あらすじ
潮とハイネの出会い
父親が行方不明で、シングルマザーの家庭で育った九軒潮だったが、母親の九軒波弥が急死して天涯孤独の身となる。親戚とも交流のなかった潮は、住む家が見つかるまでの期限付きで親戚の家に滞在していたが、そこでは厄介者扱いされていた。そんな中、潮のもとに「父親」を名乗る人物から、某県の「守仁江村(かみにえむら)」という場所にある、シェアハウスで暮らしてみないかと手紙が届く。家賃も無料でいいと知り、行き場所のない潮はその話に乗って、守仁江村へと向かう。指定されたシェアハウスは守仁江村の森の中にあり、洋風の立派な屋敷だった。そこではハイネと名乗る謎の美男子がシェアハウスの主として庭の手入れをしていた。過剰に日光を怖がるハイネに違和感を抱きつつも、潮はそのシェアハウスに住むことになる。そして、すぐに潮はリュカと名乗る吸血鬼から血を求められ、同時にハイネも吸血鬼だと知ることとなる。
ハイネにかけられた呪い
九軒潮は、吸血鬼が暮らすシェアハウスにとまどいつつも、住人のハイネやリュカ、クローディアたちと楽しく生活を送っていた。そんなある日、潮がシェアハウス周辺を探索していると、古びた教会の敷地内にテントを張って暮らす、エクソシスト(悪魔祓い師)のエリカ・葛城・リーデルシュタインと出会う。今から100年前、エリカの先祖が「守仁江村(かみにえむら)」の住民から吸血鬼の討伐を依頼されたが、命を奪うことはできず、その代わりにハイネに対して「百年の呪い」をかけ、森の奥に閉じ込めたのだと聞かされる。その呪いの発動からもうすぐ100年が経過しようとしているため、エリカはハイネたちが呪いの力によって、どうなるのかを見届けに来たのだと語る。そして潮はエリカから、「百年の呪い」の詳細は不明だが、ハイネたちはおそらく消滅するであろうと聞かされる。
ハイネと波弥の過去
九軒潮はクローディアに命じられ、部屋の片づけをしていた。そんな中、誤って彼女が所持していた小瓶を床に落としてしまう。するとその小瓶は割れ、意識を失った潮が気づいた時は、過去の世界にタイムスリップしていた。そこでは潮が現在住んでいるシェアハウスで、ハイネとまだ幼い母親の九軒波弥が親しそうに話をしていた。二人の話から潮はハイネと波弥、そして本当の父親についての真実を知ることとなる。
登場人物・キャラクター
九軒 潮 (くのぎ うしお)
最近唯一の家族である母親の九軒波弥を亡くした男子中学生。年齢は14歳。幼い頃に父親が失踪し、親戚付き合いもなかったため、天涯孤独の身となって行き場を失ってしまう。生活できず困っていたところ、突然「父親」と名乗る人物から手紙が届き、某県の守仁江村(かみにえむら)にあるハイネが所持するシェアハウスに住むように勧められる。ハイネたちとの交流を通して九軒潮自身が、吸血鬼の生贄(いけにえ)になる「餌の血統」の末裔ということを知り、とまどいながらも彼らと心を通わせていく。
ハイネ
某県の守仁江村(かみにえむら)の森の中にある、シェアハウスの主を務める吸血鬼の男性。九軒潮のもとに「父親」を名乗る人物から、ハイネの運営するシェアハウスで暮らすようにと手紙が届き、それに従ったことからいっしょに暮らすようになる。潮に対して非常に好意的であり、慣れない人間用の料理を振る舞ったり、潮を喜ばせようと日光を遮断するスーツを着用して庭木の手入れをしたりと、潮のために奮闘している。美しい髪に赤い眼を持つ美男子で、優しく穏やかな性格をしている。エリカ・葛城・リーデルシュタインの先祖のエクソシスト(悪魔祓い師)によって「百年の呪い」をかけられており、もうじき期日の100年を迎えることもあり、たびたび体調を崩しているが、潮にはその秘密を隠している。
リュカ
某県の守仁江村(かみにえむら)の森の中にある、ハイネを主とするシェアハウスに住んでいる吸血鬼の男性。シェアハウスにやって来た九軒潮を見てすぐに餌の血統だと気づき、強引に血を吸おうとしたこともあり、潮からは危険人物だと認識されている。実直な性格ながら、お調子者な気質も持っている。ハイネに血を吸われたことで吸血鬼になり、彼が消滅すると同時にリュカ自身も命を落とす運命にある。
クローディア
某県の守仁江村(かみにえむら)の森の中にある、ハイネを主とするシェアハウスに住んでいる吸血鬼の少女。九軒潮といっしょに住むようになり、何かと彼にちょっかいを出している。見た目は幼い少女ながら優れた発明家で、魔術の扱いにも長けた魔女でもある。発明品の実験台に潮を指名したり、部屋の片づけをさせたりと人使いが非常に荒い。ハイネに血を吸われたことで吸血鬼になり、彼が消滅すると同時にクローディア自身も命を落とす運命にある。
