キャンパスの魔法使い

キャンパスの魔法使い

舞台は魔法が当たり前のように存在するも、すでに時代遅れの無用の長物とされている現代日本。大学生の八神小太郎は年齢の割に背が低いことがコンプレックスで、ひょんなことからその悩みを解消すべく魔法使いになることを決意する。八神が個性豊かな面々と魔法を学んでいく姿を描くファンタジーコメディ。「コミックDAYS」2018年12月号から2019年11月号にかけて連載された作品。

正式名称
キャンパスの魔法使い
ふりがな
きゃんぱすのまほうつかい
作者
ジャンル
恋愛
 
魔法使い・魔法少女
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あらすじ

第1巻

世界には魔法が当たり前のように存在するが、世の中は科学によって発達し、魔法はすでに時代遅れの無用の長物とされていた。そんな中、八ノ世(はちのせ)大学に入学した八神小太郎は、情報工学を学びつつ、平凡な学生ライフを過ごしていた。八神は大学生にしては背が低いのがコンプレックスだったが、八神はある日出会った天野ありすから、それは「MP分泌亢進症」という症状で、魔法を使えば背が伸びると言われる。その言葉を信じた八神は天野に言われるまま、魔法開発研究室に所属する。しかし、天野は傍若無人な性格で、魔法開発研究室も非常にうさんくさく、八神は騙されているのではないかと不安になるが、魔力を消耗したことで身長を伸ばすことに成功する。また八神は、魔法を自分なりにアレンジすることで、魔法陣をプログラミング化するという新しい技術を開発。サラマンダーの召喚を成し遂げ、確かな実績と長年の悩みの解消を成し遂げた八神は、天野にお礼を言いつつ、彼女のような立派な魔法使いになることを宣言するのだった。

第2巻

魔法開発研究室はトラブルメーカーと知られる天野ありすを筆頭に、ほかの面々も個性的なメンツばかりで、八神小太郎はトラブルに巻き込まれる日々を過ごしていた。そんな中、鈴白真白は見た目は可憐で性格も温厚ながら、使う魔法が大問題となっていた。回復魔法のはずが邪悪な儀式にしか見えず、その見た目の問題を解決するため八神はアニメをモデルに改善策を練る。そんな中、八神は息抜きにまともなキャンパスライフを送るべく、軽山岳部に体験入部して山に赴くも、そこで中二病気質な先輩の月ノ木将にからまれる。そして実は月ノ木は魔法開発研究室に所属しており、中二病的な発言もすべて本当だったと知った八神は、またしても面倒くさい先輩が現れたと憂鬱になるのだった。また忙しい日々を送る中で、八神は体調を崩してしまい、鈴白と月ノ木の見舞いを受ける。そこで八神は、天野が不老不死者であること、そして最近の天野の様子がおかしいことを知らされる。

第3巻

魔法開発研究室の教授である東光光が、1年半ぶりに帰還する。東光はメロウ(人魚)を探すため、長期の調査に出ていたが、その結果は何も得るものがなかった。実は天野ありすは、メロウから名を失う呪いを掛けられており、その呪いを解くためメロウを探していたが、その調査結果を聞いて落胆する。名を失うことで、八神小太郎からも自分が認識されなくなるのを恐れた天野は、その前に自らの手で八神の記憶を消し、関係を終わらせようと考える。一方、八神たちは天野のことを調べるうち、片桐隼人から天野の呪いについて教えられる。長年の付き合いのある東光からも天野がロクでもないことを考えていると助言をもらった八神は、天野を止めるため、魔法開発研究室の総力を挙げて奔走する。

登場人物・キャラクター

八神 小太郎 (ねりがみ こたろう)

八ノ世大学に通う1年生の男子。専攻は情報工学で、プログラミングを学んでいる。年齢の割に小柄で、身長は150センチに満たない。そのため小学生に間違われることも多く、悩みの種となっている。困っている人を見捨てられないまじめな性格で、よく騙されては便利にこき使われている。天野ありすから、低身長なのは、過剰すぎる魔力が成長ホルモンの分泌を阻害する「MP分泌亢進症(えむぴーぶんぴつこうしんしょう)」が原因だと教えられ、天野ありすに誘われて魔法開発研究室に所属するようになる。当初は天野の言葉を疑っていたが、実際に身長が伸びたことで、魔法使いの道を志すことを決める。その後は順調に身長が伸びていたが、ひまわりの暴走事故で大量の魔力を浴びてしまったことで、再び元の身長に戻ってしまう。天野には振り回されることが多いが、その人となりに少しずつ心惹かれていく。魔法の研究は情報工学を応用して、魔法のプログラミング化を行っている。ふだんは人畜無害な人物ながら、敵が降参するまで発動し続ける攻撃魔法などを開発しており、彼の作る魔法は「エゲつない」と評判となっている。

