はいずれ周囲に知られ、ほかの部が勧誘しに来ると予想し、正体を隠しておいた方がいいと考えたのである。こうして瀬那の「アイシールド21」としての活動が始まるが、次の大会はすでに明日にせまっていた。しかし、現在三人しか部員のいない「泥門デビルバッツ」が試合に出るためには、あと八人の部員か助っ人を集めなければならない。瀬那は最悪自分が出場することも考えるが、結局無事に八人の助っ人が見つかり、試合当日を迎える。こうして恋ヶ浜高校「恋ヶ浜キューピッド」との戦いが始まるが、瀬那は予想以上に激しいアメリカンフットボールの試合を見て、次第に怖くなってしまう。そして試合は恋ヶ浜キューピッド優勢で進み、あっという間に泥門デビルバッツは追い詰められてしまう。この試合に無理やり出場させられた瀬那は、体格的にも貧弱な自分が、ほかの選手たちを力でねじ伏せられるのだろうかと不安に襲われる。そんな瀬那に妖一は、パワーではなくスピードで他を圧倒しろと告げる。
その手に摑むもの
小早川瀬那の活躍により、「泥門デビルバッツ」は「恋ヶ浜キューピッド」にみごと勝利した。しかし試合を見に来ていた瀬那の幼なじみの姉崎まもりは、瀬那が部でひどい扱いを受けているのではないかと不安を抱いていた。蛭魔妖一の傍若無人さは泥門高校でも有名で、風紀委員のまもりは、ずっと妖一に手を焼いてきたからである。しかし妖一はそんなまもりに、部員となって自分を監視すればいいと提案する。この挑発に乗ったまもりは、マネージャーとして泥門デビルバッツに入部することになる。こうして泥門デビルバッツは第2試合に向けた準備を始めるが、次の対戦相手は神奈川県の「王」として知られる「王城ホワイトナイツ」だった。彼らは超強豪チームであるうえに、泥門デビルバッツは去年の試合で、エースの進清十郎から二人の選手がケガをさせられていた。これを聞いた瀬那は、清十郎のタックルを恐れるあまり、試合直前に逃亡しそうになるが、最終的には出場を決意。助っ人を含めたチーム全員が「アイシールド21」に期待している以上、せめて、それに応える努力だけはしようと誓うのだった。こうして始まった試合は、妖一の戦術がみごと的中し、泥門デビルバッツが先制点をあげる。
その名は泥門デビルバッツ
「泥門デビルバッツ」と「王城ホワイトナイツ」の戦いは、泥門デビルバッツが予想以上の健闘を見せるものの、最終的には王城ホワイトナイツの圧勝に終わった。しかし小早川瀬那はアメリカンフットボールの楽しさを感じ始め、進清十郎もまた、そんな瀬那をライバルとして認めるようになっていた。だが清十郎は、最終的に戦いを勝ち抜き「全国大会決勝(クリスマスボウル)」に進出するのは自分たちであると、瀬那に宣言するのだった。こうして大会は終わるが、すぐに瀬那は清十郎の発言の意図を理解する。高校アメリカンフットボールには今回の春大会と秋大会の2大会があり、全国大会の出場にかかわるのは秋大会で、これから秋大会で勝ち抜けば、泥門デビルバッツも全国大会に出場できる可能性があるのだ。これからの頑張り次第で全国大会に出場できることを知った瀬那は、その日から必死に練習に取り組むのだった。そんなある日、瀬那は野球部の雷門太郎と知り合う。彼は愛用のグローブで猛練習を重ねた末に優れたキャッチ能力を身につけた野球選手で、そのずば抜けた捕球力を売りにレギュラーを目指していた。しかし、総合力を重視する野球部の監督はそんな太郎を評価しておらず、太郎は球拾いをさせられていた。だが、専門性を重視するアメリカンフットボールであれば、太郎のキャッチ能力が活かせると考えた瀬那は、太郎を泥門デビルバッツに勧誘する。
BAD vs BAD(悪対悪)
雷門太郎が「泥門デビルバッツ」に加わり、正式な選手はこれで四人となった。そんな折、都立賊都学園高校の「賊学カメレオンズ」との試合が決まる。主将の葉柱ルイは父親が東京都議であり、非常に裕福な家庭で育った。これに目を付けた蛭魔妖一は試合に高額の賞金を賭け、勝利することで部費を手に入れようと考えたのである。そして試合当日となるが、十文字一輝、黒木浩二、戸叶庄三の三人は、これを好機と見ていた。現在一輝たちは妖一に裸の写真を撮られており、これをネタに脅かされ、部員たちに手を出せずにいた。しかし、試合中であればアメリカンフットボール部の部室は誰もいなくなるため、写真を盗み出せるのではないかと考えたのである。しかし三人が部室に侵入すると、栗田良寛に遭遇。人の好い良寛は、三人が試合に部員として活動するためにやって来たのだと勘違いし、一輝たちは選手として試合に出場させられるのだった。こうして始まった試合は泥門デビルバッツの勝利に終わり、泥門高校が試合会場になったこともあり、泥門デビルバッツは一躍校内で有名になる。その直後に行われた入部説明会も盛況となるが、妖一はこれを楽観視せず、真にやる気と素質のある者を見極めるため、入部テストの開催を決める。
ホンモノ・ヒーロー
「泥門デビルバッツ」の入部テストの結果により、栗田良寛にあこがれている小結大吉、運動能力には欠けるがやる気にあふれた雪光学、成り行きで参加し合格してしまった不良生徒の十文字一輝、黒木浩二、戸叶庄三の合計五人が入部した。さらに「賊学カメレオンズ」に勝利した賞金で部室も立派に改装され、小早川瀬那たちの士気は大いに上がるのだった。そんなある日、瀬那と雷門太郎は、桜庭春人のお見舞いへ行くことになる。春人は先日の泥門デビルバッツとの試合でケガをしてしまい、まだ入院生活が続いていたのだ。そんな春人は、現状に悩んでいた。芸能活動をしている春人は、芸能人としては非常に人気があり、アメリカンフットボールをよく知らないファンからは、「王城ホワイトナイツ」のエースだと認識されていた。しかし、選手としてはそこまで優秀というわけではなく、ファンの認識と現実のギャップに苦しんでいたのである。しかし、そこへ瀬那たちが訪れたことがきっかけで、同室の少年、虎吉が、アメリカンフットボール選手としての春人のファンだということが判明。そこで瀬那は、「アイシールド21」として持ってきていた謝罪の手紙を渡すのをやめ、これは「アイシールド21」が、いかに春人を危険視しているかという手紙だとでっちあげる。それでも春人は自信を持てずにいたが、虎吉のためにも自分を変えることを決意するのだった。
闘えラインマン
アメリカのチーム「NASAエイリアンズ」との試合出場権をかけて、「泥門デビルバッツ」と、県立太陽高校「太陽スフィンクス」が対戦することになった。これは、もともと出場権は希望校から抽選で選ばれるはずだったが、実際は太陽スフィンクスが内定しているという、デキレースだった。これを知った蛭魔妖一は、無理やり泥門デビルバッツをねじ込み、勝った方が日本代表となるように細工したのである。そんな太陽スフィンクスは、超重量級ラインマンで構成された守備重視のチームだった。栗田良寛は、これに対抗するラインマンとして小結大吉、十文字一輝、黒木浩二、戸叶庄三に期待していたが、成り行きで入部してしまった一輝たちは、戦う意欲を見い出せずにいた。しかし一輝たちは、部活動をサボって入ったレストランで、偶然太陽スフィンクスの選手たちに遭遇し、彼らが自分たちを見下しており、敵だとも思っていないことを知ってしまう。その傲慢な態度に激怒した一輝たちはケンカを仕掛けるが、あっさり敗北。このままでは終われないと考えた一輝たちは、アメリカンフットボール選手として次戦で勝つべく、気持ちを新たにする。そんな一輝たちに妖一は、特別な訓練を始める。それは、賊徒学園高校の選手たちに協力を依頼して行うものだった。
翔べデビルバット
十文字一輝、黒木浩二、戸叶庄三が蛭魔妖一の指導で学んだのは「喧嘩殺法」という、相手選手の袖をつかみ、引き倒すという、まるでケンカのような戦術だった。これに虚をつかれる「太陽スフィンクス」は、ついに「ピラミッドライン」と呼ばれる鉄壁のラインを崩してしまう。そしてその後、妖一の巧妙な戦術もあり、「泥門デビルバッツ」は、太陽スフィンクスに1点差までせまったところで前半終了となる。一方の太陽スフィンクスは、泥門デビルバッツを格下に見るあまり、防御がスキだらけになっていたことを反省。後半から、コーナーバックの鎌車ケンを投入して対抗してくる。これによって守備に難がある泥門デビルバッツはケンに翻弄され、特にパスキャッチをことごとく邪魔された雷門太郎は苦戦する。そんな太郎に妖一と栗田良寛は、ケンに対抗するのではなく、上手く逃げることでキャッチを成功させろとアドバイスを送る。そのアドバイスどおりに太郎はみごとケンを振り切り、さらに小早川瀬那が「デビルバットダイブ」という大技を成功させたことにより、最終的に試合は引き分けに持ち込む。その後、太陽スフィンクスが出場辞退したことにより、泥門デビルバッツが日本代表校に決定する。
その男ムサシ
「泥門デビルバッツ」と「NASAエイリアンズ」の試合当日、日本での試合が面倒になったNASAエイリアンズの監督は、あっさり試合をキャンセルしてしまう。これを聞いた蛭魔妖一は、監督を挑発する動画を作成。まんまとこれに乗せられた監督は、試合日を1か月後と設定し、この試合で10点以上差をつけて泥門デビルバッツに勝てなかった場合、自分たちは二度とアメリカに戻らないと宣言する。泥門デビルバッツもまた、同じように10点以上を差を付けられなかった場合は、チーム全員日本から即日退去すると宣言。こうして練習の日々が始まるが、そんなある日「盤戸スパイダーズ」のキッカーである佐々木コータローが泥門高校へやって来る。コータローは、泥門デビルバッツには優秀なキッカーがいると聞いて会いに来たのである。しかしそのキッカーの武蔵厳は、すでに退部してしまっていた。厳は妖一と栗田良寛の中学時代からの友人で、高校でも三人いっしょにアメリカンフットボールを続ける予定だった。しかし今は部活も、学校も離れて実家の工務店で働いていた。泥門デビルバッツの部室を改装してくれたのも、厳だったのである。そんな顔なじみが元部員だったと知った小早川瀬那と雷門太郎は、もし自分たちがNASAエイリアンズに勝利したら、部に戻って来て欲しいと厳に頼み込む。
野生の現実(リアル)
「NASAエイリアンズ」との戦いに向けて、小早川瀬那と雷門太郎は、栗田良寛の自宅であるお寺に泊まり込んで練習することになった。そこへ偶然やって来たのは、探し物をしていたNASAエイリアンズの選手たちだった。これがきっかけでパトリック・スペンサーと親しくなり、その凄さを目の当たりにした瀬那だったが、パトリックは黒人であるがゆえに白人至上主義の監督に冷遇されており、試合に出場させてもらえずにいることを知る。こうして始まった試合で、瀬那たち「泥門デビルバッツ」は、蛭魔妖一の戦術どおり、全員自分のポジションを離れて相手のパスを阻止する戦術「電撃突撃(ブリッツ)」を敢行する。しかし、恵まれた体格のクォーターバックのホーマー・フィッツジェラルドには通じず、いきなり危機に陥ってしまう。だが瀬那は、ここでホーマーの弱点に気づく。これによって瀬那はタッチダウンに成功し、8点差までせまるものの、黒人差別主義者の監督はパトリックを出場させる気配がない。そこで妖一は、事前に用意していたさまざまな戦術で監督を挑発する。こうして流れは完全に泥門デビルバッツに傾き始め、太郎は10点以上点差を付け、さらにパトリックを出場させるようにぶっちぎりで勝利しようと瀬那に提案。10点差をつけるどころか、勝利も危なくなったNASAエイリアンズの選手たちは監督に土下座し、パトリック自身の嘆願もあり、ついにパトリックがフィールドに姿を現す。
地獄への境界線
