覇王の森 -CHICKEN CLUBⅡ-

覇王の森 -CHICKEN CLUBⅡ-

石山東吉の『チキン・クラブ』の続編。大阪のミナミの街で伝説のチーム「チキン・クラブ」を継いだ男と、かつての親友達との抗争を描く。設定や世界観を前作から引き継いでいるものの、前作の登場人物は脇役としてわずかな出番にとどまっており、新たな物語となっている。「週刊少年チャンピオン」1993年34号から1994年40号にかけて連載された作品。

正式名称
覇王の森 -CHICKEN CLUBⅡ-
ふりがな
はおうのもり
作者
ジャンル
不良・ヤンキー
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

幼なじみの哀庭玲神海孔といつも行動を共にしていた浪速京介は、ある日、知人の藤岡景呼からの紹介で隠岐一馬と引き合わされる。一馬は初めて大阪のヤンキー達を統一した人物であり、「覇王」の異名を持つ人物だった。だが、京介達と会った翌日に、一馬は何者かに殺害されてしまう。そして、玲の前には一馬の側近だった桔梗が現れ、一馬の遺言として「覇権之書」を譲渡される。その帰路で、八尾からやって来た虎沢河豚象のチームに襲われ、重傷を負った玲は、虎沢から受けた屈辱を晴らすため、大阪のヤンキーに号令をかけることができるという「覇権之書」を使おうと決意する。

第2巻

哀庭玲は、桔梗から渡された「覇権之書」を使い、自身に屈辱を与えた虎沢河豚象への復讐を実行するが、それは玲が想像していた以上に壮絶なものだった。玲は「覇権之書」の力、そして自身が持つようになった権力に魅せられ、浪速京介神海孔のもとを去っていく。玲の身を案じながらも、日常に戻った京介と孔だったが、そんな彼らの前に雛形冴香という少女が現れ、孔と惹かれあっていく。そんな中、京介は虎沢の右腕だった千無義人と出会い、彼の手引でミナミにある聖地へと足を踏み入れる。そこでいとこの浪速京三と再会した京介は、京三が伝説のチーム「チキン・クラブ」の総長だったと知り、彼から「チキン・クラブ」を引き継ぐ。一方、孔が京介のもとへと去るのではないかと危機感を抱いた冴香は、孔を自分のもとにとどめるため一計を案じる。

第3巻

雛形冴香は、女暴走族「戯瑪流徒」の総長であり、神海孔にその座を与え、さらに孔が自分のもとを離れないために、浪速京介と戦うように仕向ける。孔は京介とのタイマン勝負に臨むが、誤解と知った孔は自分の右目をナイフで突き、けじめとして京介ではなく冴香を選ぶ。哀庭玲に続いて孔が離れていった京介は、千無義人と共に「チキン・クラブ」としてミナミの街を守っていくと誓う。そんな京介のもとへ及川来也真壁隼という男達が現れ、「チキン・クラブ」への加入を申し出る。一方、「覇王連合」の桔梗は「チキン・クラブ」を倒すため、最高幹部である「覇王連合四天王」を召集する。その一人である鎌智妖兵藤岡景呼を拉致し、彼女を人質として京介をおびき出す。

第4巻

覇王連合四天王」の一人、鎌智妖兵とのタイマン勝負にからくも勝利した浪速京介は、藤岡景呼を救い出すが、そこへ「覇王連合四天王」の残りのメンバーが急襲をかける。一方、「戯瑪流徒」の総長となった神海孔は、神戸を支配する「ウオー」の総統である灘英侍と接触し、同盟を持ちかける。英侍は「ウオー」の軍師である仙石勇魚と相談し、「戯瑪流徒」との同盟を承諾する。玲と孔が自身の組織づくりの基盤を整えていく中、京介もまた、「チキン・クラブ」に足りない要素である軍師が必要と感じ始める。折しも「チキン・クラブ」メンバーの一人であり、自身を慕う萩原堅太から知人である日向完を紹介され、彼の優れた戦術眼を知った京介は、日向を「チキン・クラブ」の軍師に迎え入れる。

