第二次世界大戦後に異なる歴史を歩む日本
本作の舞台となる日本は、太平洋戦争後から独自の歴史を辿っており、架空の年号「並静」が用いられている。昭和28年8月にポツダム宣言を受諾し、大東亜戦争に敗れた日本は、強硬派の元帥・ヴァレンスキーが率いるソ連軍の攻撃を受け、北海道をソ連に奪われてしまう。さらに昭和64年には、事実上の軍事境界線となった津軽海峡に面する今別町に、「プロゥブ軍」と名乗る侵略者が進軍してくる。日本の自衛軍と在日米軍は対抗策を講じるものの苦戦を強いられ、並静9年に入った時点で戦線は群馬県の前橋市まで後退してしまう。しかし、自衛軍もただ手をこまねいていたわけではなく、独自に開発した人型戦車「メルカバ」を実戦投入することで戦線を押し戻すことに成功する。これを機に、自衛軍とプロゥブ軍の戦いは一進一退の膠着状態に陥る。そして並静13年、再び侵攻を開始したプロゥブ軍は、陽動作戦の一環として雨午由宇が通う桜花高等専攻学校に攻撃を仕掛けてくる。すると由宇たちは、施設内に格納されていた半壊状態のメルカバを修理して起動させ、プロゥブ軍への反撃を試みる。
謎の侵略者「プロゥブ軍」
プロゥブ軍は、ソ連の領土となった北海道から突然日本に侵攻を開始した謎の部隊。ソ連との関係は不明であり、ロシア語や英語、キリル文字など複数の言語と文字を使用する。戦闘の際には「戦砲」または「Battle Barrel」と呼ばれる人型兵器を駆使し、技術力で劣る自衛軍や在日米軍を圧倒する。また、正規兵のほかに「暗殺者」と呼ばれる、要人暗殺用の特殊組織が存在する。暗殺者たちは並外れた身体能力を持ち、現地の人間に憑依してターゲットの知人に成りすますなど、ふつうの人間には不可能な手段を用いて対象を追い詰める。なお、柃六花に憑依した稲田媛は、プロゥブ軍を「未来からやってきた敵」と表現している。これを聞いた由宇は、一種の比喩表現としてとらえているが、その実態は明らかにされていない。
特殊な戦車を擁する桜花攻専
由宇が通う桜花高等専攻学校(通称、桜花攻専)は、日本全国に10か所存在する自衛官育成学校の一つ。海上科が一つ、航空科が三つ、陸上科が六つあり、由宇は陸上科の車輌科において機械整備部と機械工学部を専攻している。卒業後は一定期間自衛軍に入隊することを条件に、学費が免除される。さらに、在学中に優秀な成績を収めた場合、研究機関や軍需会社への出向の機会も与えられる。教官の中には、かつてプロゥブ軍と前線で戦った経験を持つ軍人も在籍しており、さらにメルカバを格納する施設も整備されているため、必要に応じてプロゥブ軍に対抗できるほどの戦力を保持している。
登場人物・キャラクター
雨午 由宇 (あまご ゆう)
桜花高等専攻学校(通称、桜花攻専)に通う2年生の男子。年齢は17歳。「死視の眼」という特異な力を持ち、他人の死に方が見えてしまうため、ふだんは眼鏡をかけることで力の発動を防いでいる。メカニックとしての腕前は一流で、機械いじりを始めると驚異的な集中力を発揮する。生真面目で礼儀正しい努力家であり、受けた恩義を決して忘れない義理堅さを秘めている。お世辞が苦手で、時には人を見下すような辛辣な言葉を口にすることがある。また、褒められたり感謝されたりすることに慣れておらず、そういった好意をストレートに向けられるとすぐに照れてしまう。このような不器用な性格に加え、軍の有力者である雨午准将の息子であるため、同級生からやっかみを受けることが多く、雨午由宇自身も彼らを嫌っている。しかし、学校が侵略者「プロゥブ」の襲撃を受けた際に、一致団結して人型戦車「メルカバ」を起動させ、敵軍を追い払ったことを機に彼らとの関係が改善された。
柃 六花 (ひささき ろっか)
聖神女子学園に通う1年生の女子。雨午由宇の妹であるが、母方の実家で暮らしていたため、母親の旧姓である「柃」を名乗っている。「遠目の巫女」と呼ばれ、儀式「神降ろし」を通じて柃六花自身の体に異なる存在を宿すことができる。清楚で礼儀正しく、大人を説得できるほどの度胸と口才を兼ね備えている。プロゥブの暗殺者に襲撃され、一度は命の危機に陥いるが、神降ろしによって「稲田媛」と呼ばれる神を体に宿したことで死を免れる。さらに、稲田媛の力を借りてプロゥブの暗殺者を圧倒するほどの身体能力を身につけ、由宇の危機を幾度となく救うようになる。しかし、稲田媛に半ば精神を乗っ取られた状態になっているため、由宇からはそのことを苦々しく思われている。
書誌情報
ガンナーズ 6巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉
第1巻
(2012-04-02発行、 978-4041201671)
第6巻
(2017-04-04発行、 978-4041054482)