コインロッカーのネジ。

コインロッカーのネジ。

心にさまざまな傷を負った人々と、時に厳しく接し、時に優しく包み込んで寄り添う少女の物語。こなみ詔子が描く『KAMUI-神巳-』の後日談でもあるオムニバス形式の作品。「WINGS」にて1990年12月号から1993年10月号、1993年「サウスWinter」から1994年「サウスAutumn」にかけて掲載された。

正式名称
コインロッカーのネジ。
ふりがな
こいんろっかーのねじ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
関連商品
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概要・あらすじ

規則正しい毎日を送る平凡な会社員の八坂弘は、ある日、駅のコインロッカーでスリをしている少女・ネジと出会う。弘の手首に残る傷跡を、誰もが見て見ぬふりをしていたが、ネジだけが「痛くなかった? 怖くなかった?」と問いかける。その言葉に救いを感じた弘は、ネジと一緒に暮らすことになる。

登場人物・キャラクター

八坂 弘 (やさか ひろむ)

会社勤めをしている20代の男性。駅で自身の財布を盗んだ少女のネジと、成り行きから一緒に暮らしている。一見すると優しく穏やかな青年だが、心には深い傷を負っている。産まれてすぐに、病院で別の赤ん坊と取り違えられ、本当の親ではない両親のもとで育った。そのことは、両親が亡くなるまで知らなかった。その後、本当の親である小川家に引き取られる。 小川家で育った八坂家の子供「神巳」と、実の妹の「小鳩」は、事故で亡くなってしまう。

ネジ

八坂弘と暮らす少女。産まれてすぐにコインロッカーに置き去りにされ、その後施設で育つ。幼い頃に施設を飛び出し、スリなどをしながら路上生活をしていた。八坂の財布を盗んだことがきっかけで、彼と一緒に暮らすことになる。独特の感性を持っており、他の人があえて避ける事柄に対しても、積極的に問いかけるなど、ある意味で素直な性格。 ついつい爪を噛んでしまう癖がある。

塩野 汀 (しおの みぎわ)

小学5年生の男の子。父親と母親の3人で、大きな一軒家に暮らしている。言うことを聞かない、と延々と叱り続ける母親に対して強いストレスを感じている。通りすがりにぶつかってしまった子供の母親に怒鳴られ、その母親をナイフで刺そうとしたが、ネジに止められる。

沢口 (さわぐち)

八坂弘と同じマンションに住む女子大生。夜は水商売のアルバイトをしている。隣の部屋に住む吉田のことが気になっている。しかし、顔を合わせると嫌味を言ってしまうため、そんな自分を嫌っている。ストレスが溜まると、衝動買いをしてしまう悪癖を持つ。

吉田 (よしだ)

八坂弘と同じマンションに住む男性。弘やネジとも親しくしている。地味な見た目だが、温厚で優しい性格をしており、著書もある作家。隣の部屋に住む沢口とは、ベランダで顔を合わせると会話する仲。沢口に冷たくあたられたことを、気にしている。

律子 (りつこ)

中学生の女の子。有休で海に遊びに来ていた八坂弘とネジに出会う。169センチの長身。自身は背伸びしているつもりはないが、見た目や思考が大人びているせいか、周りの人間が皆バカに見えてしまう。自分が私生児であることを知っており、それについて母親に聞いたほうがいいかどうか、迷っている。

十和 (とわ)

ファミリーレストランで働く未婚の女性。誰にも知られずに子供を産んだが、自分では育てられず、駅のコインロッカーに捨ててしまう。産後すぐに仕事に復帰していたため、体調を崩し倒れていたところを、八坂弘とネジに助けられる。

大沢 (おおさわ)

写真屋で現像した写真を、渡し間違えられた縁で、八坂弘と出会った男性。料理の本を出版していた妻を事故で亡くしてから、趣味で写真を撮り続けている。亡くなった妻に、自らの近況を知らせようとしているために、写真はモノクロでしか撮影しない。

中山 友成 (なかやま ともなり)

コンビニでアルバイトをしている少年。担任だった竹田の妻・竹田美保と関係を持った。そのため、竹田に願書を出してもらえず、高校を受験できなかった。その後もずっと美穂を想い続けており、連絡を取ろうと奔走していた。

竹田 (たけだ)

八坂弘の友人の男性。飲み屋で久しぶりに弘と再会した。中学校の先生で、中山友成の担任でもある。その友成に妻である竹田美保を寝取られてしまい、友成を傷つけるために、高校の願書を提出しなかった。

竹田 美保 (たけだ みほ)

竹田の妻。竹田が受け持つクラスの生徒である中山友成と恋に落ち、関係を持ってしまう。その後、竹田に別れを切り出すが、うまく運ばない。友成が高校へ進学できなかったのも、自分が原因だと知り、友成と別れることを決意する。

