あらすじ
第1巻
高校1年生の若村幸千恵は、母親の若村由伎絵を亡くし、天涯孤独になってしまったところを祖父の浅葱雷伊蔵に助けられた。実は幸千恵はやくざ「関東浅葱組」の組長の孫娘であったが、由伎絵が結婚を機に雷伊蔵と縁を切ったため、その事実を知らずにいたのである。幸千恵は雷伊蔵のはからいで「関東浅葱組」に身を寄せる事になるが、荒くれ者ぞろいの組員達の恐ろしい雰囲気に驚き戸惑う。そんな幸千恵に、1歳年上の五十嵐楽十が世話係としてつく事になる。しかし、一見穏やかで完璧な男性に見える楽十は、実は意地悪で、何を考えているのかわからない人物だった。幸千恵はそんな楽十に反発しつつも、次第に仲を深めていく。
第2巻
若村幸千恵ら「関東浅葱組」の面々は、浅葱雷伊蔵の友人である梅ちゃんが経営する民宿「潮騒」へ旅行に行く事になる。そこで雷伊蔵は、梅ちゃんが長期入院の必要な病気を患っており、入院中、孫息子の乾杏真が一人になってしまう事を知る。杏真を案じた雷伊蔵は、一時的に「関東浅葱組」で杏真を預かる事を決めるが、旅行中に幸千恵と親しくなった杏真は、幸千恵に積極的にアプローチするようになる。それを快く思わない五十嵐楽十と、幸千恵、杏真の奇妙な三角関係が始まるが、そんな折、映画研究部の部長が幸千恵と楽十の正体を怪しむようになる。とうとう幸千恵と楽十がやくざの組の人間である事を突き止めた映画研究部の部長は、学園祭でそれをノンフィクション映画として発表し、幸千恵と楽十は危機に陥る。しかし「関東浅葱組」の組員の機転により、幸千恵達の言動のすべては芝居の練習であったと誤魔化す事に成功する。
第3巻
福引で温泉旅行のチケットを当てた若村幸千恵は、実費で同行したがる「関東浅葱組」の組員達も連れて、全員で旅行する事になった。しかし、泊まったホテルの支配人は、なんと幸千恵の亡くなった母親・若村由伎絵の世話係を務めていた麻生仁であった。世話係として生きる辛さを知っている仁は、五十嵐楽十の世話係としての実力を確かめるため、ホテルの一室に幸千恵を拉致し、楽十一人だけで助けに来るように命令する。幸千恵の機転もあり楽十は無事に幸千恵を保護するが、その後の宴会の席で、仁は改めて楽十に対し、世話係というものは、どんなに愛情をこめて世話をしても、最終的には別の男性に奪われる辛い立場であると説く。そんな仁に対して楽十は、その覚悟はできていると告げるのだった。
第4巻
「関東浅葱組」のもとへ、商談のため大阪から「東雲組」の組長がやって来た。その息子である東雲昴の自由奔放ぶりに手を焼く若村幸千恵だったが、とうとう昴の行動に我慢ならず叱ったところ、逆に気に入られ、結婚を申し込まれてしまう。そのまま昴のペースに飲まれ、急きょ2泊3日の大阪旅行へ行く事になってしまう幸千恵だが、自分の思いを認めた五十嵐楽十が迎えに訪れ、いっしょに東京へ帰る事にする。しかし、誤って逆方向の電車に乗ってしまった幸千恵と楽十は、慌てて下車した新神戸で一晩を過ごす事になってしまうのであった。
第5巻
若村幸千恵は、クラスで行うクリスマス会の会場に、ぜひとも自宅を提供してほしいと頼まれてしまう。クラスメイト達が訪問する事で、稼業がばれてしまうのではと不安を感じる幸千恵だったが、組員達の協力もあり、なんとか会は和やかに進行していく。しかし五十嵐楽十は、1年A組のクラス委員長である楢崎隆也に不穏なものを感じ、密かに彼を監視していた。だが、隆也はすべてを察しつつも、楽十に思いを寄せているので、楽十に迷惑がかかるような事はしないと告げ、「関東浅葱組」の平穏は守られる事となる。
第6巻