エリカ・葛城・リーデルシュタイン (えりか かつらぎ りーでるしゅたいん)
エクソシスト(悪魔祓い師)の少女。ロングヘアのツインテールの髪型をしている。九軒潮がシェアハウス周辺を探索して迷ってた際、偶然出会ったことで顔見知りになる。ハイネたちの存在を知っており、吸血鬼といっしょに住んでいる潮も怪しんでいる。幼い外見をしているが、言葉づかいや振る舞いが大人びている。某県の守仁江村(かみにえむら)を訪れた理由は、先祖が守仁江村で吸血鬼退治を依頼されたものの叶わず、その代わりに不老不死であるハイネに対して「百年の呪い」をかけたことから、本当にその呪いが発動するのかを見届けるため。村内にある古い教会の庭にテントを張り、サバイバル生活を送っている。
九軒 波弥 (くのぎ はや)
九軒潮の母親で故人。シングルマザーとして潮を育てていたが、潮を残して急死してしまう。某県の守仁江村(かみにえむら)出身で、吸血鬼の生贄(いけにえ)になる「餌の血統」の血族だが、潮には何も伝えていなかった。幼い頃に興味本位から森の奥にあるハイネたちが暮らすシェアハウスを訪れた。以降、村を出るまでハイネと親しくしており、彼が初恋の相手でもある。
その他キーワード
吸血鬼 (きゅうけつき)
某県の守仁江村(かみにえむら)の森の奥にある、シェアハウスで暮らしている西洋の妖怪。人間の生き血を好み、魔術を使って村人を恐怖に陥れていた。戦国時代に周囲からの侵略に怯える村人から守ってほしいと依頼され、その代わりに「餌の血統」をはじめとする人間から血液を献上されていた。しかし、今から100年前に平和な世の中になったことから村人に裏切られ、ハイネはエリカ・葛城・リーデルシュタインの先祖のエクソシスト(悪魔祓い師)により、「百年の呪い」をかけられている。その呪いにより、本来のハイネは不老不死ではあるが、命を失う可能性がある。守仁江村のシェアハウスに住んでいるリュカとクローディアは、ハイネが血を吸って吸血鬼にした者たちであり、ハイネが命を落とすと同時に消滅してしまう運命にある。主な食事は血液ではあるもののごく少量で問題なく、貯蔵庫に保存している血液だけでも事足りるため、積極的に人間を襲おうとはしない。また、人間の食べ物を口にすることもある。
餌の血統 (えさのけっとう)
某県の守仁江村(かみにえむら)に存在する、吸血鬼にとって最高に美味な血液を持つ人間の一族。戦国時代、守仁江村に住む村人が外部からの侵略を回避するため、森の奥にある屋敷に住みつくハイネたち吸血鬼の力を借りることになった。村人は庇護を受ける代償として、人間の血液を吸血鬼たちに生贄(いけにえ)として捧げていた歴史を持つ。その過程の中で、吸血鬼側が最高に美味な血液を持つ一族を意図的に作り出し、その血縁者たちは「餌の血統」と呼ばれるようになった。しかし、今から100年前に平和な世の中になったことを受け、吸血鬼の力を恐れる村人たちによってハイネたちは森の奥に封印され、「餌の血統」の存在も忘れられていった。「餌の血統」は体の構造も見た目も人間そのもので、吸血鬼と交流がなければ、自らが特殊な血統であることも知らずに生きることになる。「餌の血統」の一族は吸血鬼に血を吸われるために存在する人間として、遺伝子に「吸血鬼に血を提供すること」と刻まれており、分け与えることを望む特徴を持つ。九軒潮の母親である九軒波弥が守仁江村出身の最後の「餌の血統」で、潮が一族の末裔となる。
百年の呪い (ひゃくねんののろい)
某県の守仁江村(かみにえむら)の村人たちが、エリカ・葛城・リーデルシュタインの先祖のエクソシスト(悪魔祓い師)に依頼して、ハイネにかけた呪い。戦国時代の村人が外部からの侵略から逃れるために、ハイネたち吸血鬼の力を借りたが、今から100年前に平和な世の中になったために力が不要になり、エリカの先祖に吸血鬼討伐を依頼した背景を持つ。本来の依頼は吸血鬼の命を奪うことだったが、ハイネたちの力が強かったために叶わず、「100年後にハイネになんらかの呪いが発動する」「呪いが発動するまでのあいだは、森の中にある屋敷から出ることができない」という内容になっている。そのため、エリカは呪いがどのようなかたちで発動されるのかを見届けるべく、一時的に守仁江村で暮らしている。