「泥門デビルバッツ」と「NASAエイリアンズ」は、最終的には1点差でNASAエイリアンズの勝利となった。もし泥門デビルバッツに優秀なキッカーがいた場合、ほかにも考えられる戦術はあったのだが、それが叶わず、この結果となってしまった。こうして両チーム共に10点以上差を付けられなかったことにより、帰国できなくなったNASAエイリアンズはしばらく日本で観光することになり、これに目を付けた蛭魔妖一は、NASAエイリアンズが帰国用に予約していた便でアメリカへ出発し、アメリカで特訓を始めるのだった。そんな小早川瀬那たちが現地で出会ったのは、同じく練習に来ていた西部高校「西部ワイルドガンマンズ」の選手たちだった。彼らと組んでビーチフットの大会に出場することになった瀬那たちはみごと優勝を果たす。そして、敵チームの監督を務めていた酒奇溝六と出会う。溝六は以前日本の中学校でアメリカンフットボールを教えており、妖一、栗田良寛、武蔵厳に最初にアメリカンフットボールを教えた人物でもあった。しかし、多額の借金を抱えて日本にいられなくなり、ひとまずアメリカに逃走して優秀な選手をスカウトしながら、監督をしていたのだ。妖一がビーチフットの大会に出場しようとしたのも、この大会で溝六と出会えるかもと推測していたからだった。こうして溝六の指導を受けることになった瀬那たちだったが、秋大会まではすでに40日ほどしか時間は残されていなかった。そこで妖一は、「死の行軍(デス・マーチ)」と呼ばれる、地獄の特訓を提案する。
地獄に惚れた男たち
小早川瀬那たち「泥門デビルバッツ」は、「死の行軍(デス・マーチ)」がいかに危険で、かつて酒奇溝六の選手生命を断ったものであることも承知したうえで、全員で挑戦することになった。こうして瀬那たちは、現在地から約2000キロ先のラスベガスを目指して、それぞれのポジションに合ったトレーニングを積みながらの移動を開始する。そんな中、瀬那に課せられた練習方法は、小さな石を蹴りながら走り続けるというものだった。瀬那は果たしてこれがどのような効果がもたらされるのかがわからないまま、一心不乱に石を蹴り続けるのだった。一方その頃、王城ホワイトナイツは富士山のすぐ近くにある合宿所で合宿を行っていた。そこで進清十郎が出会ったのは、パトリック・スペンサーだった。パトリックたち「NASAエイリアンズ」は日本に滞在中で、今は富士山を観光していた。そこで、「王城ホワイトナイツ」もまた富士山にいると聞いたパトリックは、いてもたってもいられず、清十郎を探しにやっと来ていたのである。そんなパトリックに清十郎は勝負を挑まれるが、難なく勝利する。そして清十郎は、パトリックと瀬那の弱点を指摘する。
ゴーストの胎動
小早川瀬那の弱点とは、走りながら激しくステップを切る際に、一度どうしてもブレーキをかける必要があるということだった。逆に言えば、スピードを落とさずに加速することができれば強力な武器となる。石けりは、そのためのトレーニングだったのだ。しかし「泥門デビルバッツ」には、個々のレベルアップのほかにも、まだ課題が山積みだった。それは「タイトエンド」と呼ばれる、戦術に応じて異なる動きをするポジションの選手の獲得だった。しかし第一候補の酒奇溝六の弟子、サイモンは現在ビーチフットに夢中であるため、最適な人材がいないままだったのである。そんなある日、瀬那はうっかり蛭魔妖一たちとはぐれてしまう。そこで姉崎まもりと思われる日本人女性が、日本人男性を探しているという情報を頼りに、サンアントニオ体育館へ向かう。だがここで出会ったのは、瀧鈴音という少女だった。鈴音は、兄の瀧夏彦を探すために単身渡米しており、夏彦がプロのアメリカンフットボールチーム「アルマジロズ」の入団テストを受けるのではないかと考えて、会場にやって来ていたのである。そんな彼女と行動を共にするうちに、瀬那も成り行きで入団テストを受けることになり、夏彦が無事合格できるようにサポートする。
BLACK JACKは21
小早川瀬那は、「アルマジロズ」の入団テストを経て「デビルバットゴースト」という、スピードを落とさずにステップを切る技術を会得する。最終的に瀧夏彦は入団テストに不合格となってしまったものの、彼の器用なプレーを目の当たりにした瀬那は、夏彦を「泥門デビルバッツ」に勧誘する。その後、瀬那は無事に蛭魔妖一たちと合流し、一行は夏彦や瀧鈴音と共に、ラスベガスへの旅を再開する。しかし、比較的順調に思われた「死の行軍(デス・マーチ)」は、4分の3地点を越えた30日目から過酷さを増していく。そして33日目、とうとう雪光学が倒れてしまうが、一人として欠けることなくクリアしたいと考える瀬那は学をサポートし、これに勇気をもらった学は復活。ついに40日目、全員自分の足で完走を果たすのだった。だが、「泥門デビルバッツ」にはまだ問題が残っていた。酒奇溝六は多額の借金を背負っており、返済のめどがたたずにアメリカに逃げてきていたのだ。つまり、返済ができない限り、日本で自分たちの指導をすることができないのである。しかし妖一は、これをクリアするために目的地をラスベガスに選んでいた。妖一はカジノで勝利し、その賞金を返済に充てようと考えていたのである。
決戦は日曜日
アメリカでの「死の行軍(デス・マーチ)」を終え、酒奇溝六の借金問題も解決した「泥門デビルバッツ」は、無事帰国の途に就く。そして日曜日から始まる秋大会に向けて、最終調整に入っていた。試合前、レギュラーメンバーの発表が行われるが、タイトエンドに選ばれた瀧夏彦に対し、体力面で不安の残る雪光学はメンバーに選ばれなかった。しかし小早川瀬那や雷門太郎は、これから大会で勝ち進み、学自身も自分の夢をあきらめなければ、いずれ学の出場の機会が生まれるはずだと考えていた。こうして迎えた秋大会初日、泥門デビルバッツの初戦の相手は網乃高校の「網乃サイボーグス」。網乃高校は文武両道の高校と知られ、その知識から得たスポーツ医学を駆使して、毎年違うスポーツで校内一丸となって取り組む一点集中型の学校だった。昨年はサッカーを重点的に強化していたが、今年はアメリカンフットボールが選ばれたため、選手たちは学校ぐるみで1年間の研究とトレーニングを積んで参加していたのだ。しかし、そんな網乃サイボーグスとの試合会場へ向かう途中、瀬那と夏彦は誤って違うバスに乗ってしまう。
デビルバットゴースト
小早川瀬那は、「賊学カメレオンズ」の選手たちの手助けもあり、途中出場ではあるものの、「網乃サイボーグス」との試合に間に合った。そしてエースの胸肩厚との直接対決に勝利した瀬那は、そのまま試合にも圧勝し、1回戦を無事突破する。こうして「泥門デビルバッツ」は、次の週末に行われる2回戦の準備を始めるが、その前に瀧夏彦の編入試験があった。夏彦は夏休みまでアメリカにいたため、編入生として泥門高校に入ることになっていたが、肝心の編入試験がまだ行われていなかったのである。そんな中、瀬那たちは予想以上に学力の低い夏彦に手を焼きつつも、どうにか夏彦を合格に導くのだった。一方その頃、泥門デビルバッツの2回戦の相手である私立夕陽高校「夕陽ガッツ」は、厳しい選択をせまられていた。夕陽高校は非常にスポーツに力を入れている高校と知られているが、優先順位が高いのは野球やバレーであった。そのためアメリカンフットボール部には部費の予算が非常に少なく、いい選手も集まりにくい状況にあった。それでも主将の熱海大介たちは真剣に部活動に取り組んできたが、結果が残せないことに焦った監督は、レギュラーメンバーたちではなく、ほかの部から集めた助っ人で2回戦に挑もうとしていた。
巨象とアリの戦い
小早川瀬那と雷門太郎は、「夕陽ガッツ」が置かれている状況を理解したうえで、熱海大介たちレギュラーメンバーと戦いたいと願っていた。そこで、大介たちでなければ挽回できないと思わせる程度に圧倒すればこれが叶うのではないかと考えた瀬那たちは、みごと大介たち選手を引きずり出したうえで勝利し、3回戦へと進むのだった。その後、第2試合を偵察に行った瀬那たちは、巨深(きょしん)高校「巨深ポセイドン」の戦力の高さを目の当たりにする。対戦相手は、人気選手の山本鬼平擁する柱谷(はしらたに)高校「柱谷ディアーズ」だったのだが、巨深ポセイドンの選手たちはそんな鬼平を子供扱いして勝利する。さらに瀬那は、試合後偶然巨深ポセイドンの筧駿に遭遇し、衝撃の事実を知らされる。今まで瀬那は「アイシールド21」とは、蛭魔妖一がでっちあげた設定にもとづいた、架空の選手だと考えていた。しかし、実際にはモデルとなった選手がおり、つまり本物の「アイシールド21」は別にいたのである。駿は本物の「アイシールド21」と対戦したことがあり、明らかに「泥門デビルバッツ」にいる選手は別人だととらえていた。なんとかその場をごまかした瀬那だったが、いつか本物を超えるためにも、気持ちを引き締めるのだった。そして迎えた3回戦では、独播(どくばり)高校「独播スパイダーズ」に圧勝する。
本物は誰だ
「泥門デビルバッツ」は「独播スパイダーズ」に勝利し、ついにベスト8入りを果たす。そんな泥門デビルバッツの次なる対戦相手は、筧駿擁する強豪の「巨深(きょしん)ポセイドン」だった。そんなある日、小早川瀬那は、蛭魔妖一の命令で、巨深高校にスパイクを届けに行くことになる。瀬那は先日、巨深ポセイドンの選手たちに会ったが、その時は瀬那がアイシールドを付けており顔が割れていなかったため、素顔の瀬那に堂々と偵察に行かせたのである。そこで駿と水町健悟に再会した瀬那は、改めて本物の「アイシールド21」について話を聞く。駿は中学時代、アメリカにアメリカンフットボール留学しており、そこで「アイシールド21」に出会っていた。それまでの妖一の言動から、周囲には彼が適当にでっち上げた存在だと思われていた「アイシールド21」は、実在していたのである。ただ、本物の「アイシールド21」は、瀬那と違って非常に背が高く、その身体能力を活かしたプレーを得意としていた。そんな本物の「アイシールド21」に完敗した駿は、ノートルダム附属中学校との再戦を心待ちにしていた。しかしそれが叶ったある日、「アイシールド21」はなぜか試合に現れず、駿が学校に問い合わせても、そのような選手は最初からいないと告げられてしまうのだった。以来駿は、帰国後もずっと「アイシールド21」を探しながらプレーを続け、現在「アイシールド21」は日本でプレーしており、この秋大会に出場しているらしいという情報を得ていたのだ。
悪魔VS海の神
「泥門デビルバッツ」と「巨深(きょしん)ポセイドン」の試合となり、長身揃いの巨深ポセイドンに対抗すべく、小柄な小早川瀬那、雷門太郎、小結大吉はそれぞれに対策を練ってきていた。それでも巨深ポセイドンの選手は圧倒的な力を発揮し、瀬那たちは苦戦する。特に大吉が水町健悟との身長差に苦しむ中、大吉の両親が会場へ到着。そして父親からのエールで、大吉の売りは身長でもスピードでもなく、その腕っぷしの強さだという言葉に勇気をもらう。これによって、「リップ」という健悟への対抗策を見つけた大吉は、ついに健悟に競り勝つ。その後も両者一歩も譲らない戦いが続くが、ここで蛭魔妖一は瀬那と太郎に「鳥の叉骨(ウィッシュボーン)」という陣形でのコンビプレーを命じる。これは、妖一が次にパスする相手を、コンビで動いている瀬那と太郎なのか、石丸哲生なのか、それともパスせずに妖一自身がランを選択するかで、敵を混乱させるという複雑なプレーだった。このプレーを成功させた泥門デビルバッツは、前半1点差まで巨深ポセイドンにせまるのだった。しかし巨深ポセイドンは、鳥の叉骨によって考えられる三つのパターンのうち、一つ目の瀬那たちのパターンを筧駿がマークして封じ、残りの選手全員で残り2パターンの動きを封じるという戦術に出る。これによって泥門デビルバッツは追い詰められるが、そんな巨深ポセイドンが警戒していない選手が一人だけいた。それは、瀧夏彦だった。
0コンマの決戦
後半残り18秒、「泥門デビルバッツ」と「巨深(きょしん)ポセイドン」の勝負の行方は、両チームのエースである小早川瀬那と、筧駿の対決にかかっていた。先ほどデビルバットゴーストを破られたばかりの瀬那は、強い不安を感じつつも気持ちを新たにする。瀬那はデビルバットゴーストにスピンを加えることで駿を抜き去り、そのまま泥門デビルバッツの逆転勝利かに思えたが、ここで水町健悟がすさまじい勢いで追ってきたことで、残り30センチのタッチダウンの位置で止められてしまう。こうして試合は、泥門デビルバッツの最後の攻撃が成功するか否かにかけられた。瀬那はここで、小結大吉が作り出したルートを走破してタッチダウンに成功し、泥門デビルバッツの勝利となる。この勝利によって駿は瀬那を、健悟は大吉を認める。そして駿は、いつか本物の「アイシールド21」と出会った時は、その身軽なプレースタイルで戦って見せろと激励するのだった。その後「西部ワイルドガンマンズ」の試合を偵察に行った瀬那たちは、小学生の頃に2週間だけ瀬那と同じ学校に通っていた甲斐谷陸と再会する。瀬那と陸はいっしょに過ごした時間こそ短いが、瀬那にとって、陸はランニングの師匠ともいえる存在だった。そんな陸が今は西部ワイルドガンマンズの選手だと知り、瀬那はますます次の西部ワイルドガンマンズとの試合に意欲を燃やすのだった。