天野 ありす (あまの ありす)

八ノ世大学の魔法開発研究室に所属する女性准教授。見た目は黒いロングヘアに眼鏡をかけた知的美人だが、性格は傍若無人を地でいく魔女。魔法を教えているが、魔法自体が生徒に人気がなく、学長からも研究費の減額を求められたため、大慌てで魔法の実績作りに奔走している。その一環で八神小太郎を勧誘し、彼がサラマンダーを召喚したことで事なきを得た。「魔女」の国家資格を持ち、それに違わない幅広い知識と技能を持つ。回復魔法も使えるが、「慈悲の心がない」ために自分しか回復することができず、他人の傷を癒やす回復魔法は使えない。その正体は謎が多く、一部の者たちは彼女を「始まりの魔女」と呼ぶ。実は遥か昔に、メロウ(人魚)の血を飲んで不老不死となった魔女である。不老不死の禁忌を冒したため、メロウから報復として「名を失う呪い」を掛けられている。不老不死で永遠を生きられるが、呪いが発動すると誰も自分を認識できなくなるため、長い時間を喪失と孤独で過ごすこととなる。日本魔法士連合会を創設した始まりの魔女「アリス・キテラー(始まりの魔女)」も失われた名前の一つ。失われる呪いに苛まれており、現在はイモータル症候群を発症している。対人回復魔法を使えないのもその一環で、無意識下で自暴自棄になりかけている。

あやめ

天野ありすの使い魔で、人語を解する白フクロウ。実直な性格で傍若無人な天野に苦言を呈しているものの、主として慕っており、八神小太郎が天野の弟子になった当初は彼に対抗心を燃やしていた。しかし、同じ人物を慕う関係から八神にシンパシーを抱き、すぐになかよくなった。特技はハトの物まねで、動揺した際には思わずハトの物まねをして右往左往する。天野とはアリス・キテラーであった頃からの長い付き合いで、彼女の背負う呪いについても知っている。

ひまわり

八神小太郎が作り出したゴーレム。二頭身の人型をしており、ある程度は自立して動くことができる。チャットボイスを搭載しており、語尾に「でちゅ」と付け、舌足らずな幼児のようにしゃべる。作られた当初は決まったことしかしゃべれず、まともに会話が成立しなかったが、改良されていくうちにどんどん会話が達者になっていく。最近は自我を確立したとしか思えないほど、自由自在にしゃべるようになり、魔法開発研究室の一員として活動している。制作された当初は、稼働するための魔力を握手によって得ていたが、それによって過剰に魔力をため込み暴走してしまう。暴走時には骨でできた蜘蛛のような姿となり、暴れ回ったが、八神と天野ありすによって暴走を鎮められる。ひまわりはこのことに対し、自分なりに恩を感じており、八神に恩返しをしようと考えている。

東光 光 (とうこう ひかる)

八ノ世大学の魔法開発研究室に所属する女性教授。エルフと人間のハーフなため、幼い少女のような姿をしているが、齢300歳を超える不老不死の魔女。ふだんは見た目どおりの少女のような言動をしているが、魔法や不老不死に関連するものに対しては博識な一面を見せる。不老不死であるため、長い時間を人間と共に生きる辛さも知っており、一時期は自暴自棄になって太平洋上の無人島で自給自足の原始生活を送っていた。それらの経験をまとめて、イモータル症候群のレポートを発表している。アイリッシュ海でメロウ(人魚)を探していたため、長期間、研究室を留守にしていたが、発見できず調査が打ち切りになったのを機に帰国する。エルフの血を引いているため、天野ありすに掛かっている呪いの影響を受けておらず、彼女の呪いを解くために協力している。

鈴白 真白 (すずしろ ましろ)

八ノ世大学の魔法開発研究室に所属する4年生の女子。髪をセミロングに整え、可憐でやさし気な雰囲気を漂わせている。温厚な性格の気遣い上手で、八神小太郎からは魔法開発研究室に似つかわしくないほど「まとも」と思われている。対人回復魔法の一種である、舞踊で人を癒やす「舞踊魔法」の使い手。全国舞踊魔法大会で連覇をしたほど、その筋では有名な魔法使いで、回復魔法に関しては魔法開発研究室でも随一の腕前を持つ。ただし、その舞踊は奇怪な仮面と衣装を身にまとって俊敏に動きまわるというものであるため、見た目の評判がすこぶる悪く、一般人からは悪魔召喚の儀式と誤解されることも多い。学長の呪いを解く際も踊りを披露したが、気持ち悪がられて逃げられてしまう。その後、見た目のイメージを変えるため、アニメ「魔法少女アマテラス」をもとに魔法少女風のコスプレをした新しい舞踊を開発した。東北出身で、当初の奇怪な衣装と舞踊も地元に伝わる伝統的なもの。幼い頃から魔法を学んでおり、かなりの腕前ながらも大学では誰も魔法に見向きもされず意気消沈。失意に暮れていたが、天野ありすに魔法の才能を認められ、彼女の勧誘を受けて魔法開発研究室に所属した。

