あらすじ
第1巻
世界を股に掛ける大泥棒だった羽角揺子は、相棒の鷹四が死んでからは、一人娘の羽角理里を一人で育てていた。だが揺子は、堅気の仕事が性に合わず、クビになった会社は20社を下らず、またも面接で失敗してしまう。気を取り直し、揺子は理里と残金を確かめに行った銀行で、銀行強盗に遭遇。揺子は昔の経験を活かし、強盗を華麗に撃退してしまう。(エピソード「ロックンロール・ウイドゥ」)
揺子は、銀行強盗を撃退したところを目撃していた「犬神警備保障」の関係者に、ガードウーマンとしてスカウトされる。そんな彼女の初仕事は、指導係・桜井宏志と行う医大の警備だった。宏志は暴力を憎んでおり、その理由を暴力刑事で有名だった父親が殉職した事が原因だと語る。そんな宏志は警備中、抗鬱剤欲しさの高校生三人組に襲われてしまう。頑なに非暴力を貫く宏志だったが、そこへ揺子が駆けつけ不良をノックアウトしてしまう。(エピソード「持つ者と持たざる者」)
ガードウーマンになって1か月経ったある夏の日、揺子は海水浴場で盗撮などが行われないよう、監視する事になった。彼女は理里を伴い、ウキウキ気分で海へ出かける。そしてお昼時、揺子は宏志と共に理里の作った弁当を食べていたが、苦手な茄子を吐き出してしまう。その後、機嫌を損ねた理里が、沖に出て猫の形をした岩に上がってみたところ、知らぬ間に浮輪を流されてしまう。(エピソード「日日平安」)
揺子は昔の仲間・手塚菊彦に浅草ビール美術館から天使像を盗み出さないかと持ちかけられる。事情を察した理里は、揺子が泥棒の世界に戻るのではないかと気が気ではない。一方の揺子は、菊彦の悪事を防ごうと美術館の警備に当たる事になった。そんな中、理里は、揺子が泥棒に戻ろうとした際に彼女を止めるため、美術館に侵入して天使像の部屋に忍び込む。だが、菊彦が罠として仕掛けた消火用の炭酸ガスで、理里は意識を失ってしまう。(エピソード「蛇の道は蛇」)
揺子の同僚・高峰秀子が通り魔に襲われてしまう。理里はそれを目撃していたが、誰にも言えないでいた。だがある日、理里が餌をやっていた野良猫に矢が刺ささっていた事を機に、理里は揺子に犯人がクラスの担任・山本幸久だったと打ち明ける。その話を聞いた揺子は、おとりとなって山本を誘い出すべく、夜の街へと向かう。(エピソード「タッチ・オブ・エヴェル」)
巨大な産業廃棄物場の建設計画の安全性に強く疑問を呈したZ村の新しい村長は、「犬神警備保障」の権堂部長の兄だった。彼はその立ち位置から、産業廃棄物処分場推進派に命を狙われる可能性が高く、揺子たちは権堂の要請で、村長の警護に当たる事になる。その夜、権堂旅館の食堂で喧嘩が始まり、止めに入った村長が襲われるという事件が発生する。(エピソード「黄金郷の三悪人」)
第2巻
羽角揺子はZ村で、かつての好敵手で敏腕刑事の雷電為右衛門と再会する。彼は増収賄の証左を挙げようと、酔いどれ駐在を演じていたのだった。揺子は雷電とタッグを組み、村長と対立している産業廃棄物処分場推進派のボス艮清兵衛宅に乗り込んで清兵衛を確保する。だがその時、Z村に通じる道路が破壊され、村は無法地帯と化してしまう。村長を助けに旅館に戻った揺子だが、そこで清兵衛側についていた手塚菊彦に捕らわれてしまう。そして明朝、産業廃棄物処理場の予定地で、村長と清兵衛の人質交換が行われる事になる。(エピソード「黄金郷の三悪人 続」)