デビルバッツ創成記
小早川瀬那は、泥門高校の体育祭を見に来ていた甲斐谷陸に、自分こそが「アイシールド21」であると打ち明けた。その直後、次の試合から武蔵厳が戻って来るらしいという報せが入る。しかし、これは結局雷門太郎の勘違いだったのだが、蛭魔妖一はいつでも厳が戻って来られるように、本来退学するつもりだった厳を休学扱いにして、アメリカンフットボール部の選手登録をそのままにしていたのである。さらにこれがきっかけで、瀬那たちは栗田良寛から、創部当時の話を聞く。中学時代からの友人である三人は、高校でもいっしょにアメリカンフットボールをするため、そろって泥門高校に入学した。しかしある日、厳の父親が倒れてしまい、厳は実家の工務店を支えるため、学校を去らなくてはいけなくなってしまったのだ。この話を聞いた瀬那と太郎は、厳は口ではアメリカンフットボールに興味をなくしたと言っているものの、本当は今でもプレーしたいのではないかと考え、本人に直接尋ねることにした。厳はアメリカンフットボール続けたいこと気持ちがあることを認めつつも、実家が父親が切り盛りしていた頃の状況にならない限りは、自分は戻れないと告げるのだった。こうして、厳が不在のまま、「西部ワイルドガンマンズ」との試合が始まる。
ジェットコースターゲーム
東京都地区大会の準決勝、「泥門デビルバッツ」と「西部ワイルドガンマンズ」の試合が始まった。しかしキッカーの武蔵厳が不在のままでは、泥門デビルバッツは非常に厳しい状況にあった。両校ともに超攻撃的なチームながら、実力的には西部ワイルドガンマンズの方が一枚格上であった。さらに両チームの守備力と攻撃力が同じだとしても、キックの成功率がそのまま得点差となるため、キッカー不在の泥門デビルバッツは不利な状況にある。それでも小早川瀬那たちは強気に攻め、敵の裏をかいた戦術で対抗していくが、次第に追い詰められていく。西部ワイルドガンマンズは攻撃重視のチームとして知られているが、決して守備に難があるわけではなかったのだ。そんな中、主将の牛島馬波郎に攻撃陣は押されていくが、ここで十文字一輝は、馬波郎の荒っぽい戦い方もルール上は問題ないのなら、自分たちの喧嘩殺法も問題ないのではないかと気づく。瀬那もまた、甲斐谷陸からヒントをもらい、陸を抜き去る方法を模索していた。さらに、蛭魔妖一の戦術が完成に近づいていた。妖一はここまで、わざと武者小路紫苑をあおるような行動を繰り返したり、無謀でワンパターンな攻撃を続けたりしていた。しかしこれは、紫苑を焦らせ、ふだんよりも攻撃スピードを上げさせるための罠だったのである。だが、これさえも紫苑には通じず、泥門デビルバッツは最大の危機に陥る。
タイムアウトの夜明け
「泥門デビルバッツ」と「西部ワイルドガンマンズ」の試合中、ついに武蔵厳が戻って来た。厳のアメリカンフットボールへの思いは父親や工務店の人々に届いており、彼らの協力で、厳は復帰することができたのである。こうして、キッカーの不在という唯一の弱点がなくなった泥門デビルバッツは「爆破(ブラスト)」という戦術に出る。これは、東京都の選手でもトップレベルのラインマンである栗田良寛のパワーを活かし、中央から正面突破をし続けることで、毎回10ヤードずつ前進して、連続攻撃権を獲得し続けるという王道の戦術だった。蛭魔妖一は、ここにさらに別の攻撃手段も加えることで西部ワイルドガンマンズの守備陣を混乱させ、とうとう8点差まで詰め寄る。この点差となって西部ワイルドガンマンズの選手たちは、追い上げられるプレッシャーにより本来の力を発揮できなくなっていくが、甲斐谷陸が選手たちを落ち着かせ、追加点をあげたのをきっかけに復活。試合は激しい点取り合戦となっていく。そして残り時間3分となり、9点差で勝っている西部ワイルドガンマンズは、時間を可能な限り使い切り、ゆっくりとしたプレーにシフトチェンジ。このまま試合終了かに思えたが、妖一はこの時を待っていた。
小早川瀬那
蛭魔妖一の戦術はみごとに成功するものの、「泥門デビルバッツ」と「西部ワイルドガンマンズ」の戦いは、2点差で西部ワイルドガンマンズの勝利となった。これで秋大会が終わってしまうと落胆した雷門太郎は、審判につかみかかりそうになるが、鉄馬丈が止めたことで、どうにかその場は収まる。さらに妖一は、太郎にこの大会の仕組みを説明する。現在は東京都の地区大会だが、関東大会へのキップは、各地区の学校数をもとに決められている。つまり、学校数が非常に多い東京都は、決勝に進んだ上位2校だけでなく、3位入賞の学校も関東大会に進めるのである。これに安堵した泥門デビルバッツの選手たちは、「盤戸スパイダーズ」との3位決定戦に向けて準備を始めるのだった。しかしそんな盤戸スパイダーズには、佐々木コータローだけでなく、赤羽隼人という非常に強力な選手がいた。彼もまたアイシールドをつけて戦っており、また、以前の筧駿の証言と同じく、非常に長身の選手だった。小早川瀬那と太郎は、彼こそが本物の「アイシールド21」なのではないかと考え、隼人がプレーするビデオを駿に見せに行くが、その途中でビデオが壊れてしまい、結局わからずじまいとなる。しかし瀬那はこれをきっかけに、「アイシールド21」を名乗るのをやめることを決め、姉崎まもりに正体を打ち明ける。
赤羽隼人&佐々木コータロー
小早川瀬那は「盤戸スパイダーズ」戦からアイシールドを外し、登録名も「アイシールド21」ではなく、本名に改める。こうして瀬那と「本物のアイシールド21」である赤羽隼人との戦いが始まるが、盤戸スパイダーズは、非常にキックに重きを置いたチームだった。盤戸スパイダーズは積極的にオンサイドキックを狙い、相手チームにはボールに触らせることもなく、一方的に攻撃を続けるハイリスク・ハイリターンの戦術を得意としていたのである。そこで蛭魔妖一はポジションチェンジを提案。妖一が瀬那の走る盾となり、隼人から守るという、コンビネーションランで反撃に出る。これによって瀬那はタッチダウンに成功。武蔵厳のキックも成功し、3点差まで追いつく。そんな場面で、佐々木コータローは突如タイムアウトを取り、瀬那たちに盤戸スパイダーズの過去を語り出す。盤戸スパイダーズは以前、関西の強豪校「帝黒(ていこく)学園高校」にエース級の選手ばかりが引き抜かれる事件があった。コータローはこの誘いを断ったものの、ちょうど家族が関西へ転勤予定だった隼人は、ほかの選手たちもいっしょに引き抜かれていることを知らないまま、これに応じてしまったのである。しかし、コータローから事情を聞いた隼人は、転校後、すぐに盤戸高校へ戻ることを決意。これによって半年間は公式戦に出られないことを理解したうえで、盤戸スパイダーズを立て直し、コータローたちと共に戦う道を選んでいたのだ。
継ぐ者
東京都に台風が近づき、「泥門デビルバッツ」と「盤戸スパイダーズ」の試合会場にも、強風が吹き荒れていた。小早川瀬那たちは、この風によってキックの成功率は下がるはずだと考えていたが、あらゆる状況を想定して練習してきた盤戸スパイダーズのキックにはスキがまったくなかった。それでも瀬那は赤羽隼人の対策を講じ、蛭魔妖一たちもこれに応えて作戦どおり、7点を返す。さらにここで、「アイシールド21」についてさらなる事実が判明する。「アイシールド21」とは、もともと特定の選手を示すものではなく、ノートルダム大学附属中学校において、その時代の最強ランナーのみが背負うことを許された「エースナンバー」のことだったのである。隼人はこのことを知っており、当然自分は正式な「アイシールド21」ではないことを理解していた。だが、佐々木コータローがあえて最強のキッカーを名乗って、自分を追い込んでいるように、自分もまた「アイシールド21」を名乗ることで、同じ覚悟を決めていたのである。これを理解したうえで瀬那は隼人に挑み続けるが、それをサポートする瀧夏彦は不安を感じていた。夏彦は、これまで自分が神に選ばれた選手だと思い込むことで、失敗しても自分を奮い立たせて戦ってきた。しかし、隼人という本物のプレイヤーと直接対決したことで、自信をなくしかけていたのである。そんな夏彦に、武蔵厳はあえて厳しい指摘をすることで、現実を突きつける。
全国編スタート
瀧夏彦が己の未熟さを認めたことをきっかけに、「泥門デビルバッツ」と「盤戸スパイダーズ」の試合は大きく動き始め、泥門デビルバッツは勝利を収める。そして試合後、小早川瀬那は赤羽隼人から、隼人が使っていたアイシールドを手渡される。隼人は、最強を名乗る責任感と覚悟の表れとして、これからも瀬那はアイシールドを付けるのがいいと考えたのだ。これに応じた瀬那は、再びアイシールドを付け、「アイシールド21」を名乗る覚悟を新たにするのだった。こうして東京地区大会は終わり、トーナメントの抽選が行われる。抽選会場へ向かった瀬那は、そこでいきなり神龍寺学院高校「神龍寺ナーガ」のエースである金剛阿含にボールを投げつけられ、ケガをしそうになる。瀬那と阿含は過去に一度、少しだけ話したことがあるのだが、阿含はこの時のことを今も根に持っており、ただでさえ目立っている瀬那に敵意を抱いていたのである。瀬那が冷静に行動したことで、その場はどうにか収まるが、その直後に泥門デビルバッツの1回戦の相手は「神龍寺ナーガ」であることが判明。瀬那たちは、いきなり優勝候補と戦うことになってしまう。
夢のかけら
大会9連覇中の「神龍寺ナーガ」に対抗すべく、酒奇溝六と蛭魔妖一が温存していたのは、これまで一度も公式戦に出ていない雪光学の存在だった。この話を聞いた小早川瀬那と雷門太郎は、学が具体的にどのポジションを担うのかはわからなかったものの、これで「泥門デビルバッツ」全員がそろうことを喜ぶのだった。一方の栗田良寛は、神龍寺ナーガと戦うプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。実は高校受験時、妖一や良寛、武蔵厳は神龍寺学院高校を第一志望にしていたのだ。しかし一般入試でも問題ない成績に達している妖一と厳に対し、良寛は学力面でかなり不安があったため、スポーツ推薦で受験したのだ。だが、これを偶然知った金剛阿含は、良寛を邪魔するためだけに急遽スポーツ推薦を受験。これによって良寛は不合格となってしまうが、三人そろってアメリカンフットボールをしたいと考えていた妖一と厳は、良寛と共に志望校を泥門高校に変えたのである。また、これによって、当時利害が一致してつるんでいた妖一と阿含も、疎遠になったのだった。良寛はこの件をずっと申し訳なく思っており、それでも妖一と厳が自分を選んでくれたことを思い出す。こうして戦う意欲を取り戻した良寛は、以前よりもさらにたくましくなる。
DEVIL VS GOD
関東大会初戦、「泥門デビルバッツ」と「神龍寺ナーガ」の試合が始まった。神龍寺ナーガのほとんどの選手たち、特に金剛阿含や細川一休は、泥門デビルバッツを完全に見下していたが、試合開始後すぐに雷門太郎がキャッチに成功する。しかし、これが一休の心に火をつけ、その後、太郎は完璧に封じ込められてしまう。一休は部内では明るくひょうきんな性格で腰も低いが、レシーバーとしては絶対の自信を持っているため、同じポジションの優秀な選手を対戦すると、完膚なきまでに叩きのめそうとするという、恐ろしい一面を秘めていた。そのまま神龍寺ナーガの攻撃が続き、ついに阿含がフィールドに姿を現す。小早川瀬那たちは阿含の圧倒的な力に押され、蛭魔妖一が軽いケガを負ったうえに、早々に14点差を付けられてしまう。それでも妖一は、少しでも阿含を消耗させる戦術に出るが、スタミナ抜群の阿含には通用するはずもなく、泥門デビルバッツは追いつめられてしまう。結局そのまま、前半は0対32で終了する。
11人居る!!
