エンジェリック・ハウス

過去へとやって来た未来人が、現代っ子然とした少年と共に音楽を媒体にして未来を変えるさまを描いたSF作品。「災害や戦争を止める」だけではなく、未来の人間の「考え方を変える」という点に重きを置いている。「Amie」平成9年8月号から平成10年3月号と、平成10年クリスマス特別号にかけて不定期に掲載された作品。

正式名称
エンジェリック・ハウス
ふりがな
えんじぇりっく はうす
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
Amie KC(講談社)
巻数
全1巻完結
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概要・あらすじ

時は1997年。地味で冴えない中学生の滝沢柊志は、ある日自分の知らない男子生徒・松本晴臣がクラスに溶け込んでいる事に気づく。二人きりになったところで柊志は晴臣に声を掛けられ、自分は21世紀からやって来て催眠音楽を流し、学校中の人間に自分がこの学校の生徒であると暗示をかけたと告げられる。その音楽が流された時、偶然にも柊志はヘッドホンで音楽を聴いており暗示にかからなかったらしい。

晴臣は20世紀を救うという自分の目的を明かし、その手伝いを柊志に頼み、柊志もそれを快諾する。3日後、晴臣が1枚の自作CDを学校に持ってきて、その曲は柊志が作ったものだとクラスメイトに紹介する。そのCDをきっかけに柊志はミュージシャンとしてデビューして瞬く間に売れっ子となり、その音楽は「エンジェリック・ハウス」と呼ばれた。

実は晴臣は21世紀の世界では禁止されている作曲を行ったため、犯罪者として未来からの追手に追われる身であった。彼の作る音楽は人間の欲望を満たし幸福感を与えるが、最終的には死に至るという恐ろしい効果があった。事実を知った柊志の前に未来からの追手が現れ、晴臣の犯した罪が告げられる。

晴臣の機転により追手に音楽を聞かせると彼らは消滅してしまい、柊志はその効果にうろたえる。晴臣からは、20世紀の人間は煩悩が多いからエンジェリック・ハウスを聞いても消滅しないと教えられる。そして晴臣同様、未来からの追手に狙われるはめになった柊志は、晴臣と共に追手と戦い続ける日々を送る事となる。

その過程で晴臣から聞かされる、未来の世界の状況と原因となった20世紀の人々の生活の因果関係を知り、柊志は自身の考えを変化させていく。

登場人物・キャラクター

滝沢 柊志 (たきざわ しゅうじ)

東京都出身の中学3年生の少年。年齢は14歳。背が低い事からクラスにおいては、ヒエラルキーの最下層にいるいわゆるいじめられっ子。クラスメイトによく殴られたり、お金を巻き上げられている。成績は中の下で、同じクラスの南という女子に恋心を抱いている。松本晴臣が学校で催眠音楽を流して周囲を洗脳した際、ヘッドホンを付けて音楽を聴いていたため暗示にかからなかった唯一の人物。 それを知った晴臣に「歴史のスーパースターにしてやる」と言われて、彼の計画を手伝う事を快諾する。計画の一部として、晴臣が作った曲でCDデビューし、売れっ子ミュージシャンに祭り上げられる事となった。カッコよく存在感のある人生に憧れているが、根性がないためスターとしてのプレッシャーに耐えられず、すぐに弱音を吐いてしまう。 一方で、追い込まれてどうしようもなくなった時にはヤケクソともいえる行動力を発揮して、窮地を脱する事もある。エンジェリック・ハウスをはじめ、晴臣の計画の目的に疑問を持っていたが、晴臣の考えを受け止めるにつれ、滝沢柊志自身も考え方を変化させていく。

松本 晴臣 (まつもと はるおみ)