高橋 愛 (たかはし めぐみ)

小学5年生の女の子。ぽっちゃりした体形でおとなしく、学校ではイジメられている。学校を抜け出し、公園に1人でいたときに、ネジと出会い仲良くなる。ガチャピンとムックではムックが、アニーとバートではバートが好きで、絵を描くのが上手い。

カズイ

アズサの兄。移動サーカスの団員で、八坂弘の住む街にやってきた。場所を移動するたびに、その地の高校に通っている。サーカスでは蛇を使った出し物をしており、蛇の血を飲むこともあるため、「ヘビ男」と呼ばれている。元々は空中ブランコを担当していた。

アズサ

カズイの弟。移動サーカスの団員で、八坂弘の住む街にやってきた。サーカスでは花形の空中ブランコを担当している。場所を移動するたびに、その土地の高校に通っている。その都度、ショーを見たクラスメイトから、からかわれイジメを受けている。

小川家の母 (おがわけのはは)

八坂弘の実母。常に和服を着た、穏やかで優しい女性。病院で取り違えられ、他人の子供と分かっていながら育てた「神巳」と、実子の「小鳩」を数年前に亡くし、未だに心を痛めている。弘が実家に連れてきたネジが、「小鳩」に似ていたため、ついつい「小鳩」と呼んでしまう。

小川家の父 (おがわけのちち)

八坂弘の実父。眼鏡をかけた、穏やかな雰囲気の男性。弘の良き理解者でもある。過去に「神巳」と「小鳩」を亡くしたため、妻が心を痛めているのは知っており、黙って見守っている。若い頃に、腹違いの妹である実穂を亡くしている。

実穂 (みほ)

小川家の父の腹違いの妹。小川家の父が若いときに、病によって亡くなっている。長い黒髪で、あまり外に出ないため、陶器のように白い肌を持ち、唇は綺麗な赤色、という美しい容姿をしている。生まれつき体が弱く、長いこと病気で寝込んでいた。

女性 (じょせい)

風邪の診察で病院に行ったネジが出会った女性。自身の祖父の病室で、点滴などの延命治療を受ける祖父の首を、絞めて殺してしまう。その理由は、痛みに耐えながら、薬の投与や輸液をされている祖父を見ていられなかった、からであった。

実津紀 (みつき)

大人っぽく見える高校生の女の子。坂道で落としてしまったオレンジを拾ってもらったので、八坂弘とネジを自宅に招く。性格はいいが、不細工な彼氏がいることが友人にバレてしまい、次の日にはその彼に電話で別れを告げた。

木村 哲雄 (きむら てつお)

小学5年生の男の子。指が長いから、と母親に言われ、幼い頃からピアノを習っている。電車で寝過ごしてしまい、そこに居合わせたネジと出会う。ピアノは好きだが、ピアノ教室の先生にキスをされるのが嫌で、ピアノ教室に通うのが億劫になっている。

(もも)

学生の女の子。ネジと同じ、爪を噛む癖があるため意気投合し、ネジを家に招いた。お金持ちの両親と、大きな家に3人で住んでいるが、いつも物足りなく窮屈に感じている。ネジに、電池の入れ方と、「+と-」があることを教えた。

宮澤 アキ (みやざわ あき)

八坂弘とネジの隣室に引っ越してきた少年。身長169センチでAB型。父親が子連れの女性と結婚したため、家を出て一人暮らしをしている。部屋の天井にあるヒビ割れから、弘が自分の部屋を覗いている、という妄想に囚われ、弘とネジにいちゃもんを付けてきた。

由理 (ゆり)

双子の片割れの女子高生。ネジに道を聞かれ、丁寧に教えてあげたため、知り合いになる。双子である「由美」とはいつも一緒に過ごしていた。常に目の前に「由美」がいたため、自然と左利きになっていた。次第に自分とかけ離れていく「由美」に不安を抱く。

和己 (わこ)

ネジの友達の女の子。ネジ、ヒロとよく一緒に遊んでおり、本屋が3人のたまり場になっている。なかなか祖母に会えないというヒロのため、父親の新車をこっそり運転し、老人ホームへと向かう。無免許だが、いつも父親の運転を見ていたため、運転は上手い。

ヒロ

ネジの友達の男の子。ネジ、和己とよく一緒に遊んでおり、本屋が3人のたまり場になっている。大好きな祖母が老人ホームに入っているため、なかなか会えないことを気に病んでいた。その祖母に会いに行くため、3人で車に乗り込む。

妊婦 (にんぷ)

スーパーに買い物に来ていた妊婦。和己が運転している車を見かけ、車で後を追いかけた。なんとかネジ、和己、ヒロの乗る車に追いつくが、陣痛が来てしまい、子供たちと一緒に病院へと駆け込む。

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