前半終了後、蛭魔妖一が突然弱気な発言をしたことで、「泥門デビルバッツ」の選手たちは動揺していた。しかし小早川瀬那たちは、妖一が試合放棄などするはずがないことを知っていた。妖一は、「神龍寺ナーガ」に警戒されずに次の戦術に出るため、一見ふつうの会話の中にヒントを織り込むことで、戦術内容を伝えていたのだ。これを理解した瀬那たちは、いっさいのサインなしに、全員でオンサイドキックを成功させる。さらにここで、ついに秘密兵器である雪光学が登場する。学はスポーツを始めてからまだ間もないため、どうしてもスタミナに難がある。そのため試合の重要な場面にしか出場できないのだが、入部してから半年間、あらゆる試合を観戦し続けたことで、試合展開を読むことに長けた選手になっていたのだ。それを知らない金剛阿含たちは、泥門デビルバッツが苦し紛れに出場させた実力の劣る選手だと勘違いする。学はこのスキをついて、タッチダウンに成功するのだった。この勢いに乗り、妖一は瀬那に今後ひたすら阿含に電撃突撃(ブリッツ)を仕掛けろと指示。瀬那は何度も失敗しながらも、ついにパスカットに成功する。これによって、本来ボールを持つポジションではない十文字一輝がタッチダウンを決める。しかし酷使された瀬那の足は、すでに限界が近づいていた。
TIMEOUT 0
「泥門デビルバッツ」と「神龍寺ナーガ」の試合は、最終クォーターを目前にして、神龍寺ナーガが21点リードしていた。しかし雷門太郎は、ここで逆転するための秘策を思いつく。それは、ショートパス役に瀧夏彦、ミドルパス役に雪光学、そして超ロングパス役に太郎を置きつつ、超ロングパスを中心に一気に点を稼ぐ戦術を取る。そしてクォーターバックの蛭魔妖一は太郎を信じてパスを投げ、太郎と細川一休の一対一の戦いとなる。ここで太郎は、経験から培った方法で正確なキャッチを決め、とうとう一休とのマッチアップに勝利してタッチダウンに成功する。それでもなお金剛阿含たちは手強く、小早川瀬那が得意とするデビルバットゴーストのプレーもコピーされてしまう。ここで妖一は、一度自分たち全員が阿含に集中していると見せかけてから、あえて阿含を完全に無視する戦術に出る。これに激怒した阿含は本気で瀬那をつぶしにかかるが、瀬那は突破し、ついに7点差までせまる。しかし試合時間は残り1分を切っていた。そこで妖一は、有効に時間を止めつつ、少しずつゴールラインに近づいていく。
0.1秒
残り時間4秒、蛭魔妖一がみんなに提案したのは、観客の声援を利用した奇策だった。これに成功した「泥門デビルバッツ」は、逆転して「神龍寺ナーガ」に勝利し、準決勝へと進むのだった。こうして試合を終えた小早川瀬那たちは、第2試合の「太陽スフィンクス」と「白秋ダイナソーズ」の試合を偵察に行くが、そこで恐ろしい光景を目にする。白秋ダイナソーズのラインマンの峨王力哉は、その圧倒的なパワーで敵をねじ伏せるだけでなく、毎回相手チームの選手を何人も大ケガを負わせて退場させているという、凶暴で暴力的な選手だった。しかも力哉は、単なるパワー偏重の選手ではなかった。そんな力哉を警戒した太陽スフィンクスの選手たちは、クォーターバックの原尾王成だけは絶対に守る陣形を組むが、それもあえなく力哉に突破されてしまう。これによってラインマン全員が、ケガにより退場。王成は、これ以上試合を続けられないと判断し、途中棄権するのだった。試合終了後、観客の誰かが太陽スフィンクスの選手たちを嘲笑(あざわら)っている姿を見た力哉は、この行為を許せずに突如観客席に乱入する。そして「西部ワイルドガンマンズ」の甲斐谷陸をはじめとする周囲の選手たちや、チームメイトの円子令司が止めに入らなければ、大惨事が起きていただろういわれるほどの騒ぎを起こす。
王国の新世紀
「泥門デビルバッツ」の準決勝の対戦相手は「王城ホワイトナイツ」に決まった。そんな試合直前、王城高校の学園祭があることを知った小早川瀬那たちは、みんなで遊びに行く。この日は王城ホワイトナイツの公開練習があり、蛭魔妖一はこの練習を偵察することで、王城ホワイトナイツの新技「巨大弓(バリスタ)」の情報を集めようとしていた。こうして学園祭を楽しんだり、同校で会った桜庭春人や高見伊知郎、金剛雲水たちと話したりした瀬那たちは、王城ホワイトナイツ戦へ向けて新たに気を引き締める。そんな中、妖一と酒奇溝六は瀬那たちに試合まで、ずっと濡れマスクを付けたまま生活するよう指示する。これには高地トレーニングに似た効果があり、スタミナの向上やマスクを外した瞬間、一時的に体が軽くなるような作用が期待できるという。そして迎えた試合当日、戦いは大雨の中でのスタートとなる。
開戦のファンファーレ
関東大会の準決勝、「泥門デビルバッツ」と「王城ホワイトナイツ」の試合は、泥門デビルバッツの先攻で始まった。小早川瀬那たちは、ただでさえ鉄壁の守備力を誇る王城ホワイトナイツが、スピードまで向上させていることに驚くが、ここでさらなる事実が判明する。王城ホワイトナイツには猪狩大吾という選手がおり、入部前は札付きの不良として有名だった。そんな彼の噂は当時中学生だった十文字一輝たちの耳にも入っており、一輝たちにとっては元不良同士として、負けられない存在だったのだ。ここで蛭魔妖一は「西部ワイルドガンマンズ」が得意とする「ショットガン」戦術を指示して、リスクを無視した100%の攻撃重視で戦い続ける。そんな泥門デビルバッツの戦い方を見た進清十郎は、王城ホワイトナイツが1%でもリスクを恐れた戦いをしている限り、このまま試合展開が不利になると判断。特に雷門太郎に対抗するためには、自分と桜庭春人が攻撃チームでも守備チームでも出場するしかないと進言する。監督がこの申し出に応じたことで、太郎は自分よりもはるかに長身の春人に苦戦するものの、それでも泥門デビルバッツは残り32ヤード地点まで進む。そして、ここから武蔵厳がキックを成功させ、泥門デビルバッツが先取点をあげる。
PERFECT PLAYER
「王城ホワイトナイツ」の攻撃となり、ついに「巨大弓(バリスタ)」を発動する。高見伊知郎はあえて事前に攻撃進路を宣言することで「泥門デビルバッツ」を混乱させるが、蛭魔妖一はこれに特別な意味がないことを理解していた。つまり伊知郎は巨大弓の凄さを相手チームに印象づけ、そのスキにエベレストパスを成功させるための演出だったのだ。妖一はこれを読んで桜庭春人に向かっていくが、春人の身体能力に翻弄されてタッチダウンを奪われてしまう。その後、泥門デビルバッツの攻撃となってもショットガンはなかなか成功せず、ついに小早川瀬那の必殺技「デビルライトハリケーン」を仕掛けるも、進清十郎に止められてしまう。これにショックを受けた瀬那は、その後も思うようなプレーができなくなってしまうが、ここで妖一は自分たちはひたすらランで戦い、また王城ホワイトナイツにもラン以外をさせないという、地上戦を指示する。しかし瀬那たちは、この作戦では時間がかかるうえに、少しずつ点差を付けられてしまうのではないかと思いつつも従う。しかし前半残り時間4分、妖一の真意が判明。姉崎まもりが、ここまでの清十郎のプレーだけをまとめたビデオを編集していた。そのため前半は、これ以上点差を付けられないようにしのぎ、ハーフタイムでそのビデオを確認し、どうにか清十郎の攻略の糸口を見つける目的があったのだ。
第三の目
ハーフタイムで確認した進清十郎の攻略法とは、小早川瀬那がパワーで清十郎を吹き飛ばすというものだった。これまで瀬那は、清十郎にスピードで敗北したと思い込んでいたが、実際は清十郎がトップスピードのピークに達している時は、二人のスピードは同じだった。しかし清十郎は、腕の長さを利用することで瀬那を止めていたのである。つまり、清十郎のスピードがピークに達する前に瀬那がアタックすれば、清十郎に勝つ可能性があるのだ。そして始まった後半、瀬那は果敢にこの作戦に挑戦するが、1回目は失敗。しかし「泥門デビルバッツ」の選手たちは、そんな瀬那の頑張りに感化され、さらなる勇気をもらう。そして雷門太郎が、ボールに背を向けたまま頭上でキャッチするという大技を決めかけたことで、蛭魔妖一はある作戦をひらめく。太郎は、受け取り慣れない高見伊知郎の投げたボールだったために取り損ねたが、いつもいっしょに練習している自分のボールであれば、確実にキャッチできるのではないかと考えたのである。妖一はこの技を「デビルバックファイア」と名づけ、みごと太郎がキャッチに成功してファーストダウンを奪う。
格闘球技
後半残り18分、雷門太郎が「デビルバックファイア」を決めたことで、ついに「泥門デビルバッツ」はタッチダウンを決める。武蔵厳のキックも成功し、同点に追いつく。しかし、進清十郎と桜庭春人のコンビプレー「射手座(サジタリウス)」を防ぐことができず、また7点差を付けられてしまう。さらに清十郎がデビルバックファイアの対策方法を講じたことで、泥門デビルバッツは追い詰められていく。しかし小早川瀬那はここで、金剛阿含と戦った時のことを思い出す。阿含は清十郎と同様に腕へのブロックが効かなかった。それはおそらく、阿含が瀬那の腕を側面からはじいていたからではないかと気づいたのである。これを真似することで、さきほどよりも少しだけ清十郎をブロックできるようになった瀬那に蛭魔妖一は活路を見出す。そして、一か八かの戦術を仕掛けた泥門デビルバッツは、後半残り2.5分で5点差にまでせまる。
進清十郎VS小早川セナ
「泥門デビルバッツ」は「王城ホワイトナイツ」に5点差までせまったが、小早川瀬那たちのスタミナは限界に近づいていた。特に大技である「デビルバックファイア」を繰り返した雷門太郎は、もう一度キャッチできるかも危うい状況にあった。太郎はそんな自分の体力のなさを嘆くが、瀬那は自分たちがここまで王城ホワイトナイツにせまれたのは、太郎が全力でプレーしてくれたからだと理解していた。そこで瀬那は最後の逆転プレーとして、二人で「デビルバットダイブ」をすることを提案。デビルバットダイブは、両チームが押し合っている中に瀬那が飛び込み、タッチダウンを決めるプレーだが、現在の自分たちでは確実性に欠ける。そこで、別の場所で太郎に囮(おとり)のジャンプをさせ、蛭魔妖一が瀬那と太郎どちらかにパスすると思い込ませようとしたのだ。しかし最終的には、瀬那は妖一から受け取ったボールをさらに太郎にパスし、王城ホワイトナイツの虚を突いてタッチダウンに成功、逆転に成功するのだった。ここで残り時間1分となるが、追い詰められた王城ホワイトナイツはさらに底力を発揮して得点。雪光学の機転により4点差に抑えたものの、残り時間はたった1秒しかなかった。
勝利を喰らう獣たち
小早川瀬那と進清十郎の最後の戦いは瀬那に軍配が上がり、「泥門デビルバッツ」は「王城ホワイトナイツ」に42対40で逆転勝利を収めた。こうして決勝へと駒を進めた泥門デビルバッツは、「西部ワイルドガンマンズ」と「白秋ダイナソーズ」の勝者と戦うこととなる。そんな準決勝直前のある日、瀬那と甲斐谷陸は、白秋ダイナソーズのマネージャー、氷室丸子に呼び出される。丸子は、白秋ダイナソーズの試合の度にケガ人が出る現状に耐えかねており、これ以上ケガ人が増えないように対策を取ろうとしていたのだ。西部ワイルドガンマンズの陸と、泥門デビルバッツの瀬那の両エースにこの件を打ち明け、白秋ダイナソーズとの試合を棄権して欲しいと頼みに来たのである。二人はその申し出を承諾できず、まずは丸子に詳しい話を聞こうとするが、そこに峨王力哉と円子令司が姿を現し、話し合いは中止となる。力哉はあくまでルールの範囲で相手チームを攻撃しており、止めることは難しいが、瀬那と陸は正々堂々と戦って白秋ダイナソーズに勝つしか止める手段はないことを理解していた。こうして西部ワイルドガンマンズと白秋ダイナソーズの試合当日となるが、武者小路紫苑もまた蛭魔妖一から力哉について知らされており、最大限の対策をしたうえで試合に挑む。
戦場のルール
