カミヨミ

カミヨミ

柴田亜美の代表作。人間に取り憑いて悪事を働く怪異が跋扈(ばっこ)する明治時代の日本を舞台に、「カミヨミ」と呼ばれる特異な能力を持つ兄妹の帝月と菊理姫、そして彼らと親しい日明天馬や瑠璃男と共に、各地で発生する怪事件に立ち向かう伝奇ファンタジー。源氏と平氏の因縁が絡み合い、シュールなギャグを交えつつ、不気味でミステリアスな雰囲気が魅力となっている。スクウェア・エニックス「月刊Gファンタジー」2004年3月号から2012年5月号まで連載。

正式名称
カミヨミ
ふりがな
かみよみ
作者
ジャンル
怪談・伝奇
 
和風ファンタジー
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古の巫女の血を引く呪術師

「カミヨミ」は、日本の古代から受け継がれてきた巫女の一族に属す能力者。先祖から伝承された降霊術と、それを自在にあやつるための強力な霊力を持っており、死者が生前に身につけていた遺品と自らの櫛(くし)を赤い糸で結びつけることで、遺品に宿る思念を読み取ったり、具現化することができる。また、死者の怨念から生じる悪霊や強力な霊力を持つ武具を赤い糸で括りつけて封印したり、その糸を鎖に変えて敵の動きを封じることもできる。ただし、あまりにも強力なものを封印する際には、自らの命を犠牲にしなければならない。なお、カミヨミの力を持つ男子が生まれても、継承者として認められることはない。明治時代には、正統な継承者である菊理とその兄である帝月の二人のカミヨミが存在していた。しかし、菊理が赤間関で発生した事件によって命を落としたため、現在では帝月ただ一人がその役割を担っている。

国家の脅威を排除する異能の特殊部隊

天馬が所属する日本陸軍零武隊は、天馬の母親である蘭が指揮する特別機関。主な任務は、国家に悪影響を及ぼす要素を排除することであり、その対象には怪異や呪具も含まれる。剣の達人である蘭をはじめ、毒物に対する高い耐性を持つ毒丸や、カラクリ仕掛けの強化鎧を装備し怪力を発揮する鉄男など、人智を超える力を持った隊員が揃っている。さらに、部隊は日本最古の神剣の一つである「日輪草薙ノ剣」や、一撃で村を焼き尽くす威力を誇る大砲「大霊砲」など、古代に作られたとされる超兵器を複数保有しており、その戦力は陸軍内でも群を抜いている。しかし、その特異性や強硬な手段、隊員たちの破天荒な性格が災いし、ほかの憲兵や権力の集中を嫌う活動家たちからは反感を買っている。警察組織とは対立しているものの、警視総監の八俣八雲が天馬を気に入っているため、蘭の要請を受けて協力させられることも少なくない。また、帝月や菊理に調査を依頼するなど、カミヨミとも協力関係を築いている。

赤間関の事件から始まる悲劇

「カミヨミ」の血を引く帝月と菊理の兄妹は、東京の有力者である近円寺水麿の邸宅で、警察や憲兵、政府関係者からの依頼を受けて霊的な事件の解決に尽力していた。ある日、菊理が日本陸軍零武隊の要請で邸宅を離れる準備をしている最中、帝月の前に江崎正一と名乗る青年が現れ、「村を襲う化け物を退治してほしい」という切実な願いを訴える。帝月はその依頼に興味を持ち、菊理になりすまして引き受け、従者の瑠璃男や将来の義弟となる親友の天馬と共に、山口県の赤間関へ向かう。赤間関では、恐ろしい連続変死事件が発生しており、帝月たちはその解決に乗り出す。しかし、事件の背後には日本最古の神剣の片割れ「月輪草薙ノ剣」が存在し、それが天馬に取り憑いてしまう。月輪草薙ノ剣に身体を蝕まれた天馬は、駆けつけた蘭に対し、「自我を失う前に自分を斬ってほしい」と懇願する。そこに菊理が現れ、自らの命と引き換えに月輪草薙ノ剣を封印し、その片割れである「日輪草薙ノ剣」を天馬の右腕に託す。妹を失い、唯一のカミヨミとなった帝月は、婚約者を失った悲しみを乗り越え日本陸軍零武隊に入隊した天馬や、変わらず忠義を尽くそうとする瑠璃男と共に、京都で発生した連続失踪事件や銀狼館の人狼事件など、数々の怪事件に挑みながら解決へと導いていく。

登場人物・キャラクター

帝月 (みかづき)

「カミヨミ」の血を引く少年。従者の瑠璃男から深く慕われている。双子の妹である菊理の婚約者、天馬とも親しい関係にある。菊理と同様にカミヨミの力を使うことができるが、男性であるため継承者としては認められていない。しかし、実際には歴代のカミヨミの中でも類まれなる力を持ち、人間では太刀打ちできないような怪異とも互角以上に戦うことができる。さらに、天馬が日輪草薙ノ剣の力を解放する際には、帝月の能力による制御が不可欠である。また、帝都に伝わる秘宝「八尺瓊勾玉」を手に入れてからは、平将門の怨霊に真っ向から対抗できるほどの霊力を得ている。女性と見紛うほどの美貌を持ちながら、冷静沈着でありつつも強気な性格で、独断で行動することが多く、周囲を困らせることがある。一方で、日本陸軍零武隊の蘭や警視総監の八雲からは貴重な戦力として評価されており、帝月自身も必要に応じて彼らの思惑に乗ることが多い。ふだんは天馬や瑠璃男をぞんざいに扱っているが、内心では彼らを深く信頼し、傷つけられた時には静かに激昂する。好物は鯖寿司。

日明 天馬 (ひあき てんま)

日本陸軍零武隊の隊長、蘭の息子で、年齢は14歳。カミヨミの正統な継承者、菊理の婚約者であり、互いに支え合いながら深い愛情で結ばれている。誠実で思いやりのある性格から、老若男女を問わず多くの人々に慕われている。しかし、帝月や警視総監の八雲からは強い執着を向けられており、その影響で不運な目に遭うことも少なくない。幼少期から剣術の才能を開花させ、6歳の時には日本陸軍零武隊の隊員全員に勝利した実績を持つが、意地を張った三人の隊士との真剣勝負で、二人を殺してしまったことがきっかけで、無闇に刀を抜くことを恐れるようになる。赤間関での事件を境に、月輪草薙ノ剣に取り憑かれ、自我を失いかけるも、菊理の犠牲によって正気を取り戻した。それ以降、彼の右腕には日輪草薙ノ剣の力が宿り、その力を自らの意志で発動できるようになる。

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