月ノ木 将 (つきのき まさる)

八ノ世大学の魔法開発研究室に所属する3年生の男子。鋭い目つきをした青年で、他者をよせつけない雰囲気を放っている。軽山岳部にも所属しており、同部の副将を務める。中二病的な言動が多く、その言動からもといた山岳部では孤立し、軽山岳部に移ってきた経緯がある。実は魔法使いで、中二病的な言動はハッタリではなく、そのほとんどが事実である。攻撃魔法を得意とし、登山中に遭遇した熊を血祭りにあげたりしている。軽山岳部に体験入部した八神小太郎を当初は快く思っていなかったが、熊と遭遇時、真っ先に体を張って仲間を守ろうとした八神のガッツを認めて気に入る。魔法開発研究室に所属したのは、山で修行中、たまたま天野ありすが悪魔のバフォメットを倒したのを目撃したのがきっかけで、自分よりも強い天野に尊敬の感情を抱いている。

片桐 隼人 (かたぎり はやと)

日本魔法士連合会に所属する魔法少年の壮年男性。涼しげな風貌に、冷静沈着でまじめな性格をしている。魔法少年の称号を持ち、名刺にもその旨が印刷されているが、明らかに年取った風貌であるにもかかわらず、「魔法少年」の肩書きを名乗るため、初対面の人間からは不審者に思われることもある。実は1世紀前に最後に目撃されたメロウ(人魚)を祖母に持つため、天野ありすの名を失う呪いの影響を受けていない。天野が「アリス・キテラー(始まりの魔女)」の名を名乗っていた頃の弟子で、彼女の作る魔法を愛し、師として尊敬していた。今でも天野を尊敬しており、なんとか彼女を日本魔法士連合会に戻したいと考えている。

ベリッツェル・エイダン

海上自衛隊に所属するサラマンダー。見上げるほど大きな体を持つトカゲのような姿をしており、炎をあやつる力を持つ。ふだんは自衛隊の一員として横須賀地方隊に所属し、沿岸警備の任務にあたっている。アリス・キテラー(始まりの魔女)と契約していたが、彼女が名を失う呪いで名前を失って以降は呼び出されることもなく、彼女が死んだものと思っていた。天野ありすが魔法開発研究室の実績作りのために召喚しようとした際も、別人と思い拒否していたが、八神小太郎の改良型召喚魔法によって無理やり召喚された。

学長 (がくちょう)

八ノ世大学で学長を務める初老の男性。横暴な態度が目立つ天野ありすの被害者で、学問としての魔法の人気も下火なため、魔法の学習には否定的な考えを持っている。ただ熱心な教育者でもあるため、魔法を学ぼうとする生徒の熱意は尊重している。実績を出せず、新しく所属する生徒もいない魔法開発研究室の研究費を大幅に減額したが、それを恨みに思った天野からハゲ魔法を掛けられてしまう。それ以降、抜け毛が悩みの種になっていたが、鈴白真白が舞踊魔法で呪いを解いた。孫娘とアニメのショーをよく見にいくため、魔法少女もののアニメに意外と詳しく、鈴白は不気味な舞踊魔法を学長に受け入れやすくするように、アニメを参考にして新しい舞踊魔法を編み出した。

サザンカ

ゴブリンの魔変種の少女。通常のゴブリンは小人のような姿をしているが、魔変種となったことで体格も魔力も大きなものとなり、擬態能力を使って人間の少女のような姿へと変わっている。黒い髪を長く伸ばし、とんがった長い耳をしているのが特徴。知能も高く、人間の言葉もあやつることができる。元は愛玩用のペットだったが、魔変種であったために体がどんどん大きくなり、それを厭った飼い主に捨てられた。そのことを恨みに思っており、現在では人間不信をこじらせ、人類を敵視している。捨てられて以降は、周囲のゴブリンをボスとしてまとめ上げている。ゴブリンは魔力の強い者を恐れる習性を持つため、強大な魔力を持つ八神小太郎が実家にいた頃はおとなしくしていたが、彼が大学入学を機に上京したのをきっかけにして暴れ出す。八神が戻ってこないように、彼の実家に集中して被害をもたらす。八神が戻ってきた際には、彼をだまし打ちして倒そうとするが、八神の開発した攻撃魔法のエゲつなさに敗北を認めた。敗北後は八神家に拾われ、壊した物の弁償のため小間使いのように働かされている。便利に使われることが多いものの、意外と八神家の生活に馴染んでおり、仲間のゴブリンといっしょに平和に暮らしている。