関東大会の準決勝、「西部ワイルドガンマンズ」と「白秋ダイナソーズ」の試合は、白秋ダイナソーズの勝利となった。武者小路紫苑たちは峨王力哉を警戒しながら戦うものの、力哉は紫苑や鉄馬丈に大けがを負わせ、主力メンバーは甲斐谷陸だけになり、敗退してしまう。こうして「泥門デビルバッツ」の決勝の相手は白秋ダイナソーズに決まったものの、栗田良寛は、果たして自分がチームメイトを守り切れるのかと、不安を抱いていた。そんな中、蛭魔妖一は突如小早川瀬那たちチームメイトを、会場の東京ドームへと連れて行く。瀬那たちは会場の下見に行くのだろうと考えていたが、そこで待っていたのは、これまでに戦ったチームの選手たちだった。そこで瀬那たちは野球をして楽しむが、「太陽スフィンクス」の番場衛は、同じポジションである良寛に一抹の不安を感じており、試合当日まで良寛を預かることを申し出る。そして、太陽スフィンクスが使用しているボクシングジムへ連れて行き、マンツーマンの指導を行うのだった。そして迎えた試合当日、チームメイトたちと再会した良寛は衛に鍛えられたことで精神的に成長し、精悍な面構えになっていた。
2代目のクォーターバック
「泥門デビルバッツ」が「白秋ダイナソーズ」との決勝で最初に取った戦術は、蛭魔妖一と栗田良寛だけがほかの選手と離れた位置につく「孤高のセンター(ロンリーセンター)」で、峨王力哉に自分たちだけを狙わせるという作戦だった。つまり良寛と力哉は、一対一で対峙することになる。これが功を奏して泥門デビルバッツはみごとタッチダウンを奪い先制点をあげるが、力哉はそんな良寛を見ても、自分の敵ではないと見下していた。その自信がなんなのかがわからないまま試合は進み、小早川瀬那は円子令司に、雷門太郎は如月ヒロミに苦戦する。そこで妖一はふだんよりも早いタイミングで雪光学を投入し、レシーバー四人体制で対抗する。しかしこれが令司の危機感を煽り、妖一は執拗にマークされるようになる。特にヒロミは、もし自分と妖一が相打ちになった場合、戦力的には白秋ダイナソーズの得だと考えていた。そしてヒロミは妖一の腕をつぶしにかかり、そこへ力哉が二人もろとも激突し、深手を負った妖一は退場となってしまう。司令官を失った泥門デビルバッツには絶望的な空気が漂うが、控えのクォーターバックを選ばなくてはならないその時、立候補したのは瀬那だった。
THIS IS AN AMERICAN FOOTBALL
小早川瀬那は、この試合で蛭魔妖一に代わって、クォーターバックを務めることになった。瀬那は、チームで最も走力のある自分であれば、峨王力哉に対抗できると考えたのである。しかし、クォーターバック未経験の瀬那はボールをハンドオフすることすら難しく、さらに妖一を守れなかった栗田良寛は、完全に戦意を失っていた。小結大吉はそんな良寛に代わって奮闘するが、次第に体がボロボロになっていく。それでも小柄な瀬那と大吉は、峨王力哉に「デビルバットダイブ」戦術に出るが良寛は、これが到底不可能であることに気づいていた。放っておけば、今度は瀬那と大吉が壊されてしまうことを危惧した良寛は、ついに覚醒。二人を守るために、初めて力哉を止めることに成功するのだった。良寛は、これまで対戦相手を絶対に倒すという強い気持ちがいっさいなかったが、自分が守らなくてはチームメイトが壊されると認識したことで、ついに力哉への対抗心が芽生えたのだ。良寛の気迫あふれる姿を見た力哉は、今の良寛と戦った場合は自分が負けるかもしれないと考えるが、前半は「白秋ダイナソーズ」が18点リードした状態で終了する。
その男はただ頂上(いただき)だけを見て
後半になり、比較的軽傷だった「白秋ダイナソーズ」の如月ヒロミだけでなく、右腕を骨折しているはずの蛭魔妖一が戻って来た。小早川瀬那たちはこれに驚きつつも妖一の復活を喜ぶが、妖一はボールを持つことすらできないほどの状況にあった。それでも妖一は、元気なふりをすることで白秋ダイナソーズを欺き、試合を有利に進めようとしていたのだ。そんな妖一がパスすることができるのは、あと1回のみだった。これを超ロングパスと定めた妖一は、雷門太郎にすべてを託してボールを投げる。これに応えた太郎は、最大限警戒していたヒロミとの一騎打ちに競り勝ち、「泥門デビルバッツ」はついに同点に追いつく。しかしここで、ヒロミが、突如関西の「帝黒(ていこく)学園高校」の名を口にする。その名を佐々木コータローたちから聞いていた瀬那たちは、帝黒学園高校とは西の圧倒的王者であり、優秀な選手を片っ端から引き抜いていく学校だったことを思い出す。円子令司はそんな帝黒学園高校になんとしてでも対抗するために、今のどんな手段を使っても勝ちにいくプレースタイルになっていたのである。
AND THE WINNER IS…
残り時間2分、7点差をつけられた「泥門デビルバッツ」が選択したのは、「神龍児寺ナーガ」が得意とする戦術「ドラゴンフライ」を、小早川瀬那と蛭魔妖一がプレーする「デビルドラゴンフライ」だった。慣れない戦術を練習量でカバーする二人のプレーに「白秋ダイナソーズ」は全力で対抗するが、そんな中、峨王力哉が突如「アイシールド21」の話を始める。瀬那は、これまでの経緯から、赤羽隼人こそが、かつて筧駿と対戦した選手なのだと考えていた。しかし、隼人がアメリカ留学の経験がないことがわかったことで、本物の「アイシールド21」探しは振り出しに戻っていた。そんな中、「アイシールド21」を名乗る選手はまだほかにもおり、その人物が帝黒(ていこく)学園高校にいるらしいことが、力哉の話から判明したのである。さらに瀬那はこの話を聞き、円子令司に勝つには、彼の必殺技である「スクリューバイト」を破らねばならないと決意する。その方法とは、瀬那が令司を抜き去るのではなく、体当たりで突破するというものだった。これに成功した泥門デビルバッツはついに1点差までせまり、運命のラストプレーは、全員でのパワー対決一発勝負に委ねられた。
帝黒学園見学ツアー!
栗田良寛が峨王力哉とのパワー勝負に競り勝ち、関東大会決勝は「泥門デビルバッツ」が勝利した。その後に行われた祝勝パーティで、小早川瀬那たちは佐々木コータローから帝黒(ていこく)学園高校の「帝黒アレキサンダーズ」のチーム事情を聞かされる。その話を聞いて居ても立ってもいられなくなった雷門太郎は、瀬那や瀧鈴音と共に偵察へと直行する。そこで小泉花梨と知り合った瀬那たちは、そのまま部室へと案内され、本物の「アイシールド21」である、大和猛と出会うのだった。こうして瀬那たちが帝黒アレキサンダーズの練習を見せてもらっていると、元「盤戸スパイダーズ」に所属していたが、引き抜かれて帝黒アレキサンダーズに入部した棘田(いばらだ)が、猛に勝負を挑んでくる。棘田は花梨と同じクォーターバックで、男性である自分よりも、女性である花梨が選ばれたことが納得いかずにいたのだ。そこで、クォーターバックを花梨に決めた猛に勝つことで、自分が正クォーターバックとして認めてもらおうとしていたのだ。この勝負に協力することになった瀬那は、ここで猛の身体能力の高さを目の当たりにする。
世界一のグローブ
雷門太郎は、自分がずっとあこがれてきた野球選手、本庄勝の息子の本庄鷹が「帝黒(ていこく)アレキサンダーズ」に所属していることを知り、意気消沈していた。もともと野球をやっていた太郎は、同じく野球選手である勝を目標としていたが、自分の能力では野球選手になるのは難しいと自覚してアメリカンフットボールに転向した経緯がある。「王城ホワイトナイツ」戦までは、心のどこかで勝に申し訳なく思う気持ちがあったが、この試合をなぜか勝が観戦しており、さらに自分を褒めてくれたことで、野球への未練が吹っ切れていたのである。しかし勝は、偶然会場に来ていた訳ではなく、息子の鷹と対戦する選手をチェックしにやって来ていたのである。それに落胆した太郎は、自分は鷹のための嚙ませ犬でしかないと思い込む。さらに、今の自分の精神状態では帝黒アレキサンダーズ戦では役に立たないだろうと判断し、メンバーから外して欲しいと申し出ていた。これに納得できない小早川瀬那は太郎と殴り合いのけんかになるが、太郎の気持ちは変わることはなく、太郎が何よりも大切にしていたグローブまでもが壊れてしまう。どうにかして太郎を元気づけたい瀬那は、これまで対戦してきたレシーバーたちに頼み込み、対戦時に使っていたグローブを譲ってもらうことを思いつく。
Xmas BOWL
12月25日、ついに日本高校アメリカンフットボール選手権の決勝「クリスマスボウル」が始まった。自信を喪失していた雷門太郎も、小早川瀬那や、細川一休をはじめとするこれまで対戦したレシーバーたちに励まされ、元気を取り戻していた。そんな試合は、いきなり「泥門デビルバッツ」が、誰がボールを持っているか隠したまま複数の選手がランするトリックプレー「殺人蜂(キラーホーネット)」でスタート。泥門デビルバッツは「帝黒(ていこく)アレキサンダーズ」戦に向けて、これまで対戦したチームの精鋭たちにそれぞれコーチしてもらっていた。たとえば石丸哲生は、甲斐谷陸の必殺技である「ロデオドライブ」を簡易版ではあるものの習得するなど、パワーアップを果たしていたのである。しかし、帝黒アレキサンダーズの守備陣は非常に強く、太郎が万全の状態でキャッチしかけたボールを、本庄鷹はあっさりインターセプトするなど、格の違いを見せつけていた。そのまま帝黒アレキサンダーズが先制し、さらにここで大和猛が完封試合を宣言する。
最後のハドル
「帝黒(ていこく)アレキサンダーズ」に14点を奪われ、早くもピンチに陥った「泥門デビルバッツ」は、これまで一度も使ってこなかった戦術「聖なる十字架(クリスクロス)」を使うことにした。これは小早川瀬那と雷門太郎の二人のランナーが超スピードで交差し、どちらがボールを持っているかわかりづらくさせるというもの。しかし、その難易度からこれまで一度も成功したことはなく、実戦では使っていなかったのである。だが、この難局を打開するためにもギャンブルプレーである聖なる十字架を仕掛けるも失敗し、結局得点できないまま前半が終わってしまう。この悪い流れは後半になっても変わらず、残り10分を切ったところで35点差となり、非常に厳しい試合展開となる。そこで蛭魔妖一は、ここから攻撃時にいっさい作戦会議を行なわない「ノーハドル」を宣言。瀬那たちは試合終了まで、戦術名を伝える暗号のみで連絡を取り合うことになる。この作戦が功を奏して少しずつ前進し始めたところで、妖一は作戦ナンバー21を叫ぶ。これは作戦名ではなく、スペシャルプレー発動のサインだった。そのスペシャルプレーとは、日本最強のレシーバーとされる本庄鷹がいるために不可能だと思わせていた、一発でタッチダウンを決める超ロングパス「悪魔に祈るレーザー(ヘイルデビルレーザー)」のことだった。
悪魔のミス
「悪魔に祈るレーザー(ヘイルデビルレーザー)」成功により「泥門デビルバッツ」は勢いを取り戻すが、それでもまだ25点差をつけられていた。しかしここで蛭魔妖一が、痛恨のミスを犯す。小早川瀬那を信じすぎるあまり、これまで培ってきたデータを無視して熟考し、残り時間を減らしてしまったのだ。しかしここで瀬那は、これから自分が妖一の信頼以上の活躍をすれば、妖一の判断はミスではなくなると気づく。それは、三次元のすべてにおいて完璧なブロックをする大和猛を、光の概念も入れた四次元の走りで立ち向かえば、突破できるのではないかと考えたのである。この新技「デビル4(フォース)ディメンション」を成功させた瀬那は、ついに大和を抜き去る。これに勝機を見出した妖一は、その後も武蔵厳に正確無比なキックを指示したり、猛にボールを奪われそうな瀧夏彦に、あえてボールは無視して猛だけをブロックするよう指示したりと奇策を連発し、ついに逆転可能な点差まで追いつく。だがその後、10点差で残り8秒となり、もはや絶望的かと思われた瞬間、妖一は瀬那と雷門太郎にスペシャルプレー「聖なる十字架(クリスクロス)」を指示。しかもこれは、単なる「聖なる十字架」ではなかった。
THE LAST of DEMON DEVILBATS
蛭魔妖一が小早川瀬那と雷門太郎に命じたのは、スペシャルプレー「聖なる十字架(クリスクロス)」と見せかけて、そのまま妖一にパスする「邪悪な十字架(イービル・クロス)」だった。妖一は受け取ったボールをさらにもう一度瀬那にパスし、瀬那と大和猛が対峙する。瀬那はこれをデビル4(フォース)ディメンションだけでなく、バック走しながらの「デビルバットゴースト」も組み合わせることで突破。タッチダウンを奪い、2点差にせまる。そして武蔵厳がキックしたボールを、太郎が本庄鷹に競り勝ってキャッチ。残り3秒でオンサイドキックが決まり、最終攻撃権を獲得した「泥門デビルバッツ」は、大逆転勝利するため、厳のキックに望みをかけることとなる。ラストプレーは、妖一がセットしたボールをキッカーの厳が代名詞でもある「60ヤードマグナム」を成功させ、泥門デビルバッツは逆転勝利を収めるのだった。
大集結せよ!!
