概要・あらすじ
かつて、東乎瑠(ツオル)帝国は、強大な軍力で隣国のアカファ王国を蹂躙(じゅうりん)した。しかし、「黒狼熱(ミッツァル)」という死の病の流行で、アカファの聖地、火馬の郷を目前にして、帝国軍は侵攻を止める。以来、小競り合いが続いていたが、現在、アカファ王国は東乎瑠帝国に服従を誓い、2国は緩やかな併合関係にあった。かつて、帝国からも恐れられた戦士団「独角」の頭であったガンサ=ヴァンは、戦いに敗れてすべてを失い、アカファ岩塩鉱に囚われていた。そんなある日の夜、闇に紛れて黒い山犬の群れが岩塩鉱を襲い、帝国の兵隊たちは全滅してしまう。ヴァンも山犬に腕を嚙まれて気絶するが、意識を取り戻したときには、腕に不思議な力を感じ、怪力を用いて牢屋から脱出する。ヴァンは、牢の前にいた独りぼっちの幼女、ユナを連れて、岩塩鉱を後にする。ユナも山犬に嚙まれていたが、生命を失うことはなかった。こうして、山犬襲撃事件の生き残りとなった二人は、血の繋(つな)がりのない父子として旅をすることになった。翌日、天才医師のホッサル=ユグラウルが、死体の山となった岩塩鉱を訪れる。ホッサルは、遺体の様子から、その死因がミッツァルであると診断する。かつて、東乎瑠の軍隊を全滅させた死の感染病が、山犬の出現によって復活したのだ。ホッサルは、アカファの狩人である女性、サエの調査から、腕を嚙まれながら生き残り、逃亡したヴァンの存在を知る。「ヴァンがミッツァルに対する抗体を持っている可能性が高い」と考えたホッサルは、ミッツァルの治療のため、ヴァンの後を追うことを決めるのであった。
登場人物・キャラクター
ガンサ=ヴァン
険しい地で驚異的な力を発揮する飛鹿(ピュイカ)を操る最強の戦闘集団「独角」の生き残りの男性。ガンサ氏族いちの戦士であり、独角の頭を務めていた。鼻筋にある一文字の矢傷が特徴。戦いに敗れ、アカファ岩塩鉱に囚われていたが、山犬の襲撃事件の混乱に乗じて脱出。アカファ王国の岩塩鉱で独りぼっちで泣いていた幼女のユナを拾い、血の繋がりのない父子となる。ユナからは「おちゃん」と呼ばれている。山犬に嚙まれたことにより、不思議な力と、黒狼熱(ミッツァル)の抗体を持つ。
ユナ
アカファ王国の岩塩鉱で、ガンサ=ヴァンに拾われた身寄りのない幼女。明るく元気が良い。ヴァンのことを「おちゃん」と呼んで慕う。一人称は「ユナちゃ」。岩塩鉱で山犬に嚙まれており、黒狼熱(ミッツァル)の抗体を持っていると思われる。
ホッサル=ユグラウル
東乎瑠(ツオル)帝国の支配者層に支持される天才医師の男性。グレーの長髪が特徴。死の病「黒狼熱(ミッツァル)」の秘密を解明するため、その抗体を持っていると思われるガンサ=ヴァンを追う。
クレジット
- 原作
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上橋 菜穂子