オオカミライズ

オオカミライズ

中国とロシアに分割統治された近未来の日本では、中国に生体兵器として開発されながらも脱走して自由のために戦う倭狼、機密保持のために倭狼の殲滅を図る中国の秘密部隊の吃狗、中国に対抗すべく倭狼の情報を得ようともくろむロシア情報局の、三つの組織が暗闘を繰り広げていた。吃狗に所属するアキラ、倭狼の寄り合いの頭領となったケン、ロシア情報局の調査員として活動するイサク。かつて幼なじみでありながら敵対することになった、三人の過去と現在を描くSFアクション漫画。「ウルトラジャンプ」で2018年10月号から連載の作品。

正式名称
オオカミライズ
ふりがな
おおかみらいず
作者
ジャンル
アクション
関連商品
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あらすじ

第1巻

関東山地に、謎の隕石が落着した。隕石から広がった因子は瞬く間に生態系を狂わせ、動物を狂暴化し、植物も肥大化していた。これに着目した中国政府は、北方の独裁国を利用して日本への介入を開始。これを追うようにロシアの勢力も日本へ侵入し、国内は混乱に陥る。日本を戦場にしたくないという名目で在日米軍も日本を去り、2年後には隕石の落着した地点を基準に南北に分断され、南を中国が、北をロシアが統治することとなる。そして現在。中国政府は対ロシア用の戦略として、隕石の因子を利用した生物兵器の倭狼を開発するが、ある時、49名の倭狼の脱走を許してしまう。銃や刃物でも駆逐できない脅威となった倭狼への対策のため、中国政府は対倭狼の実験部隊である吃狗を結成する。寧倭弾と呼ばれる特殊弾を支給し、ロシアに対する機密保持のために倭狼の殲滅を命じる。一方、倭狼の頭領であるケンは、吃狗の中にかつての親友だったアキラがいることを確信し、彼に会いたいと願っていた。ケンの側近である前田は、アキラの存在がケンに悪影響を与えると考え、秘密裏にアキラを始末しようと出撃する。しかし前田の健闘もむなしく、ケンとアキラは出会ってしまう。ケンは親友に会えたことを喜ぶが、アキラは異形の存在になってしまったケンを殺すことを宣言し、両者は戦場を去る。一方、ロシア情報局もまた、倭狼の情報を求めるために調査員であるイサクを派遣していた。イサクは、襲撃してきた倭狼の軽田を返り討ちにすると、近くに親友だったアキラとケンがいることをあらためて予感する。三人はかつて、11-T再教化院で過酷な日々を過ごし、その中で親しくなっていったのである。

第2巻

倭狼吃狗の初戦は、互いに死傷者を出しつつ痛み分けの形で終わる。その中で、吃狗のメンバーだった澤笑見前田の手により捕われ、倭狼の捕虜となる。前田は笑見に武器となる刀を渡し、笑見は倭狼に捕えられて生き永らえるよりは潔く死を選ぶため、自ら首筋に刃を当てる。しかし、致命傷となったはずの傷が見る見るうちにふさがり、さらに倭狼の血が体にかかっても死なないなど、見た目こそ変わらないものの体質が変わってしまったことを自覚する。笑見は、自殺もできなくなったことで途方に暮れるが、互いの仲間であったアキラについて語るケンに敵意をまったく持てず、彼の今後を見届けるために死を思いとどまる。戦の傷痕は倭狼の心も蝕み、軽田に続いて名後が脱走をもくろむ。ケンは倭狼と外の世界の人間、双方の被害を抑えるために名後を追い、やむなく殺害するが、そこにイサクが現れる。イサクは、ケンが異形の姿になっても、まったく変わらずに友情を抱いていることと、ロシア情報局もまた独自に倭狼の情報をつかみ、その技術を奪取しようともくろんでいること、さらに倭狼を元の人間に戻す可能性が残されていることを語り、その場で別れる。しかし、倭狼の面々にはつかの間の休息も許されず、吃狗の部隊による再度の襲来を受ける。吃狗の上層部は、笑見が倭狼に汚染されたとして、彼女を抹殺する命令を下すが、アキラは独断で笑見を死んだことにして、ロシアが統治する北部にひそかに逃がそうとする。しかし、ケンは笑見と離れることを拒み、笑見もまたケンと共に暮らすことをアキラに宣言すると、二人でその場を立ち去るのだった。

