概要・あらすじ
プロ野球はカネを稼ぐことが全てと考えているリアリストのピッチャー・凡田夏之介は、契約交渉のもつれから長年在籍した神宮スパイダースを退団し、大リーグに渡った。しかしうまくいかず再び日本球界へと戻り、伝統と人気のある文京モップスへ移籍した。昨シーズンの神宮スパイダース優勝に貢献した夏之介は当然即戦力として期待された。
しかし伝統と格式の支配するモップスでプレイすることにはチームの内外から相当なプレッシャーがかかり、夏之介は期待に沿った成績をなかなか残せない。重圧に耐えながら己の野球人生を守るため、試行錯誤しながらも夏之介の苦闘は続く。
登場人物・キャラクター
凡田 夏之介 (ぼんだ なつのすけ)
高卒でプロ野球入りし、中継ぎピッチャーとして神宮スパイダースで活躍していた。左投げのサイドスロー。選手生活10年目を越え大リーグに渡ったがうまくいかず、日本球界に復帰し、文京モップスと契約を結んだ。年俸8000万円に加え50試合登板を果たせた場合に出来高2000万円と、念願の1億円プレイヤーとなった。 背番号は神宮スパイダースの時の「39」から一歩進化してほしいとの意味で「40」が与えられた。天然パーマ気味の髪にメガネをかけており一見柔和だが、シビアな観察眼と野球理論を持つ。野球選手の格を給料の額で見極める癖があり、ほとんどの選手の年俸は頭の中に入っている。 球界の盟主たる文京モップスの人気と重圧に気圧され、シーズン当初は期待を裏切り良い成績を残せなかった。だが徐々にチームに慣れてゆき調子を取り戻し、終盤では中継ぎの柱として優勝に貢献した。しかし連投がたたり利き腕を靭帯損傷してしまった。快復手術を受けたが、復帰は1年半後と遠い先となる。
凡田 ユキ (ぼんだ ゆき)
大衆食堂キッチン味平に勤める女性。おっとりとした性格で笑顔を絶やさない。この店の常連だった夏之介が見初め、婚約。夏之介の文京モップス移籍にあわせて結婚した。東京ドームの見える都内の高級マンションにて同居生活を始めたが、食堂勤務は続けている。シーズン終盤に妊娠していると判明し、夏之介にいっそうの責任感を芽生えさせた。
鈴木 弘満 (すずき ひろみつ)
文京モップスの監督。就任1年目でチームを優勝そして日本一へと導いたが、近年は優勝から遠ざかっていた。自身が今後もモップス関係者としての影響力を保つため、就任6年目の今年は圧倒的強さを見せつけて優勝することを絶対の目標とした。シーズン中盤以降、疲労から調子を落とす投手が多い中、波に乗って来た夏之介を中継ぎの柱として連投させた。 しかしチームはリーグ優勝は果たしたがCS進出は叶わず、責任を取って監督を辞任した。
富士野 泰山 (ふじの たいざん)
30歳にして300本塁打を達成している超強力スラッガー。守備の名手としても名高い。左投げ左打ち。九州シャープホークスより今シーズンから文京モップスへとFA移籍してきた。年俸4億円。子どもの頃から熱狂的なモップスファンだったが、プロ入りする際には、モップスは競争率が高いと考え、シャープホークスに入団した。 そしてプロ野球選手としての実力が開花し、念願のモップスへと移籍した。同じシーズンの移籍組として、夏之介と親しくなる。山梨県出身で、いまだになまりが残っている。純朴な人柄で少し天然ボケ気味。独身。庶民的な雰囲気を失わない夏之介夫婦をうらやましいと感じている。
杉里 令一 (すぎさと れいいち)
文京モップス所属の中継ぎピッチャー。左投げ。秋田県出身。年俸1200万円。1軍と2軍を行ったり来たりしており、伸び悩んでいた。夏之介の目から見ても球威と精度に劣るので、自分の実力を知らしめる意味も込めて夏之介は投球アドバイスをしてやった。丁寧なアドバイスをしたからといって、すぐさま上達する才能もないと夏之介は判断していたが、投球フォームを夏之介と同じサイドスローに変えた杉里は開眼。 2軍で好成績をおさめて1軍に合流し、シーズン序盤に不調だった夏之介の座を奪い、中継ぎとして大活躍。しかし初出場のオールスターで先輩選手にデッドボールを与え、今季を絶望させるほどのケガを負わせてしまい、それ以降、調子が悪くなった。 シーズン中盤以降は再び2軍に落とされ、シーズン終了後には自由契約を言い渡されてしまった。
鳥海 (とりうみ)
文京モップス所属。左投げ左打ち。兵庫県出身。年俸1600万円。妻と娘あり。高校野球時代から有名で、エースで4番をつとめ、3年生の夏に甲子園で優勝を果たした。夏之介と同じ学年。大学進学し六大学リーグでも活躍し、モップスにドラフト1位指名を受けプロ入りした。 ポジションはファーストだったがモップスではその座が空かず、なかなか出場機会に恵まれなかった不運な男。外野手に転向したが、パ・リーグから富士野泰山外野手がFA移籍してきたことで、またもや出場機会を逃し、今シーズンも2軍でのスタートとなった。しかしファーストが空いたことで1軍出場し好成績をおさめ、ようやく選手としてブレイクのきっかけを掴んだ。 だが、初出場のオールスターで頭部にデッドボールを受けてしまい、そのトラウマから打撃不振に陥った。その後ベンチに居続けることが増え、シーズン終了後にはトレード要員となり、所沢ジャガーズへの移籍が決まった。
