クラリオンの子供たち

クラリオンの子供たち

堤抄子が描く、SFをテーマにしたオムニバス短編集。表題である「クラリオンの子供たち」の他、計6つのエピソードが収録されている。

正式名称
クラリオンの子供たち
ふりがな
くらりおんのこどもたち
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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概要・あらすじ

199X年、人類は北と南に別れて戦争状態に突入する。第三次世界大戦と呼ばれたその戦いは10余年にわたって続き、地球環境を破壊した。そんななか、北軍のバダム中佐シュタイン博士の家へ訪れ、彼の実験成果であるエスパーの子供たちについての愚痴をこぼす。軍事に利用するために実験の成功を願うバダムと、戦争のために子供たちを利用することを反対する博士。

両者が言い争うなか、2人がいる部屋に、とある異変が起こる。(エピソード「クラリオンの子供たち」)

登場人物・キャラクター

バダム中佐 (ばだむちゅうさ)

エピソード「クラリオンの子供たち」に登場する。北軍に所属する兵士。一見普通の男性だが、右目、右腕は機械のパーツになっている。シュタイン博士の研究するエスパーの成果を見に、彼の研究所を訪れた。その際、シドと知り合う。以後、彼らとは接触を持たなかったが、のちに北軍の計画したある作戦に関する名簿の中に、シドの名を再び見つける。

少年 (しょうねん)

エピソード「THE DAY AFTER CARE」に登場する。崩壊した世界で、たった1人生きている少年。機械のHALが作ってくれた一軒家で暮らしている。家には、本や映画などのさまざまな娯楽がある。しかし、飽きるほど見直してきたため、内容をすべて覚えてしまっている。自分の他に生き残っている人間、特に女性に会うため、HALに捜索を託す。

タカシ

エピソード「テクニカラードリーム・マシーン」に登場する。科学者を夢見る少年。塾をサボって、じいさんの家へ遊びに行っている。孫と祖父ほどに年が離れているが、じいさんを親友と思っている。じいさんの住むアパートを地上げ屋から守るため、彼からある発明品と作戦を伝えられる。

レナ

エピソード「迷える電気羊のために」に登場する。アンドロイドについての卒論を書く女子大生。大学では、仲の良い友達やボーイフレンドもいるが、彼女の興味はもっぱらアンドロイド。さまざまな状況で人間をサポートするアンドロイドに対し、ただの機械ではなく、隣人として接するべきではないかと考えている。山名教授と彼女の世話をする山名教授のアンドロイドに、インタビューを行う。

リー

エピソード「ラプンツェル異聞」に登場する。演劇部に所属する女子高校生。ショートカットでボーイッシュな感じ。文化祭で上映する舞台を成功させるため、不思議な魅力を持つ真理に助っ人を依頼。その後、真理の家に遊びに行った際に、彼女が超能力を持つことと、彼女を取り巻く環境について知る。

瀬川 ゆか (せがわ ゆか)

エピソード「マザーズタウンラプソディ」に登場する。代理母のメイドのアルバイトに応募した女性。看護学校を中退し、親からの仕送りがなくなったため、好待遇のこのアルバイトを選んだ。スラムのようなマザーズタウンの街並みを見て不安になるが、アルバイト先のマリア・ドゥラノが優しかったので安心する。のちに代理母の現状、そして街を取り巻く闇に遭遇する。

シュタイン博士 (しゅたいんはかせ)

エピソード「クラリオンの子供たち」に登場する。北軍からエスパー研究の要請を受けた老齢の男性。公開実験の結果が芳しくなく、バダム中佐からは苦言を呈されていた。しかし、実際に研究は成功しており、シドたちのエスパー能力を開花させていた。だがシュタイン博士自身は、子供たちを戦場に送ることに反対している。

シド

エピソード「クラリオンの子供たち」に登場する。エスパーの力を持つ少年。シュタイン博士の研究所にいた。人の心を読むことができ、その人の気持ちに共感して涙するような心優しい少年。その能力ゆえに、攻撃的な心と共感すると、周囲の物を宙に浮かべて壁にぶつけてしまうなど、暴走状態になる。研究所を離れた後は、北軍のある計画に参加することになり、宇宙船のクルーに選ばれた。

HAL (はる)

