概要・あらすじ
ルネサンス文化が花開く一方、魔女狩りなど壮絶な世界が繰り広げられる16世紀のイタリア。旅の芸人・アデール・ナハシードとカーリン・アトランティックは、ナポリのアェルヌス領に流れつく。2人はその異能力を買われて、密かに街を騒がしている「鶏憑き」を退治していた。約20年前、フィレンツェを治めていたジローラモ・サヴォナローラは火刑に処されるが、その直前「フラーテの予言」を残す。
その恐ろしい予言を巡って盟主メディチ家や、七つの大罪者と呼ばれる一群が動き出し、アデールとカーリンはその渦に巻き込まれていく。
登場人物・キャラクター
アデール・ナハシード (あでーるなはしーど)
亜麻色の髪の女性。軽業師(アクロバータ)を生業とし、占い師(インドーヴィノ)のカーリン・アトランティックと共に、流浪の芸人(プロフェッシオーネ)をしている。アェルヌス領の市警・アルベルティの依頼によってこの地に留まり、街を騒がしている「鶏憑き」を退治している。幼い頃父から託された異形の赤い十字架アルファ・クロス(ういきょうの茎)で、あらゆるものを焼き払う力を持つ。 人格が分裂しており、もう一つの人格に人知れず悩まされている。「フラーテの予言」の「遂行者」である7つの大罪者の1人。
カーリン・アトランティック (かーりんあとらんてぃっく)
長い金色の髪の女性。両手は指先まで包帯のような布で覆われている。占い師(インドーヴィノ)を生業とし、アデール・ナハシードと共に芸人(プロフェッシオーネ)をしている。アェルヌス領の市警・アルベルティの依頼によってこの地に留まり、街を騒がしている「鶏憑き」を退治している。掌から刃や釘などの金属が生じ、その含意で未来を知ることができる。 また金属は攻撃にも使われる。その異能ゆえ、幼い頃に親に捨てられたことが心の傷となっており、免罪符(インドルガンツィーア)を買うことを目的としている。
孔雀 (ぷふぁう)
「フラーテの予言」の「遂行者」である7つの大罪者の1人。金髪で容姿端麗な男性。実在の歴史上の人物ピコ・デラ・ミランドラがモデル。メディチ家に毒殺されたはずだったが、若々しい姿のままで現れた。「情欲」を司る「孔雀」(プファウ)の名を名乗っている。ウルビーノ公フランチェスコ・マリーア・デッラ・ローヴェレの前に現れ、人を食う「バルトロマイの聖杯」を操って「立証者」としての「聖別」を行う。 予言を遂行するために、異能の力を与えた鶏鳴者(マギステル)達を使って新興宗教・孔雀教徒を組織する。アデール・ナハシードの相棒・カーリン・アトランティックに言葉巧みに付け込んでいく。
ジローラモ・サヴォナローラ (じろーらもさゔぉなろーら)
実在の歴史上の人物ジローラモ・サヴォナローラがモデルの男性。ドミニコ派修道士としてフィレンツェに入り、専制君主と化したメディチ家を弾劾し、次々に予言を的中させて民衆の支持を得た。しかし自ら政権を握ると、その手法に不満を抱いた市民に捕えられ、火刑に処せられた。自らを焼く炎を放ち、30枚の銀貨たちに目印の烙印を押した。 「ローマに焼却の罰が下る」という予言を発し、7つの大罪者がその予言を実行する「遂行者」、30枚の銀貨がそれを阻止する阻害者、そして多くの立証者がそれを見守る、としている。これらの予言は「フラーテ(嘆き)の予言」と呼ばれ、アデール・ナハシード達の運命を左右する。
アルベルティ
アェルヌス領の市警の男性。出征した領主の兄に代わり、実質的に政治を受け持っている。腐敗しきった教会と対立を続けている。アデール・ナハシードとカーリン・アトランティックを雇い、魔物の討伐を行っていた。人文主義者で堅実な性格。
ヴィットーリオ
アェルヌス領の法座教会(カテドラル)で司祭を勤めている男性。領の政治を受け持っているアルベルティと対立している。免罪符を求めにやってきたアデール・ナハシードとカーリン・アトランティックに挑発的な言葉を吐く。
ベルナルド・ギィ (べるなるどぎぃ)
「フラーテの予言」に対抗する3本の釘の1人。ジュリアーノ枢機卿のはからいによって、異端審問官から枢機卿となったドイツ人の男性。自らも異端の罪に問われたが、メディチ家によって左手の釘(チオード・マノ・シニストラ)を与えられた。予言を阻止しようとする枢機卿ジューリオ・デ・メディチの命によって、30枚の銀貨たちを集め、「巡礼の狩人」(ピルグリム・イェーガー)と名付けて指揮を執る。 彼らを引き連れて、後にアデール・ナハシードの前に現れる。
パラケルスス
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「戦車」(イル・カッロ)。実在の歴史上の人物パラケルススがモデル。医師で稀代の錬金術師の男性。浄化・治癒・攻撃・予兆などをもたらす不思議な「白い石」を出現させる。
ジューリオ・デ・メディチ (じゅーりおでめでぃち)
実在の歴史上の人物ジューリオ・デ・メディチがモデル。メディチ家のレオ教皇の従弟で枢機卿。教皇レオ10世の右腕である枢機卿の男性。様々な陰謀に参加する一方、「フラーテの予言」に対抗するべく、3本の釘を結成させ、陣頭指揮を執る。
フランシスコ・ザビエル (ふらんしすこざびえる)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「星」(レ・ステッレ)。実在の歴史上の人物フランシスコ・ザビエルがモデルの男性。ある理由から女性の姿をしている。歌声によって周囲に様々な影響を与えることができる。
イグナチウス・デ・ロヨラ (いぐなちうすでろよら)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「月」(ラ・ルーナ)。実在の歴史上の人物イグナチウス・デ・ロヨラがモデルの男性。フランシスコ・ザビエルと共に主イエズスの友(ラ・コンパニア・デ・イエズス)、愛称・イエズス会を組織する。宙を自在に歩く「千歩の距離(ミッレパッスウム)」と言う能力を持っている。
