概要・あらすじ
見渡す限りの海に囲まれた島・始まりの島。肥沃な大地と食料に恵まれたこの島で、人々は平和を満喫していた。しかしバロンはそんな変化のない生活に辟易しており、いつか水平線の向こうに旅立ち、世界を巡る冒険に思いを馳せていた。そんなバロンはある日、別の国から流れ着いたという漂流者、シンバに出会う。シンバは自分が強大な帝国軍に追われていること、それに対抗するためにはこの島にあるという旧文明の大量破壊兵器「ラ・ダ」が必要であり、それは自分にしか扱えないことを告げ、バロンに助力を求める。
そして、2人はついに「ラ・ダ」を発見するものの、ドグ・オルグ帝国の攻撃を受けたシンバはその場で息を引き取ってしまう。帝国の侵攻とシンバの死にショックを受け、途方にくれるバロン。
しかしその時、シンバにしか扱えないはずの「ラ・ダ」が突如動き出し、バロンに「戦え」と語りかける。
登場人物・キャラクター
バロン
始まりの島で生まれ育った少年。偏屈なオタク趣味を持っており、日がな一日、家でさまざまな研究にいそしむ生活を送っている。そのため、島の他の人間からは半ば村八分のような扱いをされており、祭事などにも一切参加していない。現在の目標は幼い頃に亡くした父親がいつも見上げていた、島の神木の頂上に登ること。始まりの島での平和で退屈な生活には辟易しており、いつか島を出奔する夢を持っている。 ある時、島に流れ着いた船を見かけて近づいたところで、シンバと運命的な出会いを果たす。
シンバ
中性的な顔立ちに流れるような長髪を持つ眉目秀麗な青年。ジュア王国の第一王子を自称しており、母国に侵略して来たドグ・オルグ帝国の追っ手から逃れるため、また「ラ・ダ」という兵器を求めて始まりの島に半ば漂流するように辿り着いたと語っている。始まりの島に到着した時にはすでに手傷を負っており、漂着した船を見に来たバロンに敵対心を見せるが、治療してもらうなかで話をして意気投合し心を通わせる。 しかしその直後にドグ・オルグ帝国の追撃を受け、シンバ・ラ・ダの中で絶命する。
マオ
始まりの島を出奔して旅に出たバロンが、海上で出会った姉妹のうちの1人で、マコの姉。金髪をツインテールに結った髪型で、大きなアゲハ蝶のデザインの帯を付けた着物を着ている。ドグ・オルグ帝国の船に潜り込み、爆弾を仕掛けるという大胆不敵な作戦を遂行していた工作員で、ドグ・オルグの船に襲われていたところをバロンに助けられたことで知り合う。 その後は助けてもらった恩を仇で返し、あまつさえラ・ダの操縦者であるバロンを手下にしようと画策するしたたかな性格の持ち主。妹と違い、男勝りで暴力的。なお、生まれ故郷であるシミズ島では島の領主であるロング・ロージーの側近を務める実力者。
マコ
始まりの島を出奔して旅に出たバロンが、海上で出会った姉妹のうちの1人で、マオの妹。黒髪ショートボブの髪型に折り鶴の髪飾りを付け、大きなモンシロチョウのデザインの帯を付けた着物を着ている。ドグ・オルグ帝国の船に潜り込み、爆弾を仕掛けるという大胆不敵な作戦を遂行していた工作員で、ドグ・オルグの船に襲われていたところをバロンに助けられたことで知り合う。 その後は助けてもらった恩を仇で返し、あまつさえラ・ダの操縦者であるバロンを手下にしようと画策するしたたかな性格の持ち主。姉と違って幾分おしとやかな性格をしているが、生まれ故郷であるシミズ島では島の領主であるロング・ロージーの側近を務める実力者。カンゴク島の襲撃を受けた後、バロンの活躍を見て、徐々に心を開いていく。