登場人物・キャラクター

アキラ

中国人の青年で、吃狗に所属している。ぶっきらぼうだが、弱い者いじめなどの卑劣な行いを誰よりも嫌っているなど、正義感の強い性格の持ち主。両親と共に寧倭自治区で暮らしており、家庭教師として雇われていた蛍から日本語を学ぶと共に、姉弟のように親しく交流していた。のちに、政情不安から両親と共に中国本土へと帰還することが決まり、蛍と離れることを余儀なくされる。しかし、蛍が日本人という理由で11-T再教化院に送られたことを知り、本名である「昭」を隠して日本人の「アキラ」を名乗り、自ら再教化院に潜り込んだ。再教化院では、身勝手な大人たちに翻弄されつつも、そこで出会ったケンやイサクと友情を結んだ。しかし現在は、倭狼の頭領となったケンを自分の手で仕留めることを半ば使命のように感じており、そのために吃狗に身を置いている。また、ケンを倒すためなら手段を選ばず、倭狼との戦いでは同僚であるマムトやタシを戦慄させるほどの殺気を放つ。また、恐怖を肌で感じ取れる倭狼の次郎から、まったく恐怖している様子が見られないと、逆に恐れられた。一方で、倭狼の血を受けたことで汚染された澤笑見の抹殺指令が下された時は、死んだことにしてひそかに逃がそうとするなど、ケン以外の相手に対しては仲間思いな一面を残している。また、吃狗でも引き続きアキラを名乗っており、自らが中国人であることを誰にも明かしていない。しかし、吃狗の司令官である朱可はアキラが中国人であることを知っている。戦闘においては、寧倭弾が装填された銃剣を主に利用し、前線に出て戦うことが多い。

ケン

倭狼の頭領を務めている。かつては日本人の少年だったが、ほかの仲間たちより異形化が進んでおり、現在は狼に近い姿となっている。明るく無邪気な性格で、倭狼の仲間たちを大切に思っている。また、倭狼たちからも崇拝に近い感情を向けられており、原初の倭狼である前田すら例外ではない。11-T再教化院の生まれで、大人たちからは「犬」と呼ばれて虐げられる日々を過ごしていたが、ふとしたことでアキラやイサクと出会い、友情を結ぶ。それからは三人でいることに希望を見いだしていたが、現在では敵味方に分かれてしまっている。異形の姿になっても心優しい性格はそのままで、アキラやイサクに対する友情も変わっていない。ただし、頭領としての自覚も持ち合わせており、仲間たちに人間の住む場所への進出を許可せず、これを破った場合はやむなく自ら命を奪う。吃狗に所属するアキラからは、なんらかの理由によって命を狙われており、ケン自身も、戦わなければならない場合は応じる覚悟を決めている。一方で、捕虜となった澤笑見に対しては、アキラへの好意を失っていないことを明かし、心を通わせている。アキラからは「剣」と呼ばれていた。

