あらすじ
結と百の出会い
ドジっ娘で不器用な陽向結は、小学生時代から妖(あやかし)を認識できる能力を周囲に隠さずに生活をしていた。しかし成長と共に、結は周囲から次第に気持ち悪いと避けられるだけでなく、壮絶ないじめを受けるようになっていた。そんな過去のトラウマから、結は小学校時代の知り合いがほとんどいない中学校に進学。そして、妖のジャキをそそのかして都合よく利用し、文武両道の優等生キャラクターを演じていた。結は学校中の人気者になるものの、偽りの自分に対しての罪悪感や劣等感を抱きながら生活していた。そんなある日、結は神様見習いの百と出会う。純粋で世間知らずな百を言いくるめ、学校内での立場をよりよいものにしようと企む結だったが、百の純粋な行動からこれまでの優等生キャラクターが偽りだということがばれてしまい、小学校時代のように孤立してしまう。それでもなお自分を慕ってくれる朝倉光梨や、実は小学校時代に自分をいじめから救おうとしていた小暮大輝に励まされ、結はありのままの自分で生きていくことを決意する。
百への依頼
神様見習いの百は、同じく妖(あやかし)の時から、力を貸して欲しいと依頼を受ける。時は自らの時間を戻す能力を使い、孤独だった自分を救ってくれた千代が亡くなるたびに、時間を巻き戻す行為を100年間も繰り返していた。しかし、時もそろそろ自分の能力を使い続けることに限界を感じており、陽向結と百に千代の死を回避するために協力して欲しいと訴えたことで、二人は時に手を貸すことになる。しかし、どんなに危険を回避しても千代が死んでしまう未来を変えることはできず、時間を戻すごとにボロボロになっていく時の姿を見た結は、もうやめるべきだと説得する。
百の挫折と結の成長
千代の運命を変えることはできず、時からの願いを叶えられなかった百は、神様になることをあきらめようとしていた。しかし、自分を理解してくれている陽向結や妖(あやかし)の仲間、そして自分の姿が見えないにもかかわらず励ましてくれる朝倉光梨や小暮大輝に背中を押され、百は再び神様になるべく気持ちを新たにする。一方、文武両道の優等生キャラクターを演じていたことが周囲にばれてしまった結は、小学校時代のようにクラスで浮いた存在になっていた。しかし、結はこんな状況の中でも気軽に声をかけてくれる広瀬夏樹と交流を持つようになる。結は夏樹の両親が事故で亡くなり、妹の広瀬小夏が落ち込んでいることを知り、力になりたいと願っていた。
結の父親との再会と百との別れ
一時はクラス内で孤立していた陽向結だが、ありのままの自分でいることで、少しずつ周囲と打ち解けていく。そんな中、これまで結が妖(あやかし)の力を都合よく利用していたこともあり、結は邪悪な念を持った妖にたびたび襲われるようになっていた。しかし結は、自分を心配してくれる百に励まされ、もっと強くなり、自らの力で邪悪な妖を打ち倒そうと決心する。そんなある日、結は亡くなった父親の陽向広幸の霊体と再会し、つかの間の親子の時間を楽しむ。そして、広幸と改めて別れの言葉を交わした結だったが、なぜか同時に百の姿も認識できなくなってしまう。
登場人物・キャラクター
陽向 結 (ひなた ゆい)
中学1年生の女子。妖(あやかし)と呼ばれる妖怪を認識したり、話をすることができる特殊能力を持つ。地元の小学校に通っていた際、妖が見えることを隠さずに生活していたところ、クラスメイトたちから気持ちが悪いと壮絶ないじめを受けるようになってしまう。そのことから地元の人間があまりいない中学校に進学し、妖が見えることを周囲に隠して生活している。本来はドジッ娘で不器用なタイプながら、妖のジャキをそそのかして利用し、文武両道の優等生キャラクターを演じている。そのため、小暮大輝のように陽向結の小学校時代を知っている人物を避けて学校生活を送っている。今の学校では人気者であるものの、周囲から好感を持たれているのは偽りの自分であることに罪悪感や劣等感を抱いている。不器用ながらも純粋で何ごとにも一生懸命な妖の百と出会い、本来の自分の力だけで生活していくことを決意する。
百 (もも)
神様見習いの妖(あやかし)。陽向結の通学路付近の小さな祠(ほこら)に祀られている。神様の種類としては「福の神」で、性別は不明。長い白毛で犬のような外見をしており、人間の言葉を理解して話もできる。不器用ながらも純粋な心の持ち主で、ウソがつけないまっすぐな性格をしている。この世に誕生したばかりの存在のため何もわからず、お供え物もなかったことから、空腹でうずくまっていたところを結に助けられ、行動を共にするようになる。立派な福の神になり、みんなを幸せにすること目標としている。好物は大福。