2年生に進級した若村幸千恵は、幼なじみの千草剣之介と、生徒と教師として再会する。小柄でかわいらしい剣之介を、長らく同い年だと勘違いしていた幸千恵は驚くが、同時に剣之介も、幸千恵が今ややくざの孫娘として暮らしている事に驚く。実は剣之介もやくざの「千草組」の跡取り息子であり、子供の頃、それを幸千恵にばらされたばかりに引っ越さざるを得なくなった過去があった。当時から幸千恵に恨みを持つ剣之介は、今度は自分が幸千恵の正体をばらしてやろうと嫌がらせをするが、その企みを五十嵐楽十と幸千恵に知られ、次の実力テストで、幸千恵が英語で学年5位以上の成績をあげたら嫌がらせをやめると約束。結果、見事に満点を取った幸千恵は、剣之介と和解する事に成功する。
第7巻
五十嵐楽十の進路問題もいい方向に進んだある日、街でひったくりを発見した若村幸千恵は、ひったくりを捕まえる過程で無関係の少女に怪我をさせてしまう。それにまったく気づかずその場を去った幸千恵であったが、少女の正体は、なんとやくざの「常盤組」の跡取り娘・常盤みどりであった。幸千恵に恥をかかされたと感じたみどりは、幸千恵に一対一の勝負を挑むが、その際に出会った楽十を気に入り、楽十と結婚したいと言い出す。それだけはさせられないと考えた幸千恵は、みどりを説得するため、楽十に内緒で常盤組へ乗り込む。しかし、自分への説明なしに幸千恵が行動した事に腹を立てた楽十は、突如体調を崩したみどりの世話係・松葉虎太郎の代わりに、みどりの世話係を務めたいと言い出す。楽十とみどりを二人きりにさせたくない幸千恵は、自ら志願し、なんと小間使いとして常盤組でしばらく暮らす事になってしまう。
第8巻
若村幸千恵と五十嵐楽十が「常盤組」で生活していた頃に、乾杏真は梅ちゃんの見舞いに訪れた病院で、柚季という少女と出会う。柚季の祖母もまた入院中で、祖母を案ずる柚季は毎日見舞いに来ているのだが、なぜか祖母は会ってくれないのだという。柚季を案じた杏真は、四つ葉のクローバーさえ見つかればどんな願いでも叶い、祖母の病気も治るはずだと言う柚季に付き合い、四つ葉のクローバーを探しに行く事になる。それがきっかけで柚季と柚季の祖母はお互いの本当の気持ちを話し合い、和解。柚季と親しくなった杏真は、その後も、幸千恵と楽十も交えて柚季と動物園に行くなど、柚季と交流を持つようになる。
第9巻
成績を落としてしまった若村幸千恵は、五十嵐楽十ら「関東浅葱組」の面々に加え、担任の千草剣之介も交えて、リゾート地で勉強する事になってしまった。さらに、そこで出会った男性が、行方不明になった楽十の父親である事が発覚する。父親と別れた経緯からどうしても素直になれない楽十であったが、幸千恵の説得により、ついに父親と再会し、和解する。その件がきっかけで幸千恵と楽十の仲はさらに深まり、二学期が始まるが、ある日幸千恵は、梅ちゃんの見舞いの帰りに、乾杏真に告白される。突然の出来事に戸惑う幸千恵だったが、その直後、楽十の父親が再び楽十と暮らすための準備を終え、楽十が「関東浅葱組」を去る事を知ってしまう。深いショックを受ける幸千恵だが、そこで杏真の口から、10年前に幸千恵と楽十は出会っており、二人はお互いに初恋の相手であった事を知らされる。自分の気持ちに素直になろうと決めた幸千恵は楽十のもとへ走り、気持ちを伝え合った二人は、ついに恋人同士となるのであった。
第10巻
五十嵐楽十は父親と話し合った結果、父親の働く京都府の大学に進学し、センター試験が終わり次第、京都府へ引っ越す事になった。離れ離れになる事に不安を感じる若村幸千恵であったが、前向きに捉え、離れているあいだに、自身も成長しようと誓う。そしてそれから1年以上が経過し、3年生となった幸千恵の卒業まであと1週間になる。そんなある日、友人の瀬田佳世が柄の悪い男性に絡まれているのを見かけた幸千恵は、いっしょにいた「関東浅葱組」の面々と共に男性達を撃退する。しかし駆けつけた佳世の母親には「関東浅葱組」こそが佳世に絡んでいた悪漢と誤解され、さらに幸千恵がやくざの孫娘であるという事がばれてしまう。