病める惑星より愛をこめて

病める惑星より愛をこめて

作者・本田の代表作の一つ。舞台は人類の半数が心の病を抱える地球に似た惑星。謎の生物「モカリノタマラピッ」との交流を通じて、傷ついた人々が自らの弱さや悩み、他者との関係に向き合い、少しずつ再生していく姿を描いたSFドラマ。秋田書店「ミステリーボニータ」2020年2月号から2025年2月号にかけて不定期連載。

正式名称
病める惑星より愛をこめて
ふりがな
やめるほしよりあいをこめて
作者
ジャンル
異星人・宇宙人
 
社会問題
レーベル
ボニータ・コミックス(秋田書店)
巻数
全5巻完結
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心を癒す不思議な生物「モカリノタマラピッ」

「モカリノタマラピッ」は、恐竜時代からまったく姿を変えずに存在し続ける毛むくじゃらの生物。野生の個体も多数生息しているが、元々は別の惑星の生命体「ヴュヌベョヨヮ」のペットだった。現在、心の病を抱え自殺者が増え続ける人類の状況を憂慮したヴュヌベョヨヮによって、人間用に調整された「特殊臨床慰謝体」として貸与されている。抱擁することで抱持者の心を癒す一方で、著しく言語能力が低下するという副作用をもたらす。彼らは人語を理解することができず、感情も持たないが、契約者の声には反応するように調整されている。しかし、彼らがいても自殺を完全に食い止めることは不可能で、自殺者の増加は依然として続いている。

自殺を容認するカジム教の謎

本作の舞台となる惑星には、巨大な宗教「カジム教」が存在している。この宗教のシンボルは、上半身裸の男性が一つ目を描いた目隠しをしている「護国立像」で、各地に建立されている。「哀れみを世界中に蔓延させる」ことを目的とするカジム教は、自殺を容認しているかのような側面も持っている。100年に1度の大祭を前にすると、自殺者が急増する傾向があり、その大祭では「誄嘨(るいしょう)」という秘儀が披露される。この時、野生のモカリノタマラピッたちが一斉に集まり、一糸乱れぬ舞踊のような異常行動を見せることが確認されている。信者たちはこれを信仰による奇跡だと語るが、カジム教の大祭以外でも同様の現象が確認されており、その原因は未だに特定されていない。

癒しを得るための大きな代償

ヴュヌベョヨヮは、人間にモカリノタマラピッを貸与する一方で、彼らが持つ「苦悩に関する語彙」をモカリノタマラピッ自身から抜き取っている。ヴュヌベョヨヮとモカリノタマラピッの捕食者である「ンャソニヅィ」は、これが言葉を食べているのではないかと推測するが、ヴュヌベョヨヮにそれは違うと否定される。ヴュヌベョヨヮが人間にモカリノタマラピッを貸与する真の目的や、カジム教の役割と教義の曖昧さは、本作全体を通じて大きな謎となっている。

登場人物・キャラクター

トリ

社会人の男性。金髪をツーブロックにしている。学生時代から趣味で謎の生物「モカリノタマラピッ」や「カジム教」について調べており、旅行の際には必ず護国立像やカジム教の施設を訪れる。カジム教の芸術に対して強い好奇心を抱き、不敬と敬虔の境界線上にある土産物にも興味を持っている。護国立像の全身像を串刺しにしたゼリーを悪趣味だと感じつつも、つい購入してしまう。また、人間が火だるまになって自殺する光景を目撃すると吐いてしまう癖があり、これまでに2度経験している。トリはエーヴェがカジム教の博物館で個人ガイドを務めた最後の旅行者でもある。

エーヴェ

カジム教の信者であり、個人ガイドとして働く女性。赤い髪をウルフカットにしている。7歳の時、家族の一家心中で唯一生き残り、孤児院で育った。そこで出会った男性から謎の生物「モカリノタマラピッ」に対する嫌悪感を植え付けられ、本来推奨されていたはずのモカリノタマラピッの抱持者になることを固辞するようになった。しかし、その男性が犯罪者として報道されたことを知り、精神の均衡を失って入水自殺を図った際、全宇宙の捕食者である「ンャソニヅィ」の変異体に憑依された。ンャソニヅィの励ましによって、自分の感情をはっきりと表現できるようになった。また、エーヴェの心からの叫びを聞いたモカリノタマラピッは、カジム教の大祭で披露される「誄嘨(るいしょう)」を聞いた時と同様に、一糸乱れぬ舞踊のような異常行動を見せた。

書誌情報

病める惑星より愛をこめて 全5巻 秋田書店〈ボニータ・コミックス〉

第1巻

(2021-08-16発行、978-4253265317)

第2巻

(2022-09-14発行、978-4253265324)

第3巻

(2023-07-13発行、978-4253265331)

第4巻

(2024-05-16発行、978-4253265348)

第5巻

(2025-03-14発行、978-4253265355)

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