カミ憑き我慢を決壊す

カミ憑き我慢を決壊す

いじめを苦に自ら命を絶ったのちに、人に取り憑(つ)き、我慢を解放する怪異となった少女、ゼイカが、誰にも言えない思いを抱えて苦悩している人々の我慢を、次から次へと破壊していく姿を描いた怪奇ヒューマンドラマ。「週刊漫画ゴラク」で2020年11月から2022年1月まで掲載の作品。

正式名称
カミ憑き我慢を決壊す
ふりがな
かみつきがまんをけっかいす
作者
ジャンル
いじめ
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

幼少の頃から酷(ひど)いいじめを受け続けていた少女のゼイカは、ついに我慢が限界を超え、首を吊(つ)って自殺してしまう。走馬灯がよぎる中、理不尽で忌まわしい思い出の数々によって怒りが頂点に達したゼイカは、死んだあとに人に取り憑いて、我慢を解放する存在になることを決意する。死の直後、とあるコンビニの面接で店長にパワハラまがいのいじりを受けていた少年に憑りついたゼイカは、抑圧されていた少年の我慢を解放。少年は強烈な張り手で店長の顎を粉砕するのだった。(第1話)

登場人物・キャラクター

ゼイカ

陰気な雰囲気を漂わせた黒髪の女子高校生。幼少の頃から度重なるいいじめを受けており、大人に訴えても何も対応してくれないため、ひたすら我慢を強いられる人生を送ってきた。ついに耐え切れなくなって首吊り自殺を図るが、死にゆく最中に理不尽な仕打ちをしてきた周囲の人間に対する怒りが爆発。自分のように我慢を強いられている人間に取り憑き、我慢を解放する怪異へと変貌を遂げた。怪異になって以降は、日本の各地に出没して我慢をしている人間に取り憑き、我慢を強いる対象を暴力で叩(たた)きのめしたり、心のうちに秘めている本音を引き出していた。ゼイカに取り憑かれた人間は、黒目の部分が自らの心境を現した漢字の一文字になる。当事者や関係者の記憶や証拠も、必要に応じて改ざんできる特殊能力を持っている。

虐待されている少女

やせ細った少女で、自宅で母親に監禁されている。ろくに食事も与えられないことからすっかり衰弱している。死を目前にした状況でゼイカに取り憑かれ、母親の腹に強烈な蹴りを入れた。その後は、生まれてから一度も愛情を注いでくれない母親に対し、慟哭(どうこく)しながら自分の思いをぶつける。

奴隷状態の弟

アルバイトで生計を立てている男性。チンピラ風の兄と二人暮らしで、バイト代の8割を兄にピンハネされている。家事のすべてをやらされているうえ、兄のせいで結婚も破談となった過去を持つ。ずっと我慢を強いられてきたがゼイカに取り憑かれ、兄がバイト代をピンハネした割合だけ、体から肉を削(そ)いだ。

ユウ

両親が亡くなったため、遠い親戚の家に引き取られた少年。そのことに引け目を感じており、いつも自分を助けてくれる親戚の一人息子のユウにも敬語を使うなど、他人行儀な態度を取ってしまう。ゼイカに取り憑かれたことで我慢を解放し、「弟」としてユウに感謝の気持ちを伝えることができた。

藤原推しの女性

ごくふつうの若い女性。暴行事件を起こしたとされ、その後に無罪判決を勝ち取った俳優の藤原小次郎の大ファン。一連の騒動をネタにしていたブロガーからインタビューを受けるが、未(いま)だ藤原を疑っているブロガーから「本当は有罪だったのでは?」としつこく聞かれてしまう。ゼイカに取り憑かれて我慢を解放し、ブロガーの目や耳、指を引きちぎった。