イサク

ロシア人の青年で、調査員としてロシア情報局に所属している。女性と見まごう美貌で、爽やかで人懐っこい性格の持ち主。また凶暴性を帯びており、自分の目的のためなら他者を必要以上に傷つけることも辞さない。身体能力も高く、弓や槍などの武器を常備しており、倭狼とも互角以上に渡り合う強者。かつて、なんらかの理由で寧倭自治区にいたところを中国兵に捕えられ、日本人の不満のはけ口として11-T再教化院に送られ、「忌作」と呼ばれて激しい暴力を受けていた。しかし、そこをアキラとケンに救われて親友となり、特にケンからは「いさくん」と呼ばれて懐かれる。現在はロシア情報局からの指示によって、わずかに残されたデータの痕跡を頼りに倭狼を追い、その生態を示す証拠を持ち帰る任務を請け負っている。その際に、倭狼を人間に戻す研究も進めていると聞かされ、ケンが頭領だと知ってからは、彼を人間に戻すことを志す。そして、単身で関東山地に赴いてケンと出会い、共に新南クリルに向かうようにうながす。しかし、ケンから山を下りられないことを聞くと、いったんはその場から身を引いた。初めて発見した倭狼である軽田を拷問の末に殺害するなど、危険な一面も変わっていない。

次郎 (じろう)

ケンが率いる倭狼に所属している。ケンや豊前と同様に、かつては日本人の少年だった。ほかの倭狼と同様にケンを大切に思っているが、崇拝する意識はなく、あくまで仲間の一人として認識している。豊前とは幼なじみで、共に倭狼にさせられた今も行動を共にすることが多い。小柄な体型でふだんはお調子者だが、豊前の前ではネガティブな発言を行い、暗い性格と茶化されることもある。住処である関東山地から出ない代わりに、中国やロシアにかかわってほしくないと願っているなど、本来は人間と争うことにあまり肯定的でない。そのため、武装した人間に対しても率先して攻撃したり、戦意を失った相手を追ったりすることはしない。しかし、仲間を傷つけようとする相手には命を奪うこともためらわない。特に、吃狗などの倭狼を殺しかねない脅威と遭遇したときは、率先して戦う姿勢を見せる。豊前との連携によって何人もの吃狗を殺害しつつも、手傷を追わないまま生き延びるなど、倭狼の中においても戦闘能力は高い。なお、前田に捕らわれて捕虜になった澤笑見に対しては、若干なりとも気遣う面を見せる。

豊前 (ぶぜん)

ケンが率いる倭狼に所属している。かつては内向的な性格の日本人で、同年代の子供たちにいじめられていたこともあったが、その際に次郎に助けられた。それ以降、彼とは相棒のような間柄となり、倭狼となった現在においてもその関係は続いている。現在は、心身ともにかつての姿がウソのようにたくましくなっており、倭狼となって隠棲する羽目に陥っても悲観的な態度を取ることはまったくない。一方で好戦的な面が多く見受けられ、敵意を向けてきた相手に対しては、いっさいの躊躇をせず殺害することが多い。また、澤笑見が前田によって捕えられた時に、倭狼を増やすために性行為を行う可能性を考えて次郎にたしなめられるなど、よくも悪くも考えなしに物事を口にする傾向がある。反面、細かいことを考えず、仲間を信じる姿勢は絶対に崩さないため、次郎はもちろん、ケンや前田などからも頼られている。また、倭狼の中でも特に身体能力に秀でており、強化服をまとった吃狗に蹴りの一撃で致命傷を与えるほど。

前田 (まえだ)

倭狼のプロトタイプといえる存在。かつて中国政府から実験体として扱われていた日本人の男性で、関東山地に落ちてきた隕石を利用した実験の末に、狼のような姿と強靭な体を得るに至った経緯を持つ。ほかの倭狼はすべて、前田の血を取り込んだ男性が変化したものである。朱可とは、実験体と実験の立会人という形で面識があり、わずかながら会話を交わしたこともある。現在はほかの倭狼と共にケンの率いる群れに所属しており、ほかの倭狼以上にケンへの思い入れが強く、彼のことを思いやっている。また、倭狼が滅びゆく種であることを認識しているが、そのことに少なからず不満を抱いており、倭狼の血を受けても無事な女性、澤笑見を発見した際には、倭狼が繁殖できるという希望を持つに至る。ケンとの会話から、アキラの存在を知り、彼にとっていかに大切な存在かも把握しているが、彼が現在のケンにとって害になるとも考えており、秘密裏に始末しようと考えている。