揺子の腹違いの姉・羽角鞠子は、しがない大学講師・矢部謙吉にプロポーズされた事を相談するため、揺子のもとにやって来た。大反対した揺子は、謙吉に会いに宿泊先を訪れるが、彼は明日フランスに出向するという。これを聞いた揺子は、鞠子が彼についていくつもりで東京にやって来た事に気づき、鞠子を送り届けるべくバイクで空港まで爆走する。(エピソード「百合の真心」)
ある日、羽角理里は「ファイアフォース」を捕まえに来たという某国公安刑事・雷電光と知り合う。彼女は、冷戦末期に極秘に開発されていた無人装甲ガードロボット「山羊(カザー)」を盗んだ「ファイアフォース」を追って来たのである。だが、その「ファイアフォース」は揺子の事ではなく、その名を騙る偽物だった。偽の「ファイアフォース」が東京に向かっているとの情報を得た揺子は、そのメンバーであるトシを捕まえるが、相棒のタカシは「山羊」でサガの本社の役員を狙う。これを阻止しようと奔走する光、そして彼女を手助けする揺子の活躍により、事態は収拾する。だが、かつて「ファイアフォース」だった揺子の事を許せない光は、彼女にタイマン勝負を挑む。(エピソード「向かい合う2匹の山羊」)
第3巻
ある日、羽角揺子はビルから飛び降りた少年を助ける。彼は、羽角理里のクラスメイトの綾小路文麿だった。文麿の父親は「ノーパンしゃぶしゃぶ」で話題となった接待汚職事件で逮捕され、文麿はそのせいで同じクラスの三浦敏宏にからかわれていたのだ。揺子は文麿に決着をつけさせようと、敏宏を呼び出す。(エピソード「キッザオーライ」)
敏宏の父親・三浦のもとに、かつて三浦の麻雀仲間だったヤクザが金を取り立てに来た。敏宏を助けるために揺子と理里は現場に駆けつけ、揺子はヤクザに麻雀で決着をつけようと申し出る。だが、指が震えて牌が打てない三浦は辞退し、見かねた敏宏が代わりに参加。調子よく飛ばす揺子だったが、途中で麻雀を知らない事がバレそうになり、理里に交代。一方、追い込まれた敏宏も三浦に交代し、ここから昔のカンを取り戻した三浦の快進撃が始まる。(エピソード「牌の魔術師」)
揺子が超人気バンド「オルゴンボックス」のライブで警備についた役得で、理里はライブ終了後にメンバーにサインをもらうために彼らの楽屋を訪れる。だがその途中、偽札作りの犯罪メンバーに拉致されてしまう。偶然、偽札事件を追っていた雷電為右衛門から事情を聞いた揺子は、バイクで空港へと急ぐ。だが、空港でようやく理里を見つけたものの、揺子は犯罪メンバーの一人に銃で撃たれてしまう。(エピソード「機械の中の幽霊」)
かつて「ファイアフォース」を名乗り、大泥棒として活躍していた揺子と鷹四は、仲間に売られて警察に包囲される事となった。そんな中、揺子だけは守ろうと、鷹四は自らが犠牲になって死亡。その後、捕まって投獄された揺子は極寒の監獄所に送られたが、そこで自分が妊娠している事に気づく。陣痛が始まり、病院に移送される中、揺子は警備の油断を突いて脱走を試みる。(エピソード「ザ・フィールド・リリーズ・グロー」)
登場人物・キャラクター
羽角 揺子 (はすみ ゆりこ)
犬神警備保障株式会社でガードウーマンとして働く女性。羽角理里の母親でシングルマザー。年齢は30歳。ロングヘアのスタイルのいい美女で、驚異的な運動能力の持ち主。豪快で向こう見ずな性格ながら、天然なところがある。かつては、鷹四と組み、大泥棒「ファイアフォース」を名乗り世界を股に掛けて暗躍していたが、鷹四が死んでからは足を洗った。 堅気の仕事が性に合わず失業中だったが、その運動能力を見込まれてスカウトされ、犬神警備保障株式会社で働くようになった。茄子とシイタケが嫌いで、娘の理里からはいつも怒られている。