21世紀から20世紀にやって来た少年。年齢は14歳。未来でも現在でも「ハル」という通称で呼ばれている。滝沢柊志と同じ中学に潜り込み、催眠音楽を学校中に流して、柊志を除く全員に「松本晴臣は3年C組でサッカー部所属」という暗示をかけた。イケメンで背も高く、暗示の効果がなくても周りに人が集まるカリスマ性を持ち、瞬く間にクラスの中心人物となる。 実は生まれてすぐに教育施設「センター」に送られてすべての情報を与えられた存在であり、好きな時代は20世紀で、世の中がすさまじいスピードで発展していった事を特に気に入っている。「センター」を出たあとは、博士番号628「ハル」と呼ばれる能率のいい食物連鎖システムの開発に取り組んでいた。感情がない人間ばかりの21世紀において、「旧人類」と呼ばれる感情を持った存在であるため、「何かを思いつく」事ができる数少ない人間である。 植物の生長促進の研究の過程で音楽の存在を知り、晴臣自信の世話係であるミドリに聞かせたが、その事が露見し無期懲役となった。その後、感情のない21世紀の世界に疑問を抱き、人間らしく生きる世界にするためにタイムマシンで20世紀にやって来た。 21世紀では脱獄犯として扱われており、未来からの追手に身柄の確保と音楽データの回収を狙われている。20世紀では柊志の母親に「晴臣は滝沢家の人間」だと暗示をかけ、滝沢家に居を構えている。20世紀の人間の欲望を抑えるために柊志をミュージシャンとしてデビューさせ、晴臣が作った音楽「エンジェリック・ハウス」を世界中で流す事を計画している。 生い立ちの根本が違うため、20世紀の14歳よりもしっかりとした自己を持ち、弱音を吐く柊志を諭す事もある。ちなみに計算はコンピュータに任せきりだったため、中学生レベルの数学の知識しかない。

Θ (しーた)

未来から松本晴臣を捕獲しにやって来た未来人の女性。巨大なお団子を二つ結った髪型に、首長族のようなアクセサリーを首に付けている。精神のみを20世紀人に移動させて一般人をあやつり、立てこもり事件を起こして滝沢柊志と晴臣をおびき出そうとした。その目的は、柊志の抹殺と晴臣の確保および音楽データの回収である。命令に忠実で、目的を果たすためなら一般人の犠牲は一切いとわない。 未来人のため、エンジェリック・ハウスを聞くと心も身体も消えてしまう。

ミドリ

21世紀で松本晴臣の世話係をしていた少年。ツイストパーマの髪型で、ノースリーブのカットソーを着用している。感情が薄く、自分の考えを持っていない。一般市民のため何の権限も与えられておらず、ただ命令通りに行動している。実は世話係は建前で、本当の仕事は「晴臣に労働意欲を起こさせる事」である。晴臣が21世紀で心を開いた唯一の人物で、友人と見込まれ音楽を聞かされた。 音楽を取り扱う事は違法行為にあたるため、マニュアル通りに上層部に報告し、結果的に晴臣が無期懲役となった。しかし、音楽を聞いたために感情を芽生えさせた事から、晴臣の脱獄を助けた。

その他キーワード

エンジェリック・ハウス (えんじぇりっくはうす)

滝沢柊志がリリースした音楽の世間での通称で、曲名を意味するものではない。また、柊志と松本晴臣のあいだでは、晴臣が作った音楽の事を指す。音楽に分子レベルの分解パターンが織り込まれており、これを聞いた者は「無に帰す」とされている。いろいろなパターンが存在し、柊志のデビューシングルは、表面的な欲望が分解されるようになっていた。 聞いた人間は欲望が満たされ幸福感に包まれるため、瞬く間に大ヒットし、今では世界中でCDが売れている。効果が非常に強く表れる音楽もあり、欲望が薄い21世紀人は聞いただけで心も身体も消滅してしまう事がある。

書誌情報

エンジェリック・ハウス 全1巻 講談社〈Amie KC〉 完結

第1巻

(1999年2月9日発行、 978-4063400304)

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