第5巻

哀庭玲は、「覇王連合」の軍師藤礼紋の設定したプログラムを短期間で修了し、名実共に「覇王連合」のトップである「覇王」となる。その足でかつての親友である浪速京介のもとを訪れた玲は、京介が率いる「チキン・クラブ」の解散を持ちかけるが、京介はそれを拒み、玲とのタイマン勝負に挑む。「チキン・クラブ」の軍師である日向完は、この勝負を延ばすよう進言するが、京介は聞き入れずに玲に挑み、激闘の末に玲に敗れる。そこへ京都ヤンキー「四条会」の頭、白凰鞍馬が現れ、「覇王連合」を牽制しつつ京介を助ける。ミナミの街を手に入れた玲は、その勢いのまま、「ウオー」と同盟を結んだ神海孔を急襲する。自身の愛する雛形冴香を玲に傷つけられた孔は、怒りを燃やして玲とのタイマンに挑む。

第6巻

哀庭玲神海孔とのタイマンは、孔の心の弱さを突いた玲の勝利に終わり、玲の率いる「覇王連合」は全国制覇へと乗り出す。それに対抗すべく、浪速京介は「チキン・クラブ」のメンバーを全国各地へ派遣し、全国のヤンキー達に仲間になるよう呼びかける。京都の白凰鞍馬と神戸の灘英侍も、「覇王連合」とそれを率いる玲を倒すために呼応し、京介を頭に抱くヤンキー同盟が結成された。決着をつけるべく、港に集結する全国のヤンキー達と「覇王連合」。街を愛するすべての人の想いを胸に戦う京介、それを受けて立つ玲、そしてそんな二人の戦いの見届人として現れる孔。かつての親友三人の最後の戦いが始まった。

登場人物・キャラクター

浪速 京介 (なにわ きょうすけ)

大阪のミナミに住む男子高校生。まだヤンキーデビュー前ながらその潜在能力は高く、街や仲間を想う気持ちは誰よりも強い。自身の従兄弟である浪速京三が伝説のチーム「チキン・クラブ」の総長だったと知り、京三からチキン・クラブを引き継ぐ。多くの人を惹きつける魅力にあふれ、「覇王」だった隠岐一馬も、当初は自身の後継者として京介を指名しようと考えていた。

神海 孔 (しんかい とおる)

頭脳明晰の高校生。浪速京介の親友だった男性。普段はメガネをかけた真面目な学生を装っているが、ひとたび怒ると、木刀を手に鬼神のごとき強さを見せる。雛形冴香と出会い、彼女に惹かれて「戯瑪流徒」の総長となる。

哀庭 玲 (あいば れい)

長髪の高校生。神海孔と共に浪速京介の親友だった男性。京介や孔に対して欲を肯定する性格だったため、覇王連合の桔梗から後継者として指名される。「覇王連合」のトップである「覇王」の座を継ぎ、関西、そして全国制覇をするためにかつての親友だった京介や孔と対立する。

藤岡 景呼 (ふじおか けいこ)

浪速京介らの知人で女性。かつて隠岐一馬の恋人であり、謎の死を遂げた一馬の死の真相を探る。蝶の形をした刃を自在に操る「バタフライレイザの景呼」と呼ばれて、周囲のヤンキー達からも一目置かれている。

隠岐 一馬 (おき かずま)

大阪のヤンキーを統一して覇王連合を結成し、そのトップである「覇王」の異名をとる男性。現在の大阪の街を「森」と表現し、その森で自身の後継者となる人物を育てようと望んでいた矢先に、謎の人物に襲撃され、殺害される。かつて浪速京三の率いる「チキン・クラブ」に在籍していたことがあり、そこで組織作りの基礎を学んだ。

桔梗 (ききょう)

「覇王連合」で隠岐一馬の側近を務めていた人物。一馬亡きあとに哀庭玲を「覇王」として育てる。つねにサングラスで顔を隠しており、男の姿をしているが、実は女性。一馬を深く愛しており、彼の名乗った「覇王」という称号を残すために、後継者として玲に目をつける。

雛形 冴香 (ひながた さえか)

女暴走族「戯瑪流徒」の総長を務めている女性。普段は清楚な女子高生として生活しているが、夜になると、「戯瑪流徒」を率いる女総長として活動する。かつて隠岐一馬のもとで帝王学を直接身につけており、中でも人心掌握術に長けている。自身を助けてくれた神海孔を好きになり、彼に「戯瑪流徒」の総長の座を与える。

千無 義人 (せんむ よしと)

「チキン・クラブ」副長を務める男性。かつては虎沢河豚象のチームで彼の右腕的存在だったが、虎沢に見切りをつけ、浪速京介が引き継いだ「チキン・クラブ」の副長となる。「チキン・クラブ」の先代副長だった祭美波を敬愛している。自身の名前を省略した「無義」という通り名で自己紹介することが多い。