佳世を案じた佳世の母親は、翌日から佳世に学校を休むように命じ、自分のせいで佳世が卒業式に出席できないと知った幸千恵は、自分が式の参加を辞退し、凪砂高校にもう現れない事で責任を取ると決める。だが、千草剣之介のはからいで、卒業式の早朝に登校し、剣之介と二人だけの卒業式を上げる事になる。しかし、そこに駆けつけたのは、なんと瀬田母娘であった。佳世の母親は佳世の説得により幸千恵と「関東浅葱組」が善良な人間である事を理解し、幸千恵に謝罪する。そこにクラスメイト達と、幸千恵を案じた楽十までもが登場し、誤解が解けた幸千恵は、無事に卒業式に参加するのだった。
登場人物・キャラクター
若村 幸千恵 (わかむら さちえ)
凪砂高校1年A組に所属する女子。2年A組、3年A組に進級する。若村由伎絵の娘で、浅葱雷伊蔵の孫でもあり、父親は早くに亡くしている。周囲からは主に「サチ」あるいは「さっちゃん」、「関東浅葱組」の組員達からは「お嬢」、五十嵐楽十からは「幸千恵様」、東雲昴からは「おねえちゃん」と呼ばれている。髪型は、前髪を目の上で切り、腰まで伸ばした黒髪ストレートロング。 気が強くお転婆で、曲がった事が大嫌いな正義感の強い性格。しかし、そのためにトラブルに巻き込まれる事も多い。高校1年生の6月に由伎絵が亡くなり、天涯孤独になってしまったところを、事情を聞きつけた雷伊蔵に助けられ、雷伊蔵が組長を務める「関東浅葱組」に身を寄せる事になる。 「関東浅葱組」での暮らしが始まった当初は、組員達の雰囲気についていけず戸惑っていたが、次第になじんでいく。高校で楽十が幸千恵と楽十の関係を「お嬢様と世話係」と説明した事から、高校の友人達には、やくざの組長の孫娘ではなく、裕福な家のお嬢様だと勘違いされている。料理が得意で、組員達やクラスメイト達に料理を教えたり、ふるまったりする事が多い。 好きな食べ物はハンバーグとさくらんぼ。誕生日は3月3日。絵を描くのは苦手。なぜか人の入浴中にお風呂に押し入る事が多い。将来の夢は料理人。
五十嵐 楽十 (いがらし らくと)
若村幸千恵の世話係で「関東浅葱組」の組員の男子。凪砂高校2年A組に所属し、3年A組に進級する。生徒会長と剣道部部員を務めており、やがて剣道部主将となる。「関東浅葱組」の組員達からは「ラク」と呼ばれている。高校2年生の6月、幸千恵が母親を亡くし浅葱雷伊蔵と「関東浅葱組」に身を寄せる事になったのをきっかけに、幸千恵の世話係を務めるようになる。 そのため、五十嵐楽十の方が年上ではあるが、幸千恵に対しては敬語で接する。容姿端麗、成績抜群なうえ、いつも笑みを絶やさぬ穏やかな性格。しかし実際は辛辣で意地悪な一面があり、特に幸千恵に対しては容赦がない。一方で幸千恵を、自分にとってはお姫様のような存在と言ったりと、何を考えているのかわからないところがある。 「関東浅葱組」に入ったのは5歳の頃で、父親が借金を作り、母親が逃げてしまい、天涯孤独になっていたところを浅葱雷伊蔵に拾われる形でやって来た。実は10年前に一度幸千恵と出会っており、その際「親しい人へ、10年後の元旦に年賀状を送る」という企画に共に参加し、お互いに年賀状を送り合った仲でもある。 その頃から幸千恵に思いを寄せているが、幸千恵とは再会までそれっきりになってしまっていたため、幸千恵は当時年賀状を送り合ったのが楽十である事を、乾杏真から教えられるまで知らなかった。昔は女性、犬、ゲテモノ、暗所が苦手で麻生仁の後ろをついてばかりいたが、現在はすべて克服している。のちに父親と和解し、父親の仕事を継ぐ事を目標に定める。
浅葱 雷伊蔵 (あさぎ らいぞう)