クリスマスボウルで「帝黒(ていこく)アレキサンダーズ」に勝利し、日本一となった「泥門デビルバッツ」は、静かな年末年始を過ごしていた。そんな元旦に小早川瀬那たちが初詣をしていると、大和猛から一度会いたいという連絡が入る。瀬那たちが不思議に思いつつも待ち合わせ場所へ向かうと、そこには猛や本庄鷹だけでなく、日本アメリカンフットボール協会長や本庄勝までもがいた。現在日本アメリカンフットボール協会では、ワールドカップユースに向けて、全日本選抜を結成する計画を始動させていた。そこで、まずは今年の最優秀選手である瀬那、雷門太郎、猛、鷹の四人に声をかけたのである。ワールドカップユースであれば、パトリック・スペンサーともう一度戦えるのではないかと考えた瀬那はこの申し出を快諾。さらに、できるだけ意欲のある選手を選抜したいという協会長たちの意向により、四人はメンバー集めにも協力することとなる。そこで四人はまず進清十郎に声をかけ、その後に瀬那、太郎、清十郎の三人で関東の選手を、猛、鷹の二人で関西の選手を集めることになる。そこで清十郎が最初に候補にあげたのは、金剛阿含だった。
TEAM JAPAN
ワールドカップ優勝チームの最優秀メンバーには、3億円の賞金とプロアメリカンフットボールチームへの入団が約束されたことで、金剛阿含は自ら立候補してきた。その後、小早川瀬那たちは峨王力哉も交えた五人で、関東のメンバー候補を決めて、選手はおおむね出そろう。しかし瀬那は、ここで指名されなかった高見伊知郎のことが気になっていた。そこで瀬那は、少しでも多くの優秀な選手を集めるためにも、選抜試験を提案。そこには指名されなかった「泥門デビルバッツ」の選手など瀬那の友人知人が多く集まるが、中でも注目を集めたのは、顔全体に包帯を巻いている「ミイラ」と呼ばれた選手だった。一方その頃関西では、厳しく審査を行ないすぎたことが影響しているのか、なかなか合格者が現れずに苦慮していた。そんな中、瀬那にあこがれてアメリカンフットボールを始めたという中学生の中坊明がやって来る。こうして選抜試験も終わり、関東の合格者は例のミイラ選手のみとなるが、阿含は落選した選手たちも、秘密裏にアメリカに同行させていた。
SENA VS PANTHER
ロシア、ミリタリア、ドイツに勝利した日本選抜チームは、決勝戦でパトリック・スペンサー率いるアメリカと戦うことになった。小早川瀬那は、久しぶりに会ったパトリックが、自分を超える40ヤード走4.1秒のスピードを身につけていたことに焦り、一度彼のランニングを真似をしてみることにする。しかし、甲斐谷陸や進清十郎に諭され、元のランニングに戻すのだった。そんな決勝直前の夜、大和猛はアメリカチームのリーダーであるMr.ドンに個人的に会いに行っていた。猛はアメリカ時代、選手として順風満帆な日々を送っていたが、猛のことが気に入らないドンは、彼が当時選手でもないスペンサーにスピード勝負で負けたという理不尽な理由で、猛のことを追放したのだった。当時同じくアメリカにいた筧駿が、試合予定があったにもかかわらず、猛に会えなくなったり、「アイシールド21」という選手など最初からいないと言われたりしたことも、これが原因だったのである。一方その頃、興奮して眠れずにいた瀬那は、同じく起きていた桜庭春人と二人で話をする。春人はこれまでずっと清十郎という圧倒的な才能を目の当たりにしていたため、凡人の自分は、選手としてどう生きるべきだろうかと悩んでいたが、明日アメリカと戦うことで、その答えが見つかるのではないかと期待していたのだ。
登場人物・キャラクター
小早川 瀬那 (こばやかわ せな)
小柄な体格と臆病な性格が災いし、幼い頃からパシリとして孤独な人生を送ってきた。しかしそのパシリの経験が、彼に40ヤード(50m)を4秒2(アメリカのプロアメフト選手のトップスピード)でという驚異的な走力を培っていた。アメフトの全国大会制覇を狙う蛭魔妖一にそのスピードを見込まれ、気づけばセナはアメフト部の選手にさせられていた。 フルフェイスのメットで顔を隠し、伝説のスター選手アイシールド21として、意図せず華々しいデビューを飾らされてしまう。
蛭魔 妖一 (ひるま よういち)
通称ヒル魔。泥門デビルバッツの主将で、ポジションはクォーターバック。小早川瀬名を半ば無理矢理アメフト部へと入部させ、アイシールド21としてデビューさせた。恐ろしいほどに狡知に長け、人の弱みを握っては脅して自分の利益にする外道だが、唯一アメフトに関しては真摯な情熱を傾ける。 身体能力はあまり高くないが、すさまじい練習量と綿密な試合運びで、全国レベルのトッププレーヤーたちに肉迫している。中学の時に一緒にアメフトを始めた栗田良寛、武蔵厳とは気心の知れた仲である。
栗田 良寛 (くりた りょうかん)
泥門デビルバッツ所属のセンター。穏やかな性格で、少し気弱なところもあるが、ひとたびフィールドに出るとその巨体と怪力で敵選手を圧倒する。アメフトへの情熱は誰よりもあついものを持っており、午前2時から朝練を始めるほど練習熱心でもある。中学の時に一緒にアメフトを始めた蛭魔妖一、武蔵厳とは気心の知れた仲である。
雷門 太郎 (らいもん たろう)
。泥門デビルバッツ所属のワイドレシーバー。元は野球部に所属していたが、キャッチばかり練習していたため極度のノーコンになってしまい、活躍できずにいた。腐りかけていたところを小早川瀬名と蛭魔溶一に勧誘され、泥門デビルバッツへ入部する。野球で鍛えた一流のキャッチ術を武器に、チームのパスの要として活躍する。
武蔵 厳 (たけくら げん)
泥門デビルバッツ所属のキッカー。家は工務店を経営しており、怪我に倒れた父の手伝いをするために、高校を休学して一時アメフトから離れていた。無骨な容姿と寡黙な性格を併せ持つ武士のような男。その荒々しいキックはく若干正確さに欠けるものの、抜群の飛距離を誇り、高校最強レベルのキッカーと称される。 中学の時に一緒にアメフトを始めた蛭魔妖一、栗田良寛とは気心の知れた仲である。
姉崎 まもり (あねざき まもり)
泥門デビルバッツ所属のマネージャー。面倒見がよく、正義感が強い性格で、幼なじみでいじめられっこの小早川瀬名を小さい頃から守ってきた。彼がアメフト部に入部すると、彼を蛭魔妖一から保護する目的で、マネージャーとしてデビルバッツに入部。小早川瀬名にアメフトのようなハードなスポーツは無理だと思い込んでおり、物語中盤になるまで彼がアイシールド21だと気づかなかった。
進 清十郎 (しん せいじゅうろう)
王城ホワイトナイツ所属のラインバッカー。高校アメフト史上最強・最速の選手と言われている。たぐいまれな才能を持ちながら、誰よりもハードなトレーニングを続ける、「努力する天才」。小早川瀬名の目標とする人物だが、進自身も「初めて巡り会った、自分よりも速い選手」としてセナのことを最大の好敵手と認めている。
桜庭 春人 (さくらば はると)
王城ホワイトナイツ所属のワイドレシーバー。高校に通いながらアイドル活動も行っており、女子に絶大な人気を誇る。一方アメフト選手としての実力は今ひとつで、理想と現実の板ばさみに悩んでいたが、一流のプレイヤーたちの勇姿に触発され、アイドルをやめてアメフトに専念することを決意。 チームメイトの進清十郎を目標と定め、彼を超えるべく努力を重ねている。
武者小路 紫苑 (むしゃのこうじ しえん)
「西部ワイルドガンマンズ」のクォーターバック。「早撃ちキッド」の異名を持ち、0.2秒の高速投球が武器。オリンピックのピストル競技金メダリストを父に持つサラブレッドだが、周囲との不和から戸籍を捨て、独立している。物事を斜に構えてみるニヒルな性格。同チームのワイドレシーバー、鉄馬丈は幼なじみでもあり、パートナーとして全幅の信頼を置いている。
金剛 阿含 (こんごう あごん)
「100年に一人の天才」と呼ばれる「神龍寺ナーガ」のエース。人間の限界を超えた反射神経と暴力的なプレイで、一騎当千の実力を持つ。実力はあるのだが練習嫌いで、いつも酒と女遊びにうつつを抜かしている。極度の才能主義者で、凡人を嫌い見下している。蛭魔妖一とは中学時代、つるんで悪事を働いていたことがあり、複雑な感情を抱いている。
峨王 力哉 (がおう りきや)
「白秋ダイナソーズ」の選手で、ポジションはディフェンシブタックル。身長200cm、体重131kgの巨漢で、栗田良寛をも上回る超怪力の持ち主。戦ったチームのクォータバックを、ことごとく病院送りにしている。突進で相手選手を蹴散らすという愚直なプレイスタイルに反し、冷静で誇り高い性格。 強い相手と戦うことを何よりも好んでいる。
パトリック・スペンサー
アメフトの本場アメリカのチーム「NASAエイリアンズ」のランニングバック。「無重力の脚を持つ男」と称される黒人選手で、人間の限界を超えたた50ヤード4秒1の走力の持ち主。家が貧しく、プロになって祖母にいい暮らしをさせてあげることを夢見ている。憧れの選手・アポロが監督を務めるエイリアンズに所属したものの、当のアポロから差別的な仕打ちを受けていた。
十文字 一輝 (じゅうもんじ かずき)
泥門高校に通う1年生の男子。アメリカンフットボール部「泥門デビルバッツ」に所属している。ポジションはタックル兼ディフェンスタックルで、フォーメーションによってはフルバックも担当する。金髪のスポーツ刈りヘアにした三白眼の強面(こわもて)で、額に十字傷がある。よく「はぁ?」という言葉で他人を威嚇していることから、蛭魔妖一からは友人の黒木浩二や戸叶庄三と共に「ハァハァ三兄弟」と呼ばれており、その関係上便宜的に長男扱いされ、「糞長男」と呼ばれることがある。また、瀧鈴音からは「モンジ」と呼ばれている。クールで生真面目な、仲間思いの性格をしている。しかし、アメリカンフットボールを始めるまでは、この人柄を活かす場面がなく、中学時代からの友人である浩二と庄三の三人で不良行為に明け暮れていた。そんな泥門高校に入学したばかりのある日、いかにも貧弱そうな小早川瀬那に目を付けるが、逃げ込まれた先がアメリカンフットボール部の部室であったことから、栗田良寛に入部希望者と勘違いされてしまい、そのうえに妖一に弱みを握られたことで瀬那に手出しできなくなってしまう。当初はこの弱みである自分たちの裸の写真を回収するためにアメリカンフットボール部とかかわっていたが、小結大吉に挑発されて入部試験を受け、合格したことで、不本意ではあるものの、少しずつアメリカンフットボールに向き合うようになる。その過程で、本来のまじめな人柄を活かして実力を伸ばしていく。身長175センチで、体重は75キロ。誕生日は10月1日で、血液型はA型。
黒木 浩二 (くろき こうじ)
泥門高校に通う1年生の男子。アメリカンフットボール部「泥門デビルバッツ」に所属している。ポジションはガード兼ラインバッカー。肩につきそうなほどの黒髪セミロングヘアで、太眉でたらこ唇の強面。よく「はぁ?」という言葉で他人を威嚇していることから、蛭魔妖一からは友人の十文字一輝や戸叶庄三と共に「ハァハァ三兄弟」と呼ばれており、その関係上便宜的に次男扱いされているが、次男よりも唇の方が特徴的だということで「糞タラ口」と呼ばれている。また、瀧鈴音からは「クロッキー」と呼ばれている。「卑怯」をモットーにしているが、これはケンカにおいてのみで、アメフト選手としてはまじめなプレーを信条とする。ややいい加減で困難から逃げ出しがちなところがあるが、なんだかんだで付き合いがよく、最後までやり抜く根性は持っている。アメリカンフットボールを始めるまでは、中学時代からの友人である一輝と庄三の三人で不良行為に明け暮れていた。そんな泥門高校に入学したばかりのある日、いかにも貧弱そうな小早川瀬那に目を付けるが、逃げ込まれた先がアメリカンフットボール部の部室であったことから、栗田良寛に入部希望者と勘違いされてしまい、そのうえに妖一に弱みを握られたことで瀬那に手出しできなくなってしまう。当初はこの弱みである自分たちの裸の写真を回収するためにアメリカンフットボール部とかかわっていたが、小結大吉に挑発されて入部試験を受け、合格したことで、不本意ではあるものの、少しずつアメリカンフットボールに向き合うようになる。無類のゲーム好きで、特に対戦ゲームにおいては、他の追随を許さない。身長173センチで、体重66キロ。誕生日は9月2日で、血液型はB型。
戸叶 庄三 (とがのう しょうぞう)