丸金 千太郎 (まるがね せんたろう)
神宮スパイダース所属。キャッチャーでありスラッガー。昨シーズンに凄まじい好成績をあげ、優勝に貢献した。年俸も大幅アップし2億2000万円に。しかしそのシワ寄せが他選手にゆき、夏之介がチームを去る一因となった。今シーズンも絶好調で、開幕から7試合連続ホームランのプロ野球タイ記録を出した。 しかも7試合めのホームランはかつての先輩・夏之介から打った。しかしモップスの杉里投手からデッドボールを受け小指を骨折し、前半戦の成績は急降下した。
則川 祐一 (のりかわ ゆういち)
文京モップス所属の中継ぎピッチャー。右投げ。年俸1100万円。1軍と2軍を行ったり来たりしており、伸び悩み気味。当初は自分たちの出場機会を奪う夏之介の移籍を快く思っていなかったが、調子がいまいちあがらず「負け展開での中継ぎ投手」という同じ立場になってしまった夏之介と、しだいにプライベートでの交流が増えていった。 シーズン終盤に靭帯損傷し、戦線離脱した夏之介に代わって1軍登録されて活躍、チームの優勝の瞬間にマウンドに立っている栄光を味わった。
雨野 (あまの)
文京モップスの2軍ピッチングコーチ。夏之介が移籍してきたことで生え抜きの選手の出場機会が減ることに危惧を覚えており、伸び悩み気味の中継ぎピッチャー・杉里と則川に説教をした。夏之介のポジションを奪えなければお前たちはクビかトレード要員にされてしまうぞと脅し、発破をかけた。
徳川 安則 (とくがわ やすのり)
文京モップスの1軍ヘッドコーチ。「心の野球」を重んじる、精神論を重視する人物。モップスにFA移籍してきたが重圧から打撃不振だった富士野泰山に対して「男の心意気」を説き、プレッシャーから解放させた。
セキネ
東東スポーツの女性記者。夏之介とは馴染みの関係で、夏之介の妻・ユキが務める定食屋にもよく通っている。夏之介の文京モップス入団会見に際し、「選手は紳士たるべきなのでヒゲや長髪は禁止」というルールに従うことを証明するため、その場でアゴヒゲを剃るというパフォーマンスを夏之介に提案し、実行させた。
辺見 (へんみ)
元文京モップス所属の野球選手。通算150勝をあげたピッチャーだった。杉浦とは六大学野球に同期でライバルであり、同年にモップスからドラフト指名を受けてプロ入りした。近年は野球解説者を務めていたが、モップスの鈴木監督がCS進出を逃し辞任したことで、後任として監督に就任した。
杉浦 (すぎうら)
元プロ野球選手で、現在は文京モップス鈴木監督の運転手兼専属マネージャーを務めている。現役時代は鈴木の4年先輩だった。左投げのサイドスローで中継ぎピッチャーとして活躍したが、30歳の時のシーズンで優勝争いのために酷使され、肩を壊したという過去を持つ。 今シーズン終盤に酷使され靭帯損傷してしまった夏之介にかつての自分の姿を重ね合わせ、夏之介に手術を受けることを強くすすめた。その後モップスの監督が鈴木から辺見に交代したことで、1軍ピッチングコーチに就任。娘の由紀子はテレビ放送局JHKの若き女性スポーツキャスター。
集団・組織
文京モップス (ぶんきょうもっぷす)
『グラゼニ ~東京ドーム編~』に登場するプロ野球球団。東京ドームをホームとする東京の球団。全国区の人気があり、所属する選手は球界の盟主として紳士たることが義務付けられている。資金力があり年俸も一番だが、チーム内での競争率も高く、1軍に登録されるには熾烈な努力と運が必要とされる。モデルは実在するプロ野球球団の読売ジャイアンツ。
クレジット
- 原作
前作
続編
グラゼニ~パ・リーグ編~ (ぐらぜに ぱりーぐへん)
『グラゼニ』『グラゼニ~東京ドーム編~』の続編。左のサイドスロー投手、凡田夏之介の野球人生を描いた球界マネーサバイバル漫画。プロ野球選手の稼ぎ方や、お金をメインテーマに、選手と球団の交渉、監督、コーチ... 関連ページ:グラゼニ~パ・リーグ編~
グラゼニ~大リーグ編~ (ぐらぜに だいりーぐへん)
原作・森高夕次、漫画・足立金太郎(アダチケイジ)による「グラゼニ」シリーズの第4部。森高夕次は原作者として「グラゼニ」シリーズのほか、『おさなづま』『ショー☆バン』 など、漫画家としてはコージー城倉名... 関連ページ:グラゼニ~大リーグ編~
関連
グラゼニ ~夏之介の青春~ (ぐらぜに なつのすけのせいしゅん)
「グラゼニ」シリーズのスピンオフ作品。作画を担当した、太秦洋介のデビュー作。2000年頃の山梨県が舞台。圧倒的な運動神経でモテまくる、15歳の凡田夏之介は、中学野球で活躍し、やがて野球の名門校へと進学... 関連ページ:グラゼニ ~夏之介の青春~