やくざの「関東浅葱組」の親分を務める年老いた男性。若村由伎絵の父親で、若村幸千恵の祖父。前髪を上げて額を全開にした撫でつけ髪に、いつも和服を着ている。組員達からは「おやじ」、幸千恵からは「おじいちゃん」梅ちゃんからは「雷ちゃん」、藍川ゆかりからは「親分さん」と呼ばれている。一見強面だが正義感が強く義理堅い性格。 五十嵐楽十のような身寄りのない人間を拾って住まわせる事も多く、組員から非常に慕われている。幸千恵の事を溺愛しており、幸千恵を傷つけるものには容赦がない。そのため、幸千恵は逆にトラブルが起きても、浅葱雷伊蔵に走られないように行動する事が多い。
若村 由伎絵 (わかむら ゆきえ)
若村幸千恵の母親で、浅葱雷伊蔵の娘。故人。前髪を真ん中で分け、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしていた。明るく気の強い、曲がった事が大嫌いな男勝りな性格。さらに料理上手と、容姿も性格も、幸千恵に非常によく似ている。また、麻生仁いわく、食の好みも幸千恵と同じ。夫との結婚を機に浅葱家と縁を切り、夫が亡くなったあとは幸千恵と二人で暮らしていた。 しかし、幸千恵が高校1年生の6月に世を去った。
乾 杏真 (いぬい あずま)
民宿「潮騒」の孫息子で、近隣の海の屋台で働く高校2年生の男子。前髪を真ん中で分けたストレートショートカットヘアにしている。明るくノリのいいお調子者だが、他者の心の機微に敏感で気を遣う性格。早くに両親を亡くし祖父の梅ちゃんと暮らしていたが、梅ちゃんが体調を崩したのを機に、梅ちゃんと親しい浅葱雷伊蔵のもとに身を寄せる事になる。 同時に、凪砂高校2年A組に編入する。幸千恵とは屋台で仕事中に、客に難癖をつけられて困っていたところを幸千恵に助けられる形で出会った。そのため出会ってすぐに幸千恵を気に入り、積極的にアプローチする。しかし、五十嵐楽十に邪魔される事が多く、あまりうまく行っていない。次第に楽十とはよきライバルであると同時に、大切な友人となっていく。 将来の夢は介護士。
宮崎 ヨシ子 (みやざき よしこ)
若村幸千恵のクラスメイトで、凪砂高校1年A組に所属する女子。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。五十嵐楽十に思いを寄せており、幸千恵が転校して来てすぐに、友達になろうと声をかけて来る。しかし、その目的は幸千恵を通じて楽十と仲よくなる事であった。そのため、三龍神社で行われるお祭りに、友人の安田和範も交えて四人で遊ぼうと幸千恵と楽十を誘う。 そしてわざと幸千恵と和範とはぐれ、楽十と二人きりになろうとした。しかし、最終的にはその目論見がばれ、楽十に振られてしまった。
安田 和範 (やすだ かずのり)
宮崎ヨシ子の友人で、凪砂高校1年A組に所属する男子。前髪を上げて額を全開にし、髪全体を真上に向かってツンツンに立てた髪型をしている。家柄のいい女性が好きで、若村幸千恵を、やくざの家の娘ではなくお金持ちのお嬢様だと勘違いしたヨシ子から紹介され気に入る。そして、ヨシ子のたくらみに協力し、三龍神社で行われるお祭りに、五十嵐楽十も含めた四人で遊びに行く事になる。 その際、幸千恵と二人きりになったのを機に幸千恵を襲おうとするが、ヨシ子と和範の目論見に気づいた楽十と、「関東浅葱組」の組員達によって阻止された。その時に幸千恵が「関東浅葱組」の人間である事を知るが、安田はこれまでに三度停学になっている不良生徒であり、幸千恵を襲おうとした事が高校に知られると退学になる恐れがあるため、逆に楽十に脅される立場になってしまった。
梅ちゃん (うめちゃん)
民宿「潮騒」を経営する年老いた男性。浅葱雷伊蔵の友人で、乾杏真の祖父。前髪を上げて額を全開にし、刈り上げたベリーショートカットの髪型で、目が細く、いつも笑っているように見える。「梅ちゃん」はあだ名で、本名は不明。穏やかでのんびりとした性格。雷伊蔵とは「梅ちゃん」「雷ちゃん」と呼び合う仲で、非常に親しい。しかし、雷伊蔵いわく北海道で知り合ったらしいが、それがどのようなものかは不明で、若村幸千恵は網走刑務所で囚人同士として知り合ったのではないかと怪しんでいる。 民宿「潮騒」で、両親を亡くしている杏真と二人で暮らしていたが、長期入院の必要な病気を患っており、入院中、一時的に杏真を雷伊蔵のもとへ預ける事になる。
