概要・あらすじ
夏の甲子園出場を賭けた東東京大会予選決勝。帝城高校のエース生沢輝良々は連続27奪三振という前人未踏の記録を達成しようとしていたが、あと1球というところで気を抜いたため、ヒットを打たれてしまう。いつも土壇場で集中力をなくす輝良々の気まぐれに呆れるガールフレンドの斉藤奈美。その時、拳銃を持って逃走中だった強盗が球場に乱入。
輝良々は人質にされた奈美を助けようとして、彼女と共に犯人の凶弾を受けてしまう。銃弾が脊髄を傷つけたため下半身不随となってしまった奈美。しかし、輝良々の状態はもっと深刻だった。強盗の撃った弾丸が摘出できないまま心臓の近くに残ってしまい、その影響で彼は余命数年の身となってしまったのである。自身の命が残りわずかと悟った輝良々は奈美を励ますため、そして自身が生きた証を残すため甲子園で優勝することを誓う。
登場人物・キャラクター
生沢 輝良々 (いくさわ きらら)
高校1年生ながら類まれな豪速球を投げる不世出の豪腕投手の男子。愛称は「キララ」。才能は超高校級だが、気まぐれで勝負に対する執念やこだわりが薄弱で、土壇場で気を抜く癖がある。しかし、甲子園大会の予選決勝で球場に乱入した強盗の凶弾を受け、余命数年の身になってしまったことから性格が一変。それまでの中途半端さが消え、ギリギリの極限までこだわる執念を見せるようになる。 共に強盗犯の銃弾を受け、下半身不随になった斉藤奈美と同じように、自分もマイナスからスタートするため、事件後に野球名門校である帝城高校から関東一の不良校である柴虎高等学校に転校。最悪の環境から甲子園優勝を目指す。
斉藤 奈美 (さいとう なみ)
生沢輝良々のひとつ年上の幼なじみ。天才少女と謳われたテニスプレイヤーで、ウィンブルドンで優勝することを目標としていたが、輝良々の試合を観戦中に、逃走中の銀行強盗が乱入してくるという事件に遭遇。強盗の凶弾を脊髄に受けて下半身不随となってしまう。絶望のあまり、自分が事件に巻き込まれたのは輝良々が気を抜いて試合を長引かせてしまったからだ、と彼の中途半端さを非難。 テニスへの未練も断とうとするが、別人のような執念を見せるようになった輝良々に心打たれ、再びプロテニス選手になる夢を追いかけようと決意する。同時にいつも飄々としていたはずの輝良々の変貌に不安を覚える。
森田 (もりた)
生沢輝良々と斉藤奈美を撃った銀行強盗を追っていた刑事の男。輝良々の心臓に銃弾が残っていて余命数年であることを知っている。輝良々と奈美のことを何かと気にかけていて、ついには刑事をやめて輝良々の転校した柴虎高等学校に野球部の監督として就任する。
赤木 純 (あかぎ じゅん)
柴虎高等学校野球部の2年生の男子でポジションはサード。まだ高校生にも関わらず雀荘のオーナーをしている年上の女性・ヒロ子と同棲している。図抜けた運動能力と野球センスの持ち主で、ワルばかりの3年生たちからも一目置かれている存在だが、軽薄で何事にも真剣になれずにいた。しかし、生沢輝良々との出会いやヒロ子の妊娠をきっかけに、本気で野球に取り組むようになる。
山田 一郎 (やまだ いちろう)
柴虎高等学校野球部の1年生でポジションはキャッチャー。野球好きの真面目な少年で、賭け事ばかりしている先輩たちに失望。退部を申し出たために、リンチを受けていたところを転校してきた生沢輝良々に助けられた。そのとき、輝良々の投げたボールに魅了され、共に甲子園を目指すことを決意。努力を重ねて、短期間で彼の豪速球を捕球できるまでになる。
座門 寅次郎 (ざもん とらじろう)
柴虎高等学校野球部主将の男子でポジションはファースト。並外れた巨体と怪力を誇り、不良部員たちを追放した生沢輝良々に制裁を加えようとするが、輝良々と赤木純の前に敗れた。その後すっかり覇気を失い、敵対する竜国高校野球部からもなめられるようになるが、赤木に説得されてもう一度男になるべく野球部に復帰する。
本田 今日子 (ほんだ きょうこ)
柴虎高等学校に通う女子高生で、生沢輝良々や山田一郎のクラスメイト。理想のタイプそのものである輝良々に一目惚れし、彼を追ってマネージャーとして野球部に入部した。竜谷高校野球部との対抗戦では、メンバー不足から選手として9番ライトで出場する。
ジョニー 川口、鶴田 光二、藤波 辰馬、長州 力也 (じょにー かわぐち、つるた こうじ、ふじなみ たつま、ちょうしゅう りきや)
生沢輝良々の帝城高校野球部時代のチームメイトたち。ポジションは、ジョニー川口がセカンド、鶴田光二がショート、藤波辰馬がセンター、長州力也がレフト。レギュラーの座を奪われることを恐れた先輩たちにそろってリンチされていたところを、赤木純に助けられたという過去を持つ。名門野球部のやり方に失望して帝城高校を退学した後は、4人でメタルバンドを結成し人気を博していたが、赤木の誘いを受けて柴虎高等学校野球部に入部する。
集団・組織
竜国高校野球部 (りゅうこくこうこうやきゅうぶ)
柴虎高等学校に劣らぬワル揃いの野球部。柴虎高校野球部と毎年対抗戦を行っているが、目下19連勝中で通算48勝15敗と柴虎高校を圧倒している。空振りに見せかけて投手にバットを投げつける、打者の頭部を狙ってビーンボールを投げる、走者の足をひっかけて走塁を妨害するなど、勝つためには手段を選ばないダーティーな野球を信条としている。 生沢輝良々に神経麻酔薬を仕込んだ吹き針を打ち込んで、速球を投げられないようにした。
場所
柴虎高等学校 (しばとらこうとうがっこう)
校舎のガラスはほぼすべて割られており、授業を聞こうとする生徒もほとんどいない最底辺の高校。周囲からは、関東一の不良校として恐れられている。特に野球部は筋金入りのワルがそろっていて、部員たちは野球そっちのけで丁半博打や麻雀、花札に明け暮れている。