澤 笑見 (さわ えみ)

日本人の女性で、吃狗に所属している。現在の日本人に居場所がないことを認識しながらも、日本が亡国であることを認める気になれず、吃狗に入隊した理由も国籍を問わない実力主義なうえに、国とは別の仲間意識を培えるためである。アキラのことを中国人と気づいておらず、同じ日本人と思って親近感を感じていた。女性ながら戦闘能力は非常に高く、身の丈ほどの日本刀を自在にあやつり、倭狼にも劣らない立ち回りを見せる。しかし、戦い慣れしている前田には及ばず、スキを突かれて爪で傷をつけられ、さらに倭狼の血を流し込まれたことで、一時は呼吸困難になるほどの重傷を負う。それでも奇跡的に生き延びたことで前田に捕えられ、そのまま倭狼の捕虜となった。当初は、倭狼の虜囚に貶められたことで絶望し、前田から渡された刀で自ら命を絶とうとする。しかし、首筋を傷つけても即座に治癒するなど、明らかに人でなくなったことに動揺するが、倭狼の頭領であるケンから、アキラとかつて親友だったことを聞き、そのうえで死なないでほしいと懇願され、死を思いとどまった。それ以降はケンと心を通わせるようになり、再会したアキラから、秘密裏に新南クリルに逃げるようにうながされるものの、それを拒否してケンと共に関東山地に残ることを選択する。

マムト

吃狗に所属している男性。鍛えられた体軀と褐色の肌、顎に蓄えられている無精ひげを生やしている。アキラやタシ、澤笑見とは単なる同僚というわけではなく、よくいっしょに食事をしたり、吃狗に志願した理由について語り合ったりと、平常時においても親しい。またタシに対して、笑見は自分に気があったと思うと告げ、アキラに対して冗談半分に笑見のことが好きだったのかと問いかけるなど、彼女に特別な思いを抱いていた可能性を示唆する言動を行ったこともある。戦場においては二振りのナイフを用いた接近戦を得意としており、身体能力に優れる倭狼に対しても臆することなく立ち向かう。また連携にも秀でており、突出しがちなアキラをフォローしたり、タシが牽制したところに追い打ちをかけたりするなどの活躍を見せ、複数回にわたる倭狼との戦いを生き延びる。

タシ

吃狗に所属している男性。マムトとほぼ同年代だが、彼と対照的な体軀をしている。冷静な性格で、アキラやマムトと比べると口数が少ない。また、マムトと共にアキラの突拍子のない行動に翻弄されることもあるが、基本的には二人を信頼している。戦場では狙撃用のライフルを使うことが多く、離れたところから倭狼メンバーの目を撃ち抜くほどの、優れた腕前を持つ。また、寧倭弾を利用して倭狼を仕留めるほか、通常弾で牽制してアキラやマムト、澤笑見の接近戦をサポートすることも多い。

朱可 (しゅか)

中国人の男性で、吃狗の司令官を務めている。かつては研究員として寧倭自治区に勤務しており、関東山地に落着した隕石の調査を行っていた。その中で、史上初の倭狼となった前田の姿を確認し、わずかながら言葉を交わした。基本的には良心より好奇心に従うタイプで、倭狼の実験に11-T再教化院の人材を利用したり、吃狗を指揮する際も、隊員を使い捨てにしたりすることも辞さない。一方で、有能な人物や国、組織に貢献できそうな人材は厚遇するなど、よくも悪くも合理主義者。アキラの素性を知っており、本名の「昭」で呼んでいるが、それを他者に報告している様子は見られない。

軽田 (かるだ)