羽角 理里 (はすみ りり)
羽角揺子と鷹四の娘で小学生の女の子。しっかり者の料理上手で、家計まで把握している。野良猫に餌をやるなど優しい性格で、揺子が泥棒の世界に戻ってしまわないか心配している。
桜井 宏志
「犬神警備保障株式会社」に勤めるガードマンの男性。年齢は25歳で独身。羽角揺子の指導係を務める。父親は「鬼の桜井」と呼ばれた警察官で、幼い頃によく殴られた思い出がある。そんな父親が殉職した事から、「暴力を振るう奴は暴力に滅びる」と考えている。弁当の中身がふろふき大根だった事で、揺子から「大根くん」と呼ばれている。 のちに同僚の高峰秀子と結婚する。
権堂
「犬神警備保障株式会社」の部長を務めている男性。羽角揺子の上司。揺子の活躍を桜井宏志と共に目撃、彼女をスカウトした。強面な外見とは裏腹に保守的なところがあり、揺子にはカツラだと疑われている。兄はZ村の新村長で、実家は温泉旅館を経営している。
高峰 秀子
「犬神警備保障株式会社」に勤めるガードウーマンの女性。ショートカットの髪型をしている。年齢は24歳。山本幸久に襲われ負傷する。桜井宏志から好意を持たれおり、のちに結婚する。羽角揺子には「デコちゃん」と呼ばれている。
手塚 菊彦
エピソード「蛇の道は蛇」に登場する。サングラスをかけ、長髪をオールバックにしている男性。鷹四の幼なじみで、鷹四が羽角揺子と出会うまでは彼の相棒だった。そのため、揺子には複雑な感情を抱いている。たびたび揺子と敵対する立場に立つも、最後には彼女の側に寝返る事が多い。
鷹四 (たかし)
羽角揺子とコンビを組み、「ファイアフォース」として世界を又に掛けた大泥棒だった男性。仲間に裏切られ、警察に追われた際、揺子を守ろうとして死亡した。揺子と組む前は手塚菊彦とコンビを組んでいた。
山本 幸久
エピソード「タッチ・オブ・エヴェル」に登場する。浅草小学校の男性教師で羽角理里の担任を務めている。戦争の映画を見せたり、戦争に関連する授業を好んで行っていた。女性にふられた腹いせに、女性を殴ったり動物を虐待したりと、陰湿な犯罪を繰り返すようになる。
三浦 敏宏
エピソード「タッチ・オブ・エヴェル」「キッザオーライ」「牌の魔術師」に登場する。浅草小学校で羽角理里と同じクラスの男の子。悪ガキだが、根は優しい心の持ち主。父親は雀荘を経営している。綾小路文麿の父親が「ノーパンしゃぶしゃぶ」で話題となった接待汚職事件で捕まった際には、文麿をからかっていたが、のちに文麿と決闘し和解する。
村長 (そんちょう)
エピソード「黄金郷の三悪人」に登場する。Z村の村長を務めているハゲ頭の男性。権堂の兄。正義感が強く、産業廃棄物処理場の安全保障に異議を呈しており、命を狙われる危険性から、羽角揺子らが警備にあたる事になる。実家は旅館を営んでいる。
雷電 為右衛門 (らいでん ためえもん)
エピソード「黄金郷の三悪人」に登場する。元警視庁の敏腕刑事で、羽角揺子の好敵手だった男性。雷電光の父親。Z村の駐在所で酔いどれ駐在を演じていた時に、10年振りに揺子と再会。その後もたびたび揺子に手を貸す事になる。
艮 清兵衛 (うしとら せいべい)