アリス・キテラー

森に隠れ住む魔女。人前に出る際にはしわくちゃな老婆の恰好をしているが、本来の姿は若々しい女性の姿をしている。数百年前、海岸に流れ着いた少女を拾って魔法と言葉を教え、健やかに育つ少女と幸せに暮らしていた。実はその正体はメロウ(人魚)で、不老不死の存在。少女が大人となる頃、このまま少女が年老いて死んでしまうことに強い危機感を抱いている。その後、禁忌と知りつつ己の血を少女に分け与え、少女を不老不死にするが、同族から粛清されて殺された。残された少女は「名を失う呪い」を掛けられたことで、それまでの名前を失い、「アリス・キテラー」の名を受け継いで生きることとなった。

集団・組織

魔法開発研究室 (まほうかいかつけんきゅうしつ)

八ノ世大学に存在する研究室で、魔法の開発や研究を主に行っている。「魔研」の通称で呼ばれる。教授は東光光、准教授は天野ありすが務めている。世間では魔法の人気自体が下火であるため不人気な研究室で、所属する学生の数も少ない。また、天野の授業もなんの役に立つのかわからない割に、難解な古文書の解読のような真似をするため不評となっている。このため、学長によって大幅な研究費の削減を指示され、存亡の危機に立たされていた。しかし、八神小太郎が新たに所属するようになり、サラマンダーの召喚という実績をあげたため、事なきを得る。ただし、天野が新たなトラブルを巻き起こし続けているため、依然として不人気な研究室のままで、存続の危機は脱していない。

日本魔法士連合会 (にほんまほうしれんごうかい)

日本の魔法を取り仕切る組織。国家資格である「魔法使い」や「魔女」の認定のほか、魔法が適切に使われているかの審査も行っており、問題が起きていると判断したら資格の停止処分なども行っている。アリス・キテラー(始まりの魔女)によって創設され、最近まで彼女が会長職に就いていたが、8年前にアリスは突如として行方をくらまし消息不明となっている。

その他キーワード

魔法少年 (まほうしょうねん)

十代で「魔法使い」の国家資格を取った者に送られる称号。認定は日本魔法士連合会が公式で行っており、男性の場合は「魔法少年」、女性の場合は「魔法少女」の称号が与えられる。魔法使いの国家資格取得時の平均年齢は28歳であるため、若くしてこの称号を手に入れた者は、エリートとして扱われる。ただしこの称号は肩書として機能するため、取得者が中年になっても老人になっても肩書としてつきまとう。そのため、取得者本人はおろか周囲も困惑させることから、この称号は新進気鋭の若者に対する嫌がらせのようなものだと思われている。

イモータル症候群 (いもーたるしょうこうぐん)

不老不死となった者が患う精神的な症状。長い時間を生き続ける不老不死者は、多くの人の離別とかかわることが多い。そのため意識的、もしくは無意識的に他者とのかかわり合いを避ける傾向にあり、イモータル症候群が重症化すると自暴自棄になり、誰ともかかわらない世捨て人のような生活を送ったり、あるいは失われる関係性を自らの手で破壊しようとする破滅願望のようなものを抱くようになる。天野ありすが卓越した魔法の腕を持ちつつも、他者回復魔法が使えないのも無意識下で他者とかかわるのを恐れているからであり、この症状の一環とされる。この論文の発表者は東光光で、彼女自身も一時期自暴自棄になって無人島で原始生活を送っていた経験が、論文の内容に反映されている。

名を失う呪い (なをうしなうのろい)

メロウ(人魚)が天野ありすに掛けた呪い。この呪いに掛かった者は、時が来れば呪いが発動し、名を奪われるのと同時に、周囲の人間から別人と認識されるようになる。不老不死となって永遠を生きることとなったかつての天野に掛けられたもので、天野はこの呪いのせいで、友人知人から別人として認識されてしまい、長い時間を孤独に過ごすこととなった。ただし、この呪いは人間にしか効果がないため、エルフやメロウの血を引いた者は変わらずありすを認識できる。呪いは掛けたメロウ本人にしか解けないとされるが、すでに1世紀以上メロウの目撃情報はなく、メロウはすでに絶滅したといわれている。

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