ケンの率いる倭狼に所属している。ケンや次郎より年上で、彼らからは敬称で呼ばれている。関東山地の外に出られない絶望から自分で行動することを放棄し、ただひたすらにケンを崇拝する日々を過ごしていた。さらに、吃狗が襲撃してきたことでストレスが限界を超えてしまい、群れの掟を破って隠れ家の外に飛び出す。そこで、倭狼の情報収集の任務を帯びていたイサクと遭遇。本能から彼を食らおうと襲い掛かるが、返り討ちに遭う。さらに拷問を受けたのちに、呼吸困難で死亡する。遺体はその場でイサクによって弔われた。

名後 (なご)

ケンの率いる倭狼に所属している。ケンや次郎などより年上で、彼らからは敬称で呼ばれている。軽田と同様に、自分で行動することをせず、ケンを崇拝するだけの日々を過ごしていた。軽田が脱走したことを契機に、彼のあとを追うように隠れ家を飛び出すが、倭狼と人間の諍いを危惧したケン自らによって葬られる。遺体はケンの攻撃によってバラバラになるという無残なものだったが、のちにケンと遭遇したイサクによって弔われた。

外藤 (げとう)

日本人の男性で、11-T再教化院に収監されていた。監督係を任されており、囚人の中では破格といえる権力を持つ。身勝手かつ横暴な性格で、与えられた権力を笠に着て気に入った者を手下に迎えつつ、そうでない者に対して脅したりいたぶったりすることを趣味としている卑劣漢。ロシア人という理由だけでイサクを執拗に痛めつけ、彼をわずかでもかばおうとする素振りを見せた囚人に対して、手下をけしかけて食料を奪わせ、さらにそれを外庭に放り出して、取りに行こうとしたところを脱走とみなした兵士に射殺させるなど、できる限り自分に累が及ばないように立ち回ることを得意としている。アキラやケンに対しても例外ではなく、彼らを長きにわたって苦しめた。

(ほたる)

日本人の女性で、アキラの家庭教師を務めていた。アキラに日本語や短歌を教えて交流を深め、彼からは実の姉のように思われていた。しかし、中国政府からの圧力によって11-T再教化院に送られ、辛い日々を過ごすこととなってしまう。アキラは蛍を助け出すことを志し、彼女に近づくために中国人であることを隠し、日本人として再教化院に潜り込んでいる。

集団・組織

吃狗 (ちぃごう)

中国政府によって設立された実験部隊。朱可が司令官を務め、アキラ、マムト、タシなどが所属している。人種を問わない実力主義が徹底されており、そのために日本人をはじめとしたさまざまな国籍の兵士たちが集まり、暮らしている。倭狼を殲滅させることを任務としており、戦闘中は倭狼の血液を付着させないため、狼を模したヘルメットをかぶることが義務付けられる。また、銃や刀などが通じない倭狼を確実に仕留めるため、寧倭弾と呼ばれる特殊な散弾を支給されている。入隊時に、腕の中に識別用のナノマシンが注入されるため、位置情報や生体反応などはつねに政府に筒抜けとなる。それでも、任務をこなせば高額の報酬や自由が保障されるため、入隊を志す者は多い。

倭狼 (うぉーらん)

中国政府が秘密裏に開発したとされる、日本人の男性を改造することで生まれた生体兵器。20年前に関東山地に落ちた隕石よって発せられる因子が利用されている。狼のような顔に変化し、鋭い爪や牙などを備えるほか、人間をはるかに超える怪力と、刀や銃を用いても殺すことができないほどの再生力を誇る。また、人間の傷口に倭狼の血液が混入した場合、体が耐え切れずに破裂するか、倭狼として生まれ変わる羽目になる。もとはロシアに対抗するために作り出されたが、ある時、49体の実験体が脱走し、関東山地に籠もるという事態が発生。機密保持のために吃狗を組織し、倭狼を全滅させることで証拠を隠滅しようともくろむ。メンタルは個人によって大きく異なり、次郎や豊前のように人間であった時とまったく変わらない者もいれば、軽田や名後のように本能に支配される倭狼も存在する。また、原初の倭狼である前田を含めて人間の面影が残っているが、ケンのみは例外で、巨大な狼そのものの姿をしている。当初、倭狼は男性のみで、女性が倭狼の血を受けた場合は確実に死亡するとされていた。そのため、繁殖も不可能であると考えられていたが、澤笑見が前田の血を受けても死ななかったことで、この説は覆されつつある。なお、ロシア情報局も断片的ながら倭狼の情報を得ており、「人狼」のコードネームで呼ばれ、ひそかに研究が進められている。

