イノサン

処刑人一家に生まれながらも運命を受け入れられず苦悩するシャルル・アンリ・サンソンが、フランス全土の処刑人の頭領、「ムッシュー・ド・パリ」を受け継ぎながら、運命に抗い、時に従いながら成長する姿を描く。安達正勝の著書『死刑執行人サンソン』を出典としている。

正式名称
イノサン
作者
ジャンル
その他歴史・時代
レーベル
ヤングジャンプコミックス(集英社)
巻数
全9巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

フランス全土の処刑人頭領「ムッシュー・ド・パリ」の一族に産まれた繊細で心優しいシャルル・アンリ・サンソンは、処刑人家族というだけで、どこへ行っても蔑まれ、忌避されており、処刑人は穢(けが)れた職業だと考えていた。やがて処刑人見習いとして、父親のシャルル-ジャン-バチスト・サンソンの仕事に随行する事になったシャルルは、初めて自分の素性を知りつつ親密に接してくれる同年代のジャン・ド・シャルトワと出会い、友人となる。お互いの本質に惹かれ合う二人だったが、その関係が長く続く事はなく、のちにシャルルはジャンと、自身が初めて処刑する罪人として再会する事になった。

第2巻

ジャン・ド・シャルトワの処刑で失態を演じたシャルル・アンリ・サンソンは、父親のシャルル-ジャン-バチスト・サンソンから完全に「無能」と見限られてしまう。しかしそれをきっかけに、シャルルは自分自身が非の打ちどころのない処刑人として成長する事で、サンソンの家系を絶やす事を心に誓う。半身不随となって処刑を執行できなくなった父親に代わり、罪人が苦しまぬよう慈悲深い処刑を行うようになったシャルルは、厳格な祖母のアンヌ・マルト・デュビュ・サンソンにも認められるようになっていく。しかし次に命じられたのは、教会で出会い、親交を持ったロベール-フランソワ・ダミアンの処刑。国王暗殺を企てたとして逮捕された彼に下された処刑方法は、もっとも残酷とされる「八ツ裂きの刑」だった。

第3巻

150年間行われなかった「八ツ裂き刑」を執行する誉れに喜び、アンヌ・マルト・デュビュ・サンソンをはじめ、サンソン家全体が慌ただしく動き出す。しかし、ロベール-フランソワ・ダミアンが民衆の見世物になる事をよしとしないシャルル・アンリ・サンソンは、執行に戸惑いを見せていた。そんな中、ベルサイユに赴任していた柔和な叔父のニコラ・シャルル・ガブリエル・サンソンが帰郷。シャルルのサポートを務めるために戻ったと話すニコラだったが、内心では執行を完璧にこなす事で、次期「ムッシュー・ド・パリ」の座を掠め取り、かつて兄であるシャルル-ジャン-バチスト・サンソンにだけ注がれていた、母親の寵愛を手に入れようと画策していたのだった。

第4巻

ロベール-フランソワ・ダミアンの「八ツ裂き刑」は、シャルル・アンリ・サンソン自身の指揮で滞りなく進められていた。しかし、刑を長引かせて民衆の興奮を煽ろうとしたニコラ・シャルル・ガブリエル・サンソンの浅慮によって、最後の儀式である四肢を引き裂く刑を進める事ができず、民衆の不満を買ってしまう。ニコラが責任をシャルルに押しつけ、八方塞がりに追い込まれたシャルルだったが、才能あふれる6歳の妹であるマリー・ジョセフ・サンソンの助言により、無事に執行を完了する。しかしマリーは出過ぎた真似をしたとして、「本来、女は男がいなければ家畜以下の存在」と考えるアンヌ・マルト・デュビュ・サンソンから、焼きゴテによる折檻を受けてしまう。

第5巻

「八ツ裂き刑」から5年後。シャルル・アンリ・サンソンは名実共に立派な「ムッシュー・ド・パリ」として、マリー・ジョセフ・サンソンはベルサイユ宮廷直轄の処刑人「プロヴォテ・ド・ロテル」として、それぞれ活躍していた。しかし、世間は女性で、しかも11歳と幼いマリーが処刑人である事を認めようとせず、サンソン家の助手達までもが、マリーが処刑を行う台に密かな嫌がらせを仕組んでいた。やがてシャルルがサンソン家を取り仕切るようになった時、シャルルはかつてシャルル-ジャン-バチスト・サンソンが使用していた礼拝堂の存在を知り、父親も自分と同じ繊細な心を隠していた事を知る。そしてその中で、マリーの客人として屋敷を訪れていたマリー・ジャンヌ・ペキューと出会う。