小暮 大輝 (こぐれ だいき)
陽向結と同じ中学校に通う1年生の男子。結のクラスメイト。結とは小学校時代からの付き合いで、妖(あやかし)が認識できることで周囲から壮絶ないじめに遭っていた過去も知っている。何度も結を助けようとしたものの、喧嘩が弱かったためにいじめっ子たちから返り討ちに遭っていた。中学校に進学してから突然、文武両道で優等生キャラクターになった結を心配し、何かあったのではないかと声をかけようとするものの、結から避けられているために会話ができずにいる。心優しく穏やかな性格で、強くなるために空手部に所属している。強さへのあこがれが強いあまり、空回りすることも多い。
朝倉 光梨 (あさくら ひかり)
陽向結と同じ中学校に通う1年生の女子。結のクラスメイトで親友の間柄。結が中学生になってから知り合ったため、小学校時代に壮絶ないじめを受けていたことは知らない。結が妖(あやかし)を認識できる能力を持っていることは知らず、文武両道な優等生キャラクターを演じていることにも気づいていない。なんでもできる結を尊敬しており、結本人にもたびたび伝えていることから、無意識に結の罪悪感や劣等感を刺激してしまうことも多い。結を通じて妖の存在を知り、見ることはできないものの積極的に百に話しかけるなど、交流を持とうとしている。
広瀬 夏樹 (ひろせ なつき)
陽向結と同じ中学校に通う1年生の男子。結が文武両道な優等生キャラクターを演じていたことが周囲にばれ、クラスメイトから避けられるようになってからも、気軽に声をかけ続けたことで交流を持つようになる。明るく裏表のない素直な性格で、クラスの中心的な存在。最近両親を事故で亡くしており、周囲に頼れる身内もおらず、妹の広瀬小夏と二人きりで生活している。事故以来、笑顔を見せなくなった小夏のことを心配している。
広瀬 小夏 (ひろせ こなつ)
広瀬夏樹の妹。保育園に通っている。夏樹を通じて陽向結、百と知り合う。両親が突然事故で亡くなったことで、激しいショックを受けており、笑顔を見せなくなっている。百が祀られている祠とは知らず、「もう一度だけ両親に会いたい」と密かに願っていたことから、百の姿は認識できていないものの、百からは顔を覚えられていた。周囲に頼れる身内がいないことから、夏樹と二人きりで生活している。
陽向 広幸 (ひなた ひろゆき)
陽向結の父親で故人。結が3歳の時、28歳の若さで亡くなった。霊体となり、結が百と行動する時間が増えたことで、その姿を認識してもらえるようになり再会を果たす。
ジャキ
陽向結が百と出会う前に、一時的に行動を共にしていた性別不詳の妖(あやかし)。黒いコウモリのような姿をしており、人間の言葉を話す。結が卑怯な方法で文武両道な優等生キャラクターを演じることに手を貸していた。結によれば「悪い妖」で、人間を不幸にすることに喜びを覚えていると評している。そのため、結の力になっているというよりも、周囲を混乱させて楽しんでいる感が強く、結との関係が切れてからは小暮大輝をあやつって学校内で暴れさせるなど、悪行を繰り返している。
時 (とき)
陽向結と百の前に現れた妖(あやかし)。二人に自らの力を使い、千代の死亡を回避して欲しいと依頼したことで知り合う。ボロボロの和服を着た少年の姿をしており、人間の言葉を話すがやや口は悪い。腰に付けた砂時計を操作することで、対象とした人や物の時間を最大で1日戻すことができる能力を持つ。妖としてこの世に誕生してからずっと孤独な生活をしてきたが、時自身の姿を見て笑いかけてくれた千代に救われる。千代が事故死してしまう現実が受け入れられず、100年もの長いあいだ、千代が死ぬたびに時間を戻す行為を繰り返している。そのため消耗しており、時自身の能力を使い続けることにも限界が近づいている。
千代 (ちよ)
妖(あやかし)を認識することのできる少女。時からの紹介で、陽向結と百と知り合いになる。生まれてからずっと身体が弱く、最終的には事故死する運命にある。千代をどうしても失いたくないという時の思いから、時が能力を使って、100年前から何度も千代の死とその1日前を繰り返しているが、千代自身は気づいていない。結とは異なり、生まれながらに妖を認識できる能力を持っていたわけではなく、死期が近いために一時的に百や時の姿が見えている。