人気劇団「劇団椿座」とは
本作の舞台は津葉木大学附属高等学校の「椿課」。「劇団椿座」の研究生養成所でとして設置された学科である。劇団椿座は、昭和33年に津葉木大学の学生を中心に結成され、日本有数の劇団となった。最大の特徴は、男性のみで構成されていながら、観る者の頬を染め、息を呑ませる華やかさにある。劇団員は、男性を演じる「男役(テイル)」と女性を演じる「女役(ドレス)」に分かれているが、どちらもその演技力を絶賛され、演劇界でも圧倒的な存在感を放っている。しかし、劇団椿座の演目はほぼ100パーセント「男役」が主役である。数十年前は「女役」メインの演目もあったが、ファン層の8割以上が女性であるため、興行収入が振るわない。そんなわけで、劇団椿座では「男役」が至高とされ、その風潮は「椿課」でも同じである。また、演者と芝居を美しく見せるため、「男役」は「女役」より背が高くないといけないというのが暗黙のルールである。
挫折した元脚本家と天才演劇少年
花屋で働く青年・八野田葉一(ハチ)は、幼馴染の胡桃に頼まれ、彼女が勤める津葉木大学附属高等学校に花を植えることになる。そして、学校を訪れたハチは、教室で踊っていた林真檎(シンゴ)と出会う。木陰で踊る小鳥のようなシンゴは、どう見ても少女にしか見えないが男性だった。シンゴと話す機会を得たハチは、「女役」向きのシンゴが、心の内では「男役」を目指していることを知る。現実問題として、身長が約150センチメートルというシンゴに「男役」は無理な話だったが、それでもハチは、諦めてほしくなかった。かつて脚本家を目指しながら挫折したハチは、いつの間にかシンゴに自分の過去に重ねていたのだ。そして、商業劇団である劇団椿座では無理でも、研究生発表会なら小柄な「男役」の演目をやれるのではと思いつく。こうして、シンゴに刺激されたハチは、再びペンを取ることを決意した。
演劇少年たちの青春群像劇
津葉木大学附属高校1年生のシンゴは、ずば抜けて可愛い容姿を持つ。当然のように「女役」を期待されているが、ある事情から「男役」にこだわっている。しかし、8年前から1ミリも伸びない150センチメートルという身長が、真檎の夢を阻んでいるのが現実だった。一方、3年生の金田泉下は、真檎とは逆で、2年生までは160センチメートルほどだった身長が170後半まで伸びてしまい、目指していた「女役」ができなくなってしまっていた。また、シンゴの同級生・日向玲音(レオ)は、かつて可愛い自分が大嫌いだった美少年である。しかし、劇団椿座の演劇を観て、価値観が180度変わった。「男が可愛くてもいい」ということを知ったレオは、肌の手入れをはじめ、あらゆる努力の末に椿課の生徒になった。そんなレオは、何の努力もしていないのに自分よりも可愛く、おまけに「男役」をやりたいというシンゴのことが気に食わない。本作はシンゴやハチだけではなく、様々な事情を抱えながら椿課に通う研究生たちの夢や悩み、友情、嫉妬を描いた、青春群像劇である。
登場人物・キャラクター
林 真檎 (はやし しんご)
津葉木大学附属高校・椿課の1年生。通称「シンゴ」。透き通るような肌、長い髪が特徴で、男性ながら美少女にしか見えない。身長は約150センチメートル。得意科目は体育で苦手科目は理科。小さい頃、劇団椿座の舞台を観たことで役者を目指す。「女役(ドレス)」を務めていた籠花紅介といつかダンスを踊るのが夢で、「男役(テイル)」になりたいが、小柄な体格に悩んでいる。
八野田 葉一 (はちのだ よういち)
花屋に勤める24歳の青年。あだ名は「ハチ」。アナログ人間でデジタルに弱い。小学生の頃、幼馴染の胡桃に勧められたドラマがきっかけで脚本家を志す。その後、テレビドラマのコンクールで佳作を受賞し、ラジオドラマを担当したこともあったが、結局挫折してしまった。林真檎(シンゴ)と出会い、刺激を受け、小柄なシンゴが「男役」ができる脚本を書こうと決意し、再びペンを取る。
書誌情報
カメリアのカーテン 7巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2022-07-04発行、 978-4088831831)
第2巻
(2022-09-02発行、 978-4088832531)
第3巻
(2022-11-04発行、 978-4088833064)
第4巻
(2023-03-03発行、 978-4088834849)
第5巻
(2023-03-03発行、 978-4088834856)
第6巻
(2023-05-02発行、 978-4088835297)
第7巻
(2023-05-02発行、 978-4088835303)