地球で美食に目覚めた外星人
惑星「第2クロロジウム」出身のクミカ・ハリティは、日本の「出流原デザイン」で日々仕事に励んでいた。クロロジウム星の住民は、大気中の水分や微生物、花粉を吸収して栄養を摂取するため、食事を必要としない。そのため、クミカは社内の打ち上げにも参加したことがなかった。そんなある日、クミカは第2クロロジウムでは経験したことのない風邪を引いてしまう。苦痛に耐えかねたクミカは、同僚のチヒロに電話で助けを求める。チヒロはすぐにクミカの家に駆けつけ、彼女の看病をしながら鍋焼きうどんを作って振る舞う。そのうどんを口にしたクミカは、その美味しさに感動し、食事がもたらす楽しみや喜びを初めて知ることとなる。
クミカを魅了する料理の数々
初めて食事を体験したクミカは、最初は両親に対する負い目から食事に否定的な態度を崩さなかった。しかし、同僚たちが楽しそうに食事をしている姿を見るうちに、次第に食欲を抑えきれなくなる。そして、両親に一言断りを入れた上で、ハンバーグやステーキ、手巻き寿司、チンジャオロースなどの料理を食べてみることにした。そして食事は単なる栄養補給ではなく、自分自身や周囲を楽しませる効果があることを改めて実感する。さらに、自ら作った料理を「美味しい」と言ってもらえることに幸せを感じ、牧場を訪れることで畜産に対する理解を深めるなど、さまざまな経験を通じて日本の食文化への理解を深めていく。
食事を通じて会社に溶け込む、クミカの成長物語
クミカが働く出流原デザインには、個性豊かメンバーがそろっている。大雑把ながらも面倒見のいい代表のイズル、優しく穏やかなチヒロ、陽気で社交的なミムラ、そして少し恐ろしい見た目ながらも明るく親切なエイリアなど、クミカに負けず劣らず魅力的な人々が集まり、小さな会社ながらも抜群のチームワークを誇る。クミカの優秀さは周囲から高く評価されているものの、無理をしすぎではないかと心配されていた。しかし、食事の楽しさを知ってからは、打ち上げや飲み会に積極的に参加するようになり、会社に溶け込んでいく。その結果、社員たちからも親しまれる存在となっていく。
登場人物・キャラクター
クミカ・ハリティ
惑星「第2クロロジウム」から地球にやってきた外星人の女性。出流原デザインに勤務している。地球人の年齢に換算すると22~23歳ほど。頭の左右には翼のような触角が生えており、手足のように自由に動かすことができる。また、感情が高ぶると触角を使って空を飛ぶことも可能。さらに、呼吸をするだけで栄養を得ることができるため、食事を必要としない。自分を地球に送り出してくれた両親に深く感謝しており、恩返しをしたいという思いから、誰よりも熱心に仕事に取り組んでいる。第2クロロジウムでは、食事は一部の富裕層の娯楽とされており、クミカ・ハリティ自身もそれを贅沢な行為ととらえていたため、同僚に誘われても食事に参加することはなかった。しかし、風邪を引いた際に同僚のチヒロが作ってくれた鍋焼きうどんを食べたことがきっかけで、クミカは食事の魅力に取りつかれてしまう。食事の楽しさを知ったあとは、両親に対して後ろめたさを感じていた。だが、その気持ちを両親に打ち明けたところ、怒られるどころか喜んでくれたため、クミカは両親に対する感謝の気持ちをさらに深め、ますます食事という行為を愛するようになる。
チヒロ
出流原デザインに勤務する地球人の青年。黒縁眼鏡をかけている。温和で愛想がいいものの、10年前は不良として名を馳せており、現在の穏やかな性格とは対照的だった。会社の代表であるイズルとは親友の関係だが、彼が調子に乗りすぎると、かつての威圧的な態度を見せることがある。中華料理店の店主であるヒダカとは10年来の付き合いで、「チー坊」と呼ばれている。外星人に対する理解が深く、顔を見なくてもその種族特有の反応を通じて相手の感情を読み取ることができる。クミカ・ハリティにひそかに思いを寄せており、その気持ちは周囲の社員にはバレバレであるものの、肝心のクミカにはまったく気づかれていない。食事に対して並々ならぬこだわりを持つ美食家で、クミカが食に興味を持つきっかけをつくった人物でもある。
書誌情報
クミカのミカク 全6巻 徳間書店〈リュウコミックス〉
第1巻
(2016-01-13発行、978-4199504907)
第2巻
(2016-08-12発行、978-4199505256)
第3巻
(2017-03-13発行、978-4199505577)
第4巻
(2017-09-13発行、978-4199505867)
第5巻
(2018-03-13発行、978-4199506147)
第6巻
(2018-09-13発行、978-4199506468)







