概要・あらすじ
教会が絶大な権力を持っていた中世ヨーロッパ。「切り裂き魔」と呼ばれ、恐れられる一族があった。教会から第一級異端者として追われ、処刑されていた彼らだったが、その実態は、時代の常識よりもはるかに進んだ技術「外科手術」で病の人々を救うアスクレピオス(医師)だった。長い間、迫害を受けながらも、人々のためにその腕を振るってきた一族だったが、遂に少年バズ・メディル・アスクレピオス一人を残すだけとなってしまう。
しかし、アスクレピオスであった父の処刑を目の当たりにしてしまったバズは、自分が一族であることを隠し、教会の目から逃げ回る生活をしていた。バズが逃亡を始めてから二年ほどたったある日、彼の前にロザリィ・テレスフォスという少女が現れる。
代々アスクレピオスを補佐していた一族テレスフォス家の現当主である彼女との出会いは、バズをアスクレピオスとしての運命へと導くのだった。
登場人物・キャラクター
バズ・メディル・アスクレピオス (ばずめでぃるあすくれぴおす)
「切り裂き魔」の異名で呼ばれるアスクレピオス(医師)の家系に生まれ、教会から第一級の異端者として追われている。父の処刑を目の当たりにした恐怖から、素性を隠し目立たぬよう生活していたが、ロザリィ・テレスフォスとの出会いによってアスクレピオスとしての運命が動き出す。先代アスクレピオスであった父をしのぐ才能を秘めており、中でも、患者のバイタルサインに触れるだけで読み取ることができる左手、通称「神の眼」は、多くの人々の救命に力を発揮する。
ロザリィ・テレスフォス (ろざりぃてれすふぉす)
バズを探して旅をしていた少女。アスクレピオス(医師)の家系であるメディル家を補佐する役割を持ったテレスフォス家の現当主。先代アスクレピオスであったバズの父から「杖(ビルガ)」と「血命録(ビブロス)」を託されバズを探していた。そしてその後、彼と共に病に苦しむ人々を救う旅をすることになる。 主な役割は、アスクレピオスの手術中の助手役であるが、教会等、彼を襲撃する者の手から守るボディガードの役割も担う。そのため、格闘術、剣術に長ける。
パレ
外科医を目指す男。サレルノに修行へ向かう途中バズたちと出会い、意気投合する。しかしそれも束の間、馬車に轢かれそうな子供を助けたために、右腕切断直前の大怪我を負ってしまう。外科医になる夢も潰えたと思われたが、バズの手術によって右腕は無事接合される。以後、向学のため、バズたちの旅に勝手についていくのだが、その過程で彼らは、かけがえのない友となっていく。
ポスターレ
ポスターレとは「伝達屋」の意。メディル家、テレスフォス家の者の前にしか姿を現さない。仮面で顔を隠した謎の男で、アスクレピオスを陰で支える。ロザリィ曰く、「スポンサー」。旅の資金や、新たな患者の情報をバズたちに提供する。
カリギュラ
バズの父サグ・メディル・アスクレピオスを捕らえた聖騎士。幼さの残る容貌をしているが、見た目に反して行動は残忍で執拗。幼い頃、野盗に襲われ孤児となる。そこを青年の頃のヴィテリウスに保護され、以後彼の手足となって働く部下として育てられる。幼い頃の悲惨な出来事を忘れるため、アスクレピオス抹殺に執念を燃やす。
ローラ・ローマン (ろーらろーまん)
ヴィゴー市の若い女医。眼鏡に後ろで束ねた長い髪が特徴。自分の学んだ医学に自信を持っており、アスクレピオスのような異端を軽蔑している。耳下腺腫瘍の患者イアンの治療を巡ってバズと対立。しかしバズの手術の腕を目の当たりにし、アスクレピオスに対する考えを改める。
ヴィテリウス
教会の司教。全国の聖騎士を束ね、教皇からの信頼も厚く、次期教皇に最も近いと言われている。教会の中でアスクレピオスの異端認定を最も推進している人物。幼くして孤児となったカリギュラを自身で引き取る。この事は世間の目には美談と映ったが、実態は自分の手足となって働く有能な部下に育て上げるためであった。
コルブロ
「死神の聖騎士」とも呼ばれる経歴不明の男。顔の左側に大きな刺青がある。どの聖騎士隊にも属さず、直接教皇を護衛する凄腕の剣士。その技は、たった一人で一個中隊にも匹敵するといわれている。教皇が現在の地位に上り詰めたのも、彼の裏での働きがあったためと言われている。
サグ・メディル・アスクレピオス (さぐめでぃるあすくれぴおす)
バズの父で先代のアスクレピオス(医師)。二年前、聖騎士からの逃亡の最中バズと離れ離れになり、その一年後聖騎士・カリギュラに捕まり、処刑される。処刑直前までロザリィと行動を共にしており、自分亡き後のバズの補佐と、アスクレピオスの証である「杖(ビルガ)」と血命録(ビブロス)を渡すようにと託す。
ネロ
医師長。重度の火傷を負った息子を、バズの手術によって助けられる。これがきっかけとなり、アスクレピオスの異端認定を撤回する方向に考えを転換する。
集団・組織
聖騎士 (せいきし)
『アスクレピオス』に登場する組織。教会のために働く騎士団。教会の教義に異を唱える「異端者」を追跡、捕獲、処刑するのが主な仕事。
教会 (きょうかい)
『アスクレピオス』に登場する組織。絶大な権力を持っており、その教義に異を唱えるような学者や研究者を「異端者」の汚名を着せ処刑している。自分たちの教義に無い医術を駆使するアスクレピオスを異端視しており、聖騎士たちを使って追跡、捕獲しようとする。
その他キーワード
血命録 (びぶろす)
血液でしか書き込めない不思議な紙で出来た本。歴代のアスクレピオス(医師)が受け継いできたメディル家の秘宝で、その全てのページを助けた患者の血液による署名で埋めた時、何かが起こるといわれている。
アスクレピオス
『アスクレピオス』に登場する用語。メディル家によって1000年前に生み出された異能の外科医術を受け継ぎ、その技を駆使して病の人々を救う者の呼び名。また彼らはその呼び名と共に、手術道具を収納した「杖(ビルガ)」と「血命録(ビブロス)」も受け継ぐ。彼らの駆使する技は時代の先を行き、驚異の治癒力を誇るものであったが、人体にナイフを入れ「体内をいじる」というような行為は、時の権力を握る教会から「教義に無いもの」として異端視され、更には「切り裂き魔」の汚名も着せられ、排斥の対象となってしまう。