陰謀に嵌められた王子と竜の出会い
六頭竜の主となるべく生まれてきたサラカは、父親から王位を譲り受け、名実共に王として認められる。だが、六頭竜の裏切り者である羅(ラクティカ)の陰謀で父親が毒殺されたうえ、サラカはその犯人として捕らえられ、搭の中に幽閉されてしまう。5年間の幽閉生活に耐え抜いたサラカは、羅に洗脳された弟・アスタの手によって処刑されかけるが、突然現れた深潭によって国の守護を担う白竜たちも倒され、国は混乱に陥る。そんな中、サラカの危機を察知して現れた阿(アーシュ)によって深潭が撃退され、サラカも彼の手によって深潭の業火から助けられる。深潭を滅するためには、すべての六頭竜の力が必要だと阿から知らされたサラカは、生まれ育った国の滅亡を嘆きつつも、阿と共に残りの六頭竜を探すために旅立つ。
強大な力を秘める「六頭竜」
サラカの生まれ育った国では、「六頭竜」は世界を破滅へと導く邪悪な存在の「深潭」と戦うことを運命づけられた伝説の存在だと伝えられている。六頭竜は、もともとは一体の巨大な竜だったが、深潭との戦いに敗れて六体に分かたれてしまう。だが、分かたれた状態でも並みの竜や侵略獣を圧倒できる力を持ち、サラカの能力によって強化されると、さらに強大な力を発揮する。なお、六頭竜の一体である羅(ラクティカ)は、分離した際に恐怖から自らの役割を放棄したうえ、サラカを殺害することでその地位を奪おうと画策するものの失敗し、阿から強く憎まれている。しかし逃亡生活の中で、絆を紡いだ少年・ペトの決死の行動を見て改心し、やがて正式な六頭竜としてサラカに付き従うことになる。
世界を蝕む悪しき存在「深潭」
サラカの住んでいる王国は、侵略獣と呼ばれる異形の存在に攻撃され、多くの国民がその犠牲になっている。中でも「深潭」と呼ばれる侵略獣は、巨体と獰猛さに加えて大地を蝕むほどの猛毒を放つことから非常に恐れられており、六頭竜すら苦戦を強いられている。深潭は人間が放つ負の感情に反応して出現することが多く、彼らを放置すれば毒によって大地は再生されることなく、やがて草木も枯れ果ててしまう。また、サラカが旅をする先で暗躍を繰り返していた悪徳商人・ドゥルクは、その常人離れした能力と憎悪の心から、人の姿をした深潭ではないかと阿に疑われていたが、のちに深潭とは別の存在であることが明らかになる。
登場人物・キャラクター
サラカ
人と土地が美しく調和された小国の王子。父親である国王暗殺容疑で5年間も幽閉されていた。六頭竜たちからは「沙羅樹の王子」の異名で呼ばれ、生まれながらに六頭竜を統べて戦うことを運命づけられている。誠実な性格で心優しく、初対面の相手に対しても身分を問わず丁寧な物腰で接する。一方で、自分の仲間や大切なものを傷つけられた際は毅然とした態度を見せるなど、勇敢な一面も秘めている。王位継承者としてふさわしい存在であろうと、幼い頃から勉学と剣の訓練を重ねているため、身体能力とリーダーシップに優れている。また、瀕死の人間や獣を回復させる治癒能力や、六頭竜の能力を大幅に向上させる強化能力をはじめとした、「沙羅樹の王子」ゆかりの特殊能力を備えている。六頭竜の一体である阿とは深い絆で結ばれており、彼のことを使役する相手ではなくかけがえのない親友と認識している。
阿 (あーしゅ)
六頭竜の一体で、「焦電竜」の異名を持つ。「雷鳴弾」などの電撃技を使い、人間の男性に近い姿に変身できる。豪快な性格で正義感と好奇心が強く、珍しいものに対して強い関心を示す。また、力がありながら勇気を示そうとしない存在に対しては冷徹で、相手をする価値がないと考えている。サラカのお人よしすぎるところに難色を示す一方で、無二の相棒として誰よりも大切に思っており、彼が危機に陥った際は自らの危険を顧みず、敵に向かっていく。サラカに対して礼節の欠けた振る舞いをする相手に容赦しないため、サラカから諫められることもある。
書誌情報
サラカ王子と六頭竜 全3巻 LINE Digital Frontier〈LINEコミックス〉
第1巻
(2021-08-12発行、 978-4866972046)
第2巻
(2021-11-15発行、 978-4866972305)
第3巻
(2022-03-15発行、 978-4866972503)