あらすじ
拝み屋・孔雀(第1巻~第3巻)
密法をあやつり、この世ならざる魔を祓う裏高野の退魔師達がいた。その中でも最強の実力を持つ退魔師・孔雀は、市井の人々からの依頼を受けて魔を祓う日々を過ごしていた。そんな孔雀の前に、「式鬼」による殺人予告を受けたという話が舞い込む。式鬼とは、術者によって使役される物の怪の一種であり、その術者は呪禁道の使い手・王仁丸だった。自身の放った式鬼を返り討ちにした孔雀の前に姿を見せた王仁丸は孔雀との直接対決に臨む。死闘の果てに孔雀とのあいだに奇妙な友情を芽生えさせた王仁丸は、その後もたびたび腐れ縁として孔雀と共闘する事になる。だが、怪事件が頻発している裏には、ある大きな陰謀が隠されていた。
阿修羅(第4巻~第5巻)
新宿で発見されたミイラをあやつり、この世を暗黒の世界に変えようとする集団がいた。六道衆と名乗る彼らの尖兵を倒した孔雀だったが、そんな彼の前に阿修羅と呼ばれる少女が現れる。六道衆の大聖歓喜天は、その阿修羅にはこの世をすべて灰に燃やし尽くすほどの魔力がある事を孔雀に告げ、阿修羅を利用して自分達の野望を実現しようとしていた。しかし孔雀は阿修羅の心の中に光があると信じ、そんな孔雀の心が通じた阿修羅は光を受け入れる。だが大聖歓喜天の真の目的は阿修羅を鍵として、伝説の大魔王「孔雀王」を復活させる事にあった。孔雀王が眠る「地獄門」が開く中、孔雀は大聖歓喜天との死闘の末にこれを倒す。だが地獄門の中に孔雀王は存在せず、すでに復活したあとだった。
黄幡星(第5巻~第6巻)
六道衆の大聖歓喜天を倒した孔雀は、阿修羅や王仁丸と共に復活した孔雀王の行方を追っていた。そんな矢先、何人もの死人が蘇るという事件が発生、その事件の裏には新興宗教「光翼教会」の教主・倶摩羅の姿があった。孔雀は王仁丸と共に倶摩羅に挑むが敗北。そんな孔雀を救ったのは、かつて孔雀と同じ裏高野で密法を学んだ夜叉王という男だった。そして孔雀は夜叉王から、倶摩羅の正体が、凶星である黄幡星の精を受けたために皆殺しにされた子供達の集合体であり、孔雀もまたその黄幡星の子である事を聞かされる。呪われた星である黄幡星の宿命を背負った孔雀は、倶摩羅と再び対峙。その戦いの中、孔雀は自身の中に地獄門から復活した孔雀王が眠っている事を知る。そして孔雀は、孔雀王の力で倶摩羅と黄幡星を倒すのだった。
闇の孔雀王(第7巻~第9巻)
ある日、孔雀は自分を頼って来たオルガという少女と出会う。オルガはシベリアのとある村の出身であり、その村では六道衆の軍荼利明王によって孔雀王を人工的に作り出すための実験が行われていた。オルガはその実験から弟のオカンと共に逃げ出して来たと語るが、そんな中、オカンは人工孔雀王として覚醒。そのまま行方不明となり、オルガもまた軍荼利明王によって連れ去られてしまう。オカンが富士山の霊穴にいる事を突き止めた孔雀は、事情を知った王仁丸、そして道士・黄海峰と共に霊穴へと向かい、オカンを保護する事に成功する。オルガとオカンを軍荼利明王の手から守るため、六道衆の目が届かない崑崙へと送り届ける事を決意した孔雀達は、苦難の末に崑崙への入口を発見する。だがそこへ現れたオルガは、軍荼利明王によって孔雀王と対をなす魔王「天蛇王」へと覚醒を遂げて孔雀達に襲いかかる。孔雀を守ろうとしたオカンはオルガと共に壮絶な最期を遂げ、怒りに燃えた孔雀は軍荼利明王を倒す。
鳳凰(第10巻~第11巻)
孔雀は、かつて自身の父親である慈覚が孔雀王を復活させようとしていた事を知り、真相を探るために裏高野へと足を踏み入れる。だが孔雀は、そこで待ち受けていた裏高野の退魔師・鳳凰の罠にはまり、冥府へと落とされてしまう。裏高野を裏切り闇の側についた鳳凰は、さらに魔界の王サタンの力を手に入れ、この世を支配しようと目論む。一方の孔雀は冥府で、自身の父親である慈覚がなぜ孔雀王を復活させようとしていたのか、そして自身の出生の秘密を知る。その後、自身の中に眠る孔雀王の力を発揮しサタンと化した鳳凰を倒した孔雀は、姉の朋子が生きている事を知る。そして、朋子の中には孔雀王と対をなす「天蛇王」が眠っている事を知った孔雀は、朋子を救うために旅立つのだった。
聖杯(第12巻~第15巻)