第6巻

マリー・ジャンヌ・ペキューと体を重ねて以降、シャルル・アンリ・サンソンは嫌っていた父親のシャルル-ジャン-バチスト・サンソンと同じく、サンソン家そのものを重視した言動をとるようになっていく。マリーは、そんなシャルルの個人の感情を害するような強制的な物言いに反発して監禁されてしまうが、「プロヴォテ・ド・ロテル」として、ルイ・フィリップ2世からの処刑依頼を受けるべく脱出。マリーはシャルルに先んじて依頼の受領を済ませる事に成功するが、それは国家転覆を狙った反逆者のジョルジュ・ド・ラトゥールを立たせたまま斬首するという、処刑人にとって至難の処刑方法だった。

第7巻

かつての気弱な様子は鳴りを潜め、すっかり一人前の男性として振る舞えるようになったシャルル・アンリ・サンソンは、国王家の幼い後継者であるルイ・オーギュストと出会い、昼餐会に招待を受ける。しかしシャルルが昼餐会に出向くと、かねてより肉体関係にあったマルレ伯爵夫人が、シャルルが処刑人という正体を隠して貴族に近づいた罪を訴え、公開裁判が始まってしまった。それはすべてルイ・フィリップ2世がオーギュストを追い落とすために仕組んだ事だったが、シャルルは真相を知らないながらいっさいの動揺を見せず、堂々と自己弁護の弁舌をふるうのだった。その頃、オーストリアとフランスの各王家では、縁談が持ち上がっていた。

第8巻

オーストリアからマリア・アントニアが輿入れした。恩赦で解放・減刑された囚人達は歓喜の声を上げたが、死刑のない日々は束の間であった。ルイ・オーギュストがマリアとの初夜に性交を行わなかった事を知った貴族達が、民衆に知れ渡って国家の威厳が失墜する事を防ぐため、16人もの死刑を即日執行するよう指示を出したのである。シャルル・アンリ・サンソンは疲労の中で、「マダム・デュ・バリー」と呼ばれるようになったマリー・ジャンヌ・ペキューと再会する。一方でマリアは、苦悩の夜を過ごす中でマリー・ジョセフ・サンソンと親交を深め、その尊大な考え方に影響を受けていく。その結果、マリーは王室に悪影響をもたらす者として、シャルルから決闘を申し込まれる。

第9巻

シャルル・アンリ・サンソンとの決闘に敗れたマリー・ジョセフ・サンソンは、約束通り結婚する事を了承した。しかしその相手は、シャルルが縁談を組んだ相手ではなく、肥満体で身動きが取れず、食べ物で釣ればどんな条件でも呑む縁戚のジャン・ルイだった。ジャンが「プロヴォテ・ド・ロテル」を続ける事に賛成しており、さらにサンソン家を出た一人前の大人という事もあって、シャルルと決別したマリーは、これまで通りの振る舞いを続ける。その中で、マリーは初恋の相手であるアラン・ベルナールと再会。差別のない理想の世界を作り出そうと孤児達の学校を作り、奮闘するアランの姿にマリーは再び惹かれていくが、その理想を嘲笑(あざわら)う貴族達によって、アランや子供達が殺害されてしまう。

登場人物・キャラクター

主人公

フランスの処刑人一家・サンソン家の長男として誕生する。繊細な心を持ち、処刑人という職務に疑問をもち苦悩する。やがて運命を受け入れ、サンソン家を自らの代で終わらせる覚悟を決めながら処刑人役に就き、フラン... 関連ページ:シャルル・アンリ・サンソン

シャルル・アンリ・サンソンの妹。幼少期から解剖学に関心を持ち、生来の嗜虐性と合わさって自ら処刑人になることを望む。女が処刑人を目指し、さらに自ら処刑台に上がったことで祖母のアンヌ・マルトから激しく折檻... 関連ページ:マリー・ジョセフ・サンソン

フランスの処刑人一家・サンソン家の家長で、フランス処刑人の頭領であるムッシュー・ド・パリの三代目。シャルルやマリーの父。病弱だが家族の前では威厳を保ち、特に家業を拒否するシャルルには激しい折檻も辞さな... 関連ページ:シャルル-ジャン-バチスト・サンソン