映画研究部の部長 (えいがけんきゅうぶのぶちょう)
凪砂高校に通う、映画研究部の部長を務める女子。前髪を眉上で短く切ったショートカットヘアにしている。本名は不明で、主に「部長」と呼ばれている。小柄でかわいらしい雰囲気だが、映画撮影にかける情熱は本物で、ある日、校内でも人気の高い五十嵐楽十を主演にした映画を撮る事を思いつく。しかし、楽十には断られてしまい、一度はあきらめたところを、幸千恵と楽十が強面の男性達といっしょにいるところを目撃し、二人がやくざの関係者ではないかと怪しむようになる。 その結果、学園祭で幸千恵と楽十の行動を隠し撮りしたノンフィクション映画を公開するが、自体を察した「関東浅葱組」の組員達の機転により、すべては演劇の練習であったと誤魔化され、納得し身を引いた。
藍川 ゆかり (あいかわ ゆかり)
クラブ「ゆかり」のママを務める中年の女性。前髪を真ん中で分け、肩につくほどのセミロングヘアをしているが、店では髪を上げてまとめ、和服を着ている。浅葱雷伊蔵とは親しく「親分さん」と呼ぶ仲。きもの座った性格で、若村幸千恵の周辺で発生した下着泥棒を捕まえるために協力する。
麻生 仁 (あそう じん)
「関東浅葱組」の組員で、若村由伎絵の世話係を務めていた男性。現在はとあるホテルのオーナーとして働いている。のちにオカマバー「ミルキー☆ウェイ」のオーナーにも就任する。前髪を真ん中で分けて額を見せ、肩につくほどのセミロングヘアを撫でつけ髪にしている。ある日自分のホテルに偶然泊まりに来た「関東浅葱組」の面々を発見し、五十嵐楽十を子供の頃世話していた事もあり、楽十が若村幸千恵の世話係としてふさわしく成長しているか確かめようと考える。 そのため、幸千恵を拉致し、楽十が制限時間以内に助けに来られるか試す。実は由伎絵に思いを寄せていたが、世話係という立場上、その思いを打ち明ける事ができず、さらに由伎絵が家を出ていく時に止められなかった事を今でも後悔している。
東雲 昴 (しののめ こう)
大阪府のやくざ「東雲組」の組長の息子の小学生男子。前髪を眉上で短く切ったショートカットヘアにし、関西弁で話す。普段は猫をかぶっており一人称は「ボク」だが、本来の一人称は「おれ」。わがままで自由奔放で、思い通りにいかない事があると噓泣きをして周囲をだましたり従わせたりする、困った性格。一方で他人に嫌われるのを恐れ、必要以上に気を遣ったり、よい子として振舞ったりする繊細な一面もある。 幼い頃に母親を亡くしており、家族は父親だけだが、父親は非常に多忙であるため、強い孤独感を感じている。また、非常に甘やかされて育ったため、叱られた経験がほとんどない。そのため、ある日父親に付き添って「関東浅葱組」を訪れた際、そのわがままぶりを若村幸千恵に叱られたのをきっかけに、幸千恵に思いを寄せるようになる。 幸千恵とは結婚したいと考えており、手段を選ばずに積極的にアプローチするが、幸千恵は自分ではなく楽十を思っている事を理解し、身を引いた。誕生日は11月3日で、血液型はB型。
楢崎 隆也 (ならさき たかや)
凪砂高校1年A組に所属する男子で、クラス委員長を務めている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしたウルフカットにし、いつも眠そうな目をしている。周囲からは主に「委員長」と呼ばれている。クリスマス会で幸千恵の自宅を訪れ、幸千恵の正体が「関東浅葱組」組長の孫娘である事を察する。しかし、実は五十嵐楽十に思いを寄せており、彼に迷惑をかけたくないという思いから、秘密を守る事にする。 父親は警察官。