サンフランシスコのチャイナタウンで、王仁丸と黄海峰は世界をも支配する力を得られるという「聖杯」の行方を追っていた。だが聖杯は六道衆と彼らがあやつるナチスの残党「ラストバタリオン」によって奪われてしまう。その後、ラストバタリオンを率いるジークフリートとカール・ハウスホッファーは、聖杯と共に世界支配のために動き出す。さらに彼らのもとには、孔雀の姉である朋子の姿があった。黄と阿修羅は、朋子を救出するためジークフリートの居城へ乗り込むが、逆に幽閉されてしまう。一方、孔雀は聖杯に対抗する事ができる「聖槍」を手に入れるために龍神族のもとへと向かう。だが聖槍を手にした孔雀は、朋子が闇の盟主たる「天蛇王」として覚醒し、黄もまた朋子と共に孔雀の敵となった事を知る。
光と闇(第15巻~第17巻)
孔雀との戦いを制した「天蛇王」こと朋子は、地上を制圧するための侵攻を開始する。抵抗を続ける王仁丸は、天蛇王となった朋子を倒すために裏高野や黄家仙道の戦士達と合流する。孔雀は辛うじて生きながらえていたものの、鳳凰によって体を乗っ取られてしまう。しかし阿修羅の呼びかけによって復活を遂げた孔雀は、朋子との光と闇の最終決戦に立ち上がる。その最中、朋子の側について孔雀と敵対していた黄海峰もまた、孔雀の声に応えて再び味方となる。地上の命運と人類の存亡をかけ、孔雀は再び朋子との戦いに挑む。
登場人物・キャラクター
孔雀 (くじゃく)
高野山と対を成す密法の総本山・裏高野に属し、この世の怪異を討ち祓うことを生業とする退魔師。本名を明(あきら)という。慈空阿闍梨の愛弟子で、階級は第九階中僧都(ちゅうのそうず)。若くして守護神・孔雀明王の術をはじめ、不動明王、帝釈天(因駝羅)、摩利支天など、様々な神仏の法力を操れる優秀な人物である。 ただ、退魔の依頼などで街に赴くと、普段の禁欲的で厳しい生活からの解放感からか、暴飲暴食かつスケベで、パチンコもたしなむという生臭坊主的な面を見せることが多い。彼の力はその出生の秘密に関係があり、黄幡星の宿命を負った忌児であること、伝説の大魔王・孔雀王の生まれ変わりであることが主要因となっている。 また、当初は闇の勢力の根絶を目標としていたが、生き別れた双子の姉・朋子が孔雀王の宿敵・天蛇王であることを知ると考えが変化。光に生まれて闇に落ち、再び光に帰った孔雀王だけが目指せる「光と闇の調和」こそが、姉と世界の救済に繋がることを悟り、それを目指すようになる。
阿修羅 (あしゅら)
血と争いを巻き起こす魔神・阿修羅の血を引く忌児として、生まれてから12年間、インドの砂漠に立つ仏塔に幽閉されていた。金髪碧眼の美少女で、純粋なる原アーリア人の容姿を備える。また、たいした戦闘訓練を受けていないにも関わらず、守護神である阿修羅王の加護により、闇の炎を自在に操ることが可能。 孔雀王が眠る地獄門を開く鍵として、六道衆のひとり大聖歓喜天に操られていたが、孔雀の身を挺した説得により心を開き、優しき少女へと回帰した。恩人である孔雀への想いは、最初は自分を救ってくれたことへの好意に過ぎなかったが、やがて思春期の少女らしい恋、そして最終的には真の愛情へと変化。 その心が終盤に孔雀を救う大きな助けとなる。
王仁丸 (おにまる)
金銭のために人を呪い殺す呪禁道師。サングラスをかけた筋肉質の大男で、紙片に神鬼を宿らせ使役する式鬼(しき)使い。自身の標的を孔雀が守ったことから直接対決に発展し、その戦いを通じて孔雀の力量を認め、以後、何かと孔雀に協力するようになる。人とは思えないタフな肉体の持ち主で、文字通り身体を張って孔雀や仲間たちを何度も助けるが、実は鬼神と人間のハーフであり、その超人的な耐久力は鬼神の王・大暗黒天(摩訶迦羅、マハーカーラ)の守護を受けていることに依る。 グレゴリイ・ラスプーチンとの戦いで、その力に完全覚醒した王仁丸は、大暗黒天の化身として、光と闇の最終決戦までしぶとく戦い抜いた。
黄海峰 (こう かいほう)
中国仙道の始祖・黄帝の流れを汲む呪術集団・黄家仙道の仙道士。黄家に伝わる霊剣・獅咬剣の使い手で、その霊力によって獅子を召喚し、敵を切り刻む。尸解仙・美童の事件で孔雀と出会い、その後、人工の孔雀王・オカンを殺す任務で再会。オカンを守ろうとする孔雀と敵対するが、非情に徹しきれない性格と孔雀の真摯な態度に心を動かされ、黄家当主である父の命令に逆らい、孔雀と共にオルガ、オカン姉弟を救う旅に出た。 また、孔雀の姉・朋子が生きていることを知った後は、単身・六道衆の本拠に潜入し、朋子を救い出すため力を尽くす。
慈空阿闍梨 (じくう あじゃり)