エピソード「THE DAY AFTER CARE」に登場する。少年のサポートをする機械。昆虫のような体をしている。生き残っている人に会いたい、という少年の願いを叶えるため、荒廃した世界を日々探索している。見た目とは裏腹にユーモラスな性格で、少年にジョークを言ってみたり、世界を荒廃させた人類に対する皮肉を言ったりもする。

じいさん

エピソード「テクニカラードリーム・マシーン」に登場する。老齢の男性科学者。タカシの友人。今は古いアパートに住みながら、こつこつとお金を貯めている。いずれ富士山麓に研究所を建てるのが夢。地上げ屋の脅しにあっているが、頑として立ち退く気はない。地上げ屋に対抗するため、タカシに協力を要請。子供にしか使えない、ある発明品を託す。

山名教授 (やまなきょうじゅ)

エピソード「迷える電気羊のために」に登場する。レナが講義を受けている女性教授。高齢で病気を患っているため、身の回りを世話するアンドロイドを連れている。アンドロイドの人権についてのインタビューをしに来たレナに対して、ナンセンスと言い切り、人とアンドロイドの違いと関係性を話す。だが、そんな山名教授のなかには、ある思いが隠されていた。

山名教授のアンドロイド (やまなきょうじゅのあんどろいど)

エピソード「迷える電気羊のために」に登場する。山名教授の世話をするアンドロイド。外見は人間の男性。実験段階の最新プログラムを搭載しており、学習能力は高い。レナのインタビューでも、自分の立場や人間についての深い意見を述べ、まるで悟りを開いているようだと評される。

真理 (まり)

エピソード「ラプンツェル異聞」に登場する。ロングヘアのおとなしい女子高校生。リーと同じクラスに所属している。たびたび保健室に行くため、生活指導に目をつけられている。実は超能力保持者で、物を隠したり宙に浮くことができる。リーから演劇の助っ人をお願いされる。当初は乗り気ではなかったが、自分の超能力を見ても動じないリーのために、助っ人になることを決意。

高木 (たかぎ)

エピソード「マザーズタウンラプソディ」に登場する。瀬川ゆかが面接に来た会社に勤めている男性。ゆかに道案内をしながら、マザーズタウンの現状を教えた。また顧問医のドクターアリーの仕事内容にも気づいており、このままで良いのかと、会社についても疑問を持っていた。マザーズタウンで起きたある事件をきっかけにゆかと再会、行動を共にすることになる。

マリア・ドゥラノ (まりあどぅらの)

エピソード「マザーズタウンラプソディ」に登場する。瀬川ゆかのアルバイト先に住む女性。代理母の1人で、依頼人に受けが良いからと、「マリア」という偽名を名乗っている。以前はホステスをしていたが、代理母の方が報酬が良いため、今の仕事に就いた。代理母として得た報酬のほとんどは、外国にいる家族への仕送りに使い、自分の住む部屋には最低限の物しかない。

少年(マザーズタウン) (しょうねん)

エピソード「マザーズタウンラプソディ」に登場する。マザーズタウンに架かっている橋の上にいた少年。瀬川ゆかは、少年(マザーズタウン)が飛び降り自殺をするのではないかと、慌ててつかまえた。実際は、食事のためにエアガンで鳩を狙っていた。何らかの科学的方法で生まれた子供で、自分のルーツを知るため、マザーズタウンへやって来ていた。 その出自のためか、なにか悟ったような言動が多く、ゆかからは生意気と言われている。

ドクターアリー

エピソード「マザーズタウンラプソディ」に登場する。高木の勤め先である会社が経営するクリニックの顧問医の男性。代理母、避妊治療に関わる仕事を取りまとめている。表向きはただの顧問医だが、裏では非合法なやり方で実験用の臓器などを得ている。マリア・ドゥラノによれば、いつ捕まってもおかしくはないとのこと。そんな彼が行ったある手術をきっかけに、マザーズタウンで事件が発生する。

場所

マザーズタウン

エピソード「マザーズタウンラプソディ」に登場する。瀬川ゆかのアルバイト先の街。当初、家賃を払えない代理母の仮住まいとなっていたが、噂を聞きつけた他の代理母も集まって、自然と「マザーズタウン」の名が付いた。ゆかが暮らす街のはるか地下に存在し、高木によれば、建造物は前世紀のもの。建物は多少老朽化しているが、住むことはできる。

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