ヤス
「関東浅葱組」の組員の若い男性。パンチパーマヘアをし、鼻の周りにそばかすがある。一見強面だが、正義感が強く純情な性格。ある日カツアゲに遭って困っていた女性さくらを助けたのがきっかけでさくらに思いを寄せるようになる。その後、母親が病気でお金に困っていると言うさくらに、会うたびにお金を渡すようになってしまう。しかし、さくらが噓をついていると知った若村幸千恵が説教した事で彼女は改心し、街を去っていったため、結局思いを伝えられないまま失恋してしまった。 だが、不憫に思った五十嵐楽十がついた、実はさくらの正体は桜の精であり、これまで咲かないと思われた自分の樹の花が、ヤスの思いによって見事咲いたため消えてしまった、という噓を信じているため、さくらは人間ではなかったと思い込んでいる。
さくら
ヤスが桜の木の下で出会った若い女性。前髪を右寄りの位置で斜めに分けたショートカットヘアにしている。ある日、ヤンキーあがりのチーマーの恋人に、入ったばかりの給料袋を奪われそうになったところを、カツアゲ現場と勘違いしたヤスにより助けられ、出会う。その後、母親が病気なので、お金に困っていると噓をつき、会うたびにヤスからお金をだまし取るようになる。 しかし、その行為に罪悪感を感じており、真実を知った若村幸千恵に叱られて改心。街を去り、恋人とも別れ、真っ当に生きる事を決意する。そして、見事新しい自分になれたら、ヤスにもう一度会いに来たいと考えている。
千草 剣之介 (ちぐさ けんのすけ)
若村幸千恵の幼なじみで、凪砂高校2年A組の担任教師を務める男性。年齢は23歳。やくざの「千草組」の跡取り息子でもある。幸千恵が高校2年生に進級したのと同時に凪砂高校に赴任し、幸千恵の担任教師となる。幸千恵からは「ちーちゃん」と呼ばれている。前髪を目の上で切った、ふんわりとしたショートカットヘアにしている。小柄でかわいらしく、実年齢よりも非常に若く見える。 そのため幸千恵は、凪砂高校で生徒と教師として再会するまで、自分達は同い年だとばかり思っていた。幸千恵とは、幼い頃、千草剣之介の家が、若村家が当時懇意にしていた小料理屋であった事で知り合った。しかし幸千恵が、千草家がやくざである事を周囲にばらしてしまったために引っ越さざるを得なくなり、今でも幸千恵を恨んでいる。 そのため、再会を機に幸千恵の現在の境遇を知り、今度は自分が幸千恵がやくざの孫娘である事をばらしてやろうと嫌がらせをするようになる。しかし、そのたくらみを五十嵐楽十と幸千恵に知られ、次の実力テストで、幸千恵が英語で学年5位以上の成績をあげたら嫌がらせをやめると約束する。結果、幸千恵が見事に満点を取ったため、和解し、その後はかつてのように親しく付き合うになる。 子供の頃から教えるのがうまく、教師を志したのも、幸千恵から教師になるのが向いていると勧められたため。
余市 草介 (よいち そうすけ)
「関東浅葱組」の組員の男性の息子。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、ふんわりとしたショートカットヘアにしている。普段は前髪と眼鏡で顔が見えないが、眼鏡をはずすと美形。家はシノギとして定食屋を営んでいたが、母親が亡くなったのを機に店を閉める事になった。しかし多額の借金が残っており、事情を知った若村幸千恵らと共に、店を立て直して借金返済を目指す事になる。 最終的には借金が不当なものであった事も発覚し、返済を完了させ、父親と二人で店を続けていく事になった。
木下 (きのした)