及川 来也 (おいかわ らいや)

「チキン・クラブ」親衛隊長を務める男性。浪速京介が「チキン・クラブ」を継いだ際にメンバーに加入する。ケンカではスピードを重視した戦法を得意とするほか、他人からのアドバイスも素直に受け取る柔軟な性格の持ち主。

萩原 堅太 (はぎわら けんた)

「チキン・クラブ」特攻隊長を務める男性。中学生だが、その血の気の多さとミナミの街を愛する精神を浪速京介に買われ、「チキン・クラブ」へ加入する。のちに「チキン・クラブ」の軍師となる日向完を紹介するなど、豊富な人脈を持っている。

真壁 隼 (まかべ じゅん)

「チキン・クラブ」幹事長を務める男性。浪速京介が「チキン・クラブ」を継いだ際に、メンバー加入を申し出た。「覇王連合」の全国制覇を阻むため、九州に飛んで福岡のヤンキーを仲間に引き入れることに成功する。自他共に認める不器用な性格ながら心根の熱い人物。

日向 完 (ひゅうが かん)

「チキン・クラブ」の軍師を務める男子高校生。ケンカの腕前はないが、豊富な格闘技知識と群集心理をあやつる技術を持っている。初見で哀庭玲の戦闘能力を見抜き、どうすれば攻略できるかを考えたり、全国のヤンキー達の嗜好を調べ、仲間に引き入れるための最適な計画を立案するなど、「チキン・クラブ」の頭脳として活躍する。

白凰 鞍馬 (はくおう くらま)

「四条会」の頭を務め、京都のヤンキーを支配する男性。「覇王」だった隠岐一馬や「ウオー」の総統である灘英侍とは互いに認め合う関係だった。京都の中では最大勢力を誇る「四条会」を率いるが、自ら進んでほかの地域を侵略するといったことはせず、「覇王連合」の台頭についても、当初は静観する姿勢を見せていた。

灘 英侍 (なだ えいじ)

「ウオー」の総統を務め、神戸のヤンキーを支配する男性。「覇王」だった隠岐一馬や「四条会」の頭である白凰鞍馬とは互いに認め合う関係だった。名目上は「覇王連合」の傘下に入っているが、一馬の死後「覇王」を継いだ哀庭玲を認めず、下克上の機会を狙っていた。

仙石 勇魚 (せんごく いさな)

「ウオー」の軍師を務める男性。「ウオー」本部内に専用の一室を与えられ、膨大な量の書籍と、宇宙を模したオブジェに囲まれて生活している。「ウオー」の頭脳として、総統である灘英侍からも全幅の信頼を寄せられており、重大な決定をする前には、必ず仙石勇魚の判断を仰ぐようにしている。仙石もまた灘を信頼しており、灘に命を預けているとまで言い切るほど。

藤 礼紋 (ふじ れもん)

「覇王連合」の軍師を務める男性。かの天才「アインシュタイン」のIQをもしのぐほどの超天才で、隠岐一馬の後継者として哀庭玲を推薦した。覇王連合を継いだ玲を短期間で「覇王」として育成するためのプログラムを作るなど、一馬の側近だった桔梗とともに「覇王連合」の屋台骨を支える存在。

鎌智 妖兵 (かまち ようへい)

「覇王連合」の最高幹部を務める覇王連合四天王の一角でもある男性。NASAの開発した宇宙開発用素材である、不可視の刃「リーサルグラス」を武器にする、人質をとって相手を不利な立場に追い込むなど卑怯な戦法を得意とする。浪速京介とタイマンで敗れるものの、その後も「覇王連合」の尖兵として活動する。

虎沢 河豚象 (とらさわ ふぐぞう)

大阪の八尾でチームを率いる男性。見た目は肥満気味の体型をしているが、これは自身の肉体を衝撃を吸収する脂肪でガードしているためで、パンチなどの打撃で直接的なダメージを与えることはできない。覇権之書を手にした哀庭玲を急襲し、タイマンで玲を倒し、屈辱を与えた。

浪速 京三 (なにわ きょうぞう)

「チキン・クラブ」先代総長を務めていた男性。浪速京介のいとこ。かつては関西のヤンキーを一つにまとめあげたほどのカリスマ性を持ち、のちの「覇王」である隠岐一馬をはじめ、彼に心酔する者は多い。第一線を引退した現在もその影響力は強く、「チキン・クラブ」というチーム名は、ヤンキー達のあいだでも伝説となっている。