ロング・ロージー (ろんぐろーじー)
シミズ島を統治する女領主。美しく長い黒髪を持ち、和風装束に2本の刀を差した出で立ちをしている。細くしなやかな体格ながら、投擲した刀で大の男の体を3体も貫くほどの怪力を誇る。当初は、マオとマコが偶然連れて来たバロンに対し、「弱々しく意志さえ感じない」とラ・ダの操縦者であることすら信じなかったが、のちにバロンの本当の意志を知り、次第に態度を軟化させていく。
イシマツ
シミズ島に住む隻眼の若い男性で、ロング・ロージーの弟。まだ子供の頃にカンゴク島の侵攻を受けた際、火の上がった家屋に取り残されてしまったことで片目を失い、脚もまともに動かない体になってしまった。この時、重度の火傷を負った左腕をロージーによって切り落とされており、これを逆恨みしてロージーひいてはシミズ島の住人全員に憎悪を抱くひねくれた性格になった。 しかし、まともに動かない体ながらも高い戦闘力を誇り、特に弓の腕前は超一流。右腕で弓を構え、口で矢をつがえる独特の射法を用いる。
桶爺 (おけじい)
シミズ島の住人で、棺桶屋を営む老人。シミズ島がドグ・オルグ帝国の侵攻を受けた際、重傷を負った部下を看取り、バロンを地下牢へ隔離しておくようロング・ロージーに頼まれる。この時、せめてもの情けと部下の介錯をしようとしたところバロンに制止され、その医術の知識のおかげで部下は一命を取り留めた。これがきっかけで、シミズ島における最初のバロンの理解者となる。
チーフ・アリ (ちーふあり)
ドグ・オルグ帝国の幹部の1人。左目を縦断する傷跡を持つ厳しい顔つきが特徴で、筋骨隆々の体格を誇る。ドグ・オルグ帝国が新たに発掘したラ・ダの操縦者探しに加え、最近興隆し始めた反勢力の鎮圧の任を受け、シミズ島に侵攻をかける。性格は厳格にして隙のない慎重派。だが、作戦遂行のために最も効率の良い方法を迷わず実践する即断力、そのためであれば人の命をものとも思わぬ冷徹さも持ち合わせる。
軍曹 (ぐんそう)
ドグ・オルグ帝国に所属する軍人の1人。もみあげから口元までつながったボサボサのひげに、海賊帽、フリルの付いたジャケットにスカーフという、いかにも海賊船の船長といった出で立ちの男性。操縦者の素質を持つシンバを手中に収めようとジュア王国に侵攻し、始まりの島まで追い詰めた。始まりの島ではスカル・ラ・ダの操縦者として目覚めたばかりのシンバ・ラ・ダと対峙するも、その圧倒的な力の前に膝を屈することとなる。
チーフ・ドレーク (ちーふどれーく)
ドグ・オルグ帝国の幹部の1人。前髪を斜めに分けた優男風の男性。「上からのお達し」と言いつつ、新しく発掘されたラ・ダの軍配備をエサにチーフ・アリを丸め込み、シミズ島攻略をそれとなく促すなど、自らは動かずに手柄を立てようと画策する頭脳派。
バロンの父 (ばろんのちち)
バロンの父親。始まりの島でバロンを育てていたが、ある嵐の日に沖へ出てそのまま行方不明になった。もともと薬師であった他、船の作成方法などさまざまな知識に長けており、バロンが引きこもってオタクのような研究生活をするようになったのは父親の影響が大きい。
イン・ロー (いんろー)
ドグ・オルグ帝国がシミズ島に放った密偵の女性。住人のふりをしてシミズ島に潜入し、浴場での観察や色仕掛けを講じて住人の裸体を確認し、その体にラ・ダの操縦者を示す刻印がないかを調査していた。他にも暗殺者としての役割も担っており、特性の毒を塗り込んだ吹き矢を駆使して暗躍する。
マーラ