気弱な性格の男性。派手好きで社交的な妻と暮らしている。妻から家事のすべてを押し付けられ、さらに浮気もされているが、文句一つ言えないでいる。夫自身が持っていた模型を、妻が勝手に捨てたことで我慢が限界に達し、ゼイカに取り憑かれた。まるで奴隷のようにこき使われ、ないがしろにされていた怒りのすべてを妻にぶつけた。

本屋の店主

死んだ夫の遺志を継いで本屋の経営している中年女性。質の悪い学生に目を付けられ、何度も万引きされることに悩んでいる。万引きを注意しても反省するどころか、暴力すらちらつかせる学生に対して怒りが抑えられなくなり、ゼイカに取り憑かれた。万引きした本はすべて売ったという学生をビルの屋上に連れて行き、腕を引きちぎって投げ捨てた。

松戸 (まつど)

会社員の男性。課長の朝木に企画書を提出しては、ダメ出しされて何度も突き返されることを繰り返している。心が折れそうになりながらも、松戸の潜在能力を買っているという朝木の言葉を信じて企画書を何度も書き直していたが、ひょんなことからそれが大ウソだったと知ってしまう。その瞬間にゼイカに取り憑かれ、朝木の骨を1本ずつへし折った。

社長

小さな会社を経営している男性。早くに妻を亡くし、娘の麻美子を男手一つで育ててきた。取引先の会社の息子が麻美子を見初めたため、麻美子の承諾を得て縁談を進めていた。しかし、麻美子が会社のために自分の心を抑え込んでいることを知っているため、心の奥底では破談を望んでいる。ゼイカに取り憑かれた麻美子が、自分には好きな人がいるという苦しい胸の内を明かしたため、縁談を断った。

宇佐美 (うさみ)

学生の頃から映画が大好きな女性。暗い雰囲気の映画が好きなことで同級生からいじめられている。映画好きな男性教師に助け舟を出され、それ以来男性教師といっしょに映画鑑賞するようになった。男性教師に思いを寄せているが、年の差から言い出せずにいた。卒業から5年が経過し、男性教師から映画をいっしょに見るのをやめることを提案されるが、その瞬間にゼイカに憑りつかれ、自分の思いを男性教師に伝える。

いじめを受けていた少女

学校の先輩から酷いいじめを受けていた少女。ある日突然先輩が廃人になったことでいじめから解放された。廃人になった先輩を見て、心からよかったと思ってしまったことを思い悩んでいる。ゼイカに取り憑かれた教師から励まされ、前向きな気持ちを取り戻した。

不良少年

公衆トイレの個室にこもり、友人と携帯電話でしゃべっている不良少年。個室が空くのを待っていた会社員は、我慢できずに漏らしてしまう。しかし、ゼイカに取り憑かれた会社員によって周囲の人間すべての尿と便を腸に流し込まれたうえ、漏らす様子をスマホで世界に向けて配信されてしまう。

コンビニの主任

とあるコンビニで主任をしている男性。店長の友人の妻から連日、店のPOPや品ぞろえについてダメ出しを受けており、ストレスが限界に達している。謝罪した時の頭を下げた角度に文句を言われた瞬間にゼイカに取り憑かれ、店長の友人の妻の脳天に何度も強烈なヘッドバッドを叩(たた)き込んだ。

異常者の男性

殺人に異常な興味を持っている男性。殺人をしたいという衝動を抑えられなくなり、都心での無差別テロを計画していた。その直前に自殺の名所に、姉を通り魔に殺された女性を見かけ、手始めに殺害しようとする。しかし、ゼイカに取り憑かれた女性の反撃を受け、この世から抹殺されてしまう。

まだ幼い少年。アレルギー体質で豆が食べられない。しかし、それを理解できない祖母から豆を食べることを強要されている。無理やり大量の豆を食わされたことで怒りが爆発し、ゼイカに取り憑かれる。その後は、祖母に食べると巨大化する特殊な豆を無理やり食わせていた。

悠斗 (ゆうと)