祭 美波 (まつり みなみ)

「チキン・クラブ」先代副長を務めていた男性。現役時代は総長の浪速京三と共にミナミの街で一目置かれる存在であり、現在でも彼の名を知る者は多い。のちに「チキン・クラブ」の副長を引き継ぐ千無義人が、最も敬愛する人物。

伊集院 桐子 (いじゅういん きりこ)

伝説のチーム「チキン・クラブ」の創始者。現在は故人であり、その遺骨は聖地に建てられた石碑に納められている。「チキン・クラブ」の先代総長だった浪速京三ら大阪のヤンキーの中には、伊集院桐子を敬愛する者も多く、チキン・クラブを作った人物として今なお伝説の存在である。

集団・組織

チキン・クラブ (ちきんくらぶ)

伊集院桐子が創始者となり、浪速京三が総長を務めていたチーム。大阪のミナミの街を拠点とし、先代総長の京三の時代には関西全域に影響力があったほど。のちに京三の従兄弟である浪速京介が総長の座を引き継ぎ、千無義人や日向完など多くのメンバーが集結した。

覇王連合 (はおうれんごう)

隠岐一馬が結成したヤンキーチームの連合。傘下には神戸の「ウオー」や雛形冴香の「戯瑪流徒」など名だたるチームが名を連ねており、一馬の持つ「覇王」としてのカリスマ性で多くのメンバーを従えていた。一馬が急逝して哀庭玲が「覇王」の座を引き継ぎ、関西そして全国制覇へと乗り出す。

覇王連合四天王 (はおうれんごうしてんのう)

「覇王連合」の中でも最強の戦闘能力を持った最高幹部。メンバーには、不可視の刃である「リーサルグラス」をあやつる鎌智妖兵のほかに、催眠術や炎を操る人物など特異な能力を持った者が多い。「覇王連合」内部では「覇王」の側近である桔梗の指示で動く。

戯瑪流徒 (げばると)

雛形冴香が率いる女暴走族。「覇王連合」の一角を担うチームだったが、哀庭玲が「覇王」を継ぐと、覇王連合から絶縁される。のちに総長の座を冴香から神海孔が引き継ぎ、冴香の知略と孔の戦闘能力で勢力を拡大していく。

ウオー

灘英侍が率いる神戸のヤンキー集団。浪速京三が「チキン・クラブ」を率いていた時代には関西全域に影響力を持っていたが、現在の勢力範囲は神戸のみとなっている。「覇王連合」の傘下に加わっていたが、哀庭玲が「覇王」を継ぐと、覇王連合から絶縁する。

四条会 (しじょうかい)

白凰鞍馬が率いる京都のヤンキー集団。「チキン・クラブ」や「ウオー」と異なって歴史の浅いチームながら、白凰鞍馬の持つ戦闘能力と統率力によって、またたく間に京都を支配した。関西では唯一「覇王連合」に対抗できる勢力であり、「覇王」を継いだ哀庭玲もその存在を警戒していた。

場所

聖地 (ほーりーぷれいす)

大阪のミナミの一角にある場所で、「チキン・クラブ」の創設者である伊集院桐子の遺骨を納めた石碑が建てられている。年に一度浪速京三らかつての「チキン・クラブ」のメンバーが集まって慰霊祭が行われており、ヤンキー達のあいだでも不可侵地域として指定されている。

覇王の社 (はおうのもり)

大阪の某所にある「覇王連合」の拠点の一つ。大小さまざまな動物がつどい、大きな樹木が生い茂る等、手つかずの自然が残されており、「覇王連合」の軍師である藤礼紋が、哀庭玲を「覇王」に育成するためのプログラムの一環としての修行を課した場所。

その他キーワード

覇王 (はおう)

大阪のヤンキーを統一し、「覇王連合」を結成した隠岐一馬に付けられた異名。一馬の死後は彼を愛していた桔梗がその異名を残そうと望み、後継者を探すこととなった。現在は「覇王連合」を率いる地位にある者が名乗る称号となっており、哀庭玲がその地位を引き継いだ。

覇権之書 (はけんのしょ)

「覇王連合」を率いる「覇王」に与えられる書類。名実共に「覇王」の証ともいうべきもの。この書類を持つ者は大阪のヤンキーに号令をかけることができるというもので、哀庭玲は「覇王」の側近だった桔梗から覇権之書を引き継いだ。

SHARE
EC
Amazon
logo