チーフ・アリの妻で、美しく、生命を尊ぶ優しい心を持つ女性。ドグ・オルグ帝国内で息子と娘、2人の子供たちと貴族のような穏やかで恵まれた暮らしをしているが、実は四六時中監視されている。実情は帝国がアリを意のままに操るための人質として飼われているにすぎず、裏ではアリが失態を犯した場合、家族の誰かが死刑になる密約が交わされている。
場所
始まりの島 (はじまりのしま)
地球に点在する島の1つでバロンの生まれ故郷。肥沃な大地と自然に囲まれた島で食べ物にも資源にも困らず、争いとも無縁な平和な島。島の中心には高くそびえる神木を有する。しかし、その島に暮らしている住人たちが知らないだけで、この島を除いた周辺の世界は戦乱の世を迎えており、ドグ・オルグ帝国からの侵略者である軍曹は、「この島が平和なのは神木であるオージンウォムの恩恵に他ならない」と語っている。
シミズ島 (しみずとう)
地球に点在する島の1つで、ロング・ロージーの治める島。島土の大半は「FUJI(フジ)」と呼ばれる巨大な山であり、町はその麓に残る山林地域の狭い範囲のみ。しかし、世界でもっとも硬いと言われる鋼の樹の一大産地でもあり、これをもとに貿易を行っているため、小さいながらも繁栄した文化様式を誇る。
カンゴク島 (かんごくとう)
ドグ・オルグ帝国の支配下にある島の1つで、主に犯罪を犯した者などが送られる巨大な監獄島。必然的に島には荒くれ者たちが集まっており、ドグ・オルグ帝国の指揮のもと、その支配下にない周囲の島を襲撃するための傭兵集団のように扱われている。特にかねてより抵抗の激しいシミズ島には何度も襲撃をかけており、大規模侵攻以外にもシミズ島に潜り込んでは犯罪を働く者が後を絶たない。
ジュア王国 (じゅあおうこく)
シンバの生まれ故郷の国。シンバの操縦者としての力を欲したドグ・オルグ帝国からの侵攻を受けることとなった。シンバは命からがら始まりの島まで逃げ延びることができたが、その後ジュア王国がどうなったかは不明。シンバと心を通わせたバロンは、彼の生まれ故郷に向けて旅を始めることとなる。
ドグ・オルグ帝国 (どぐおるぐていこく)
世界の大半が海に覆われた地球でその国土を広げつつある強大な国家。5年ほど前にラ・ダを海底から引き上げる技術を得てからさらにその勢力を増しており、すでにその支配は全世界の70%にも及ぶ。なお、まだその支配下に加わっていない勢力には「帝国」と呼ばれているが、ドグ・オルグ帝国としては、共和制を掲げ「ドグ・オルグ共和国」を自称している。 全世界の支配のため対立国にラ・ダによる侵攻を行ったり、有能な人物の家族などを拉致、脅迫することで強引に部下に加えるなど、やり方は非常に強引かつ暴力的。それでもドグ・オルグ帝国の一部には、軍曹など、その支配や管理が世界の平和につながると真剣に考えている者もいる。
その他キーワード
操縦者 (もよむとぅ)
ラ・ダを操縦することのできる素質を持つ者。その素質は血筋で受け継がれ、操縦者はラ・ダが近づくと呼応し、体の何処かに痣のような印が浮かび上がるとされている。その他、シンバによれば操縦者となる者は、常人の3倍の腕力を持つとされている。一方で血筋とは関係がなく、また操縦者の印を持たない者でもラ・ダに認められれば操縦することができる。
ラ・ダ (らだ)