生まれつき体が弱く、長期にわたって病院での暮らしを余儀なくされている少年。父親がおらず、まだ若い母親にとって自分が大きな負担になっていると思い込んでいる。思い悩んだ末にゼイカに取り憑かれ、母親のために自殺することを告白する。しかし、同じくゼイカに取り憑かれた母親から、母親にとって悠斗がいかに大切な存在であるかを聞かされたことで、自殺を思い留まる。

(もり)

会社員の男性。高学歴でプライドが高い。社長の縁故で採用されたが、仕事はまったくできない。ミスをしてもいっさい謝罪せず、屁理屈(へりくつ)を交えた言い訳を延々と繰り返すことから、上司の課長は手を焼いている。我慢の限界を超え、ゼイカに取り憑かれた課長から怒鳴られ、理屈でも言い負かされてしまう。

少女

母親と二人で暮らしている、ごくふつうの少女。父親は半年前に母親が運転する自動車が事故にあった際に亡くなった。事故以来、精神を病んでしまった母親のことを心配している。少女自身の精神が限界に近付いたその瞬間にゼイカに取り憑かれ、母親の精神を現実世界に引き戻そうと必死の説得を試みた。

監禁された女性

アルバイト帰りの夜道で変質者にさらわれ、地下室に監禁された若い女性。逃げたら名前と裸の写真をばらまくという変質者の言葉に怒りが頂点に達し、ゼイカに取り憑かれる。変質者を叩きのめしたのち、反対に変質者を地下室に監禁。変質者の金で身なりを整えると宣言したうえで、屋敷から脱出を果たす。

引きこもりの男性

自宅で引きこもっている男性。20年前に退職して以来、心配する母親の言葉にも耳を貸さず、ひたすら引きこもっている。口が非常に悪く、世話を焼いている母親のことも毒親扱いしていた。我慢の限界を超え、ゼイカに取り憑かれた母親の手で精神の迷宮へと送り込まれ、廃人となる。

アパート暮らしの男性

とあるアパートで暮らしている男性。アパートの大家である老婆の孫で、毎日深夜まで大騒ぎして住民に騒音被害を与えている。そのせいでノイローゼ気味になった隣人の女性からは、明確な殺意すら抱かれていた。しかし、ゼイカに取り憑かれた大家の老婆によって懲らしめられ、それ以来かすかな音ですら爆音に聞こえる体質になり、遠くの病院に入院することになった。

ケン

会社員の男性。年齢は30歳。幼なじみの女性、アヤカにずっと思いを寄せていたが、その思いを胸中に秘めている。アヤカが男性と付き合い、別れるたびにその心を痛めていた。30年分の我慢が抑えられなくなり、ゼイカに取り憑かれた。その後はアヤカに告白し、相思相愛の仲となる。

ミコト

同級生の道津から激しくいじめられている少女。意を決して道津を崖の上に呼び出し、いじめをやめるように懇願するも、ミコトを見下している道津に拒否されたため、彼女を道連れに崖下へと落下した。死の直前にゼイカと遭遇し、自らの体をゼイカに託して事切れる。

リリ

生前のゼイカを酷くいじめていた主犯格の女子高校生。勘が非常に鋭く、ミコトの体に憑依(ひょうい)して現れたゼイカの正体を一目で見破った。復讐を恐れて教師の黄田がいじめの主犯であることをゼイカに告げるが、ゼイカが呼び出した大量の蜂に刺されて地獄へと落ちる。

黄田 (きだ)

生前のゼイカの担任を務めていた教師の男性。表向きは生徒思いの優しい性格で、多くの生徒や父兄、教師から慕われている。しかし、いじめられる人間がいるとクラスがまとまるという偏向した考えの持ち主で、リリたちにゼイカをいじめるように裏で指示していた。ミコトの体に憑依して現れたゼイカによって、虐げられている多くの子供たちの痛みの塊を体にブチ込まれてしまう。

SHARE
EC
Amazon
logo