エピソード「黄金郷の三悪人」に登場する。村長と対立している産業廃棄物処分場推進派のボスで、その正体はヤクザ。悪知恵が働くが器は小さい。手塚菊彦に協力を要請していたが、最後に裏切られる。
羽角 鞠子 (はすみ まりこ)
エピソード「百合の真心」に登場する。羽角揺子の一つ上の腹違いの姉。羽角理里を7歳まで育てていた。知的で優し気な女性で、眼鏡をかけている。揺子に「箱入りババア」と言われ、幼い頃から知っている矢部謙吉との結婚を決意する。極度のファザコンでもある。
矢部 謙吉 (やべ けんきち)
エピソード「百合の真心」に登場する。トンボの研究をしている大学講師の男性。一昨年妻に逃げられ、子供は実家に預けている。羽角鞠子にプロポーズしたのだが、地元の権力者である羽角揺子と鞠子の父親を畏怖し、半ば鞠子を諦めようとしていた。
雷電 光 (らいでん ひかり)
エピソード「向かい合う2匹の山羊」に登場する。某国公安刑事を名乗る謎の女性で、雷電為右衛門の娘。母親が外国人であり、左右の瞳の色が違う。「ファイアフォース」を捕まえるために日本を訪れた。父親の為右衛門が「ファイアフォース」を捕まえる事に命を懸けていたため、自分が捨てたられたという思いに捉われている。某国の仕事関係者には「ライデナ」と呼ばれている。
トシ
エピソード「向かい合う2匹の山羊」に登場する。日本のゲームメーカー「サガ」のプログラマーだった若い男性。ロボット開発に協力するため、露西亜に出向したが、露西亜政府と「サガ」が共同で開発した無人装甲ガードロボット「山羊(カザー)」の完成前に、不祥事の責任をなすりつけられ解雇された。それを恨み、タカシと共に「ファイアフォース」を名乗り、「山羊」を盗んだが、東京で羽角揺子に捕らえられる。
タカシ
エピソード「向かい合う2匹の山羊」に登場する。日本のゲームメーカー「サガ」のプログラマーだった若い男性。ロボット開発に協力するため、露西亜に出向したが、事故で左眼を失った。その後、露西亜政府と「サガ」が共同で開発した無人装甲ガードロボット「山羊(カザー)」の完成前に、不祥事の責任をなすりつけられ解雇された。トシと共に「ファイアフォース」を名乗って「山羊」を盗み、復讐を果たすべく、サガの役員を皆殺しにしようと暴走する。
綾小路 文麿 (あやこうじ ふみまろ)
エピソード「キッザオーライ」に登場する。羽角理里と同じクラスの男子小学生。父親が大蔵省の官僚で、「ノーパンしゃぶしゃぶ」での接待汚職事件が話題となり、贈収賄で逮捕された。そのせいで、クラスメートの三浦敏宏から「ノーパンしゃぶしゃぶ」とからかわれ、父親を信じられなくなり、飛び降り自殺を図った。
三浦 (みうら)
エピソード「牌の魔術師」に登場する。三浦敏宏の父親で雀荘を経営している。元凄腕の雀士だったが、今では酒浸りの生活を送っており、ヤクザに借金があり、そのせいで妻とは離婚した。
ヤクザ
エピソード「牌の魔術師」に登場する。かつての三浦の麻雀打ち仲間だったが、今はヤクザとなり、三浦に金を貸している男性。羽角揺子にけしかけられ、三浦と麻雀で勝負する事になる。
その他キーワード
ファイアフォース
十数年前に、欧州、特に共産圏で暗躍していた泥棒集団。羽角揺子と鷹四のコンビ名で、暗号名でもある。警視庁の敏腕刑事・雷電為右衛門とライバル関係にあり、鷹四の死亡により揺子が投獄される事となった。のちに「ファイアフォース」を名乗る偽物が出現する。