世界にいくつか残されている謎の巨大ロボット型兵器。姿形はさまざまだが、多くの機体に共通する特徴として、船型と人型に自在に変身できること、そして樹木のようなボディに固い装甲をまとっていることが挙げられる。操縦者がラ・ダの中に入ると、五体にラ・ダから枝が伸びてきて絡みつき、リンクすることで初めてその力を発揮し、動くことができる。 シンバによれば、かつてこの世界の陸地を沈め、現在のように海に覆われた地球に変えた元凶であるといい、また軍曹によればラ・ダはすべて始まりの島の神木ことオージンウォムから生まれたものであるという。
モヨ・キィニ (もよきぃに)
すべてのラ・ダが持つとされる核のようなもの。ラ・ダの心臓のようなものであり、またラ・ダの操縦者となりリンクした者の命をも司る。見た目は木の枝が複雑に折り重なり、鼓動する塊。シンバ・ラ・ダがスカル・ラ・ダを撃破した際は、ボディの中から芽吹くように現れ、シンバ・ラ・ダがこれを吸収するとスカル・ラ・ダは灰燼に帰した。 また、その後スカル・ラ・ダの操縦者であった軍曹も、モヨ・キィニがラ・ダと操縦者の核であることをバロンに告げた後、怪我の治療の甲斐なく総白髪になり絶命した。
神木 (しんぼく)
始まりの島の中央に高くそびえる大木。その大きさは、頂上がはるか上空に小さく見えるほどに高く、とても人の手で登れる大きさではない。バロンは自分の父親がその神木の頂上をいつも見上げていたことを子供心に覚えており、いつかその頂上を見ようと自作の階段を積み上げる日々を過ごしていた。その後、ドグ・オルグ帝国の侵攻を受けた際、軍曹の発言からすべてのラ・ダを生み出した母なる樹であることが発覚。 頂上に最後のラ・ダと呼ばれるシンバ・ラ・ダがあることが判明した。
シンバ・ラ・ダ (しんばらだ)
始まりの島にある神木の頂上に残されていたラ・ダ。白いボディと装甲を持ち、頭部の周囲に複数の勾玉様パーツを配したデザインが特徴。シンバによれば、シンバの血族にしか操ることができないラ・ダとされていたが、機体の中で絶命したシンバを取り込み意識を共有することでバロンを操縦者として認め、力を発揮した。 なお、軍曹によれば、シンバ・ラ・ダこそが最後のラ・ダであるとされている。
スカル・ラ・ダ (すかるらだ)
ドグ・オルグ帝国の軍曹が操るラ・ダ。樹木が折り重なり骸骨のような形をしたボディに、漆黒の鎧と海賊帽のような頭部装甲を持つ。武器は樹木を何重にも重ねた巨大な大剣。一時はシンバ・ラ・ダを圧倒するも、シンバと共鳴し、覚悟を固めたバロンの前に敗北する。
クヌカ・ラ・ダ (くぬからだ)
ドグ・オルグ帝国が新たに発掘したラ・ダ。発見された当時から体が腐り落ち、非常に醜い姿をしている。発掘後、解析によってシミズ島の方角に操縦者がいることが判明したため、反乱分子の鎮圧及び操縦者の確保を名目にシミズ島侵略計画が立てられる。なお、その作戦のなかでシミズの領主であるロング・ロージーが操縦者であることが判明したものの、ラ・ダはその弟であるイシマツを操縦者として選び、そのうえに暴走してしまう。
鋼の樹 (だいやもんどうっど)
世界で最も硬いとされる頑丈な樹木。その硬度から刃物を始めとして様々な材料に使われており、世界で重要な建材の1つとなっている。なお、シミズ島はこの鋼の樹の一大産地であるため、これをもとにした貿易で栄えている。
メガオシロイ
シミズ島に自生している植物の一種。非常に繁殖力が強く、どれだけ駆除してもすぐに生えてくる性質を持つ。シミズの人々にはただの雑草としか思われていなかったが、バロンの知識から、種に熱を加えると弾け、中の粉末を噴射する性質を持つことが判明。カンゴク島の侵攻によって発生したシミズ島の火事を鎮火させるために高い効果を発揮した。
クレジット
- 原作