サンソン家の家長・バチストの母であり、シャルルやマリーの祖母。実質的にサンソン家の支配者であり、家名を第一に考え、バチストやシャルルに徹底的な処刑人教育を施す。当時の社会通念である「女は子を産んではじ... 関連ページ:アンヌ・マルト・デュビュ・サンソン

シャルルが出会った、美しい金髪の少年。シャルトワ伯爵の息子だが血縁は不確かで、実際はシャルトワ伯爵の男色の対象とされていた。政争に巻き込まれ、シャルトワ伯爵に掛けられたプロテスタント疑惑を押し付けられ... 関連ページ:ジャン・ド・シャルトワ

仕事を探すためにパリを訪れた農民の男性。ジャックの父親。教会で休んでいる際にシャルル・アンリ・サンソンと出会った。当初はシャルルを毛嫌いしていたものの、シャルルの処刑に慈悲がある事を知り、医者としての... 関連ページ:ロベール-フランソワ・ダミアン

シャルル・ジャン・バチスト・サンソンの弟であり、シャルルやマリーの叔父。プロヴァンスで処刑人を務める。柔和でシャルルに慕われているが、内心では兄のバチストに代わって「ムッシュー・ド・パリ」の座に就くこ... 関連ページ:ニコラ・シャルル・ガブリエル・サンソン

プロヴァンスの処刑人・ニコラ・シャルル・ガブリエル・サンソンの助手を務める青年。乳兄弟の仲であるニコラを強く信頼していた。ニコラの引退後はそのまま後任のマリーに従う。マリーに心酔し、シャルルの意志に逆... 関連ページ:アンドレ・ルグリ

フランスの元帥で、イギリス・プロイセンとの「ウィリングハウゼンの戦い」で敗れた責任を負い斬首刑を受ける。マリー・ジョセフ・サンソンがプロヴァンスの処刑人になるよう推挙したが、その見返りに当時9歳のマリ... 関連ページ:トーマス・アーサー・グリファン

トーマス・アーサー・グリファンの部下であった青年軍人。グリファンを慕い、処刑したマリー・ジョセフ・サンソンを暗殺しようとするが、未遂に終わる。その罪で斬首刑を受けるが、獄中でマリーの美しさに触れ、恋心... 関連ページ:ジョルジュ・ド・ラトゥール

修道院でお針子の仕事をしていた、眼鏡の少女。将来、身分が無くなり人々が平等になる世の中が来ることを信じていた。罪人に過度の苦痛を与えず速やかに処刑するシャルルを尊敬する。男を魅了する天性の素質があり、... 関連ページ:マリー・ジャンヌ・ペキュー

ハプスブルグ家からフランスのルイ・オーギュストに嫁いだ少女。輿入れの際に警護役となったマリー・ジョセフ・サンソンと知り合い、彼女の自由さに憧れを抱く。早急にルイ・オーギュストとの子を産むことを母親から... 関連ページ:マリア・アントニア

ルイ・フィリップ2世

フランスの王族の青年。享楽的かつ退廃的な私生活を送り、自身の宮殿を歓楽街として多くの娼婦を囲っている。王位を狙い、邪魔になるルイ・オーギュストなどの追い落としを目論んでいる。

狩りをしていたシャルルと知り合った、夢想家の少年。後のルイ16世。王位や権力よりも自分の空想にふけることを楽しみ、錠前工作で無心になれる時を好む。王政を終わらせる事を望み、子孫を残さず自分の代で家系を... 関連ページ:ルイ・オーギュスト

アフリカ系の血を引く、褐色の肌の美青年。貴族からはその肌の色を「カフェオレ」と侮辱されるが、「俺の身体にはアフリカの黒豹の血が流れている」と嘯く誇りを持つ。マリー・ジョセフ・サンソンが幼少の頃、教会で... 関連ページ:アラン・ベルナール

書誌情報

イノサン =innocent 全9巻 〈ヤングジャンプコミックス〉 完結

第1巻

(2013年6月発行、 978-4088795652)

第2巻

(2013年9月発行、 978-4088797083)

第3巻

(2013年12月発行、 978-4088797182)

第4巻

(2014年3月発行、 978-4088797687)

第5巻

(2014年6月発行、 978-4088798547)

第6巻

(2014年9月発行、 978-4088798981)

第7巻

(2014年12月発行、 978-4088900766)

第8巻

(2015年3月19日発行、 978-4088901282)

第9巻

(2015年5月19日発行、 978-4088901954)

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