泥門高校に通う1年生の男子。アメリカンフットボール部「泥門デビルバッツ」に所属している。ポジションはタックル兼ディフェンスエンド。金髪をオールバックにして星の形に逆立て、強面でいつもサングラスをかけている。よく「はぁ?」という言葉で他人を威嚇していることから、蛭魔妖一からは友人の黒木浩二や十文字一輝と共に「ハァハァ三兄弟」と呼ばれており、その関係上便宜的に三男扱いされている。また、一輝や瀧鈴音からは「トガ」と呼ばれている。不良だが漫画を描くのも読むのも好きな文科系で、いつも漫画雑誌を持ち歩いている。また作家としても熱心に活動しており、作品を雑誌に投稿して掲載されたこともある。アメリカンフットボールを始めるまでは、中学時代からの友人である一輝と浩二の三人で不良行為に明け暮れていた。そんな泥門高校に入学したばかりのある日、いかにも貧弱そうな小早川瀬那に目を付けるが、逃げ込まれた先がアメリカンフットボール部の部室であったことから、栗田良寛に入部希望者と勘違いされてしまい、そのうえに妖一に弱みを握られたことで瀬那に手出しできなくなってしまう。当初はこの弱みである自分たちの裸の写真を回収するためにアメリカンフットボール部とかかわっていたが、小結大吉に挑発されて入部試験を受け、合格したことで、不本意ではあるものの、少しずつアメリカンフットボールに向き合うようになる。身長174センチで、体重は70キロ。誕生日は10月13日で、血液型はO型。
小結 大吉 (こむすび だいきち)
泥門高校に通う1年生の男子。アメリカンフットボール部「泥門デビルバッツ」に所属している。ポジションはガード兼ディフェンスエンド。黒髪を逆立てたツンツンヘアで、赤っ鼻が特徴。身長は低いが太めのどっしりとした体型をしている。父親が運送業を営んでおり、この仕事を手伝っていることもあって非常に腕っぷしが強い。蛭魔妖一からは、栗田良寛との師弟関係から「糞デブJr.」、瀧鈴音からは「こむすびっち」、水町健悟からはしばらく故意に名前を間違えられ「おむすびっち」と呼ばれていた。寡黙だが熱い心を秘めており、ふだんは「フゴッ」という鼻息や、話したい内容を極端に縮めて、単語のみを話す。これは「パワフル語」と呼ばれ、省略が多すぎるため小早川瀬那たちにはおおまかな意図しか伝わっていない。しかし、良寛や峨王力哉といったパワフルな男性には、込められた意味をすべて伝えることができる。そのため、本来は非常におしゃべりなのだが、パワフル語を主に使うせいで、気持ちが伝わらないことが多い。そんな高校1年生のある日、泥門デビルバッツと「賊学カメレオンズ」の試合を見たことで、良寛のプレーにあこがれ、泥門デビルバッツの入部試験を受ける。この試験に合格したことで、良寛と師弟関係を結び、家族のように深い関係を築くようになっていく。また、同じラインマンである十文字一輝、黒木浩二、戸叶庄三のことをライバル視しており、よく挑発しているが、これがよい結果を生むことが多い。身長150センチで、体重は82キロ。誕生日は1月1日で、血液型はAB型。
雪光 学 (ゆきみつ まなぶ)
泥門高校に通う2年生の男子。アメリカンフットボール部「泥門デビルバッツ」に所属している。ポジションはワイドレシーバー。額が広く見えるショートヘアで、この髪形からハゲ扱いを受けており、蛭魔妖一には「糞ハゲ」、小早川瀬那と雷門太郎には「雪さん」、瀧鈴音には「ユッキー」と呼ばれている。また、身長は高いがアメリカンフットボール部に入部するまではスポーツらしいスポーツをしたことがなく、入部当初は非常に痩せていた。まじめで心優しく寛容な性格で、何事にもコツコツと取り組む努力家。難関大学に合格するために、子供の頃から母親の厳しい指導のもと、勉強漬けの毎日を送ってきた。しかし、学生生活で一度でいいからスポーツがしたいという願いを叶えるため、高校2年生の春、母親に内緒でアメリカンフットボール部の入部テストを受ける。この時は不合格になってしまうが、最後まであきらめない粘り強さとアメリカンフットボールへの熱意を妖一に評価され、合格となった。入部後も基礎体力のなさからレギュラーメンバーに入れず、長らく苦労した。しかし、それでもあきらめず鍛錬を積み、持ち前の高い知能で、アメリカンフットボールへの理解を深めていく。そして「神龍寺ナーガ」戦で、ついにデビューを果たす。身長183センチ、体重は67キロ。誕生日は2月29日で、血液型はA型。
瀧 夏彦 (たき なつひこ)
泥門高校に通う1年生の男子。瀧鈴音の兄で、鈴音とは年子であるため、学年は同じ。泥門高校には1年生の2学期から編入し、アメリカンフットボール部「泥門デビルバッツ」に所属する。ポジションはタイトエンド兼ラインバッカー。金髪を肩まで伸ばしたセミロングヘアで、あごひげを伸ばして堀りが深いため、一見外国人のように見える。底抜けに明るく前向きな性格で、自分こそが神に選ばれた存在だと信じて疑わないナルシスト。しかし嫌味がなく爽やかなことや、親しみやすい人柄もあって、周囲からは好意的に受け止められている。一方で、興味のあることはすぐに覚えるが、そうではないものはまったく覚えられず、勉強は足し算もおぼつかない。そのためバカにされることが多く、蛭魔妖一には当初「糞アゴヒゲ」、やがて「糞バカ」と呼ばれるようになってしまう。しかし、決して不真面目というわけではなく、苦手を克服しようとする意志は強い。特にアメリカンフットボールに関しては、トレーニングを怠らず、身体の柔軟さを活かした器用なプレーを得意としている。アメリカンフットボールで有名になるという夢を持って高校受験するが、日本の高校はすべて落ちてしまったことから、そのままプロ選手になろうと考えてアメリカに向かう。そんな16歳の夏休みのある日、「アルマジロズ」の入団テスト会場で小早川瀬那に出会い、その器用さを買われてスカウトされ、2学期に入ってから泥門高校の編入試験に合格して正式な部員となった。身長182センチ、体重は72キロ。誕生日は4月10日で、血液型はAB型。
瀧 鈴音 (たき すずな)
泥門高校に通う1年生の女子。瀧夏彦の妹で、夏彦とは年子であるため、学年は同じ。もともとは透糸(すけいと)高校に通っており、泥門高校には1年生の2学期から編入した。アメリカンフットボール部「泥門デビルバッツ」の専門チアリーディングチーム「デビルメントバット」のリーダーを務めている。明るく元気な性格で、黒の外はねショートヘアにしている。高校1年生のある日、アメリカに行ったまま消息不明となった夏彦を探すために、単身渡米する。そんな中、日本人男性がいると聞いて夏彦ではないかと会いに行くが、その男性は小早川瀬那だった。当初は瀬那のことを頼りない男性だととらえていたが、その後すぐに瀬那が参加した「アルマジロズ」の入団テストの様子を見て考えを改める。また、この時に夏彦が瀬那にスカウトされたことで、泥門デビルバッツを応援することを決めた。帰国後、泥門高校に編入し、チアリーダーとして活動するようになる。夏彦とは仲がいいが、お馬鹿な彼といっしょにされることは嫌がっており、苗字ではなく名前で呼んでもらうようにしている。また、周囲の仲間たちに個性的なあだ名を付けるのを得意としている。身長153センチ、体重は45キロ。誕生日は3月31日で、血液型はB型。グラマラスな女性にあこがれているが、瀧鈴音自身は小柄で幼い体型のため、チアリーダー仲間たちに少し嫉妬することもある。
酒奇 溝六 (さかき どぶろく)
泥門高校の用務員の中年男性。アメリカンフットボール部「泥門デビルバッツ」のコーチを務める。頭頂部をモヒカンにし、残った部分は肩につくほどまで伸ばし、長い口ひげとあごひげを蓄えた小柄な体型をしている。王城ホワイトナイツの監督である庄司軍平とは大学時代のチームメイトであり、そのコンビは「二本刀」の通り名で有名だった。しかし、この頃に行った「死の行軍(デス・マーチ)」により右膝を痛め、現在ではプレーできなくなってしまっている。明るく大ざっぱな性格で、無類の酒好きでつねにお酒を持ち歩いている。また、宵越しの銭は持たないタイプで、気前がよすぎるうえに、たまにギャンブルで稼いだお金もすぐに使い切ってしまうため、いつも金欠。この人柄から蛭魔妖一には、「糞飲んだくれ」「糞アル中」などと呼ばれている。しかしコーチとしての腕は確かで、時に厳しく時に優しく、選手一人一人に寄り添う指導には定評がある。以前は麻黄中学校の教師を務めており、妖一や栗田良寛、武蔵厳とは、この頃に知り合った。また当時良寛が、たとえ一人でもアメリカンフットボールを始めようとしていることを知り、協力したことで親しくなった。その後、一度は退職に追い込まれるも妖一の尽力で復職するが、今度は競馬でぼろ負けして2000万円の借金を作ってしまう。この借金によって、優秀な選手をアメリカにスカウトしに行くという名目でアメリカに逃げ、日本には戻れなくなってしまっていた。そんなある日、高校2年生となった妖一がNASAエイリアンズとの約束を機にアメリカへやって来たことで再会。妖一がカジノで大勝ちしたことで、借金も返済し、晴れて帰国。泥門高校の用務員として就職し、コーチも務めることになった。
筧 駿 (かけい しゅん)
巨深(きょしん)高校に通う1年生の男子。アメリカンフットボール部「巨深ポセイドン」に所属している。ポジションはラインバッカー。黒のウルフカットヘアで、長身のクールなイケメン。きまじめな堅物で、小学生の頃にはすでにアメリカンフットボールを始めていたが、当時は筧駿自身の恵まれた体格に甘え、まじめに競技に取り組まなかったり、周囲の選手を見下したりしていた。その後、中学生になってからアメリカへ留学するが、アメリカでは決して自分が体格に恵まれているのではないと気づく。さらに、この時に「アイシールド21」と戦い、同じ日本人としてアメリカで苦労しながらも活躍している彼を尊敬するようになる。しかし、アイシールドを付けていたために、彼の正体が大和猛であることは知らず、予定されていたはずの再戦も叶わなかったために、名前を知ることもないままに帰国することになる。そして高校生になり巨深高校に入学してからも「アイシールド21」の正体を追い続けていた。そんなある日、「アイシールド21」を名乗ってはいるものの、まるで別人のような選手に出会い、彼に怒りを抱く。そして、これが同時期に知り合った小早川瀬那とは知らぬまま、東京大会で戦うことになる。試合を経て瀬那が偽「アイシールド21」であることを知ったあとは、彼の実力を認めたうえで、いっしょに本物の「アイシールド21」探しを続けるようになる。身長191センチで、体重は86キロ。誕生日は6月6日で、血液型はA型。
水町 健悟 (みずまち けんご)
巨深(きょしん)高校に通う1年生の男子。アメリカンフットボール部「巨深ポセイドン」に所属している。ポジションはタックル兼ディフェンシブタックル。金髪のウルフカットヘアで、長身で明るい性格をしている。人懐っこいため交友関係が広いが、よくも悪くも人の目を気にしないタイプで、思ったことをすぐ口にしてしまうため、周囲を凍り付かせてしまうこともある。またテンションが上がると、すぐに服を脱いでしまう。卓越した運動能力を持ち、一度夢中になるとまったく周りが見えなくなるほど熱心に取り組む。そのため中学生時代は友人に誘われて入った水泳部で名を馳せるが、そのうち周囲との温度差が生まれ始め、孤立した末に水泳をやめたという過去がある。それでも、仲間といっしょに一つのことを成し遂げたいという気持ちは抱き続けており、巨深高校に入ってすぐ、アメリカンフットボールで全国制覇を掲げる筧駿に触発され巨深ポセイドンに入部した。アメリカンフットボールは、特にラインマンの身長が重要だと考えており、「泥門デビルバッツ」の面々と出会った当初は、小柄な小結大吉のことを見下していた。しかし対戦を機にその考えを改め、人間的にも成長していく。身長は193センチで、体重は89キロ。誕生日は12月31日で、血液型はB型。
甲斐谷 陸 (かいたに りく)