孔雀の師匠であり、幼い頃に両親を失った彼にとっては父親のような存在。阿闍梨とは密教の階級で、退魔師たちを統率する高僧を指し、自らも極めて強力な裏高野最強の退魔師である。孔雀の父・慈覚も慈空の弟子であり、孔雀と朋子の出自と別離に至った経緯を知っている数少ない人物。 チベットの奥地で発見された幼少の孔雀を引き取り、その忌まわしい記憶を封じて、彼を育て上げた。
日光 (にっこう)
裏高野を束ねる座主・薬師大医王の息子であり、実戦部隊・五輪坊の総司令官を務める若武者。階級は第二位の権大僧正(ごんだいそうじょう)であり、薬師大医王が即身仏となった後は、裏高野の実質的な長として最終決戦へ乗り込んだ。裏高野の最高神・大日如来を守護神とし、裏高野でも屈指の霊力を持つ。 幼き頃に父に与えられた使命である「闇の抹殺」を忠実に守っており、闇の勢力に対して容赦がない。その一方で、闇の資質を持つ孔雀や阿修羅に対しては理解を示すなど、人の上に立つ器の大きさも備えている。
月読 (つくよみ)
裏高野を束ねる座主・薬師大医王の娘で、日光の妹。裏高野女人堂の主でもある。生まれつきの盲人だが、常人には見られないものを知覚できるとされる。月読の“月”は、死を表し、闇の軍団長である蛇神や龍神を象徴する。その文字を冠した彼女は、光と闇の戦いの果てにある無を避けるため、命を懸けて闇の子、すなわち孔雀を救済する定めを帯びていた。
倶摩羅 (くまら)
孔雀王を神と崇める宗教・光翼教団の教祖。孔雀と同じく、黄幡星の宿命を負って生まれた子供で、裏高野による黄幡星の御子の粛清のときに殺された。だが、自分を庇った夜叉王共々、黄幡星によって死人として蘇らされ、裏高野への復讐を果たし、死人による闇の王国を樹立しようとする。
オルガ
グレゴリイ・ラスプーチンによって、人為的に生み出された天蛇王で、オカンの姉。一時は裏高野に保護されるが、六道衆に拉致され洗脳手術を受けた結果、天蛇王として覚醒。その後、弟オカンとの戦いを経て、闇の大日如来へと変貌するが、真の孔雀王の力を持つ孔雀に敗れた。
オカン
グレゴリイ・ラスプーチンによって、人為的に生み出された孔雀王で、オルガの弟。自分の運命を呪い、富士の冥穴で孔雀王として覚醒しようとする。だが、孔雀の必死の説得によって思い止まり、闇の力を退けた。しかしその後、天蛇王に覚醒した姉・オルガから、手負いの孔雀を守るために力を解放。 激しい戦いの末、相打ちとなるが、それによってふたりの魂が合一し、闇の大日如来が誕生した。
グレゴリイ・ラスプーチン
自らを神の人(スクレツ)と名乗る軍人風の男だが、その正体は帝政ロシアを席巻した妖術師であり、六道衆八大明王のひとり、軍荼利(ぐんだり)でもある。闇の盟主となる孔雀王と天蛇王を人為的に作り出すため、世界中から闇の血を持つ子供を集めており、オルガとオカンはその標的となっていた。 実在の人物・グリゴリー・ラスプーチンをモデルにしている。
カール・ハウスホッファー
その正体は六道衆を束ねる不死の神々・八葉の老師達のひとりで、闇曼荼羅の文殊菩薩。ラストバタリオンの総帥ジークフリードを背後から操り、朋子を真の天蛇王として覚醒させるために暗躍する。
慈覚 (じかく)
孔雀と朋子の実の父親であり、慈空阿闍梨の愛弟子。存命時は裏高野最強の退魔師と謳われた人物だったが、ある魔族の女性に惹かれ、愛し合った結果、裏高野が標的とする黄幡星の御子(孔雀と朋子)が生まれてしまった。子供たちを守るため、慈覚は裏高野の刺客と戦いながら逃避行を続けるが、終わりなき旅に疲れ果てたところを八葉の老師達につけ込まれ、朋子が天蛇王となるきっかけを作ってしまう。 自分の過ちに深く責め苛まれた慈覚は、その苦しみから逃れるため、そして最後のチャンスを子供たちに与えるため入定し、即身仏となった。
朋子 (ともこ)
孔雀の双子の姉であり、もう一人の大魔王・天蛇王の魂を宿す者。幼少の頃、八葉の老師達に唆された父・慈覚によって崖下に突き落とされた彼女は、八葉の老師達によって連れ去られ、その悲しい記憶を封じたまま彷徨っていた。そこをジークフリードに拾われ、人形のような扱いで保護されていたが、黄海峰の愛や阿修羅の優しさに触れることで人の心を取り戻しかける。 だが、その矢先にカール・ハウスホッファーによって父の即身仏と対面。自ら封じていた記憶を取り戻した彼女は天蛇王へと覚醒し、孔雀王である弟との最終決戦へと踏み出すのだった。