概要・あらすじ
終戦直後、静岡のある地方都市。小高い丘に立つ巨大なクスノキの根本で、固い友情で結ばれた戦災孤児のマサやんとムギやんは、お互いの将来を語り合う。やがてマサやんは占領下の東京に出て新聞記者となるが、故郷に残ったムギやんは裏社会に足を踏み入れる。そんな中、大物政治家の不審死を追っていたマサやんは、暴漢に襲われ一時的に失明してしまう。
一方、ムギやんはアメリカに渡り、数年後に身分を変えて帰国。目が完治したマサやんは、記者を辞め郷里の教師となっていた。青年となった2人は高度成長期を迎えた故郷で再会するが、制止するマサやんを振り切り、ムギやんは黒幕の依頼で郷土に巨大な軍需工場を創設してしまう。だが、重大な秘密が発覚したことにより窮地に陥った彼は、小型機で逃亡を図るもクスノキに衝突。
傷ついたムギやんの前に、ある思いを胸に秘めたマサやんが姿を現すのだった。
登場人物・キャラクター
マサやん
戦争で父を亡くし、故郷のクスノキを父親代わりに育つ。幼児の頃から大人に脅されても動じないほどの強い正義感を持つ。母も空襲で亡くし孤児となるが、親友のムギやんと励ましあって明るく生きる。成人してからは「日本新聞」の記者となり、その後教師となって帰郷する。自分の性格を夏目漱石の「坊ちゃん」の主人公に似ていると思っている。
ムギやん
幼児期は、戦災孤児という同じ境遇の親友マサやんを頼るおとなしい性格であったが、貧しさからやくざの道に足を踏み入れる。そしてマサやんを裏切り、ボスの命令で重大な違法行為に手を染めてしまう。
ジョージ・M (じょーじえむ)
アメリカ帰りで日系2世という肩書きを持つ謎の男。マサやんの故郷に兵器工場を建設し、軍用ミサイルを製造して大儲けをたくらむ。反対する住民たちをロボットで追い払うという冷酷で極悪非道な性格。桂はるみに一目惚れをする。
桂 はるみ (かつら はるみ)
マサやんの「日本新聞」時代の同僚で、実は同社専務の姪。マサやんとは口喧嘩ばかりしているが、彼に想いを寄せており、マサやんが目を悪くした時には献身的に尽くす。彼とは一時別れるが、その後にマサやんと同じ学校の教師となって再会し、重大事件の解決に協力する。
サボテン
マサやんの下宿先に半ば強引に間借する貧乏青年。ボサボサ頭にツギハギだらけのボロ学生服。下駄履きで荷物は風呂敷包み1個だけ。所構わず尺八を吹くクセがある。ひょうひょうとしたいでたちながら、腕っ節はめっぽう強い。
山下 (やました)
「日本新聞」の社会部に所属する敏腕記者。前髪が顔の上半分を覆っている。浅沼書記長事件の真相に迫るが、真犯人を暴く寸前で犯人一味の策略にはまり窮地に陥る。
手塚 (てづか)
東京の郊外にバンガローを所有し、近くの景勝地「もどりが淵」付近で蝶の採集をしている昆虫マニア。現場に訪れたマサやんと桂はるみの2人に蝶の生態について解説する。実は浅沼書記長事件の実行犯解明の鍵を握る人物。作者である手塚治虫自身がモデルとなっている。
クスノキ
マサやんの故郷、静岡のとある田舎町の高台にある樹齢500年にもなる巨木。物語の語り部として、マサやんたちを見守りながらそびえ立つ。マサやんはこの樹を心の支えとして成長した。時代の流れによって伐採の危機が迫るが、マサやんの働きにより難を逃れた。