ロシア情報局

新南クリルに本拠を構える、ロシア政府主導の諜報部隊。中国以上に科学技術が発達しており、彼らが秘匿していた倭狼の情報も断片的に得ており、「人狼」のコードネームで調査を進めている。現在は、軍隊を派遣できるほどの確証が得られていないため、調査員としてイサクを派遣するレベルにとどまっている。ただし、生体が解明できた暁には、倭狼を元の人間に戻す可能性もあるといわれており、イサクはケンを人間に戻すために調査員としての任務を請け負った。

場所

関東山地

20年前に謎の隕石が落着した地点。世間では北方の独裁国が発射したミサイルが落とされたとされている。中国政府とロシア政府によって介入を受け、分割統治されることになった日本の分断地点となり、両政府から「禁止区域」と呼ばれて立ち入り禁止となる。また中国やロシアから多数の電波妨害や電磁波発生装置などが設置され、現在は電子機器の使用すら不可能となっている。また、中国とロシアのいずれもおいそれと侵入できないことから、中国の実験施設から脱走した倭狼の隠れ家として利用されている。

寧倭自治区

日本列島の関東山地より南西の領土が、中国政府によって統治されることが決まった際に付けられた名称。かつての日本人を「倭人」と呼んで差別しており、彼らの思想を統一するために11-T再教化院と呼ばれる施設に送り込み、洗脳と労役を課すなどの非道を働いている。ロシアとの分割統治を強いられ、中国政府が関東山地の調査がままならないことを不満に思っており、ロシアに対する対抗手段として生体兵器の倭狼を開発し、国土のすべてをロシアから奪い取れるように画策している。

新南クリル

日本列島の関東山地より北東の領土が、ロシア政府によって統治されることが決まった際に付けられた名称。関東山地が立ち入り禁止であるうえ、多数の電波妨害装置が設置されていることから、中国政府や吃狗のメンバーは、その詳細を知ることができずにいる。ロシア政府は、わずかに残された映像から倭狼に関する情報を得ており、ロシア情報局に所属するイサクに対し、倭狼の存在を証明する痕跡を持ち帰るように指示している。

11-T再教化院

寧倭自治区にあった寺院を改装して作られた、教化のための施設。かつてアキラ、ケン、イサクが収容されていた。政治犯や浮浪者、新体制を理解できない者、そしてたまたま近くにいた人たちなどをほぼ無差別にかき集めて、再教育を受けさせるとともに、各地で指定された労役を課している。また、まれに軽犯罪で警官の機嫌を損ねたり、体制への疑問を口にしたりした中国人やロシア人なども収監することがあり、彼らは日本人の不満のはけ口として虐待され、そのほとんどが短期間のうちに衰弱し、死亡している。

その他キーワード

寧倭弾 (ねいわだん)

中国政府が対倭狼用に開発した特殊散弾。倭狼となった被験者たちが人間だった頃の血液を素材としており、倭狼に撃ち込むことで、体内で拒絶反応を引き起こし、肉体を爆散させる効果を持つ。刀や通常の弾頭で殺害できない倭狼に対する切り札と呼べる存在だが、複製が困難であるために支給される数は多くない。そのため、出会い頭に射出するよりは、通常弾やナイフ、刀などで牽制して敵がスキを見せた際に使用されることが多い。

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