五十嵐楽十の3年次の担任で、凪砂高校3年A組の担任教師を務める女性。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、胸まで伸ばしたロングウエーブヘアを、首の付け根の位置で一つに結び、眼鏡をかけている。まじめで教育熱心な性格で、生徒の中でも特に優秀な楽十が、3年生の春を過ぎても進路が決まっていない事を案じていた。さらにほかの教師から楽十をしっかり指導するように叱られ、面談にも応じない楽十の事を知るため、家庭訪問をする事になる。 その過程で楽十が住む浅葱家がやくざの一家である事を察するが、楽十の未来のため、口外しない決意をする。
常盤 みどり (ときわ みどり)
やくざ「常盤組」の跡取り娘の、高校3年生の女子。前髪を右寄りの位置で斜めに分けたショートカットヘアにしている。正義感が強く堂々とした性格だが、祖父に、敵には絶対に背中を見せるなと言われて育ったため、極度の負けず嫌い。ある日街で若村幸千恵が後ろから衝突してきたためにケガをしてしまい、以来、幸千恵に背中を見せてしまったと感じるようになる。 そのため幸千恵に一対一のケンカを申し込むが、そこに同行した五十嵐楽十を気に入り、楽十と結婚したいと考えるようになる。また、同時期に幸千恵の不手際で世話係の松葉虎太郎が身体を冷やし体調を崩してしまったため、変わりを申し出た楽十を、しばらくのあいだ世話係として常盤組に置く事になる。洋風なものが大好きで、本心ではやくざの「お嬢」ではなく、西洋の「お嬢様」になりたいと思っている。 昔は今とは正反対の性格で、非常に気が弱くいじめられっ子だった。しかしそこから武道を習い心身共に強くなり、現在の姿に成長した。将来の夢は警察官で、そのため、反対する父親とはケンカが絶えない。
松葉 虎太郎 (まつば こたろう)
やくざ「常盤組」の組員で、常盤みどりの世話係を務める高校2年生の男子。前髪を左寄りの位置で斜めに分けたウルフカットにしている。小柄でかわいらしい雰囲気で、誰に対しても丁寧な口調で話し、一人称は「私」。みどりを慕っており、みどりのためであればどんな事もするまじめで一生懸命な性格。ある日みどりを説得しに「常盤組」までやって来た若村幸千恵と噴水に落ちてしまい、身体を冷やし体調を崩す。 そのため、体調が戻るまでのあいだ、五十嵐楽十にみどりの世話役を譲る事になる。
柚季 (ゆずき)
乾杏真が病院で知り合った幼い少女。前髪を目の上で切りそろえ、顎の高さまで伸ばした内巻きボブヘアにしている。あだ名は「ゆず」あるいは「ユズ」。物静かでおとなしい性格。病院へは祖母の見舞いできているが、仲がよかったはずの祖母が急に冷たくなった事に悩んでいる。しかし、杏真と出会った事で、祖母は自分が亡くなったあとの柚季を案じており、少しでも早く自分のいない世界に慣れさせようと、わざと冷たくしていた事を知る。 その後、祖母とは和解し、杏真との交流も続く事になる。動物は苦手だったが、杏真と五十嵐楽十によって克服した。将来の夢は看護師。
瀬田 佳世 (せた かよ)
若村幸千恵の友人で、凪砂高校1年A組に所属する女子。2年A組、3年A組に進級する。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、顎の高さまで伸ばしたウェーブボブヘアにしている。明るく世話焼きな性格で、幸千恵とは非常に親しい。しかし、高校卒業まであと1週間となった高校3年次の3月、柄の悪い男性に絡まれているところを幸千恵と「関東浅葱組」の面々に助けられたのがきっかけで、幸千恵の正体がやくざの孫娘である事を知ってしまう。 瀬田佳世自身はそれを気にせず、助けられた事に感謝していたが、佳世の母親は佳世を案じるあまり、翌日から学校を休むように命じてしまう。そのため、一時は卒業式に出席できないかと思われたが、幸千恵が責任を取って代わりに欠席を決めた事と、佳世自身が母親を説得した事により、最終的には母親の理解を得て、幸千恵と共に卒業式に出席した。