西部高校に通う1年生の男子。小早川瀬那の友人で、アメリカンフットボール部「西部ワイルドガンマンズ」に所属している。ポジションはランニングバック兼セーフティ。小柄な体型で、白髪をツンツンのショートヘアにしている。一見すると、実年齢よりも幼くかわいらしい印象を与える。しかし、落ち着いたまじめな性格で、危機に瀕しても臆するところがなく、頼りがいがある。瀬那とは小学生の頃からの知り合いで、当時から虐げられ、使いっ走りにされている瀬那を案じて、走り方を教えたことで親しくなった。この時期に姉崎まもりとも知り合った。しかし、その2週間後には引っ越すことになってしまい、いっしょに過ごした期間は非常に短かった。面倒見がよく、のちに自分が不利になるとわかっていながらも、瀬那に選手としてのアドバイスを送ったことがある。そして高校1年生の秋、アメリカンフットボール選手同士として再会する。「泥門デビルバッツ」との試合後は瀬那の実力を認めて親しくなり、特に「白秋ダイナソーズ」に敗北してからは、瀬那の兄貴分として、積極的に泥門デビルバッツに協力するようになっていく。身長163センチで、体重は52キロ。誕生日は4月20日で、血液型はA型。
赤羽 隼人 (あかば はやと)
盤戸(ばんど)高校に通う2年生の男子。アメリカンフットボール部「盤戸スパイダーズ」に所属している。ポジションはタイトエンド。赤色のショートヘアに赤い瞳を持ち、いつもサングラスをかけている。美形に加えて細身の体型でスタイル抜群、さらにおしゃれでもあるため、芸能プロダクションからスカウトされたこともある。しかしつねに無表情で、ふだんは何を考えているのかが読み取りにくい。その一方で、瀧夏彦や水町健悟といった陽気なタイプとは気が合い、ノリのよい一面を見せる。また大の音楽好きで、つねにギターを携行して試合の合間にも弾いたり、チームメイトとの相性を音楽でたとえたりする変わり者。アメリカンフットボールでは特にキックへの情熱が強く、キックがいかに重要な存在か知らしめるためにも、盤戸スパイダーズをキック特化のチームにしようとしている。高校1年生のある日、父親の転勤を理由に盤戸高校を去ることになり、同時期に誘いのあった帝黒(ていこく)学園高校に転校を決める。しかし、その直後佐々木コータローから、今年度の大会結果を見た帝黒学園高校が、盤戸高校からエース級の選手だけを引き抜き、棘田なども転校したことを知る。これに強い怒りを感じ、転校後に即盤戸高校へ戻ることを決意。転校を繰り返したことにより、半年間公式戦に出場できなくなるのを承知のうえで、盤戸高校の仲間たちを選んだ。この時、あえて最強を名乗ることで自分を追い込んでいるコータローに倣い、自分も最高のエースランナーの称号である「アイシールド21」を名乗り始めた。長らく小早川瀬那が、赤羽隼人こそが真の「アイシールド21」だと思い込んでいたのはこのためである。身長175センチで、体重は68キロ。誕生日は9月21日で、血液型はA型。
佐々木 コータロー (ささき こーたろー)
盤戸(ばんど)高校に通う2年生の男子。アメリカンフットボール部「盤戸スパイダーズ」に所属している。ポジションはキッカー。黒髪を後ろに向かって逆立て、細身でロックミュージシャンのような髪形をしている。ヘアスタイルに非常にこだわっており、スキあれば、くしで整えている。情に厚い一途な性格で、自分に厳しい。いつも明るく振る舞っているが、最強のキッカーを自称することで自分を追い込み、これをチームを背負う覚悟の証(あかし)としている。それは高校1年時、エース級の選手たちだけが帝黒(ていこく)学園高校に引き抜かれ、チームがボロボロになり、キッカーを軽視する帝黒学園高校の指導方針が気に入らず、その重要性を知らしめたいと考えるようになったことが大きい。また、赤羽隼人が何も知らずに帝黒学園高校に転校したものの、自分と同じ気持ちで戻って来たことから、ふだんはケンカばかりしつつも、心の深いところではつながっている。他校のキッカーの情報にも詳しく、武蔵厳のことも彼が休学している時から知っており、対戦したがっていた。小早川瀬那たちが、泥門デビルバッツに優秀なキッカーがいるらしいと知ったのも、佐々木コータローの情報がきっかけである。身長177センチ、体重は68キロ。誕生日は11月30日。血液型はB型。
細川 一休 (ほそかわ いっきゅう)
神龍寺学院高校に通う2年生の男子。アメリカンフットボール部「神龍寺ナーガ」に所属している。ポジションはコーナーバック兼スプリットエンド。黒髪を額が見えるほどの短髪で釣り目、眉間に白毫(びゃくごう)のようなほくろがある。物事を強調したい時、単語の頭に「すごい」という意味で「鬼」を付けて話すことが多い。チームのムードメーカーな存在で、先輩によくいじられている。だが、金剛阿含にも認められるほどの高いキャッチ能力を誇り、飛んできたボールを誰にも譲らない覚悟を持つ。その高いプライドから、ほかのチームのキャッチャーを見下したり、煽ったりすることも多い。このため、雷門太郎のことも当初は相手にもしていなかった。しかし、関東大会第1回戦で対戦し、敗北したのを機に考えを改める。自分に勝った太郎の負けた姿を見たくないと思うようになり、違うチームでありながら、先輩として積極的にアドバイスを送ったり、直接指導したりするようになる。身長168センチで、体重は52キロ。誕生日は1月9日で、血液型はO型。
円子 令司 (まるこ れいじ)
白秋高校に通う1年生の男子。アメリカンフットボール部「白秋ダイナソーズ」に所属している。ポジションはクォーターバック。焦げ茶色の髪の毛をオールバックにし、一房だけに白いメッシュを入れている。父親がイタリアンマフィアであるため、苗字の「マルコ」をイタリア風の発音で読んでもらったり、私服もスーツを身につけている。けだるい雰囲気を漂わせて飄々(ひょうひょう)としており、ふだんはわざと気が弱そうに振る舞っている。しかし実際は狡猾(こうかつ)な性格で、目的のためには手段を選ばない。特に試合においては、峨王力哉にわざと相手選手をケガさせて退場させる卑怯な行為も、当たり前のように行う。しかし、これは思いを寄せている氷室丸子のために全国大会優勝を誓ったものの、関東と関西ではあまりに実力差がありすぎ、特に「帝黒(ていこく)アレキサンダーズ」には、卑怯な手段を用いなければ勝てないと考えているため。丸子との約束を守るために勝ち続けているが、その卑劣さから、丸子との距離は増々広がっている。身長は177センチで、体重は68キロ。誕生日は5月1日で、血液型はAB型。
大和 猛 (やまと たける)
帝黒(ていこく)学園高校に通う1年生の男子。アメリカンフットボール部「帝黒アレキサンダーズ」に所属している。ポジションはランニングバック兼フリーセイフティ。癖のある柔らかい短髪で、長身のイケメン。中学時代はアメリカのノートルダム大学附属中学校に留学していたこともあり、当時はエースランナーとして「アイシールド21」の称号を得ていた。つねに爽やかな自信家で、運動神経が抜群ながらアメリカ留学時代は、日本人というだけで不当な扱いを受けることも多かった。一度、筧駿と対戦したが再戦が叶わなかったのも、アメリカチームのリーダーであるMr.ドンによって不当にノートルダム大学附属中学校を追い出されたことが原因である。この経験から、帰国後はアメリカにも負けないチームを作るため、日本最強でもある帝黒アレキサンダーズに所属している。自分以外の選手が「アイシールド21」を名乗ることに関しては特に抵抗はなく、小早川瀬那と対戦するのを楽しみにしている。また、優秀な選手であれば誰でも大歓迎の姿勢を示し、女性でスポーツの経験のまったくなかった「小泉花梨」を勧誘した。身長は192センチで、体重は85キロ。誕生日は10月10日で、血液型はA型。
高見 伊知郎 (たかみ いちろう)
王城高校に通う3年生の男子。アメリカンフットボール部「王城ホワイトナイツ」に所属している。ポジションはクォーターバック。黒髪をオールバックにして、眼鏡をかけている。幼い頃に負ったケガによって速く走ることができないが、小学生の頃からアメリカンフットボールが大好きだった。当時はタックルがなく、代わりに両手でタッチすることをタックルとみなす競技「タッチフット」をしていた。まじめで温厚な性格でありながら策士で、試合に勝つために狡猾な一面を見せ、なかなか目の出なかった桜庭春人の成長を待ち続ける我慢強さを見せる。春人に関しては、成長すればお互いの長身を生かせるベストパートナーになれると信じており、春人を時に励まし、時に叱りながら成長を楽しみにしている。この人柄からチームメイトにも慕われており、司令塔としても信頼されている。一方で、策士として勝負にどん欲な姿勢を見せる時は、蛭魔妖一に「黒高見」と呼ばれている。身長は194センチで、体重は83キロ。誕生日は9月14日で、血液型はA型。
本庄 鷹 (ほんじょう たか)
帝黒(ていこく)学園高校に通う1年生の男子。アメリカンフットボール部「帝黒アレキサンダーズ」に所属している。元野球選手の「本庄勝」の息子。ポジションはワイドレシーバー兼コーナーバック。銀髪ロングヘアで前髪を目が隠れそうなほど伸ばしている。細身の長身で、感情に乏しい印象を与える。幼い頃から勝にマンツーマンで野球を教えられていたが、周囲にうまい選手がいなかったことから、アメリカンフットボールに転向した。その後はアメリカンフットボール選手として花開き、日本でもトップクラスの実力を誇る。しかし、自らの能力の高さと過去の経験もあり、大和猛や金剛阿含のような一部の優秀な選手以外は、自分に敵う相手はいないと思い込んでおり、雷門太郎に対しても自分の敵ではないと考えていた。しかし、全国大会決勝「クリスマスボウル」で、自分にない才能を太郎に見つけ、関心を抱くようになる。身長182センチで、体重は71キロ。誕生日は6月26日で、血液型はA型。
アイシールド21
『アイシールド21』に登場するアメフト選手。アメリカの名門校・ノートルダム大附属中でエースランナーを務めていた伝説の日本人選手。パワー・スピード・ボディバランス・メンタルなどあらゆる面で高い能力を誇るスーパープレーヤーだが、その正体は謎に包まれている。蛭魔妖一は他のチームに威圧感を与えるため、小早川瀬名を伝説のアイシールド21としてデビューさせた。 物語が進むうちに、徐々にその正体が明らかになってゆく。
集団・組織
泥門デビルバッツ (でいもんでびるばっつ)
『アイシールド21』に登場するアメフトチームで、泥門高校のアメフト部。蛭魔妖一を中心に、栗田良寛、武蔵厳の3人で立ち上げたチーム。初めのうちは正式な部員が集まらず、試合のたびに助っ人をかき集めるような体だったので、万年負けてばかりだったが、小早川瀬名の入部を機に、様々な人材が集まり、東京でも屈指の強豪になっていった。 「99点取られても100点取りゃ勝つ」という言葉に代表される、攻撃的なプレイが信条。
王城ホワイトナイツ (おうじょうほわいとないつ)
『アイシールド21』に登場するアメフトチームで、王城大学付属高校のアメフト部。堅固な守備を信条とする、東京の強豪チーム。最強と呼ばれた「黄金世代」が卒業し弱体化が噂されていたが、史上最高の選手と名高い進清十郎をはじめとした新生メンバーたちの努力によって、再評価の機運が高まっている。
クレジット
- 原作
アニメ
書誌情報
アイシールド21 37巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第23巻
(2007-02-02発行、 978-4088743165)
第24巻
(2007-04-04発行、 978-4088743400)
第25巻
(2007-07-04発行、 978-4088743837)
第26巻
(2007-09-04発行、 978-4088744124)
第27巻
(2007-11-02発行、 978-4088744339)
第28巻
(2008-02-04発行、 978-4088744742)
第29巻
(2008-04-04発行、 978-4088744957)
第30巻
(2008-06-04発行、 978-4088745237)
第31巻
(2008-08-04発行、 978-4088745534)
第32巻
(2008-11-04発行、 978-4088745909)
第33巻
(2009-01-05発行、 978-4088746166)
第34巻
(2009-03-04発行、 978-4088746418)
第35巻
(2009-05-01発行、 978-4088746647)
第36巻
(2009-08-04発行、 978-4088747132)
第37巻
(2009-10-02発行、 978-4088747354)