ミケランジェロ・ブオナローティ (みけらんじぇろぶおなろーてぃ)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「吊し人」(ラペッソ)。逞しい身体で、ウェーブのかかった長髪の男性。実在の歴史上の人物ミケランジェロ・ブオナローティがモデル。ロレンツォ・イル・マニフィコに見出されてメディチ家に仕え、彫刻や絵画の創作に従事している。 「破壊(アバドン)の手」を持つゆえに、故郷を逃げ出さなければならなかった。
エステル・ノンナートゥス (えすてるのんなーとぅす)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「隠者」(エレミータ)。愛嬌のある顔の小柄な女性。人や物をすり抜けることができる。帝王切開で生まれたため、「生まれざるもの(ノンナートゥス)」と呼ばれる。
アガタ・マレー (あがたまれー)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。秘称は「硬貨の女王」(イル・レジーナ・ペンタクル)。エステ家に忠誠を誓う女騎士。「十字架の苦難(ヴィア・ドロローサ)」と呼ばれる、あらゆる物を押し潰す力を使う。
レオ10世
実在の歴史上の人物ジョヴァンニ・デ・メディチがモデルの男性。ローマ教皇として君臨するメディチ家の成員。教皇庁史上最大の浪費家として知られている。「フラーテの予言」については何も知らされていない。
ジョヴァンニ・デ・メディチ (じょゔぁんにでめでぃち)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「恋人たち」(ラ・アマンティ)。実在の歴史上の人物ジョヴァンニ・デ・メディチがモデル。浅黒い肌の精悍な男性。勇猛果敢な傭兵隊長。主にフィレンツェのために戦うが、金さえ払われれば商売で戦争もする。 彼に斬られた傷口は、彼から距離が離れるごとに開いていく。
アレッサンドロ・デ・メディチ (あれっさんどろでめでぃち)
「フラーテの予言」に対抗する3本の釘の1人で、聖遺物である「両足の釘」(チオード・ディ・ピエーデ)を持っている。長髪の少年。実在の歴史上の人物アレッサンドロ・デ・メディチがモデル。両足には聖痕があって歩けず、車椅子に乗っている。レオ10世の子だが、甥とされている。相手の記憶を探る力を持ち、「フラーテの予言」を巡る戦いを司る。
カタリナ・ヴァレンティノ (かたりなゔぁれんてぃの)
「フラーテの予言」に対抗する3本の釘の1人で、聖遺物である「右手の釘」(チオード・マノ・デストラ)を持っている。女性の身でありながら枢機卿の帽子を与えられている。人の心を読み取る力を持ち、「フラーテの予言」に関わる人々の想念を解読する。
ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパ (はいんりひこるねりうすあぐりっぱ)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「世界」(イル・モンド)。実在の歴史上の人物ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパがモデルの男性。3本の釘の1人アレッサンドロ・デ・メディチのもとで、鳴りやまない「サヴォナローラの鐘」の研究を行っている。
ヨアヒム・ディオニュス (よあひむでぃおにゅす)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「悪魔」(ラ・ディアヴォロ)。黒衣に身を包んだ不気味な男。持っているヴィオローネを鳴らすと、「嘆き女」(バンシー)が出現して相手を裁断する。
ヴェロニカ・デュラハン (ゔぇろにかでゅらはん)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「死神」(ラ・モルテ)。ヨアヒム・ディオニュスと共に行動する幼い少女で、「影」から死神が現れて相手を斬殺する。
アーシェ・エゼキエル (あーしぇえぜきえる)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「司祭」(イル・パーパ)。眼鏡をかけた長髪の男性。蛇(ベルナルド・ギィ)が不在の際には統括者をつとめる。全てを焼き清めるという「全燔祭(ホロコースト)の清めの塩」を使う。
ファウスティナ・メタトローナ (ふぁうすてぃなめたとろーな)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「杯の女王」(イル・レジーナ・コッパ)。目隠しをした金髪の女性。頭の中に声を響かせており、「天使の声」(メタトローナ)と称される。
クログラ・スィージン (くろぐらすぃーじん)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「女司祭」(ラ・パーペッサ)。物静かな女性。ファウスティナ・メタトローナと行動を共にしている。天候を自在に操り、「嵐を呼ぶ者」(テンペスタリウス)と呼ばれる。かつて石打ちの刑に遭い、傷跡を隠すために布で顔を半分隠している。 また刑によって腕も失った。
マルガレータ・ラ・シレーナ (まるがれーたらしれーな)
アデール・ナハシード同様、「フラーテの予言」の「阻害者」である30枚の銀貨の1人。タロットの秘称(アルカナ)は「女帝」(リンペラトリーチェ)。ヴェネチア生まれの娼婦。泡を出して事物を溶かしてしまうことから「人魚姫」(ラ・シレーナ)と称している。
マンドレーク
孔雀(プファウ)が組織する孔雀教団の1人。黒衣を着た不気味な顔の男性。「黒鶏」(マンドレーク)と呼ばれている。長い舌の先から出すマンドラゴラを叫ばせて攻撃する。しかしその攻撃がアデール・ナハシードのもう一つの人格を呼び覚ましてしまう。
クレジット
- 原作
-
沖方 丁